ゼロカラアイスルイセカイセイカツ   作:水夫

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後編、完結です。
いろんな考察のごちゃまぜみたいな感じになりました。


魔女の情愛

 生活感の漂う場所から人の気配だけが綺麗に消えると、その落差があるだけ空しさも幾分か増して感じるものだ。

 つい最近まで使われていたのだろう、あちこちに放り出されたまま、主の帰りを待っているかのように光沢を放つ家具や作業道具の数々。いかにも職人部屋といわんばかりの作業場に中途半端な痕跡だけを遺して、停滞した時の中で朽ちるのを待つほかなく、もう人の手に触れることも、陽の光を浴びることもないガラクタ。

 散在したそれらから目を外し、部屋の外へ向かう通路の途中、冷めた死体が一つ転がっていた。日常から欠如した一欠片、けれど風景に溶け込むようにして息絶えたその男を見下ろしながら囲むのは三人の男女。

 

「……とうとう、何の罪もない人殺しちゃったな」

「無関係の人が不本意に貢献なさったのは、私としても心が痛いです」

「色々突っ込みたいけど、お前のその、犠牲じゃなくて貢献っていえるのスゲェと思うよ」

「それが悲願を成すに必要なのであれば、私はどんな罪を背負ってでも進みますよ。いずれ全ての人が救われるのです。ナツキ・スバル司教が気に病むことはありません」

「いや、別に殺した事に罪悪感とかはないんだが……エミリア以外からは興味を失くしたつもりだったけど、実際にただの人を殺したのは初めてだったんだよ。こうして振り返ってみると、俺はただ、成れたつもりでいただけなのかも知れない。いや、間違いなく賢人の出来損ないだ」

「そんなことありませんよ。まだ、準備が出来ていないだけです」

 

 黒髪黒目の青年と、白金の長髪を後ろに伸ばした少女が言葉を交わしている。人を殺めた後の会話とは思えないほど沈着で、慣れとは違う温度の口振りだ。そしてその二人を眺めるのがマネキンのような少女。上下共に黒い装束を身に纏い、僅かな隙間から覗く長い髪と、静謐に佇む双眸の持ち主だ。

 彼女は話に割り込むわけでもなく、ただ静かに二人を付いていくだけの無言。ひっそりと、機械的に、影法師の如く追随する。

 

「まあいいや。それで、ダーツさん……だっけ? その人が復元した福音書もこうして手に入ったわけだが」青年は、手に持った本を目線の高さまで掲げて誰ともなしに言う。「おい、聞いてるかペテルギウス。お前の話だよ」

「耳元……というか頭ん中で騒ぐな。お前が自分で納得しねぇから、わざわざこんな所まで寄り道してむこの人を殺したんだろうが」

「急ぐ必要はありません。ゆっくりと、着実に歩んでいきましょう。焦りは禁物ですよ、ナツキ・スバル司教、そして『怠惰』の因子……ペテルギウス・ロマネコンティ司教も」

「お前はお前で甘やかしすぎなんだよ」

 

 三人──いや、二人の会話が通路に響き渡る。

 このやり取り、第三者からしたらさぞかし奇怪に見えるだろう。明らかに一部が抜け落ちているにも関わらず、会話自体は成立しているのだ。この場にいない誰かの声を二人だけが聞いている、そんな違和感を、見る者に与える。種といったらなんだが、そのカラクリはスバルにあった。より正確に言うならばスバルの頭の中だ。

 彼は側頭部を軽く叩き、独り言に似て異なる言葉を再度発する。

 

「シリウスの権能で目を覚ましたはいいが……余計な奴まで起きやがって、しかもよりによってそれがお前って、ほんと最悪だな。お前のせいでどんだけ苦労したと思ってる」

「いい加減、その怠惰だの贖罪だの喚くの止めろよ。お前みたいなストーカーがちょっと寝てたからって魔女も怒らねぇだろうし、むしろホッとしてたと思うぜ。だからさっさと元に戻って寝てろ。そして一生起きるな」

「お前、俺の話聞いてた? その福音書をこうやって取り返したから大人しく引っ込んでろっつってんだよ。この体はそもそも俺のもんだ。お前なんかに貸してやる義理もクソもねぇよ」

 

 全て、一人で立て続けに喋っている。

 憑依とは少し毛色の違う精神状態だ。体は一つなのに意識は二つ。その優劣こそスバルの方が強いももの、自分の中に他人が混じった異質感はそうそう消えないことだろう。耳を塞いでも構いなく聞こえる声は、ただそれだけでも正気を少しずつ蝕む。狂気が重なれば尚の事。

 まるで多重の人格同士が内紛を起こしているようにも見える光景を、パンドラは感慨深く、そして満足げに眺めては頷く。

 

「七つの欠片……魔女因子は彼の中にあります」少し離れた所でちらと後ろを見やれば、相変わらず立ち尽くしたままの少女。「それに器と鍵、全ての条件が整いました。悲願はそれこそ目の前にまで近付いています。再臨の時は、近い」

 

 説明調で話し掛けても、少女の返答はやはりない。感情の欠けた顔で佇立したきり動きを止めている。

 その顔が不意に微動し、見つめる先に怠そうな声が一つ。

 

「なあパンドラ。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか。……『嫉妬の魔女』を復活させると、あの子が戻ってくるって、本当なのか」

 

 パンドラが彼を連れに訪れる前まで、エミリアの死というあってはならない現実に致命的なショックを受け、外界からの情報を全て遮断していたスバル。その際、自意識の消失だけに留まらず、記憶の領域に多大な影響を残していった。

 その中でも特に、頭に穴を穿ったのではないかと思うほどの虚無感を与えた人物がいる。かつてはエミリアと同等に大切だと感じていた青髪の少女だ。世界に忘れられ、唯一スバルだけが覚えていたはずの、孤独な女の子。今や存在そのものや大切さのみを心の穴と共に抱えたまま、愚かにも救いたいと願う対象の一つだ。

 名前も、もう、深く沈んでいて、取り出せない。

 

 スバルの問いに、浮かべるのはいつもの微笑。パンドラは少女の手を引きながら出口へ向かい歩み出す。

 これで最後、最終段階だ。影に隠れて暗躍するのも、もうじき終わる。この一件をやり遂げた暁には、果たして日の下を堂々と出歩ける、新たな時代が幕を挙げるだろう。

 今までの時間は無駄ではなかったが、かといって理想の舞台には程遠かった。決して届かない領域でもないが、手を伸ばすことが出来なかった。しかしそれもあと僅かで過去の話になるはずだ。夢の実現は目前、これを逃す道は無い。

 四百年に渡る虚飾の日々に終止符を。待ち望んだ真なる世界への一歩に希望を。

 愛するこの世に、心からの、祝福を。

 

 通り過ぎざまに、一層笑みを深めてから弾んだ声で言い放つ。

 

「そうですね。では、最後の旅路の暇潰しに、お話致しましょう。——大瀑布の、向こう側について」

 

 

 ‡

 

 

「これは酷い……」

 

 嫌悪感を抑えきれていない声が、沈黙を破った。

 広大な西方辺境伯領内、宮廷魔導師ロズワールの本拠地とするとある敷地に大勢の人だかりが出来ていた。

 その場に集まったのは、呟きの主を筆頭に、数十人に及ぶ中規模の隊伍。王都ルグニカから派遣され急遽駆けつけてきた精鋭部隊だ。『憤怒』の大罪司教の逃亡から数時間、早くも異変が起きたとのことで来てみたら、その有り様は想像を遥かに越える激戦の様相を呈していた。

 

「ここが、ロズワール辺境伯の屋敷で合っているのだな?」

「はい。我々の管理している地図によれば、場所はここで間違いありません。一年ほど前に別邸が全焼したため、こちらに移ったとの報告が記録されています」

「そうか。ならいい」

 

 低く沈んだ声で問う影は屈強の巨躯。人一倍頑丈な身を鎧で包み、彫りの深い顔により一層深々とシワを寄せる厳つい顔貌。彼は王国近衛騎士団にて長の座を担う、マーコス・ギルダークだ。

 住所の正誤を衛士に確認させた彼だが、なにも地理に疎いという訳ではない。むしろ王都周辺の情勢や地理に関してならば、騎士団でも彼の情報網を上回る者などいまい。ただ、熟知しているからこそ記憶の中と現在との決定的な差異に驚きを隠せないのだろう。

 

 まず第一に、ランドマークとも言える屋敷の消失──否、焼失。遠くからでもその巨大なる偉容を惜し気なく披露していた屋敷自体が、瓦礫の山だけを残して烏有に帰した。原形どころか辺りの地形をも甚だしく変貌させた脅威、『憤怒』の仕業と見受けられる痕跡が痛々しく刻まれた不毛の地。

 マーコスが情報を掴んだ時点で既に手遅れの損傷が確認され、精鋭部隊を引き連れてようやく到着した頃には、先に送った部隊によって消化作業も終わりを迎えていた。

 しばらく跡地を眺めていると、一人の衛士が駆け寄ってきた。

 

「ギルダーク団長。屋敷を中心に目で見える範囲を捜索してみましたが、『憤怒』や住人などの生死は確認する事が出来ませんでした。瓦礫と木に埋もれている可能性も考えられるので、是非ともご協力をお願いします」

「ああ、勿論だ。障害物の除去なら俺の担当だからな」

「感謝します。ただ、崩壊の規模があまりに大きいものでして、思っていた以上の時間と労力が費やされるかと。捜査網を更に広げるべきだと判断したので、出来れば、王都へ増援の要請を……」

「私の出番、ということなら喜んで力を添えよう。生憎と蕾たちの援護は無いが、かといってお荷物になるつもりも無いのでね。……如何でしょうか、団長殿」

「お前は……」

 

 想定していたレベルを上回る被害範囲が報告され、更なる人員を必要としていた所に、自ら役目を買って出た声。振り返ると、見覚えのあるようでないような優男が紫の髪をそよ風に揺らしていた。彼は軽やかな動作で姿勢を低くし、頭を垂れたまま再度口を開く。

 

「アナスタシア・ホーシン様より騎士の資格をお預り頂きました、私ユリウス・ユークリウスと申します。今は名も無きただの剣士……しかし、たとえ存在が忘れられようと、王国への忠誠心と騎士道だけは曲げませんゆえ」

「お前の話は聞いている。『最優の騎士』、とまで呼ばれていたそうではないか。すまないな、覚えてやれなくて。では頼むとしよう」

「恐縮ながら、その称号は今の私には荷が重く、なんとも複雑な、……忸怩として過去の失態を悔やむばかりです」

 

 言い終えて立ち上がると、青みがかった肌の地竜が側に近付いてきた。流れるようにその背に乗ったユリウスが、衛士から現状における調査結果の書簡を受け取ってマーコスに一礼。マントを大きく翻しながら踵を返す。洗練された一連の動作に、無駄も迷いも見受けられない。

 しかしその後ろ姿が、何故だかひどく孤独なものに見えてマーコスは息を吐く。後輩の管理も上司の仕事の内だ。

 

「ラインハルト、お前も増援要請だ。ユリウスについていけ」

 

 今回の騒動に思う所があるのか、ただ黙々と作業を続けていた赤毛の騎士に、振り向かないまま言った。

 

「僕も、ですか? しかし、そうすると余計に時間が掛かるのでは……」

「『最優の騎士』を任せたと言っているのだ、『剣聖』。責任を感じることも仕事に励むことも道理だが、友と話し合うことだって時には必要だぞ。一息抜いてこい」

「は、承りました」

 

 苦笑を浮かべ、命令を受けてすぐに自分の地竜へ駆け寄るラインハルト。そして、マーコスに目礼だけ残してその場を去る。

 マーコスは下手な励ましよりも真っ直ぐに考えを伝えるのを好む人だ。その性格を特に気にした事はなかったが、今は何となく、ささやかな有り難みが感じられた。彼の人間性の片鱗とでもいうべき部分が、まさにそこにあったのかもしれない。

 前方、まだ見慣れない紫髪の騎士の背を追い、ラインハルトはぐっと手綱を握る。地竜の足取りを並べるのはそう難しくなかった。

 

 

「やあ、ユリウス」

「……君か」ラインハルトを見たユリウスは驚いたように瞠目し、当然の疑問を投げてくる。「どうした? 跡地の調査はいいのか」

「団長に行けと言われたんでね。君さえ良ければ、同行させてもらうよ」

「それは心強いな。断る理由もない」

 

 爽やかに整った顔立ち、文句の付け所がない腕前、それに真っ直ぐな倫理観。どことなく似た雰囲気を醸し出す精鋭の中の精鋭二人だ。

 しかし、その間に流れるのはよそよそしい空気と曖昧な距離感。突き放すでもなく、かといって親しげに迎え入れるでもない微妙な態度で互いに接している。先に会話の蓋を開けるのは、ラインハルトの方だ。

 

 

「僕は今、どうすればいいのか分からないんだ」

「——。君がそんな弱音を吐くとは、中々に珍しいものが見れたな」

「ということは、これまで君の前での僕は常に強く在れていたわけだ。安心したよ」

「その言い方だと、内心は不安を感じていたというふうに受け取れるのだが。君に限ってそんな事が……あったのか?」

「それは僕も一応人間だからね。まあ、確かに態度に出るほど落ち込んだ経験はあまり無かったと思うよ。周りに心配かけるのも悪いし」

 

 

 普通ならば、そのあまりというのも大層なものなのだが、相手が相手なだけに自然と腑に落ちた。

 

「だから、ここまで心に迷いを覚えるのも、慣れてないんだ。情けないことにね」

「迷い」

「今回、国中を大きく騒がせた『憤怒』の脱走……そもそも大罪司教の監視には僕が付いていた」

 

『憤怒』の大罪司教、シリウス。プリステラにて勃発した攻防戦の末に、彼女の身柄を拘束したラインハルトは王都までの護送を担当した。凶悪極まりない大罪人、それも並外れた力を持つ存在だ。貴重戦力を投じて厳重な警戒態勢を敷くに越したことはなく、ラインハルトとしても彼女を放すつもりなどなかったため、王都へ送り届けた後も彼が監視役を任されていた。

 それは、特別に隠すような事柄でもないのでユリウスや他の騎士たちも当然知っている内容だ。くいと顎を引き、ユリウスは続きを促す。

 

「けど、たった一日。いや数時間だ。その間、僕は用があって『憤怒』の動向が分からなくなる程度に離れた場所へ行っていたんだ。何か連絡があればすぐに駆けつけることが出来るけど、第一目撃者として対処するには少しだけ遠いところに」言いながら、長く伸びた街道の先へ視線を移す。「フェルト様のいる、アストレア邸だよ」

「なるほど。そして、ちょうどその時に脱獄が行われたと」

「そういうことになるね」

 

 王都ルグニカの王城、その真横に位置する監獄塔から、上層のアストレア邸までは遠くもなければ近くもない距離だ。いくら『剣聖』といえど、目に見えもしない範囲の問題は察しにくい。他のことに気を取られていた上に、得体の知れない大罪司教が相手であれば彼に非はないと言える。

 これはどうしようもないタイミングの問題だ。

 

「事情は分かったが、仕方のない事だったのではないか? 四六時中『憤怒』の側で監視を続ける訳にもいかないし、何より用件が理由で場を離れたのならそれは不可抗力といえる」

「うん、ありがとう。騎士団や知り合いの皆も、そう言って励ましてくれたよ。『憤怒』から情報を引き出すのに手こずっている尋問官が悪いってね。でも、もしそうだとしても、だよ。僕が迂闊に監視を怠った責任が消える訳じゃない。大罪司教がそれを狙ったのかは定かでないが、僕が席を外した隙に脱獄したのは紛れもない事実なんだ」

 

 唇を噛み、悔しさを表すラインハルト。ただユリウスは、その顔に混在する感情に何か、別のものが含まれている気がした。

 

「アストレア邸には、何の用で向かったのか訊いてもいいかな」

「そうだね。もしかしたら、マーコス団長もこのことで僕を同行させたのかもしれない」

 

 興味本位で問うた言葉に、真剣な返し。

 このこと、とは何を指すのか。頭上に疑問符を浮かべたユリウスに、ラインハルトは僅かな逡巡の後、笑い顔にも困り顔にも見える表情で言う。

 

 

「親友である君にこそ話そう。──フェルト様が、病床に伏した。なんの予兆もなく、原因も不明。数日前から調子が良くないと仰っていたらしいが、今朝になって急に悪化した。意識を失ったそうだ」

「は」

 

 理解の及ばない内容にユリウスは息が詰まり、まともな反応も出来ずに吐息するのがやっとだった。

 王選候補者の一人で、他でもないラインハルトの仕える主君、そして龍に選ばれた少女──フェルトが倒れた。自分の話でもないのに、頭が大きく揺さぶられる感覚をユリウスは味わう。

「ちょっと待ってくれ。それは……」

「ああ。一、二年前に王族の方々が突如として病魔に襲われ、お倒れになったのと状況が似ている。ここまで来たらまったく同じと言ってもいいだろう」

「それじゃあ君は……過去の脅威が、惨事が再来したと、そう言いたいのか」

「いいや、それは少し違うよユリウス。脅威でも惨事でもない。これは、『試練』なんだ」

「試練、だと? ……すまないが、私には君が何を言おうとしているのか分からない」

 

 突拍子の無い言葉を放ったラインハルト。聞き慣れない、いやそれ以上に、彼の口から出てくるとは思いもよらなかった単語に、ユリウスは戸惑いを覚えた。

 試練。

 まったく聞き覚えのない単語でもない。約一年前にも、魔女教の大罪司教『怠惰』という狂人が口走っていた言葉の中に、それがあった。ハーフエルフを器に魔女を降ろすという荒唐無稽な内容だったため真に受ける事は無かったが、他でもない『剣聖』が言及したのだ。そうなると、ユリウスとしては嫌でもそれらの関連性を考えてしまうし、そこにフェルト──王族の末裔と疑われる存在まで加わるのだとしたら、なおさら気にせざるを得ない。

 

 

「ラインハルト。君は一体、何をどこまで知っている?」

 

 どことなくいつもと違う雰囲気を纏った友の横顔を見、そう問い掛けた。

 ラインハルトにとってユリウスは数ヶ月前に知ったばかりで、騎士の仲間である事こそ認めてくれたが、『暴食』の被害によって記憶が消えたことに変わりはない。知り合って間もない、素性不明の男に果たして重要な私情を打ち明けてくれるのだろうか。

 細めた紫の目に不安が過ったのも束の間、思いがけない返事が返ってくる。

 

「僕は今から、この世界の真実を話す。君とも無関係じゃないことだよ、ユリウス・ユークリウス」

 

 思わず耳を疑った。

 フェルトに関わる事情が、どうしたら世界そのものの真実とやらに繋がるのか。何故そのようなことを知っているのか、という疑問より、大きく飛躍した話題にユリウスは驚きを隠せなかった。

 頭が目まぐるしく回転する。試練、フェルト、世界、真実。無関係でないとの決定打が、彼を黙らせる。

 

「『試練』というのは簡単に、器があるかどうかを見極める段階のことをいう。ここでいう器は受け皿じゃなくて器量の意味だよ。つまり彼らは、フェルト様が相応しいか試してるんだ」

「何に対してだ?」

「理想と現実の二つを結ぶ、架け橋だよ。この世界は大瀑布を四隅に置いて孤立している。でもそれは、一部間違った情報だ。確かに大瀑布の向こう側には何も無い。龍の背に乗って飛んでいこうが、なんなら世界丸ごとひっくり返したとしても、これ以上新しいものは出てこないさ。ただ、それが全てってわけでもない」

 

 ラインハルトは、日常の話でもしているかのように淡々と語る。世界の真実、真理というものを。友への相談や告白というよりは、独り言に近い語調で。

 途中、ふと王都とは僅かに違う方向を見据えた彼の視線を追って首を回す。遠く、霞んで見える彼方の上空を、何か黒い雷のようなものが迸ってるのが見えた。いや、遥かなる天へと勢いよく昇る、それは黒龍が如く。やがて雲を貫き、四方へと爆ぜて洪水と見紛うほどの夥しい影が広がっている。

 ユリウスの記憶が間違っていなければ、あの先にはアウグリア砂丘と呼ばれる魔境があるはずだ。

 

「それは、つまり」

「あるんだよ。裏側の世界が」ラインハルトの視線は、黒い影にくっついて離れない。「僕らの生きてるこことは違う、理想の叶う場所がね」

 

 

 ‡

 

 

「平たく言ってしまえば、そこは影に呑まれなかった半分の世界です」

 

 振り返ったパンドラが前方を指差しながら言った。

 

「影? それって、『嫉妬の魔女』の影か?」

「ええ、その通りですよ、ナツキ・スバル司教。四百年ほど前、彼女によって実に世界の半分が光を失いました。そして三英傑が立ち上がり、彼女を封印して平穏を取り戻した。だれもが知っている有名な話ですが、恐らく誰に訊いてもその時に起こったより具体的な状況を、正確に答えられる人は殆どいないでしょう。いま、私たちの立っているこの世界は言うなれば日陰です」

 

 暗い場所だ。光の通り道が無く、外側から完全に遮蔽された空間を一行は歩いていた。スバルの目に二歩先を進むパンドラの表情は見えないが、ここに来てからというもの比較的饒舌になっている気がする。ちらと背後を振り向けば、暗闇と同化した黒一色の衣装の合間、神秘的に輝く銀の艶がエミリアの位置を教えてくれる。

 握った手は、驚くほど冷たい。

 

「影に覆い隠されてるってことか。で、そこにお前ら魔女教はどう関わってくるんだ?」

「今の話は半分、比喩として受け取ってください。影に呑まれたといってもその中が真っ暗にはなりません。そうですね……見えない檻に閉じ込められた、と表す方が分かりやすいでしょうか。しかし正しい歴史から弾かれ、人為的な舞台に放り出された人々は当然、外界の存在など知り得ません。そう出来ていますから。ですが、鳥籠の中の鳥も、時には自ら扉を開けて飛び立つ事が可能ですよね。私たちの場合、そこに一役買うのがまさに、魔女因子に他ならないのです」両腕を広げ、歩きながら熱弁を振るうパンドラ。「魔女因子は日陰の理から逸脱し、外の世界とを繋げるための鍵。改革に不可欠な必須要素です」

 

 歩みを進めるにつれ空間は不気味さを増していく。狭隘な一本道を塗り潰した深黒、その奥から微かな臭いが漂う。スバルの中の本能的な何かを扇ぎ、引き寄せる安らぎの臭い。詳しいことは何も知らずにパンドラの後を付いてきただけだったが、今となってはある種の使命感さえ感じていた。

 行かなければならない。ナツキ・スバルとして、一度は賢人を成そうとした身として、七つもの原罪を宿した者として。

 そこに待ち受ける運命がどうであろうと、自分が自分である限り、そこを目指して歩まねば。いっそ焦燥感にも似た衝動が、スバルの足を動かす。

 

 この幽々たる空間に来てからどれくらいの時間が経っただろうか。

 途中に一度だけ分かれ道があったきり、迷いようもない道をひたすらに進んでいた。方向感覚以外の体感はすでに混乱を示しており、握った手と動かす足だけに集中して、曖昧な意識をかろうじて保つ。時間も距離も分からない。ただ、身体の動くがままに任せる。

 所々を聞き逃していたパンドラの語りが、スバルの意識を思い起こさせるように流れ込んでくる。臭いは最初に比べて一層強く、目的地がかなり近いと認識した。

 

「──以上の理由から、魔女教は方向性をおいて大きく二分されています。定められた運命に抗い、天上の観覧者を欺いて世界の解放を望む者たち。もう一つは、無知の安寧と未知の恐怖に溺れ、虚飾に塗れた平穏な日々の継続を望む者たち。私はいわば新世界へ臨む解放派ですが、多くの魔女教徒の方々からは反対されてしまいました。創設当初に比べれば驚くべき変わり様です。なので、私は少数でも闘うことを決めました。そこで見つけ出したのが、ナツキ・スバル司教、あなたなのです。私は、あなたに賢人で在っていただきたい」

 

 果てしないと思われた暗闇の中から一縷の曙光を掴み取った冒険家が如く、パンドラは希望に目を輝かせる。純粋な、本当に純粋で汚れのない、透徹した瞳を炯々と見開いてスバルに微笑みかける。

 返す無言。それを受け取り、彼女の視線が前を向く。

 

「自分が特別な存在であることを、あなたはもっと誇ってもいいですよ。賢者でなくして世界の真実にたどり着けるのは王の血族くらいです。ご存知ないですか? つい先日、ルグニカ王家の皆様方が突然病没なさりました。実に残念ですが、試練に打ち勝つことが出来なかったのでしょう。真理へ至るには一時的な死の克服──あまねく魂の往き着く場所、オド・ラグナへの接触が不可欠ですから」話題の転換のため、一泊を置く。「さて。もうすぐ出てくる『魔女の祠』ですが、伝承通り件の魔女が封印されています。四百年、その年月を経てもなお朽ちず、障気を道標に賢者が辿り着くのを待っているのですよ」

「道標……なり損ねた俺でもいいのか」

「最終的に、彼女一人を愛していただけるのであれば」

 

 愛。

 あい。

 辟易するほど、耳どころか脳にタコが出来るほど聞き古した言葉だ。とある狂人が暇さえあれば連呼していた言葉だ。けれど、それを本気で飽きたと思った事は一度たりともない。

 愛は簡単に言い表せないものだ。行動で示しがたいものだ。ありとあらゆる方向から接近し、考えうる全ての術を講じて初めて為せるものだ。魔女はそれを、たった一人の賢者に愛を求めるらしい。

 

 一人だけに向けた絶対的な愛。それが賢明たる者としての在り方で、嫉妬の化身への唯一といえる到達手段。知らなかった、訳ではない。思い出した。パンドラの返事を聞いた瞬間、閃くようにして感覚が甦ったのだ。

 だが、深く考え込む前に思考は途切れる。

 

「着きましたよ」

 

 言われる前から気付いてはいた。むしろ、これほどまでに巨大で、視覚的にも嗅覚的にも目立つものを見逃すはずもない。

 ようやく立ち止まったパンドラの見つめる先、静寂と厳威を湛えて佇むのは両開きの扉。よく見ればいくつかの宝玉が嵌められており、それがただの装飾でないことはすぐに理解した。見覚えも無いくせに、スバルはその扉が自分にこそ相応しい代物だと傲然と思い至った。理由も経緯も知った事ではない。ただ、そう思った。

 

 息が荒くなる。瞬きの回数が小刻みに増える。唇をペロリと舐め、軽く噛んで唾を飲み込む。鼓動がうるさいのは息遣い一つ聞こえない静謐さゆえか、はたまた心臓が張り裂ける前兆だとでもいうのか。頭が真っ白になって今なにをしているのか分からなくなる。

 どうだっていい。

 逸る気持ちと裏腹に、近寄る足取りは慎重を極める。ゆっくりと、恐る恐る片足ずつ踏み出す。

 

「扉に、手を」

「……あぁ」

 

 背後の声に促されるまでもなく、スバルの右手は扉へと伸びていた。

 触れた指先から掌に、そして腕と首を伝って果てには頭へ何かが流れる。痺れ、悪寒、あるいは爽快感。そのどれでもなく、どれでもあるような味わった事のない感覚が身体中を駆け巡っている。

 それらが意味するところは境界の消失。ナツキ・スバルという存在が一時ばかり俗世を逸し、輪郭を失った領域に導かれる。現実と理想の狭間、在りうべからざる世界へ。

 似たような経験をどこかでした気がして、とある墓所での追憶が思い浮かんだ。次いで、スイッチを切り替えたかのような暗転。いつの間にか発光していた七つの宝玉の輝きが、瞼の裏に残留する。

 

『「真なる愛を、世界から影を取り除く愛を、その身とその心に為すために。最期の候補である貴方に、最後の試練を。——では、いってらっしゃい」

「おかえりなさい、あなた」』

 

 意識が溶け込む直前と直後に耳朶を打った声が重なって、スバルはつと顔を上げた。

 上げたはいいが、何も見えない。手を振っても足を動かしても空を切るばかり。目を思い切り瞑ったような、闇を闇と認識できない感覚。不思議と恐怖はない不可視の空間に、柔らかい声音だけが響く。

 

「ぁ、ごめんなさい。ちょっと魔が差して、言ってみたかっただけです……怒らないで、ください」

 

 不安の宿った言葉に耳を傾けると、得体の知れない既知感が胸中を過った。

 知っている。スバルはこの声を、声の主を知っている。けれど思い出せないのだ。喉につっかえたのでもなく、そもそも自身の中にあったのかも疑わしい、ぼやけて曖昧な記憶。

 口という概念を忘れて考えに耽っているスバルに、再三その声が掛かる。

 

「ここがどこだか、分かりますか? とても限定的な空間です。一度来たらそれ以降、二度と機会は訪れません。だからこうしてお話が出来るのも、今だけ」

「ぁ、あ──……、君、は」

「無理しなくていいですよ。急ぐ必要も、慌てる必要もないですから」

 

 発声方法は理解した。しかし、未だに相手の名前が出てこない。むやみに手を伸ばし、前後左右に振るいながら、聴覚だけを頼りに声の主を探す。

 反応は、思ったよりもずっと早かった。

 文字通り闇の中を彷徨っていた指がふと温もりに触れた。はっとしてもう片方の手も伸ばすと、共に包まれた。手だ。相手もスバルと同様に、手を伸ばして握ってくれている。

 

「温かいですね。ずっと、こうしていたいぐらい」その声調に込められた空しさが、スバルの心を強く刺激する。「でも、駄目。あなたには、この温もりを忘れてもらわなきゃいけない」

「どう、して……?」

「知らない、なんて言わせませんよ。ただ一つの愛。果たすべきはそれのみ」

「ぁ、……」

 

 そうだ。そうだった。スバルは愛を求められて、ここまで来たのだ。一途な愛を、盲目的な愛を知るために。

 スバルの意思に僅かな油断が生じた。見えない影はここぞとばかりに、追撃を放つ。

 

「大切なもの一つだけを抱え、それ以外の一切合財は切り捨てる。賢明な生き方です」

「やめろ。俺は、そんなの望まない。無理だって分かったんだ。一人しか見れなくなると、視界が途端に狭くなる。世界に二人しかいなくて、他は与太なものに思えて、……そのたった一人を失いでもしたら、全部が覆る。何も見えなくなるんだ。直接、この身をもって経験した。二度と立ち直れなくなるかもしれない衝撃が、胸を抉るんだよ」

「身の丈に合った手段を選んでこそ、本当の幸せ、つまり愛を掴み取れます。欲張って得られるものはありません。あれもこれもと抱えるだけ抱えた後は結局、支えきれずに崩れてしまうでしょう」

「やめ、ろって……」

「一人の手で掴める希望は決まっています。一人の背で負える絶望は決まっています。限界がすぐそこにあると知りながら、どうしてわざわざ破滅の道を選ぶのですか? 一人の愛は一人の為に。理想の道は一筋だけ」

 

 賢人で在ることを不定するスバルに、影は容赦なく現実を叩きつける。現実という名の脅迫を。選好という建前の強要を。

 救えなかった記憶。取りこぼした過去。数え切れない絶望と忘れられない後悔を経てスバルはいまも立っている。繰り返し挑んで惨めたらしく泣きわめき、決して少なくない失敗を残しながら生きてきた。正論の刃は、スバルの心にはいささか鋭く効きすぎる。

 刺され、破れ、貫かれ、零れ、崩れてぐちゃぐちゃになる。けれど、無くなりはしない。

 一度全てを失ったから。愛で継ぎ接ぎの心は、ボロボロでももう放さない。穴が空いたら塞いで、壊れても押さえて、飛び散れば拾い集める。それが愚者なりの生き方だ。

 

「破滅じゃ、ねぇよ。俺一人の手に収まりきらなかったら、他の手も借りる。背負えなくなるほど重かったら、後ろを支えてもらう。皆で皆を守ることは身の丈に合ってるだろ。そうして全部を持っていく。絶対にだ。今度こそ、何一つ置いてはいかねぇ。だから君も、いつか、きっと」

「いつか、きっと? 根拠も何もない約束を結んで、残酷な現実に投げ捨てられて、また駄目だったと破りますか?」

「舐めんな。俺くらい現実とタイマンしてる奴なんてそうそういないぜ。そいつの口からゲロ吐かせるまで糞みたいに付きまとって、次の日には友達になってやるよ」

 

 訳もわからない闇の中で、スバルは引き攣った笑いを見せながら親指を立ててみせた。

 失ってしまった愛、愚かなる覚悟を固める礎としてとある少女を想って。

 

「——本当に、困った人です」

 

 ふ、と呆れの混じった笑みと吐息。

 

「いつもそうです。一番危なっかしいのは自分なのに、他人にばかり気を遣って無茶をする。優しいくせに無駄に頑固で意地っ張りで言うことを聞かなくて、賢くなんか、全然、ない」

「え?」

「無理して足掻いて、抗って、誰もが諦めるようなことを最後まで諦めない。そんなスバルくんが、好きです」

 

 影が晴れる。闇だけを取り払う突風が繋いだ手を中心に吹き抜け、満ち溢れる光にスバルは目を細めた。

 露になる素肌。腕から肩、下に胸、腰、脚と続いて上に顔貌が表れる。清冽な瞳を縁取る睫毛に雫が溜まり、微笑みに緩んだ口元は柔らかく弧を描く。肢体を包むのは玲瓏な光の衣。吹き付ける風に青い髪と共にふわりと舞い、落ちた逆光で涙を煌めかせていた。

 

 名前は知らない、けれども大切な少女がそこにいた。

 

「……お前、は」

「よく、試練に打ち勝ってくれました」

「打ち勝つって……でも、これは賢人になるための試練で、これじゃあ俺は失敗したんじゃ……」

 

『魔女の祠』とやらへ向かい、怪しげな扉に触れて始まった試練だ。今さら誰が出てきても不思議ではないはずだが、先ほどの会話の相手が彼女だったと言われると、どこか腑に落ちないところがあるのも否めなかった。

 試練の内容をとっても疑問は尽きない。賢人になり損ねたスバルを改めて完成させ、世界の解放を是としたのがパンドラだ。スバルとしては失った大切な人を救えるのならばと協力態勢を取っていたが、それでも愚者であることに縋って、望まれた愛を捨てた。これでは当初の目的と違うのではないか。

 

「ここの試験官は、——です。達成条件は、自分の在り方を見出だすこと。賢人も愚者も関係ありません」

「答えを出せれば、どっちでも良かったのか。だとしたら、パンドラは」

「スバルくんが理想を追いかけ、賢人へ堕ちることを狙っていたのでしょうね」

 

 現実の厳しさをぶつけ、理想へ誘った。試験官ではないので直接干渉する事が出来ず、最終的な決断を誘導しようとしたのだ。

 恐らくはそれこそが、唯一にして決定的な錯誤。

 

「スバルくんは愚者を望んだ。それは立派な答えであり、彼女への矛にもなりえる」

「パンドラへの、矛」

 

 これ以上賢人の在り方を受け入れられないスバルにとって、パンドラは味方か。協力する価値のある、仲間だろうか。

 反旗を翻して勝てる相手とは思えない。今さら真意を悟ったところでもう遅い気もする。必要とあらば、彼女はもう一度スバルを絶望の底に沈める覚悟があるだろう。

 

「俺は、愚かなままでいたい。お前を救って、サテラもきっと救って、取り逃がした希望を出来るだけ掴んでみせる。失ったものは戻ってこないけど……それでも、いい。踏み違えた世界でも、今ある幸せを噛み締めて生きていくよ」

「はい」

「パンドラは多分、エミリアの体にサテラを降ろすつもりだろうが、そうはさせたくない。頼ってばかりで身勝手だけど、どうすればいいと思う? 神様仏様に祈っとくか?」

「スバルくんは、スバルくんのままでいてください。それで十分ですから」彼女は目を閉じ、溶けそうな声で囁く。「——お願いをするために祈るのは傲慢だと思うんです。祈るのは、許しを得るとき」

「——。俺は傲慢なんだ。欲張りなんだ。だから、叶うならいくらでも祈るよ」

「……もう」

 

 軽口を交ぜた言葉に彼女が唇を曲げた。それを見てはにかみ、スバルは握った手に力を込める。世界の輪郭が、ぼやけてきたのだ。

 試練は終わった。行き先を見失っていたスバルの、再開の切っ掛けに。そして虚を飾った魔女への、反撃の狼煙に。

 視界が歪む。足場が不安定になる。嗅覚も聴覚も段々と消えてゆき、けれども目の前の笑顔だけはくっきり残っていた。忘れない。忘れるものか。スバルは形のない手を強く握って、薄れていく印象を魂にしかと刻みつける。

 やがて色すらも消え、しかし意志のみが陽炎のようにたゆたい、何もかもが崩れる音と降り注ぐ光に満たされる。

 

 

 ‡

 

 

「おかえりなさいませ。賢者、ナツキ・スバル」

「……こんなにドキドキしないおかえりは始めてだな」

 

 一瞬で空気の質と圧迫感が変わり、スバルは味気ない歓迎の声を余所に呼吸を整える。どれだけの時間が経過したのかは判断基準がないため不明だが、恐らくは『聖域』のそれと同一視して良いだろう。長くも短くもない間だったはずだ。

 妖しげな光を灯した扉の宝玉に照らされ、こちらを覗き込むパンドラの顔に影が落ちる。吊り上った口端が余計に歪に見えた。

 

「誠にご苦労様でした。見たところ試練は突破されたようですね。因子のほうも、無事、七つとも扉に刻印されています」

 

 言われ、見上げるスバルの頭上。七つの燐光が仰々しく輝く一方、スバルは道中胸の奥で蠢いていた何かがすっぽりと抜け落ちたような、妙な空虚感を覚えていた。最初に『怠惰』を倒した際の異質な感じより、七つが同時に消えた喪失感のほうがずっと強く蟠る。なんだかんだ言って、割と馴染んでいたのかもしれない。

 そして因子がスバルにない今、『死に戻り』の権能ももう消えたはずだ。真にやり直しなど許されない状況、一度過てばそれで終わりの一番勝負というわけだ。安堵とも不安ともつかない鳥肌が立つ。

 そうして伝播する寒気を、どこか懐かしい温もりが打ち消した。扉に触れた右手、エミリアと握り合った左手。両方冷たかったのに、今は片方が温かく感じられた。

 

「エミリア」

「…………」

 

 スバルの前で一度は死んだエミリアは、何の反応も見せてくれない。相変わらず命令を待つロボットのようにじっと佇むだけ。形だけの動く死体に他ならない。エミリアの場合、『嫉妬の魔女』の器に過ぎないのだろう。

 この熱を、僅かに残った手の余熱を努々忘れないようにしよう。これ以上心は揺るがない。

 

 長いこと手入れを怠い無造作に伸びた髪が靡く。無意識に息を呑む手前、扉が見た目にそぐわない無音と微風を伴って動き始めた。数百年もの間陰気な空間に放置されていたとは思えない。だが、これも真理とやらの一端なのだろう。

 その腹に無際限の深淵を孕んだ扉は、ついに雑音一つ立てることなく開かれた。見ている方が吸い込まれそうな深い闇の大口に嫌でも目がいく。

 そして、解き放たれる。

 

 スバルは最初、それが波紋に見えた。黒染めの鏡面に広がる波紋といえばファンタジーな心が擽られるものがあるが、徐々にバネのような弾力を帯びて波打ち変形しながら、得体のしれない巨大な影が這い出てきたともなればただ眺めている余裕もない。四方に柱状の影が伸びて壁は壊れ、気付くのが遅すぎた波擣に為すべもなく押し流された。

 

「くっ……えみ、りぁ」

 

 繋いだ手が解かれたのを傍目にそれは一気に膨れ上がる。一片の慈悲もかけずに空間そのものを破壊し渦巻く影。地響きを引き連れて天井に亀裂を入れたかと思うと、すぐに抉じ開けるようにして侵食し始めた。考えるまでもない耳障りな音が地下を埋め尽くす。倒壊というのもおこがましい暴力的な災いを見せつけられながら、スバルは半ば気を失って瞑目する。

 

 吐き気を催す浮遊感に目を開けた時、瞳孔に映ったのは一面の橙と透き通る青だ。前者が砂丘で後者が空だと気付くのに二秒かかる。地下から押し出されたのみならず、勢い剰って上空に投げ飛ばされたのだ。もう着地まで一秒の猶予もない。上下反転した視界は、影が飛び出すと同時に真っ暗になった。

 打ち付けられる衝撃とざらついた感触。口内に入った微粒を唾と一緒に吐き出し、ようやく自由の利くようになった体を動かしてみる。

 砂が緩衝材の役割を果たしてくれなかったら、ただの人間に成り下がったスバルは死んでいただろう。しかし、生きた心地のしないスバルに追い撃ちをかけるように、影の暴走は留まることを知らない。一直線に中天に浮かぶ太陽を貫き、挙句には蒼穹にまで喰らいつく。蓋い尽くされた頭上に現るのは、夜空だ。

 

 かつての『大災害』を経験していないスバルですら、彼の悪夢に限りなく近い惨状が再び繰り広げられているのだと理解した。それこそまさに、この世界が丸ごと呑み込まれていくようだ。『聖域』で垣間見た憑依とは規模が違う。

 そこまで考えたところで、ふと思い至った。この災いの中心にはエミリア──を器にして降臨した『嫉妬の魔女』──がいる。

 

「ご心配なく。封印を解いたことで溜まっていた影と瘴気が溢れ出ただけです。嵐はじきに、止むでしょう」平然と、白金に艶めく髪が乱れないよう手で押さえながらパンドラが並び立つ。

 スバルは立ち上がり、暗幕の向こうを睨む。「どうやって……分かるんだ?」

「そもそも『嫉妬の魔女』の再臨を可能としたのは七つの魔女因子です。怠惰、憤怒、暴食、色欲、強欲、傲慢、嫉妬……全ての欲望をその身に宿したならば、収束する結果は一つ」

「どう、なるんだよ」

「──人と、成る」

 

 二人の見つめる前方に、影を纏った少女が立っている。夜の帳を落とした空の下、吹き荒れる黒砂と押し寄せる影の波を浴びて色づいた瞳を、二人へ向けた。冷めきったその眼差しに、期待した優しさはない。

 

「『賢者』、ナツキ・スバル。人に成り下がった『嫉妬の魔女』を殺して、新たな世界を切り拓く先駆者となってください」

「パンドラ」

「はい」呼ぶ声に、彼女の視線が僅かな間少女から離れた。

 刹那、少女の口許が不適な笑みに歪む。「俺は、お前の言うことはもう聞けない」

 

 おびただしい程の障気が舞い上がり、スバルとパンドラを一息に包んだ。空気中のマナが枯れ、穢れていくのが皮膚で感じとれる濃密さ。すぐにでも正気を手放してしまいそうな狂乱が襲い来る。

 予測していない展開にパンドラは首を傾げ、脱出を試みる。しかし、物理を絶つ漆黒の壁は彼女の手を拒んだ。治まるはずの影の奔流が治まらない。

 さすがにこれはおかしい。何か自分の知らないところで別の意思が働いているとパンドラは悟った。

 

「お前さ、俺が気付いてないと思ったか? エミリアやあの子を餌に出しときゃ俺が馬鹿正直に何でも従ってくれるだろうって? まあ、否定はしねぇよ。最初は本気で騙されてたんだからな」

「……何の、真似ですか? 何を仰っているので? 魔女因子を全て失ったあなたは今やただの人間。私はともかく、あなたは死にますよ」

「見て分かんねぇのか。騙してた奴に仕返しするのを裏切りって言っていいかは知らんが、まあ似たようなものだ。──カーミラ、お前だろ。エキドナにかわれ。俺に『傲慢』を寄越せってな」掛ける声は前方、エミリアの姿をしていた少女だ。

「ひっ、わかっ、た、から……え、エキドナちゃんなら、ちょっと、待って……待ってて、ね」

 

 薄赤色の髪を伸ばした少女が、そこにいた。エミリアの姿は跡形もない。そんな光景を目の当たりにして、けれどスバルは予想通りという顔をしていた。

 

「大正解だよ、『賢者』ナツキ・スバル。いいさ、君に、『傲慢』の座を授けよう。僕の好意と親しみを込めてね」

「変なもん混ぜてんじゃねぇよ。言っとくが、お前がカーミラの能力でエミリアに変身してたことを、俺はまだ許してねぇからな? そもそもどうやって復活したのかも聞いてねぇし」鋭い目付きを、今度はパンドラに向けて放つ。「お前もだよパンドラ。よくも、こんなくだらねぇことをしてくれたもんだ」

「な……、いつから気付いて──いつから、手を組んでいたのですか!?」

「似たようなことが前にもあったんだよ。それと、これだ」

 

 首が弾けて死んだエミリアが、目を覚ましたスバルの目の前に現れた時に全身を揺るがした動揺は忘れ難い。まさか生きていたのかという歓喜と、後にそれが偽物だと気付いた落胆で取り乱さなかっただけ上等だと思う。もっともその偽物という認識も、当初はプリステラにおいて行く手を阻んだ先代『剣聖』と同じ魔女教の傀儡だとばかり思っていた。

 しかし、共に行動をする度に言い表せない違和感は募っていき、過去の記憶と、試練での出来事が重なってようやく思い至ったのだ。『色欲の魔女』カーミラの権能、『無貌の花嫁』に。

 なにより決定打として、試練を終えて目覚めた時、生きていないはずのエミリアから温もりを受け取った。正確に言うならば、熱を放つ魔鉱石が装着された道具──ミーティアだ。

 

「一応謝意を贈っておくよパンドラ。僕の手にかかれば、君を封じる術式を組む事も不可能じゃない。こうして全ての魔女因子が僕の手に入ることを織り込めば、ね」

「悪いな。最後の最後で裏切るのは悪役の定石だが、なんなら魔女教は今日から俺が引き継いでやるよ。安心しろ」

「そのような、わけには……私には、世界を解放するという使命が……、」

「散々人を騙し殺しておいてまだ言うか。バチが当たったんだと思っとけよ、お前自身が積み上げてきた『虚飾』の代償としてな」

 

 魔女を倒すことは、今のスバルには出来ない。だが、それは四百年前においても同じだった。

『剣聖』、『神龍』、『賢者』。英傑とまで称される逸材が束になっても、彼の災厄を止めることは叶わなかった。だからこそ彼らは、討伐ではなく封印を選んだのだ。

 詳細までは知る由もないためスバルの想像でしかないが、かつての彼らは、未来の英雄が意志を受け継いで解決してくれるのを信じていたのではないだろうか。倒すなり何なりして、彼女の呪縛を解くことを後世に委託するために。

 

「いつか、何もかも全部うまくいって、めでたしめでたしのハッピーエンドになったら……その時は、お前を終わらせる方法が見つかってるといいな。俺は四百年の孤独がどれだけ辛いかは知ってるから、せめてそれまでには出してやるよ。出して、殺す」

「――――」

「エキドナも正直いうと気に食わねぇが、お前をどうにかするのが先決だと思った。その力は厄介すぎる。それこそ出来るだけ油断させて、大罪の魔女を引っ張り出さねぇと、まともとチャンスがやってこねぇくらいだ。一番手こずったよマジで」

 

 嘘一つ無い心情を吐露し、エキドナに渡されたミーティアをパンドラ目掛けて掲げる。スバルの記憶の中、俗に『賢者』と呼ばれるキャラクターが持つ杖に奇しくも酷似したデザインだ。魔女らしいといえば確かに魔女らしい趣向が凝らされたそれを、悪趣味だと舌打ちする余裕がスバルにはある。もちろん、最悪の魔女と手を組んだことへの不安や後悔も、無い訳ではない。

 しかし、目の前の虚飾に一矢報いることに関しては、一片の迷いも感じなかった。

 

「俺は魔女が嫌いだ。大嫌いだ。お前も、俺のことを嫌いになってくれたら嬉しい」

「ナツキ、スバル……あなたは、」

 

 スバルの手でも発動するよう細工されたミーティアは、その力を残すことなく叩きつける。

 パンドラが最後に目にしたのは七つに瞬く夜空の星々。スバルのもとへ、その内の一つが落ちてくる。

 

「あなたはとても、身勝手だ」

 

 

 ‡

 

 

 頭がどうにかなってしまいそうだった。

 世界が自分を置き去りにして通り過ぎていく。自分の知らないところで知らない誰かが時代を動かしている。もはやどこに立っているのか、どちらへ向かえばいいのか、何もかもが分からず薄れて沈む。

 名前は忘れられた。唯一の友は去った。築き直した関係は、訳の分からない真理とやらにいとも容易くぶち壊された。

 

「ユリウス。僕たちはもしかしたら、歴史的な光景を見ることになるかもしれない」

 

 王都へ向かい地竜を走らせていた際、東方の最果てに轟いた邪悪なる異変。本来の増援要請は霧散、王都への帰還と同時に二人を含んだ新たな部隊が組まれ、報告にあったアウグリア砂丘を目指して進むことおよそ三週間。すでに影の氾濫は消えており、一刻も早く状況を把握することが求められていた。

 住民の避難が完了した最寄りの町、ミルーラを素通りして数日が経った。進めど進めど距離が縮まらないプレアデス監視塔を目印に行進は続いている。しかし収穫の得られない長期任務と元来の過酷な環境は騎士団の志を一つ一つ着実に折り、その大半を振るい落とした。

 結果残ったのは魔獣を自力で退けられるラインハルトとユリウスのみ。そんな彼らも遠からず底を突くだろう食糧難に見舞われ、あと数日経っても進捗が見られない場合は撤退を余儀なくされる状況にまで陥った。

 

「歴史的光景か。ぜひ、そうであって欲しいものだ。これ以上何も出来ないよりは、まだマシかもしれないな」

「ちょっとこれは困ったね……数年前に来た時より、妨害が固くなっている気がするんだ。どうにかして近付きたいところだけど」

 

 代わり映えの乏しい日々。立て続けに起こる異常事態が国民の不安を煽り、血眼になって成果を獲んとする騎士団は上下からのプレッシャーに押し潰される直前だ。何としても手掛かりを持ち帰りたい一心で乾いた砂の上を進む。

 昨日とは何かが違う。そう気付いたのは、実に任務開始から二十五日目。軽い昼食を済ませ調査を再開してから数十分後のことだった。

 

「気のせいだったら悪いけど、あの塔、大きくなってないかい?」

 

 言われて見上げると、砂が舞う幕の向こう、プレアデス監視塔の偉容が確かに少しだけ大きくなったように感じられた。ただ、数週間にも亘って同じ景色を見続けているのだ。感覚が狂ってきたとしてもおかしくない頃。安易に希望を抱くのは正直躊躇われる。

 

「……この期に及んで進展が見られたとなると、誘われている気がしないでもないがね。確証はない。慎重に行こう」

「そうだね」

 

 ユリウスの言葉に頷き、先を注視するラインハルト。二人はいつにもまして警戒しながら任務を続行する。

 そして、ふいに視界が晴れた。

 

「ようこそ、お待ちしておりました。叡知を求め困難を越えたあなた方に、是非ともご褒美を差し上げましょう」

 

 迎えたのは、黒色の髪を後ろに結んだ妙齢の美女。砂嵐に隠れて見えなかったとしても不自然なほど唐突に過ぎる登場だ。薄い布を何重にも重ね着した独特な衣装をひらめかせ、ユリウスたちに歓迎の姿勢を見せる。

 あれだけ慎重に警戒していたのが馬鹿馬鹿しくなるくらい堂々とした出現、場違いな印象につい返事を戸惑う。だが、先ほどの発言を聞き逃す間抜けではない。

 まして、彼女が鮮明に目視が可能な巨塔を背にしているとなれば疑わないわけにもいかないだろう。

 

「あなたは一体……いや、もしかして」

「ええ、お察しの通りでございます。ここは大図書館『プレイアデス』。世界の何たるかを知り尽くし、過去と未来、ありとあらゆる情勢を網羅した大賢人によって再構築された象牙の塔――あだっ」

「シャウラお前、勝手に謳い文句変えるなって何回言えば分かるんだ! その口調もどっから来たんだよ。完全にキャラ崩壊してんじゃねぇか!」

「ぶーッス。お師様が、古来より受け継がれてきた伝説の武器が眠ってる、神秘的な場所の案内役っぽく振る舞えって、散々言ってたじゃないッスか~。言われた通りにやってちゃんとアドリブまで加えたのになんで怒るッスか! 理不尽ッス! ブラック企業ッス! 労働環境の改善を申し出るッスよ~! あ、でも怒るお師様もあーしの好みどストライクなんで、もっと怒っても良かったりするッス!」

「アホ、俺はラストダンジョンの直前に訪れたら全部分かったふうの意味深な雰囲気残して、待ち受けていたのはまさかあの伝説の偉人!? ってなるように俺に会わせろっつったんだろうが。無駄なアドリブ入れて、しかも大賢人って思いっきりネタバレぶちこんでんじゃねぇよ!」

 

 彼女の背後から現れたまた別の人物が介入し、状況は更に複雑な様相を呈した。双方とも立場の差はあれど、端からだと兄妹の喧嘩を彷彿とさせるやり取りだ。しかしながら、ローブを被ったその男の横顔が垣間見えた瞬間、ユリウスは遠目に目撃した影の調査という本来の目的を忘れた。

 ああして雰囲気お構いなしに軽口を叩く黒髪の少年には、見覚えがあったためだ。

 

「ちょっと、待て……待って、くれ」驚愕を隠せず、頭が混乱している。「そこの、……シャウラ女史、で良いかな? 私はユリウス・ユークリウス。君の後ろにいる男が誰なのか、教えてもらえないだろうか」

「んー? 女史ってきょうび聞かねーッスけど、別にどうでも良いッスよ~。あーし、お師様が愛してくれさえすれば他は何にも要らないんで。でもそうッスね~、あーしのお師様が誰かって訊かれると、これは真面目に答えねばならないッス。マジ責任重大ッス!」

「僕からも頼もう。僕の名前はラインハルト・ヴァン・アストレアという。ユリウスの親友だ。そして、見間違いでなければ、そっちの彼も友だと思うのだけれどどうかな。それとも、一方的な僕の勘違いだったかな?」男の正体に遅れて気付いたラインハルトも、名乗り出て反応を窺った。

「うげえッス。あのレイドの子孫ッスか。やけに雰囲気クリソツだと思ったら……いや、こっちは割と礼儀正しいし、何よりお師様の前なんでまあ良しとするッスよ。もっとヤバイ気がするのは気のせいとして……でも出来れば近寄らないで欲しいッスね」

 

 アストレアという家名を聞いた途端に顔を青くして数歩下がったシャウラは、ぶつぶつと呟きながら物理的にも心理的にも距離を置く。

 

「とと、話題がズレたッス。あーしのお師様の偉大なるご尊名、とくと胸に刻むがいいッスよ~! この方こそ森羅万象を見極め、真理の扉を司る大賢人──」

 

 すると彼女の語りを手で制し、渦中の男が三者の間に進み出る。片手に本を、全身に黒い装束を纏った男はフードを取りながら吐息する。

 

「お前らと話すことはねぇよ。今はちょっと図書館漁るのに忙しいんでな。そこで、だ。悪いが今日はお家戻って、王都の掲示板でもなんでもいいから見えやすいとこにこれ貼っとけ。新生魔女教爆誕、志願者募集中──」

 

 持っていた黒い表紙の本を開き、何かを書き始める男。ペンをしまったかと思うとその頁を無造作に破り、指で弾いた。

 紙は宙をひらひらと漂ったのちにゆっくりとユリウスの足元に落ちる。その紙切れには、ただ一つの文章が荒々しく書きとどめられていた。

 

 「——『フリューゲル参上』、ってな」




魔女因子を七つ宿して人に成る下りは、原作者のASKを元ネタとしています。

Q.魔女因子って一個しか取り込めないのですか?複数可なら「スバル×すべての魔女因子=?」とした場合、?には何が入るのですか?
A.怠惰、憤怒、暴食、色欲、強欲、傲慢、嫉妬の全ての因子を取り込み、ナツキ・スバルはあらゆる欲望を内包した存在――すなわち、『人間』になる!!ヒトヒトの実を人が食べたみたいな結果に落ち着きそう。

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