「ただいまー」
玄関を開けると、肉じゃがのいいにおいがする。
あれから、少し話して、高島さんがうちにお邪魔することになった。少し余裕をもって連絡をしておいたので、いつもよりは玄関が少しきれいだった。
「お帰りなさい、海人。それで、そちら様が高島さん?」
キッチンからひょこっと顔を出したお母さんが言ってくる。お客さんの前なのに全くこの母は。
「初めまして。夜分にすみません。青道高校野球部高島 礼と申します」
「あらさら、ご丁寧にすみません。上がってください」
僕は、先に靴を脱いで高島さんをリビングに案内した。
「あれ、お兄ちゃん。お帰り。あれ? そのきれいな方は?」
「ただいま、美沙。お母さんには言っておいたんだけど、高島さん。これから少し話があるから」
リビングの扉を開けると、くつろいでテレビを見ている妹の美沙がいた。美沙は、部活をしていないが、クラブチームで新体操をやっている。
「あら、すっごくきれいな妹さんね。やっぱり遺伝するのかしら」
高島さんが小さく耳打ちしてきた。そんなことありませんといって、ソファーに腰かけてもらう。美沙には部屋に行ってもらうように言った。
少ししてから、母と帰宅した父が集まって話し合いが始まった。
高島さんはしっかりと僕のことを見ていた。
「海人君の活躍は2年生のころから知っております。1年生のころから抜群のピッチングセンス、マウンド度胸。正直言って、中学生レベルではありません。それに、打者としても、たぐいまれなる実力があって」
高島さんは、口を開くなり、僕のことを大絶賛してきた。スカウトとしてはお決まりなのかもしれないが、むずがゆさを忘れることはない。
今年になってたくさんのスカウトの人と話してきたが、どれも3年のころだけに目を向けたものだった。しかし、高島さんはずっと見ていてくれた。すこしだけ、話を聞いてみようかという気になる。
それからも、高島さんは褒め続けた。両親も満足なのか、顔のにやけを止められない様子だ。
「海人君」
急に真剣な顔で僕のほうを高島さんが向いた。その目には、魂が宿っている気がした。
「私は、あなたの背中に真のエースを見た気がしたの」
僕が真のエース。胸の中で何かが爆発したのが分かった。
「弱い高校じゃ完成しない未完の大器。でも、うちの高校で高いレベルで磨き上げればどこまでもいける。最高のエースになれる。そして、てっぺんを見ることができる」
最高のエースとして、仲間とてっぺんを見れるか。そんなところで野球をしたいな。
「うちの高校で野球をしない?」
「でも」
行きたい。でも、それは僕だけじゃ決められない。お金を払ったりするのは親だ。僕は、両親に目を向けた。
「海人が好きなようにしなさい」
「そうよ。行きたいなら行けばいいじゃない。お母さんたちは応援してる」
優しい目をした両親が言ってくれた。今まで迷惑かけ続けて、また。でも、期待されてるんだ。答えないといけないな。
「高島さん。僕は、青道に行きたいです」
「その言葉を待っていたわ」
高島さんは笑顔になった。そこからは、資料を使ってもろもろの話をした。特待生制度で、いくらかは免除になるらしい。
パンフレットに乗っていた野球部の設備に目を輝かせてしまった。最新の機器、2面あるグラウンド、そして食堂や室内練習場。どれも、最高な環境のような気がした。
「一度、練習を見に来ない?」
それを見ていた高島さんが問いかけてくる。なぜか、恥ずかしかった。子供な自分を見られているようで。でも、その好奇心には勝つことはできなかった。僕は、高速で頭を縦に振った。
「それじゃあ、土曜日に手配しておくわ。予定は大丈夫?」
「はい」
土曜は何もない。こうして、僕は青道に見学に行くことになった。
原作は読んでるのですが、あんまり頭に入ってないです。崩壊というか、わかってないかもしれないので、温かい目で読んでいただきたいです。