RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
「ア、アイズさん!?・・・いや、この人なら・・・上で冒険者がゴライアスに襲われているんです!助けて貰えませんか!」
白髪赤目の兎のような少年、つい最近レベル2になったと聞いたのに、もう18階層まで出てきたのか。と金髪の女剣士 アイズ・ヴァレンシュタインは思う。両脇には2人の冒険者を抱えている、気絶しているようだ。
目立った怪我は見受けられないけど・・・?
それはともかく、ゴライアス。ベルに頼まれた事だし、助けに行こう。
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「・・・進めない?」
「な、なんか透明な壁が!?」
ゴライアスと戦っている冒険者を発見して、救助しようとすると見えない何かにぶつかった。痛い。
「あっ」「あぁっ!?」
冒険者が吹き飛ばされていく、コレはもうダメかもしれない。無防備に喰らったその一撃はレベル3冒険者位なら致命傷を受けただろう。と、思ったけど、件の冒険者は少しふらつきながらも怪我を負っている様には見えず、元気にゴライアスへと突撃していく。
ゴライアスの脚に吸い込まれていく太刀筋を見ると、お世辞にも上手いとはいえない。そもそもサイズが違うし、片手剣ではろくなダメージも通らない。
「せめて、魔法があれば・・・」
そう呟いてから、それは無理な相談だと思った。装備からして、あの冒険者はガチガチの前衛職だ、それに先程高い耐久を見せていたし、少なくとも魔法メインでは無いだろう。戦闘しながらの呪文詠唱は至難の業だと聞いた、私の様な短文ならともかく。
『・・・・ッ!』
燃えた、ゴライアスの胸の辺りが。しかし、火が消えた後に残るのは少しばかりの火傷。致命傷には程遠い。
「不味いかも・・・決定打がない」
魔法が使えたのは驚きだが、威力に乏しい。やはり魔法は使い慣れていないか、短文の魔法にありがちな威力不足だろうか。
こうして見ている間にも、何度も、何度も吹き飛ばされている。まだ動ける様だけど、いつかは体力が尽きてしまうだろう、早く助けないと。
「・・・ふっ!」
ギャイン!
!・・・弾かれた、手加減はしていないのに。
腰を入れて、切る
ギィン!
力を抜いて、切る
ギィン!
心を無にして、切る
ギィン!
切る切る切る切る
ガガガガガガガガ!
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「アイズ!落ち着け!」
「はっ」
団員に呼ばれ17階層へと赴くと、アイズが一心不乱に見えない壁?を攻撃していた。隣に居たいつかの少年は完全に怯えている様だ。
「何があった?」
「ベルに助けを求められて、救助に来たら壁に止められた」
先程アイズが攻撃していた場所を触ってみる、なるほど。確かに壁が存在している。レベル6の冒険者たるアイズの攻撃を受けて傷一つ付かないとは、一体誰の仕業だ?
壁の向こうでは、冒険者がゴライアスと単身戦っている、状況を見るにあの冒険者を隔離する為に使われた魔法だろうか・・・、それにしても異常である。
どうしたものかと頭を悩ませていると、驚くべき事が起きた。
『・・・・・・ッ!・・・・・・・ッ!』
例の冒険者が幾度も火の魔法を重ね、露出した魔石に対して魔法攻撃を仕掛けたのである。それだけならまだ魔石の特性が頭から抜け落ちていた、で済むがその魔法が問題だ。目を焼くような閃光と、凍えるような氷の渦。
「3種の魔法を使うとは・・・!」
前例が無い訳では無いが珍しい、魔法に適性のあるエルフでも3つの魔法を持たない者はいるというのに。
魔法が効かないことを悟った冒険者は、投石をする、それは魔石を撃ち抜きダメージを与えた。しかしゴライアスもバカではない。生命の危機に対し適切な行動を取る。
魔石を隠したゴライアスに対し攻め手を失った冒険者はまたも吹き飛ばされる。アイツの防御力は異常だな。私が来る前から何度も攻撃を喰らっているであろうに怪我をする素振りも見せない。防具が優秀なのか?
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「ね、寝転んだっ!?」
あの後、火の魔法でゴライアスの目を焼いた冒険者の人は倒すのを諦めて寝転がってしまった。ダンジョンで死にかけていた僕達を助けてくれた命の恩人の冒険者さんは、とんでも無く強かった。いや、強いのかな?微妙だけど、とりあえず僕よりは強い。
ホントは今すぐにでも助けに行きたいんだけど、なんでか見えない壁があって進めないんだよね、冒険者の人も同じみたいで吹き飛ばされては壁にぶつかって滑り落ちていた。アイズさんの攻撃を受けても壊れない謎の壁、とても僕では太刀打ち出来ない。エルフの人が来てどうにかなるかな、って思ったけどなんだかブツブツ呟いていて怖い、どうにもならないみたいだ。
「そうだ、アルゴノゥトなら・・・!」
いや、でも、僕の魔法ってアイズさんの剣戟より威力があるのかな?インファイト・ドラゴンは倒せたけど、それだってアイズさんなら秒殺だろうし・・・
どうすればいいんだろう
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「
それは突然だった、普段から『何を考えてるのか分からない』『ド天然』等と言われているアイズ・ヴァレンシュタインが魔法を使ったのだ。思考の海に沈んでいた2人は止める事が出来ず、壁に切りかかる金髪の剣士を見ている事しか出来なかった。
ギャゴッ!!
金属音が鳴り、その後直ぐに鈍い音が響く。壁は健在だった。
「・・・ッ・・・ッ・・・!」
「うわぁ!?だ、大丈夫ですかアイズさん!?」
慌ててベルがアイズへと駆け寄る。無言で蹲りおでこを押さえるその様は、とても都市最強の剣士だとは思えない。
「アイズ・・・何をやっているんだ・・・」
ハァー、と深い溜息を付き、リヴェリアは思考を中断しアイズの介護へとまわる。幸い強くおでこを打った程度で、赤くなるくらいで済んでいるようだ。
(しかし・・・アイズが魔法を使っても、傷一つないだと?一体何が起こっているんだ・・・)
明らかな異常、常軌を逸脱した堅固な結界を前にリヴェリアは寒気を感じた・・・。
「私だけでは、判断が付かないな・・・」
アイツも呼んでこねば。団長を。
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「これは・・・」
何なのだろう、僕は何を見せられているんだ?話を聞いた時は、さすがに冗談かと思った。しかし他の団員ならまだしもリヴェリアがその様な事を報告して来たんだ、切り捨てるわけにも行かなかった。
アイズが攻撃しても割れることの無い結界、エルフの知識においても解除は不可能だと言うそれ。もしその魔法が人の手によって行使されているとするのならその人物は自分達を超えるLvの持ち主でもおかしくはない。
そしてそんな魔法を使って何がされているかと言えば、ゴライアスと冒険者のタイマン、冗談を疑う事も当然だ。
指は疼かない、危険は無いかもしれないが、あまりにも不自然・・・。
ゴライアスは自分達からすれば脅威ではないが、それでも1冒険者が挑む敵としては強大なモンスターだ。大きな体格はそれだけで攻撃を防ぐ盾となるし、その質量は攻撃においても活かされる。間違っても単独で挑んで良い相手ではない。
そんな相手の目の前で寝転がっている
更に威力は乏しくとも短文か並行詠唱を用いて射程の充分な3種の魔法を使い、定かではないが何も無い所から物を取り出す力もあると。
「(そんな冒険者、聞いた事がない!街の外の冒険者だとしても情報が無さすぎる!)」
優れた耐久、見た事の無い装備、珍しい3種の魔法の所持者。どれをとっても少しくらい聞いたことがあってもおかしくない個性だ。ただというのにフィンの耳には何も入って来ていない。
「フィン?」
心配そうな仲間の声、そうだ、僕はロキ・ファミリアの団長。動揺を抑えろ、頭を回せ。
「今はひとまず待とう、リヴェリアはもう少し解析を、アイズは落ち着かないか、余計な力は使うんじゃない」
そう指示を出した時、壁の中の鎧は新しい動きを見せていた・・・
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「良かったのか?あのまま行かせてしまって」
私は鎧男が消えていった18階層への入り口を見つめ、考えを巡らせている様子のフィンへそう問いかける。
「大丈夫だよ、まだ考えはあるから」
そう言って、フィンはニヤリと笑った。