RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
やっちまった。
再びイシュタルファミリアのホームに侵入してから、命が囚われている場所を聞き出し直ぐに助けに来た。見張り役を気絶させて、ドアを開けたんだけど・・・前に誰かが立っていた様だ。
女の人は顔を抑えうずくまっている。うわ、顔か。申し訳ない事したな。お詫びに、ヒールをかけておいた。
「い、イシュタル様ぁ!」
部屋には、拘束されていた命がいる。今度聞き出した相手は本当の情報を教えてくれたらしい。しかし、イシュタルとな?もしやこの女の人が?んじゃ助けなくて良かったわ・・・。
と言うか、今、様って言ったな。いや、神に様を付けるのはおかしくは無いけど少し違和感を感じた。命に目をやると、目は潤み、息は荒く。一応仲間であるはずの俺を親の仇かのように睨みつけている。
「レイニー!貴様っ!」
「魅了されてんのかーい」
魅了されてた、マジか。なんで皆戦闘不能になってるんだろう。
拘束具をガシャガシャと鳴らし、手首に傷を負うことも厭わずに抜け出そうとしていた。
「レイニーだと、そうか、貴様が。丁度いい、私のモノになるがいい!」
蹲っていた女神、イシュタルが立ち上がり俺の目の前に飛び出してきた。
・・・
「ふふふ、まさか自分から来るとはなぁ、お前には価値がある。私のファミリアに来い、天国を見せてやるぞ・・・?」
「嫌です」
即答、分かっていたけど、美の女神の魅了を受けても何も感じなかった。フレイヤと宴で出会った時も何も感じなかったで大丈夫だろうと思っていたが、それが証明された形になる。俺には精神的に訴えかけて来る系の何かはさっぱり効かないということらしい。
「な、何故、何故魅了が効かない!?」
と、狼狽えに狼狽えているがとりあえず今の所この人に用はない、Lv1の駆け出し冒険者より貧弱なその身体に攻撃を仕掛ける訳にもいかないし、する必要も無い。俺は命にサンダーボルトをぶち込んで気絶させてから拘束を外した。
「ま、待て!魅了が効かない理由はな」
「性根が綺麗じゃないからじゃないですかねぇ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
命を抱えたまま、イシュタルファミリアの追手を振り切り2人を置いてきた路地裏に辿り着いた。イシュタルをちょっとばかし貶したら鬼の様な形相で追いかけて来たが所詮低レベル共よ。特に問題はなかったようで、同じ場所にいる2人の姿が見える。ここから見える限り、ベルは未だ興奮状態の様だ。おっ立てたまま暴れている。春姫は未だに気絶中、長すぎんかね。
「ハァッ、ハァッ!レイニー、男同士でも○ッ○○は出来るんだよっ!?」
「サンダーボルト!」
コイツヤベェな。投与された媚薬は、余程強力な物だったようだ、最高に頭がイカれてやがる。
「う、うぅん・・・」
おお、春姫が目を覚ましたようだ。
「あ、・・・と、殿方の裸ぁぁぁーーー!」
うーんこの。気絶が長いと思ったら無限ループに陥っていたんだね、なんか一気に力抜けたわ。
「うぅん・・・イシュタル様ぁ・・・」
命=サンも未だ魅了の中、戦力にはならない事がわかる。とりあえずベルの反対側の壁に同じような自作拘束具を設置し拘束、防御魔法を重ねがけしておいた。どれくらいで魅了が解けるのか、そもそも溶けるものなのかはイマイチ分からない。
ベルに適当に布を被せておき、次春姫が起きた時に気絶しない様にする。
そして、考えるのはこれからの事だ。
フレイヤが動いた理由は、ベルが歓楽街に攫われ、歓楽街で騒ぎが起きたからだったかな?ベルは原作通り攫われ、俺の襲撃により騒ぎは起きている。動く可能性は充分あるだろう。
「んで、追い詰められたイシュタルは
勿論、この通りに行くかは分からないので油断出来ないが、あのフレイヤが突然武器を持って殺しに行くなんて血なまぐさいことをするとは思えないので大丈夫だろう。
3人は戦力にならない、今回問題であった春姫の救出には成功、しかし不本意ながらイシュタルを助けねばならないということで、原作では逃れられたのだろうイシュタルファミリアからの追撃はこのままだとモロに受ける事になる。
最悪、スキルのことは諦める選択肢もあるが、数ヶ月あればレベル7とか余裕で行きそうなベルが死にかけるようなイベントが今後立て続けに起こる、そこで俺は生きていけるか?冒険者を辞める選択肢もある、でも、そうしたらベル達がどうなるのかが分からない。俺だけ諦めて、地上に残るとしても他の団員にまでそれを強要するのは不可能だ、ダンジョンの中で誰かが死ぬかもしれない。
最善は、何らかの形でイシュタルを都市外追放する事。
そうする為にはどうしたものか・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーー殺生石だと!?」
ある女神のホームで、男神が叫ぶ。彼はこの中で唯一、殺生石というアイテムの危険性を知っている
殺生石
名前からしてただならぬ物であることは計り知れるが、その効果は凶悪だ。
狐人によって作られ、狐人にしか効果を表さないこのアイテムは、その非情な所行を選んでしまいかねないほどの効果を得る事が出来る。
そもそも、狐人とは獣人の中で唯一と言っていい、魔法に才能を持つ種族だ。
と言っても単純に火を出したり、傷を癒すと言うものではなく。キワモノ揃いの呪術師と呼ばれるような魔法を扱う。
そしてこの殺生石は、その石の欠片を持つ全てのものに、封じ込めた魂の持ち主が扱っていた魔法を
本物と変わらず
それでいて詠唱を必要とせず
魔法のスロットの限界さえ超えて使用することが出来るようになる、とんでもないものだ。
春姫の覚えている魔法は、ただ一つ。
対象者のレベルを、1段階上に押し上げる
覆すことなどありえないはずのレベル差が数行の詠唱でひっくり返る恐ろしい魔法、ソレをイシュタルは求めた。フレイヤを地に引き摺り下ろす為に。
封じ込められた魂は、元に戻せる。一欠片も欠かさずに元の体へと戻せたのなら、だ。
あまりの効果に、神の眷属達は言葉を忘れた。
「殺生石に魂を封じる儀式が行われるのは、材料の性質上満月の夜だけだ」
絶望の中に、一筋の光が差し込む。
「つ、次の満月は・・・!?」
「・・・今夜だ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「フレイヤ様」
また別の、ある場所で。
「アレン達から報告が上がりました。【イシュタル・ファミリア】はベル・クラネルを捕え、更に不穏な動きを見せていると。・・・更に、襲撃を受けているとかで、騒ぎが発生しています」
決まりかと、と従者が言い切る前に、フレイヤは椅子から立ち上がった。
「【ファミリア】の子は全て揃っているわね?」
「はっ」
「号令をかけなさい」
「それでは」
「ええ。イシュタルは線を超えた」
底冷えする声とともに、フレイヤは銀の双眸を細める。
「今までの悪戯なら笑って許して上げたけど・・・駄目よ、
メンヘラストーカークソビッチ女神が、動き出した。