RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
ラキア王国軍、出兵。
朝イチでその知らせを聞いた瞬間、あれ?平穏なハズの未来が・・・と、絶望に沈みそうになったが、よくよく聞いてみると伝えてくれたリリの口調に悲嘆はない。
曰く、またか
数日は交易が滞り物資が高騰するだの、冒険者が出払ってダンジョンにモンスターが増えて危険だの少しばかりの愚痴はあったものの、特に暗い雰囲気は感じられなかった。
「えぇと、大丈夫なのか?その、戦争が始まるんだろ?」
「・・・?何を言っているんですか?」
戦争ではなく、ごっこ遊びですよ。
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世界最大の規模を持つファミリア【アレス・ファミリア】
軍神アレスに率いられたこのラキア王国という国、非戦闘員を合わせると60万の団員を抱える国家系ファミリアだ。
かつては【クロッゾの魔剣】を擁し、不敗神話を築き上げたこの偉大なファミリアは
ーーー低迷していた。
戦力の要であった【クロッゾの魔剣】は、度重なる自然破壊により精霊達の怒りを買い、その全ては砕け散り、クロッゾの家系に与えられていた魔剣作製の能力も消えた。
魔剣を失ったラキア王国は脆く、これ迄に奪取してきた土地を全て奪い返され、その規模は魔剣を得る前に逆戻りを果たした。
こんな歴史がある故に、魔剣を作る事の出来たヴェルフは周りに魔剣の鍛造を強要され、それに嫌気がさし国を出たのだが、それは今はいい。
要は、ラキア王国が強大であったのは昔の話、オラリオ外のモンスターは非常に弱く、同じ種族であってもその戦闘力には天と地の差があるらしい。そして、それを倒している兵士達の実力もそう。オラリオの外でトップクラスの実力者となるとレベル3のことを表し、殆どの人間はランクアップを経験せずに引退する。
ラキア王国もその例に漏れず、平兵士は軒並みレベル1、百人隊長クラスでようやくレベル2がちらほら。将軍クラスがやっとこさレベル3、その程度である。
それでも数が尋常ではない為、オラリオの外では・・・最強のファミリアとも言える。
死なずにダンジョンに潜っていれば数年後にはレベル2になれるような、このオラリオは違う。トップクラスの下限はレベル5である、都市には複数のレベル6も在籍し、量より質のこの時代において最強の勢力といえば迷宮都市オラリオが圧倒的にトップを獲得する。
そんな両者が争うこの戦争
蹂躙である。
わかりやすく例えるなら、人数の増えたアポロンファミリアとロキファミリアの全面抗争と言う感じだろうか。レイニー1人に容易く蹴散らされた100人の眷属達。ソレがいくら増えた所で、レベル6を複数擁するロキファミリアに勝利する事が出来るはずもない。
戦術や地形の利に頼ろうと行動に移しても、オラリオとて戦争に通じていないわけではない。ただでさえ地力で圧倒的に劣るラキアは奇策妙策全てを投じようと簡単に対応するオラリオに、
『第六次オラリオ侵攻』
この戦争の、戦争ごっこの名前である
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「ほへー・・・」
「痴呆みたいな声を出さないで下さい・・・と言うか、本で見なかったんですか?」
もう忘れた、言われてみれば何回か見たような気もせんでもない。
そう伝えると、心底呆れた様な顔をされた。だって、しょうがないじゃないか。俺、頭普通なんだ。
しかし、この戦争がオラリオにとって不利益を被る災害では無いことは分かった。ただ、この展開からどうやって友人の言っていた後日談的な物になるんだ?一応戦争中だぞ。流石に俺の存在が戦争を引き起こす程のイレギュラーになったとは思えない。
・・・まぁ、知らない事を考えていても仕方ないか。
「あふようございますれいにーさん・・・」
ちょうど、呂律の怪しいカサンドラがリビングに降りてきた。それを皮切りに次々と団員達がリビングに降りて来る、昼ご飯の時間である。
リリと春姫とカサンドラが厨房に立ち、料理を作り始める、3人は料理が出来る。俺は男料理しか作れないし、他の女性陣も同じだ。神様とか何年生きているか分かんないのにさっぱり家事ができない。はーつっかえ。
昼食が出来るまで、談笑する、しかし俺にガールズトークに参加するほどのトーク力が無いので相槌を打つだけだ・・・。サミラが猥談を振ってくるが女の子と猥談し始めたら終わりだと思う。
昼食が完成、今日はパンとおかずのグラタン、スープの3つだ。スープは具沢山でしっかりと栄養を摂ることが出来る、美味しい。
食後はカサンドラの今日の夢の話を聞くのが日課だ。何の変哲もない夢も多いが、たまに予知夢を見るらしく、トラブルを事前に知らせてくれるカサンドラは非常に有難い存在である。ほかのメンバーは頑なに彼女の予知夢を信じないのが気になる、遠回しな言い回しだけど、実際に予知した物事が目の前で起こっているのに何故・・・
まぁ、そんな事もありファミリアの中ではカサンドラが1番仲がいい。
腹もこなれた頃、話さねばならない議題をリリが持ち出した。
すなわち、春姫をダンジョンに連れていくか否か。
「リリは何がなんでも付いてきて欲しいと思っています。春姫様の『魔法』は説明が不要なほど、非常に強力です」
「でもさ、春姫さんだっけ?かなりステイタス低いんだよね、戦い方も知らないみたいだし、危険じゃない?」
「あー、そう言えば、その事で渡したい物があるんだったわ」
?全員の顔に一斉に疑問符が浮かび上がった。その視線は声を上げたレイニーへと向かう。
「コレをどうぞ、と」
「コレは・・・?書物の様ですが」
俺が取り出したのは古い本、誰にも読めない、意味不明な文字が題名の欄に載っており、その詳細は不明だ。ちなみにページを捲ることは出来ない。
コレは、先日の騒動を終えレベルが70になった時にショップに出現したアイテム、『魔導書』である。この世界に存在する魔導書とは違い、この本の所有者は特定の魔法を使えるようになる、という代物だ。
値段はなんと、1つ100万G。残金は2万G・・・
大した金策をしていなかった上に、全く予想していなかった高額アイテムだったので一つ買っただけでGが心元無さすぎる状態になってしまったが、使い捨てのものでは無いので損はしないものと思われる。
開放された魔導書は3種
シールド
ブラスト
リペア
各魔法の効果は名前の通り、ゲームではまだ買えなかったアイテムなので、正直どれ程の効果があるのかは分からないので期待し過ぎては居ないが、回復魔法なんかはたとえしょぼくてもあれば嬉しい物だろう。
そして、今回買ったものはシールド。買った時に、自分で効果を試したが容易く割れたのでレベル5とかの攻撃はさすがに防げないみたい。
「サミラ、ちょっとこの盾殴ってみてくれない?」
目の前に盾を出現させ、サミラにそう声をかける。レベル3の冒険者である彼女の攻撃は十分な検証材料になってくれるだろう。
「おう!」
席を立ち、机から少し離れた場所に移動する。この盾は追尾型なのだ、便利だな。
向かい合う俺達を他のメンバーが真剣な眼差しで見つめる、コレが使えるか使えないかで、今後の方針に関わりかねないからな。
指をポキポキ鳴らして準備完了
気合いの声と共にサミラは突撃する。
ビキィッ!?
「硬ぇっ!!」
手加減無しで盾を全力で殴った、すげー痛そう。回復魔法を掛けようと思ったが、サミラの右手は淡い光に包まれ、次第に腫れが引いて行った。
そう言えば、自己再生と言うスキルがあったな。それにしても痛いのに代わりはないと思うが・・・
「レイニー、素手じゃキツイぜコレぇ、オレ全力で殴ったのによー」
そう言うサミラの視線の先には、全体にヒビを作りながらも砕けずに原型を留めている盾の姿が。無手とはいえ前衛型のレベル3の全力を受けて尚壊れない。充分にその実力は伝わったんじゃないだろうか。まぁ、相対的にレベル4の攻撃には耐えられないのが分かったのだが、中層なら事足りるだろう。
魔法に対する防御力もイマイチ分からないが、俺のライトニングは防げたので長文の魔法以外は大丈夫かと思われる。
「じゃ、コレ春姫が持ってくれ。使い捨てじゃないし、危ないと思ったらバンバン使ってくれよ?」
「え、そ、そんな!こんな高価そうなもの・・・」
「金渋って死なれるのは絶対に嫌だから、受け取ってくれ、頼む」
そう言うと、春姫は躊躇いながらもそれを貰ってくれた。
参加に反対していたダフネも、春姫の魔法の有用性は認めていたので安全の確保された今、強く反論する気は無いようだった。