RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
フルメンバー
光量は充分にあるとはいえ、迷宮はあくまで迷宮である。
広いとは言えない通路、冒険者達を襲う閉塞感は彼らの精神を少しずつ削っていくのだ。
「レイニー様、あまり本気を出されると私達の経験にならないので春姫様達の護衛でもしていて下さい」
ダンジョン15階層、そんな事を言われた俺はパーティの後ろでいじけていた。
「レ、レイニー様、どうか気を確かに・・・」
「そ、そうですよ、別にリリさんもレイニーさんが嫌って訳じゃ・・・」
後衛の2人が優しい・・・、前方では、前衛4人と言うバランスの良くないメンバーながらも危なげない戦いを披露する団員達が。そこに俺が入ればそれはもうヌルゲーになって経験にならないのは納得出来る。大人しく護衛しとくか・・・。
春姫達と同じ、後衛だったハズのリリは随分とアグレッシブなスタイルになっている。狭い所でハンマーを振り回す訳にも行かないため武器はかつて俺の作成したミョルニル(笑)のままだが、あの後追加で複数個作ったためリリは投擲具としても活用している。
遠くから火を吹いてくる厄介なヘルハウンドは死なないまでも行動を止められ、アルミラージ等の軽量級は重さを感じさせないリリの1振りで沈められた。
ニナは、まぁ。いつの間にかリリに追い抜かれようとしている事に危機感を抱き必死で頑張っているようだが如何せん。と言うよりアルミラージ以外に攻撃が効いていない。敏捷はそのレベルにそぐわない高さなのでどのモンスターにも先手を取れているが火力がない。それに耐久も所詮レベル1の為無理を通すことも出来ない。
これからに期待といったところか。
ダフネ
攻撃の通るニナ
サミラはもうガンガン行くなぁ、ガントレットを装備した完全なインファイト。敵の懐に飛び込み次々と魔石を打ち砕いていくその様はモンスター相手にダンスを踊っているかのよう。
そして換金対象が減った事にリリから文句を言われるまではセットだ。
春姫とカサンドラは必要になる場面が今は無いのでサポーターの真似事をしていた。
ビキビキ・・・
っと、傍の壁にヒビが入った。モンスターが産まれるのだろう。春姫達の前に立ち、モンスターを迎え撃つ姿勢を見せる。
「キュー」
「アルミラージか」
現れたのは小柄な体躯に見合わぬ好戦的な気質をしたモンスター、アルミラージ。手斧を投げつけ冒険者に手傷を負わせるそのやり方は何処と無くリリに似ている、小柄だし。
「春姫、アレ、使ってみてくれ」
「分かりました、では・・・シールド」
モンスターと人間を分けるように出現した半透明の壁、およそ2m四方の物体はモンスターの目に奇異に映ったようで、怪訝そうに動きを止める。暫く待ったが、どうも警戒心が強く、じわじわと離れようとする動きすら見せていた。
春姫も、どうするべきかと困惑している。仕方が無いので、壁を迂回して自分でトドメをさした。
多少知恵のある生物なら、警戒するのも当然か。
次に現れたのはヘルハウンド。前回の反省を活かし火を吹き、止められないタイミングでシールドを出してもらった。結果は無傷。
横側から抜けてくる熱風は防げないものの、直接的な炎は完全に遮断することが出来た。原作ではヘルハウンドの炎は魔法扱いだったので、最低限の防御性能は保証されたという事になる。
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「魔法使い?」
次の日、ダフネが俺の部屋をわざわざ尋ねてきたかと思うと、突然そんな事を言い始めた。
「そう、団長も分かってるとおもうけど、今のファミリアはバランスが悪い」
飛び抜けて上にいる俺を除くと、
準壁役、そしてステイタスの暴力で中火力のサミラ
軽装甲小火力のニナ、ダフネ。
遠距離小火力のリリ、と言うかそもそもサポーター。
回復のカサンドラ
直接戦力にはならない春姫
後衛の火力が圧倒的に不足している、と。
ベル達ヘスティアファミリアは、その問題をクロッゾが作製する魔剣やベルの
そもそも魔法使いと言うのは珍しく、100人冒険者が居れば半分は魔法を持っておらず、その中で探索に有用なものとなるとまた半分に数を減らす。さらに攻撃、防御、補助と細分化して行くその魔法達、そう考えると団員のほとんどが魔法を使える現状は恵まれているのだが、欲を言えばといった所だろう。
「そりゃ、俺も誰か来て欲しいなとは思ってたけども」
脳裏を過ぎるのはあの酒場の店員、しかし来てくれる訳がないので即座に消去する。
「このファミリアには、面倒な入団条件もあるしなぁ・・・」
「あぁ、そう言えば・・・」
この間ダフネ達を無理言って入れさせた時に、主神が愚痴愚痴言っていたのでまた新たに無理やり入れると言うのは好ましくない。ついでに俺の豆知識などはとうに品切れである。
あ、それは春姫かサミラに頼めばいいのか、まだ知識もあるだろうし。
「この前メーティス様が2人から知識を搾り取って行ったから無理だと思うわ」
・・・俺の知らぬ所で対策は取られていたようだ。
総合すると、今現在魔法使いの不在による問題は表面化していないが、硬い敵に苦戦する事がある。敏捷は皆高い為数で来られるのはどうにでも出来るが圧倒的に強い個と戦う時に面倒な事になると。
「団長だって、威力自体は大した物じゃないし」
うぐっ、ま、まぁ確かに中層の敵ならライトニングを直撃させれば死亡するがソレはショック死。イグニスをミノタウロスに当ててみると全身を炎に包まれながらも即死とは行かなかったし、破壊力という点ではそう凄いものでは無い。まぁ普通で言うと異常な短文詠唱な上にこの効果、その多様性。充分な筈だが・・・、まぁ、人を増やして新たな選択肢を手に入れる事は悪いことでは無い。最悪俺がプロミネンスフレアぶち込むけど。
「しかし、勧誘した所で人が来てくれるものか・・・」
「まぁ、その問題もあるわね、まぁ、今すぐに必要な訳じゃないし、おいおい解決すればいいわ」
そう言ってダフネは部屋を出ていった。魔法使いか・・・、どうしよう。
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それから数日、ダンジョンに潜り続けGが多少貯まった所で新たな行動に移る。
皆に装備品を配るのだ。
俺の持つスキル、【万物商店】で手に入るアイテムは全て不壊属性、修理の必要は無く経済的である。
装備に付いている効果は俺以外には発動しないのが難点ではあるが不壊属性と言うだけで武器にしろ防具にしろ、そんじょそこらの装備よりも優秀なのだ。
用意したのはコチラ
銅の短剣
雰囲気だけはある安物の杖
動きやすい初期の革鎧
刺々しいが性能に特徴は無い篭手
人数分の鎖帷子
シンプルな見た目のローブ
しょぼくない?そう思われるかもしれないがこれでいい。実際に鍛造された訳では無い商店の装備達は銅だろうが鉄だろうが、オリハルコンであろうが俺が装備しない限り硬いだけの物質だ、形状による差異はあれど性能に違いはない。
Gに余裕がある訳でもなし・・・、リリは倹約家なので賛同してくれるだろう。
「別に良いのですが・・・、そうだ。折角落ち着いてダンジョンに潜れる様になったんですし、1度レイニー様の商店のアイテムを見せて頂けませんか?何か必要なものもあるかもしれません」
「あ、あたしも気になるー」
オレも、私もと団員達の希望に押され、抵抗の甲斐無く多数決で商店の物を公開する事になった。
「このアクセサリー可愛い!」
「オレこのカッコいい篭手がいいんだけど」
「バックパックは売っていませんか・・・」
「いち・・・じゅう・・・あ、あの魔導書が100万G・・・っ!?きゅう」
春姫ぇっ!?
少し、トラブルと支出はあったものの平和な1日だった。