RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
イシュタルファミリアの騒動を終えてからは特に事件も起こらず、ダンジョンに潜って何事も無く帰ってくる日々が2週間ほど続いていた。
その間に俺のステイタスは飛躍的な成長を遂げ、耐久は再びカンスト。魔力・筋力は800を超えその他のステイタスも500を上回って来ていた。
なに、ちょっとヘルハウンドと焼肉パーティーを開いていただけだ。
最近、リリの成長が凄い。中層で積極的に戦闘に関わった事を神様は経験と認め、ステイタスは破竹の勢いで育っている。コレからが楽しみだ。
後はニナはレベル2に到達した。中層での戦闘経験はニナに高位の経験値、偉業をもたらしたらしい。
発展アビリティは
その他のメンバーも、まぁ常識の範囲内で10〜20程の成長を果たした。しかし、表面上は変わらずともその装備は全て不壊属性。戦闘力は桁違いとなっているはずだ。
と言うか、防具に不壊属性って、本来ついていないもののような気がしてきた。この世界に来て半年は過ぎたけど、聞いたことが無い。まぁ、いいでしょう。
そう言えば、最近忘れていたが模倣を再び使用した。そして、衝撃の事実を知った。
【鉛矢受難】
【月桂輪廻】
【自己再生】
【闘争欲求】
【ラウミュール】
【ソールライト】
【キュア・エフィアルティス】
【ウチデノコヅチ】
コレは、新たに加わった団員の所持するスキル、及び魔法の一覧である。そしてここにニナの【追跡衝動】リリの【シンダー・エラー】と【縁下力持】が加わる。
ダフネの【鉛矢受難】と【月桂輪廻】、そしてサミラの【自己再生】を、やはり劣化させつつも問題なく模倣した後に、【闘争欲求】の模倣に着手した。しかし、幾ら試そうとも発動する気配がない。そのスキルの特性上、暫く戦闘を控えねば効果が現れない可能性もある。それに加え効果は劣化している事であるし、と次の日はダンジョンの探索を自粛し一日の終わりに再びスキルを試したのだが、微塵も効果が感じられなかった。
サミラが言うには、一日の休みでも十分に力が溢れるのが感じられるそうだ。幾ら劣化していると言っても気配すら感じられないのはおかしい。様々な考察をした結果、
魔法は問題無く4つとも扱え、スキルと魔法を合わせ9個までしか模倣出来ないというのも中途半端であるので、恐らくスキル5個、魔法5個の計10個までは模倣出来るのではないだろうか、そして、覚えた物を忘れる方法は分からないので自分が覚えられるのは魔法1つを残すのみとなった。
コレは誤算だ、いくらでも覚えられるものと思っていたのでリリの【縁下力持】と言う、直接戦闘力に繋がらないスキルで1つの枠を潰してしまっている。別にリリのスキルが悪いという訳でないが、戦闘スタイルが違うので役に立つ場面は少ないだろう。
魔法にしても、【ソールライト】なんかは自前で幾らでも代用出来るものだ。一発逆転の要素を秘める魔法の枠を使う対象としては少し勿体ない。
しかし時すでに遅し、最後の魔法は慎重に考える必要がある。魔法を扱える人間が入団するのが何時になるかは分からないが気を長くして待っていよう。
とりあえず、詠唱文を完璧に覚えるのに3日ほどの時間を要した。流石の凡人クオリティである、魂に刻み込まれた訳では無いこの魔法達を自分のモノにするには時間がかかるのだ。並行詠唱なんて以ての外・・・。
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「模擬戦?」
「あぁ、中層のモンスターとばかりじゃ身体が鈍っちまう。レイニーもそうだろ?」
いや、別に・・・と返そうとも思ったが、コレはいい機会なのでは無いか?
俺は戦闘技術と言う点ではリリにすら劣る勢いだ。ステータスの特技を使えば、一つ一つの技では敵を圧倒することが出来るが全体の流れというものを掴むことが出来ない。我流では限界がある、しかしダフネやニナなんかはステイタスに差があり過ぎて故意でなくとも怪我をさせてしまう可能性があった。
幾ら治せると言っても好んで女の子を傷付けたい訳では無いし、他の団員はそもそも自主訓練に消極的だ。対人戦が得意では無いのだろう。
その点サミラはレベル3の実力者、模擬戦に積極的でもある。俺が力押しをせずに戦えば俺は立ち回りを見て学ぶことが出来るし、ステイタス的に上位の俺と戦うことはサミラにも良い影響を及ぼす・・・かもしれない。
「・・・おう、やるか」
「マジで?やりぃ!」
俺が受けるとは思っていなかったようで、驚きつつもサミラは喜びの声を上げた。
俺は1番殺傷能力の無さそうな木刀を購入し、さすがにリビングで戦うわけにも行かないので庭へと移動する。
すると、思い思いに寛いでいた他の団員達も興味を示し、勉強になるからと家の中から観戦する胸を伝えてきた。良いけど、下手な戦いを見せる訳には行かなくなったな・・・。
軽、サミラと相対し、手に持つ得物の感触を確かめると心許ないほどに軽量だった。しかし、こんなものでも不壊属性の武器だ、壊れる心配はない。
「全力で行くぜ?レイニーも、手加減なんかしてくれるなよ?」
「おぉ、まぁ、うん」
手加減しなかったら、流石に死ぬと思うので力は抜くが、まぁ技術的には全部を出し切る予定ではある。歴戦の冒険者からすれば屁のような全力ではあるが。
勝利条件は急所への十分な威力の一撃を決める事、コレはまぁ、周りに決めてもらう。
互いに武器を構え、どちらからともなく動き始めた。
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ギィッ!!
鉄と、木が拮抗すると言う異常な現象。しかし2人にとっては分かり切っている事であるのでそれによって行動を変えるということは無い。
「ぐっ、重いっ・・・!」
右腕でレイニーの一撃を受け止めたサミラは、その一撃に込められた威力に慄いていた。手加減するなよ、とは言ったがフリュネさえも倒したレイニーの一撃をまともに受ければ骨折で済まない可能性すらある、幾分か力を抜かれているのは間違いないだろう。
それでいて、この威力。
レベル3の中でも、力と耐久に優れたサミラの一撃を完全に封殺し、あまつさえ骨に響く様な衝撃を此方に伝えてくる。思わず足が止まりそうになるがそういう訳にも行かない。剣を振り払い、一思いに懐へと飛び込む。
射程の短い拳術は、距離を取られると出来ることが一気に減ってしまう。それを防ぐために敵の攻撃を避け、受け流し、逆に敵が動きにくい超接近戦を強いる事で勝機を生み出すのだ。
今まさに、レイニーは距離を取ろうと後退するが。幾らレベルの差があるにしても後ろ歩きでは思うような速度は出ない、サミラはここぞとばかりに責め立てる。
レイニーは、モンスターとはとても出来ない技術の戦いを身を持って感じていた。力を抜いているとはいえ未だ上位にある筈の己の斬撃は空を切り、命中を確信した一撃は肌を撫でる様に流される。どうにか敵の攻撃を弾くのが限界のレイニーとは違い、完全に威力を相殺されている。ガサツな普段とは違い高度で繊細な技術を持ってステイタスで劣るサミラはレイニーの攻撃を無効化するばかりか、猛攻を繰り広げている。
圧倒的に経験と、技量が足りていないのを感じた。
「レイニー!そんなもんじゃねぇだろぉ!?何時ものキレっキレの技を見せてみろよォ!」
「くっ・・・!やってやるよっ!」
カウンター!
顎を狙い放たれたサミラの拳を、受け流されたサミラ自身も何をされたのか分からないほどの妙技で受け流す。そして、隙を見せたサミラの脇腹をレイニーの攻撃が襲うが、なんとか左手を間に潜り込ませ衝撃を緩和した。
「どわっ!?」
吹き飛ぶサミラ、レイニーはそれを追わない。
コレが、フレイヤ・ファミリアの監視役によって警戒に値すると評されたレイニーの能力。自分の身体が勝手に動き、最適解の攻撃を行うレイニーの十八番だ。カウンターならば、防御が間に合うタイミングであればどんなフェイントからの一撃も防ぎ、敵の隙に痛烈な攻撃を返す事が出来る。防御を置き去りにする程の速度を持ってしか、この技を抜ける事は出来ない。
レイニーの攻撃を受け止めたサミラの左手はジンジンと熱いほどの痛みを発していた。ヒビくらいは入っているかもしれない。しかし、その程度なら【自己再生】で容易く快復出来る、実際痛みは既に消えつつあった。
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「サミラさんすごい」
「レイニー様は良いようにされ過ぎです・・・最後の返しは良かったですけど」
「アイツ冒険者になって半年位なんでしょ?あれだけやれれば上出来よ」
「うわぁ・・・アレ怪我してないですか・・・?大丈夫かな・・・」
「サミラ様ー!ボコボコにして差し上げて下さーい!」
「春姫、お前・・・」
観客席は盛り上がっていた。軽いツマミに飲み物を用意し、映画でも観るかのように模擬戦を眺めている。
サミラが立ち上がり、再び激しい戦闘に移ると邪魔にならないように小声で話し始める。
サミラはステイタスが劣っている事など感じさせない程に連撃を繰り出し、レイニーに思うような動きをさせていない、しかし、レイニーも技量が劣るなりに一つ一つしっかりと対応し、未だに有効打は受けていない。
状況は、持久戦へともつれ込んでいた・・・サミラはレイニーのカウンターを警戒し隙の大きい1発を打つことが出来ず、レイニーが一撃を狙っても上手く流されてしまう。
このまま行けば、いずれ能力で勝るレイニーがスタミナの関係で勝利する事になるだろう。
闘いを見ていた女神は、神特有の意地の悪さを発揮した。
「春姫、サミラに魔法を使え」
「ちょっ!?メーティス様!それは流石にっ」
「承知しましたぁっ!」
「春姫様っ!?」
リリの静止の声を聞こえないふりで通し、春姫は詠唱を始める。
【ーー大きくなれ。其の力に其の器。数多の財に数多の願い。鐘の音が告げるその時まで、どうか栄華と幻想を】
どうにか止めようとするリリの行動は、ダフネによって防がれた。
「ダフネ様!?」
「いいじゃない、死ぬ訳じゃないんだし、いつもスカした面してるアイツがぶっ飛ばされてるとこウチも見てみたいし」
周りは敵だらけなのかっ!?と慄くリリであったが、カサンドラの存在を思い出す。
「か、カサンドラ様!一緒に止めましょう!?」
「無、無理ですよぉ。私、力無いし・・・」
そうだ、彼女は後衛じゃないか!かくなる上は
「ニナ!レイニー様がボコボコにされてしまいますよ!?止めなくていいんですかっ!」
先日レベル2に上がったばかりのニナ、彼女なら希望が・・・
「えぇ?面白そうじゃん?」
リリの、そしてレイニーの味方をする者は居なかった。大丈夫かこのファミリア。
『どうか貴方に祝福をーー大きくなぁれ』
そうこうしている内に、春姫の詠唱が終わった。少しばかり魔法を使えるリリが目にしたのは、可視化できる程に練られた魔力のひかり。全力で魔法を唱えたようだ、何故ここまでレイニーを敵視しているのだろうか?ソレは本人たちしか分からぬ事だ。
『ウチデノコヅチ』
サミラの身体を、目を覆うような光が覆った。