RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
ゴッッッ!!??
「あっづ!?」
サミラが光に包まれたかと思うと、その姿が掻き消え、直ぐに顔面に鋭い痛みが走る。最近は痛みなんて感じていなかったため、動揺して後ろに倒れてしまった。
いってぇ・・・っ!?
痛みを堪え、目を開けると、やはり白い光に包まれたサミラが目の前にいた。サミラに殴られて痛みを感じたのか?しかし、モロに喰らってもこんなに痛いはずが無い。まるで、急激に能力が上がったかのような・・・
ハッとした
観客として此方を眺めている団員の方に目を向けると、春姫からサミラに向けて細い光の糸が繋がっているのがわかる、つまり、【ウチデノコヅチ】が使用されたようだ・・・。
「いや、流石に酷いだろ!?」
「そう元のステイタスが離れていると経験にならんだろう!春姫が居てくれて助かったな!」
あのアマァ・・・!っと、いけないいけないあれでも大切な主神様だ。
メーティス様、春姫、ダフネ、ニナは今の状況を楽しげに見ていて、リリとカサンドラはオロオロとしている。あの二人は関わっていないのか、人間不信になる所だったぜ。
状況を整理しよう、俺の能力は、恐らくレベル5は越えている。そしてサミラは元々レベル3の中程、【ウチデノコヅチ】を使われたのならばレベル4の中程となる訳だ。うん、それぐらいなら何とかなりそう・・・、なるか?
いやまぁ、どうにかするしかない。
と、決意し立ち上がったのは良いのだが、サミラを包む白い光の中に赤い光が混じっているように見える。
「・・・なぁ、サミラ。もしかして【闘争欲求】使ってないか?」
「ん?あぁ、神様は対等な勝負をご所望の様だし、別にいいだろ?レイニーも出し惜しみ無しでやろうぜ!魔法もなんでも使ってくればいい」
んな事言われたって、仲間の女の子炎で炙るとか上級者にしか出来ないプレイなんですけど。流石に躊躇する
あ、でも雷ならーー
「あ、流石に雷のは無しな、オレぜってー勝てねーし」
あ、はい
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へへっ、面白いことになって来やがったぜ・・・!
レイニーの奴が消極的な行動に出始めて、攻めきれずに不利な持久戦に持ち込まれそうになった時。急に身体が軽くなって
んで、オレは状況を理解したぜ、春姫がやったんだとな。イシュタル様んとこに居た時はいつもウジウジしてて気に食わねーと思ってたがやるじゃねぇか。
こんなオイシイ状況を逃す訳には行かねぇ。【闘争欲求】も発動してオレの今の全てを注ぎ込む。今ならフリュネにだって負ける気がしねぇ!
レイニー!今度はオレが勝つぞっ!
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先に動いたのは、サミラ。急激な加速に加え、最初のサミラの速度に慣れていたレイニーはタイミングを外された。
「カウっんっ!?」
カウンターの発動も間に合わず、木刀を払いのけられた上に腹に重い一撃を加えられる。畳かけようとしたサミラであったが
「ファイアっ!」
咄嗟に横に飛ぶ
「ストームゥ・・・!」
短文かつ広範囲のレイニーの魔法は対人戦に置いて無視出来ない要素だ。
レイニーはサミラが飛び退った隙に後退し、回復魔法リジェネーションを唱えた。
「い、いきなり速くなりすぎだろうよ・・・」
「強化されていられる時間も速いんだ、次行くぞっ!」
カウンター!
今度のレイニーに油断はない、しっかりとカウンターを発動し、敵の攻撃に備えた。しかし、サミラもとうぜんそれは予測している。レイニーにすれば、そのまま来れば絶対に防げるし、距離を取ってくれれば時間を稼げる。そう考えての行動だったのだが、相手が1枚上であった。
スゥッーー
サミラは攻撃をしなかった、攻撃の構えのまま接近し、無造作に構えられている木刀を抜け唇が触れるほどの距離にまで近付く。
「えっちょっ」
特技カウンター、
つまり、攻撃されなければ発動しない。
ソレを本能で見切ったサミラはカウンターを信用していたレイニーの懐に易々と潜り込んだ。
カンッ!
軽い音、動揺で握りの緩んだ木刀が弾き飛ばされた音だ。つまり、今現在レイニーは無手という事になる。勢いのままレイニーの身体を押し、地面へと転がらせる。
殺ったっ!
確信を持ってサミラは拳を振り下ろした。
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「「「消えたっっ!?」」」
その戦いを見ていたものは、目を疑った。サミラによって武器を失い、押し倒されたレイニーに勝機はないものと思われた。しかし、サミラの攻撃により土煙が上がり、それが晴れた時にはその場にレイニーが居なかったのだ。
いや、その場どころでは無い、広い庭のどこを見ても姿が見えない・・・。
「え、レイニー消し飛んだ?」
「さ、流石にそれはないと思うが・・・」
見ている者の動揺も去る事ながら、目の前で消えられたサミラの混乱も相当なものだ。
「ぇ、いや、あんな体勢から逃げれるハズ・・・いてっ」
「危なかった・・・首の裏なら急所扱いでいいよな?」
サミラの背後に突如出現したのは、皆が探していたレイニーその人だった。
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「どういう事なんだ?レイニー」
模擬戦を終えた後、皆で品評会を開く事になったのだが、話題は当然それについてだった。
どういうことなんだ、と言われても話すことは少ない。
あれは素手の時のみ使える特技『陽炎』だ。効果は1ターン攻撃無効化。
武器を失い、見た目の上では素手になった俺は咄嗟に陽炎を発動した。正直賭けだったが無事効果を発揮し、サミラの攻撃は俺の身体をすり抜けたのだ。
そして特技の副産物として、俺の姿が見えなくなっていたよう。後ろから急所を叩き、勝利条件を満たした。大した攻撃では無かったが、全く反応出来ていなかったので本気なら死んでいただろう。
「えぇと・・・、その技はどんな原理で・・・?」
「分からねぇ、自分の身体を腕が貫通してて漏らすかと思った・・・」
今後非常時以外にこの特技を使うことは無いだろう、精神ダメージが予想外にでかい。
「ずりー・・・、結局参考にならねーじゃねーかよ」
「んん、まぁ、すまん」
サミラはご機嫌ななめのよう、初見殺しが過ぎるしな。どう考えても不思議パワーがない限り人間が取得できる技ではない。つまり、実用性の無い経験ということだ。
負けたく無かったし仕方ないね。
「と言うか、俺の技よりもウチデノコヅチについて話をしましょうよ・・・」
アレは酷い、模擬戦なのに割と命の危機を感じたぞ。サミラもノリにのって闘争欲求まで使って俺を追い詰めてきたし。
「・・・レイニー様が」
「ん?」
俺?
「レイニー様が悪いのです」
俺が・・・って、もしかして!
「昨夜、私の事をあんなにめちゃくちゃにするからっ」
「「「っ!!」」」
彼と彼女の名誉の為に詳しくは話さないでおくが、彼の味方はただのひとりも居なかったという事だけは伝えておこう。
PS
女の嫉妬とはいと恐ろしいものなり・・・