RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
始まる物語
彼は、彼女と出会った━━
━━ちょっと待てよ・・・
元々今日はあんまり探索に乗り気ではなかった、朝、カサンドラから
『都市を巻き込む混乱が起きる』
そう言われていたから。
俺達メーティスファミリアは日々の探索の結果、リヴィラの街まで進出していた。そして、原因は不明ながら時折発生する異常事態に対する
内容は、19階層で大量発生した希少種『ファイアーバード』の討伐。自然の繁殖する19階層以降の『大樹の迷宮』を度々燃やし進行を妨げる厄介なモンスターであるらしい。
早期解決を目指すべく、リヴィラの街の冒険者は元よりたまたま立ち寄った上級冒険者達にも依頼が出された。断っても良かったが・・・リヴィラの街の経営陣に悪く思われると今後の街での生活に影響があるやもしれない、自分にとっては対した危険もないしと、受ける事を決めた。
パーティでそのまま行くのかと思いきや、この間のゴライアス戦の時の実力を買われ、俺は速度重視の先遣隊に配属された。・・・ベルと共に。他の団員が心配なので、サミラはどうにか元のパーティに残してもらったが。
この時点で少しばかり嫌な予感はしていたのだが、土壇場でやっぱり辞めると言う訳には行かない。19階層へと、進んで行った。
クエストは順調だった。既に20程のファイアーバードとその他のモンスターを討伐し、パーティの雰囲気も悪くない。
『ガァッ!』
その時前方に現れたのは十数体のファイアーバード、思えばここで落ち着いていれば良かった。いや、落ち着いてはいたが、認識が甘かったのだ。
俺はそれまで通り先手必勝とばかりに群れへと突撃した、そして、パーティメンバーも当然後に続いてくれるものと思っていたのだが・・・
「あの数はやべぇ!?逃げるぞっ!」
「「「応っ!!」」」
「は?」
俺は、自分自身が行けると感じて居ても周りからすればとても成功率が高いとは言えない行動である事を失念していた。
自分のファミリアのパーティならば、俺の実力は十分に分かっているし、連携も取れている。しかし、コレは急造のパーティである。レベル位しかお互いに知らないし、どれぐらいできる奴かなんて事は知りようもない。まして、仲間なら命を託して助け合えるかもしれないが深い仲でもない奴に命は掛けられないだろう。
そんなこんなで、突撃した俺と逃げ遅れたベルは取り残された。
「ブリザード!」
モンスターは、問題ではない。人を巻き込む危険があったため使っていなかったが、既に冒険者達の姿は見えない。宙を舞うファイアーバード達は氷によって動きを止め、砕け散った。
「す、凄い・・・!」
ベルもチャージすればこれぐらい余裕だろ、と思ったがそう言えば範囲は広くなかったっけ。
「それよりさ、・・・道、分かる?」
「あっ・・・」
冒険者達の姿は、見えない。
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「俺地図読めない」
「ボクも、あんまり・・・」
2人はダンジョン19階層で迷っていた。ベルは簡易的な地図を持っていたのだがそもそも現在地がよく分からない。遠くから聞こえる戦闘音に近付こうと地形を地図と照らし合わせながら進んでいるのだが・・・。
「なぁ、アレ同業者じゃないか?」
「あ、本当ですね」
視線の先に、足を引きずる人影が映った、怪我をしているのか!と、慌てて2人は駆け寄るが途中、違和感から足を止めた。
モンスター
人に見えたその影は、希少種である
いや、ヴィーヴルなのか?と2人は目を向け合う。本来ならば人の上半身に蛇の下半身を持つ、ラミアのようなモンスターであるはず、しかし下半身が人の形をしている。額にはヴィーヴルを象徴する紅の石が嵌っているが・・・
「突然変異・・・なのか?流石にここまで人に似ていると躊躇するな・・・」
「そう、ですね」
モンスターを殺す事には慣れた、しかし四肢を持ち、積極的にコチラを襲わないモンスターを殺すのは心に負担がかかる。
「ぅ・・・!・・・!」
更に、モンスターは泣いていた。人のように、感情を持つ、只の生き物のように、怯え、恐怖し、とても殺意に溢れたモンスター達と同じモノには見えない。冒険者達の心に動揺が走る。
カチャッ
白髪の冒険者はその音に驚き、目を疑った。片割れは、構えていたハズの武器を鞘に入れていたのだ。
「ちょ、ほ、本気ですか?」
「・・・俺には無理だ。殺るんなら、俺が見てないところでやってくれ」
そういった青髪の冒険者は竜女から遠ざかり、白髪の冒険者も躊躇いながらも武器をしまい、後を追った。
「・・・?」
少し前に足を折り、人間に補足され死を覚悟していた竜の少女は目の前から恐ろしい人間が消えた事に不思議そうな顔をした。チラチラと冒険者達が消えた先を探すように視線を巡らし、誰も居ないことを確認するとゆっくりと立ち上がった。足を庇いながらも、移動を開始する。
バサッ
ヨタヨタと歩み始めた少女の後ろから、ファイアーバードが現れた。にわかに熱くなった空気、それに気がついた少女は振り向き
「ライトニングッ!」
『ゲェッ!?』
暗い通路から飛来した一条の光は正確にファイアーバードを射抜き、魔石へと姿を変えさせた。
「ちょ、レイニーさん!?」
「うるせぇっ!あんな可哀想な子見捨てられねぇだろぉ!?」
少女の危機を救ったのは、消えたはずの青髪の冒険者だった
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「エクスヒール」
俺の発動した魔法は目の前の少女の身体を包み、折れた足や斬られた方の傷を直し始める。
チラリと見える鱗、白目のない人間離れした瞳。肌の色や耳の形など人との相違点は多々あるが、この少女には人間に酷似した感情がある様だ。安心したかのように涙を止め、傷を治療する俺を不思議そうな顔で見つめている。
可愛い
人に話した事は無いが、俺は少々モン娘と呼ばれる存在に関心がある。少々ね、うん。しかし、モンスターが明確な災害であるこの世界でモンスターに殺意以外の感情を持つ者は『怪物趣味』と罵られ、人から理解されることは無い。さらに言えば、十中八九この子が都市を巻き込む混乱の原因になるのだろう。この世界が物語なら、絶対にそうなる。そう言う事情もあり、この少女に飛びつく訳にはいかず見逃すという選択を取った。しかし、同じ存在であるはずのモンスターに襲われている所を確認した瞬間全てどうでも良くなった。
その直感に突き動かされ、━━元々見逃した所で誰かに殺されるのは分かっていた━━衝動的に魔法を放ったという訳だ。
「ありが、・・・とう?」
「「・・・っ!」」
やはり、何かはありそうだ。
「━━!━━━!?」
「だ、誰か来ましたよレイニーさんっ・・・」
「任せろ、・・・ファイアブレス」
俺のファイアブレスは、声の聞こえてきた方向に着弾し、勢いよく燃える。
2発、3発と続け様に放った魔法達は辺りに広がり、完全に道を塞いだ。
「クソッ!ファイアーバードだっ!別の道から行くぞっ!」
道の向こうから聞こえてきた声は直ぐに途切れ、炎ノ燃える音だけが辺りに広がる。
どうにかなったな、俺はもう大丈夫だと言うように少女の頭をポンポンと撫でた。
くすぐったそうにする少女、特に理由は無いが、何故か鼻血が出そうだなぁ・・・。
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「レイニーさん・・・この子どうするんですか・・・?」
「・・・ベルんとこで預かってくれないか?」
「む、無理ですよっ・・・!」
無理か。恐らく、9巻とかのイベントなのだろうし、助けたからにはベルの所にこの子を頼むのが1番イレギュラーが少ないのだが。
「・・・や」
ギュウゥッと、俺の腕を掴む少女を見る限り二重に手間がかかりそうだ。
それに、もう原作の知識は無いのだから必要以上に気にしていても仕方ない。中途半端に予測して動いたところで既に原作からは程遠い所を進んでいるんだ。
「分かった、俺が何とか皆を説得してみる。ただ、この事を言いふらしてくれるなよ?」
「まぁ・・・はい」
隠し事は苦手なベルではあるが、元よりこんな話を信じる者も居ないだろう。念の為という奴だ。
後は・・・どうやって、説得するか、の前に。
正規ルートに復帰する事だな。