RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
「先程、ワタシの記憶違イでなけれバ。ゼノスと言っていましたネ?」
少し発音がたどたどしいが、人間の言葉を話している、やはりゼノスだったか。
「あ、あぁ、そうだ。俺は、いや、俺達【メーティス・ファミリア】はゼノスを1人保護している。危害は加えていない」
「メーティスファミリア、フェルズが言っていた・・・アッ」
「フェルズ?」
「なんデモありませン」
なんでもあるだろ・・・、まぁ、いいたくないなら無理に聞き出すことは出来ない。関係の悪化に繋げたくないからな。
「・・・貴方は、ナぜワタシ達に嫌悪感を抱かないのですカ?罠にはめるわけでもなく、まるで・・・人間と会話しているかのように」
暫く話をしていると、そう質問された。嫌悪感・・・俺はともかく、この世界の大多数にとってはモンスターとは嫌悪の対象であり、そして恐怖の権化でもある。
対話なんて無理だ、例え知性を持っていたとしても、見た目はモンスター。人間に似たゼノス達でさえマトモに扱われず地上で売り物にされている。
あぁ・・・思い出したらまた腹が立って来たな・・・
「や、ヤる気ですカ!?」
「あ?あぁ、いや、違う。すまん、地上で酷い目に会ってるゼノスの人達のことを考えちゃって、腹が立ったんだ。俺は・・・見た目がなんであれ対話が出来るのなら好みはあっても迫害はしたくない、勿論、人間の全てがそう言う考えな訳じゃ無いけども・・・」
殺気というかなんというか、そう言う険悪な気配を感じたらしい彼女が戦闘態勢に移った。しかし俺に戦闘の意思はない、正直に、自分の感情を打ち明けた。
俺がこんな事を思えるのは、やっぱりモンスターが常識の存在ではない日本の人間だったからだろう。例えば、Gが擬人化して話しかけて来てみろ。多くの人間は忌避感を抱くだろう、完全に人間に見えるのなら別だが、目が違ったり、羽が生えていたりするんだ。
「・・・ソう、でスか。貴方は、人類と我々の共存は可能だト思イますカ?」
誤魔化しや茶化しの効かない真剣な質問、俺は答えを出す。
「無理だ、と思う」
「!」
無理だ、出来るはずはない。同じ人間でさえ肌の色や出身で迫害されると言うのに、殺し殺されのモンスターと同じ存在に対して人類は寛容になれない。
俺の考えに、驚き、悲哀を含む表情で彼女は動きを止めた。そしてフラフラと立ち上がる。コレは、俺の言葉を否定の一言と勘違いしているのではないだろうか、いや、その1面もあるけども。
「俺は敵対しない、約束する。俺一人じゃ頼りにはならないだろうけど、俺のファミリアは協力的だし、俺たち以外にも協力してくれる人達は居るはずだ。フェルズ、だっけ。その人も味方なんだろ?」
キチンと説明すれば、何人かは・・・
そう続けようとした俺の言葉は、彼女自身の声によって遮られた。
「皆、ソう言ってワタシ達から離れテいきましタ」
「・・・え?」
皆?それは、どういう。
「テイラーも、サーニャモ、ゲルグやナインズだって、ワタシ達に優しイ言葉をかけテ、結局は人間の方へト行ってしまっタ」
次々と告げられる名前に、聞き覚えはないが。察するにこれまでゼノスと接触してきた人間の冒険者なのだろう。
優しい言葉、つまり俺は味方だ、とか、仲良くしよう、とか。そう言った言葉を信じてきて、そしてその度彼女達は裏切られてきた。
地上で、喋るモンスターの情報は殆ど流出していない、彼ら彼女らも、本当の意味でゼノスを裏切った訳では無いのだろうが・・・。
「貴方も、キっとそウ」
瞳から感情を読み取る能力なんて持っていないが、彼女はそれを心の底から信じているようには思えなかった。
「まぁ・・・、そんな過去があるなら信じるのは難しいと思う。ただ頭の片隅にでも置いといてくれ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・アイツ、噂の
「ゴライアスを1人で倒した期待のルーキー様だから、中層ぐれー余裕なんだろ?」
街へと帰還したレイニーを無遠慮に眺める男達【イケロス・ファミリア】だ。
彼等は無法者の集まり、金や快楽の為に人を蹴落とすことを厭わない者達である、ましてやモンスターの見た目を持つゼノスに情が湧くはずもなく、犬を売り買いするかのようにゼノス達を売り捌いている。
「待て、そういや、スレイヤーもあのクエストに参加してただろ。・・・怪しいな」
主神様に、探りを入れてもらうかと、彼らは街を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おー、ラッキー。おーい、【スレイヤ】ーさんよぉー」
地上へと帰還すると、誰かに声をかけられた。
振り返ると、ニヤニヤとイヤらしい笑みを称えた美男子が居た。神か?
「俺に何か用ですか?」
「ひひっ、いやぁ、大したようじゃねぇんだがよぉ。俺はイケロス、よろしくなぁ」
ほーん、イケロスですか、嫌な予感がしますねぇ。無理に自然を装うとするとかえって不自然になる、ここは思い切り怪訝な顔をして、動揺を誤魔化そうか。
「お前さぁ、喋る
キタコレ、来て欲しくないけど来ちゃうんだなぁ、ちくしょうめ。
しかし、イケロスファミリアと聞いた時からほんのり覚悟はしていた。
「喋るモンスター、・・・正気ですか?」
神に嘘は付けない、どうにか、誤魔化す事ができれば・・・
「俺も、んな事あるわけねぇとは思うぜぇ。・・・で?
ちっ、引き下がらないのかよ。仕方ない
「生憎、
見たことはあるし匿ってすらいる。しかし、俺は喋るヴィーヴルの情報を他者から手に入れた事は、ない。
苦しいか・・・?
「・・・ふぅん、分かったぜぇ。変な事聞いちまって悪かったなぁー」
イケロスはそう言うと、姿を消した。
なんだか、上手くいかなかったような気がする。いや、うん、上手くいった、きっと、多分。
そう思っていよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふむ、ウィーネ以外にも知性を持つ存在が居たのか」
「はい、多分セイレーンです、他にも何人か居るような口ぶりでしたねー」
ホームに帰還してきたレイニーは、しっかりと成果を持ち帰ったようだ。大きな前進と言える。道中、イケロスから声をかけられたようだ。変な所で悪知恵の回るコイツは言葉遊びのようなやり方で追及を逃れたようだが、怪しまれてはいるのだろう。コイツがそう簡単にやられるとは思えないが・・・、警戒するようには伝えた。それに、本人が狙われないとしても他の団員が襲われればひとたまりもない。
自室へと戻り、思考を開始する。
まず、ゼノスは複数存在するようだ。
ギルドのクエストに、【下層で歌が聞こえる】とか、【装備を奪うモンスターが居る】とか。ゼノスの存在を示唆する情報がチラホラと載っている様なので、コレは真実と見ていい。
イケロスファミリアの連中はそれを攫い金にしている。具体的な目的は不明だが、ろくなものでは無いことは確かだ。
人工迷宮クノッソス、コレはとんでもない代物だ。規模にもよるが迷宮数階層分の規模だとしても隠れる場所には困らない。こんな
ここを拠点とし、ダイダロス通りにある入口から出入りしているのか。
イケロスファミリアの連中は特に指名手配されている訳でもないから、ゼノスをギルドに見られては不味いという事か。当然の事だが。
モンスターをダンジョンから連れ出せるのは、ガネーシャファミリアのみだ。ギルドから直々に依頼され、
・・・待てよ?
「何故、ガネーシャファミリアだけが、特例に?」
モンスターを扱うのは、なるほど。信頼の出来るファミリアにしか任せることは出来ない。だが、公明正大を謳っているファミリアはひとつでは無い。
たった1つの組織に全てを任せることは危険である。監視の目がない場合、その組織が見当違いの方向へと走り出した時に止めることが出来ない。
私の持論だが、お互いを監視し合う事で組織というのは正常に機能することが出来るのだ。
よもや、ギルドやガネーシャがイケロス達と手を組んでいるとは思えないが・・・何か、知っているかもしれない。
「探りを入れるか」