RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
あと、総合評価4000突破ありがとうございます
メーティスが朝早くから出かけたすぐ後。メーティス・ファミリアのホームに珍しい客人が訪れていた。
白髪に
ベル・クラネルである。
「あ・・・すみません。レイニーさん、いますか?」
「レイニー様に用ですか、では、呼んでくるのでお待ち下さい」
物憂げな雰囲気を纏う英雄。それは望む人物が現れても変わらなかった。
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「モンスターが倒せない!?」
「はい・・・」
大問題じゃないか、わざわざウチのファミリアを訪ねてくるから、何かと思えば。
ベルが言うには、知性を持つモンスターの存在を知ってしまったせいで
『喋りだしたらどうしよう』
という考えが頭から離れず、どうにも腕が動かないらしい。
「あの時、レイニーさんに全部を任せた僕が今更こんな事を言うのも変ですけど・・・。あの子のことを教えて貰えませんか?」
このままだと、僕は何も出来なくなる
ベルはそう言った。
「・・・」
コレは・・・伝えた方がいいのかね。モンスターが倒せなくて、ベルが殺されたらとんでもない事だし。ウィーネの存在は既に知ってるんだから広まらなかったらベル1人ぐらい変わらない、だろ?
「分かった」
それから、ベルには色んな事を話した。
ゼノスの事、ウィーネの事。クノッソスの存在やゼノスを付け狙う【イケロス・ファミリア】の事も。
ベルは一つ一つに驚き、悩み、そして憤り。出会った事もないゼノス達を思い涙さえ流していた。
どうせ話すなら味方になってもらおうと、ウィーネに会わせて情を湧かせたのも涙の理由だろう。
ウィーネは秒でベルに懐いた。ぶん殴りてぇ・・・
「レイニーさん、その・・・僕、出来ることは手伝うので、何時でも呼んでください。ファミリアの皆に迷惑はかけられないので、やれることは少ないかもしれませんけど・・・」
「おう、ありがとう。なにかあったら連絡するよ」
ベルは帰って行った。具体的な解決にはならなかったが、ウィーネと触れ合い、モンスターとゼノスは違う、という事に納得したようだった。とりあえず、死にはしないだろう。
「帰りましたか。・・・あの方が主人公、なんですよね?本当に信用できるのでしょうか」
リリがそう言葉を零す。なんか・・・今更だけど人の口から主人公とかいうメタ発言が出ると違和感あるな・・・まぁ俺が隠しきれなかったせいだけども。
ベル・クラネルは主人公である。
異常なスキルを発現する程の愚直な恋をし、アイズ・ヴァレンシュタインに追い付く為に幾つもの困難を命をチップに乗り越え、人々を救ってきた英雄だ。
時に挫折を経験し、しかしそれを糧により輝きを増すベル。物語なら当然のストーリーかも知れない。しかし、今この世界ににおいては正真正銘、自己犠牲の上に最良の結果を掴み取る主人公なのだ。
俺とは違う」
「え?」
「・・・ん?あ、声に出てたか・・・いや、忘れてくれ」
俺とは違う?当たり前だろ。所詮未来の知識を棚ぼた的に得ただけの凡人だ、俺は。なんの因果かRPGの能力なんてふざけた能力を持ち、関わる気もなかった原作が目の前に現れた時、結局介入を選択してしまった馬鹿野郎。
もう原作崩壊は恐れずに動く事を決めたが、俺さえ居なければもっと物語はシンプルだったはずだ。それに、既にアドバンテージだった知識もない。これからは、世界さえも知らない新たなストーリーが紡がれるのだろう。
そして、その余波で死ぬ筈のなかった誰かが死んでしまったりなんか・・・。
俺は、ふとした時にそんな事を考える。もう、どうしようも無いことを後悔するのも凡人の特徴なのだろうか。
「・・・リリにとっての主人公は、レイニー様ですよ」
「・・・はい?」
「前も言ったじゃないですか。レイニー様の知るリリと、今この場所にいるリリは別人です」
だから、あまり自分を卑下しないでくださいと。リリは言った。
希望は、常に輝き続けて欲しいと。
なんとも、無茶を言うものだ。
俺は自分自身が凡人な事は知っている。成績は少し悪いくらいだったし、運動は少し得意な程度。この世界に来て、恵まれた体躯を得てからも失敗続きで、リリの言う輝きなど何時見せたのか覚えが無い。
「それでも
・・・
「ちょ、ちょっと恥ずかしい事を言ってしまいましたね。でも、コレが本心ですから」
リリはそのままどこかへ行った。照れくさかったのだろう。かく言う俺も、顔が熱くなっている自覚がある。リリの方から去ってくれたのは幸いだった・・・。
「主人公・・・」
リリの一言で、もう少し頑張ろうと決意する俺は単純なんだろう。
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「私の
「・・・驚いたぞ、メーティス。よもやお前が下界の子供を慮るとはな」
ギルドのとある一室、祭壇の置かれた部屋の中で女神と老神は対峙した。
突然ギルドを訪れたメーティス、何事かと思えば実験をやめろと言う。
実験、怪物と人間の架け橋として希望を見出し、その本質を見極めているこの現状の事を表しているのだろう。
「ゼノスが複数存在している事は知っている、あの竜の娘も直ぐに引き取れ。お前もずっと見逃すつもりでは無かっただろう?」
「・・・危害を加える気はない、ただ」
「それは問題じゃない!」
それまでの静かな態度が嘘のようにメーティスは猛った。
「モンスターを囲っている等と世間が知れば、子供らの未来は閉ざされる!」
ファミリアの全員が気が付きながらも目を逸らした問題、その場では何も言わなかったメーティスは、誰よりもその可能性を危惧していた。
「子供達はあの娘を見捨てられない、私もそうだ。頼む・・・」
メーティスはウラノスへと頭を下げた。
・・・嘘の気配は感じない。つまり、本当に子供達の事を思っての行動だと言う事だ。
「随分と丸くなったな、メーティス」
「・・・私も、こんなに変わるなどとは想像もしていなかったよ」
本当に丸くなった。
プライドが高く、全てに興味が無いかのように引きこもってばかりだったメーティスが、下界の子供の為にここまで出向き、あまつさえ頭を下げるとは。
・・・メーティスは、
「・・・分かった、追って指示を出す」
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「あぁ、嘘じゃぁねぇよ。【メーティス・ファミリア】はヴィーヴルの奴を匿ってる。団長から
「ほお、とんだマヌケが居たもんですねぇ。まさか、隠しもしないとは」
おい、メーティス・ファミリアを見張ってろ。
ゴーグルをつけた男、【イケロス・ファミリア】団長のディックスからの指示がハンター達へと飛ぶ。
人ならざるものの嗚咽が響く悪趣味な隠れ家の中で、イケロスは思いを馳せた。
(あの餓鬼、上手いこと俺の質問を交わしやがった。あの返しじゃ嘘かどうかまでは分からねぇ。アドリブなら、よくあのタイミングで思いついたもんだ)
しかし、どうにも臭い。確証は無いにせよ、メーティスファミリアは怪しいのだ。
そして、イケロスにとっては間違いだろうがなんだろうが、
「精々、俺を驚かせてくれよぉ?お前らぁ」