RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
「家具を?」
「オレらはまだここに来て日が浅いからよー、部屋もスッカラカンなんだ」
週に何日かあるダンジョンに潜らない休息日。朝飯食べる為にファミリアの全員が集まる食堂でサミラがそう話し始めた。
曰く、サミラと春姫の部屋が殺風景なので買い物をしに行きたいとのこと。
そう言えば自分も本棚が欲しいと思っていた所だったっけ。
「俺もついて行っていいか?買いたいものがあるんだ」
「あたしも暇だし行こうかな?」
「ウチも、欲しいものがあるから行くなら一緒に行こうかな」
私も、私もと結局主神含め総勢8名と、そこそこな大所帯での買い物を敢行することになった。まぁ言うて我がファミリアは歴史の浅いファミリアだ。リリ達が来たのだって・・・半年経ってないのか?浅いなホントに。
世界がベル・クラネルの成長に合わせているのか、中々濃密な数ヶ月だった。
そんな感じで未だスカスカのホームに自分達は暮らしている。引越し作業だったりその他で時間を取られ、街を散策するのは久しぶりだったかもしれない。全員が1度部屋に戻り、私服に着替えて戻って来る。皆一様に可愛く、一緒に街を歩けるのは男として嬉しいものがあるが・・・
「あのー、春姫、服は・・・着物しかないのか?」
「?はい、それに、1番慣れている格好ですので」
浮いている、圧倒的に。前職の面影か、鮮やかで人目を引くその衣服はとても街中で出歩くのに適しているとは思えない。
「誰か、春姫に服を貸して貰えないか?」
無いのであれば仕方が無い、今日の所は誰かが・・・と提案をしたものの、何故か殆どの者が目を合わせようともせずにどこか遠くを見始める。
「ニナ?」
スっ
「リリ?」
スっ
「神様・・・」
「チッ、サイズが合うわけないだろう。当て付けか?」
サイズ?サイズと言うと・・・ハッ!
俺は即座に土下座した。
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結局、カサンドラの服は何とかサイズがあったようで、それに着替えてもらうことになった。サミラも似たような体格ではあるが、まぁアマゾネスなので春姫に着させるのは流石にやばい物が多い。
「どう・・・でしょうか?このような衣服は慣れていなくて」
かわいい、恥じらいの表情でホームから出て来た春姫はたまに見掛けるカサンドラの服を着ていた。あまり意識する事は無かったが、いつも着物を着ていた春姫なので、この格好は新鮮だ。
「あ、えっと・・・似合ってるよ」
「そ、そうですか?・・・嬉しいです」
もじもじもじもじ、ホームの入口で俺達は気不味くなっていた。
「はーい!問題もないようですし、さっさと店に行きますよー!」
リリが先導してホームを出ていく、正直助かった。この後何を続ければいいのかさっぱりわからなかったからな・・・。それにしても、チラリと周りを見るも見えるのは目が眩む様な美少女ばかり、俺は前世で相当な徳を積んだのか?いや、ゲームしてラノベ読んでただけの筈だけどな。
メーティス様
この世界の人間では無いからか、神特有のオーラと言う物はイマイチ感じられないが、人間離れした美少女だな、と言う感覚は感じる。地面に着いてしまうかと言う程長い髪は光を拾いキラキラと輝いていて、1番目を眩ませに来ている。美少女
ニナ
初めて出会った時は特に意識していなかったが、可愛い。元気系の同級生みたいな感じだ。最近は少し落ち込んでいた時期もあったみたいだけど今は笑顔が増えた。リリと2人で落ち込みコンビな印象があったので、元気になってくれて良かったとは思う。たまにタマヒュンな表情も垣間見えるが今の所被害が此方に及んだことは無い。美少女
リリ
言わずと知れた小人族の美少女、トレードマークの大きなバックパックは流石に今は背負っておらず、その体格がよりハッキリ小さい事が分かる。見た目だけなら子供に見られてもおかしくないが、それでも一個下だ。美少女
ダフネ
前のアポロンファミリアの影響か、基本的に他人を信用していないような姿勢だったが、同世代の女の子に囲まれて態度が柔らかくなった。今では自然な笑顔を見る事もできる、まぁ俺と話している時は基本的に仏頂面だが、美少女
カサンドラ
可愛い、いや綺麗かな。穏やかな目付きでこちらを見ている事が多く、目が合うと2分の1位で話しかけて来る。ダフネと仲が良く、普段は2人で話をしている事が多いかな、予知夢のこととなると思うようにはならないが・・・、美少女
春姫
可愛い、可愛い。普段見慣れない衣装なので普段より可愛い。あれ?よく見たらズボンの後ろから尻尾が出てる。え、穴空いてるの?えっち!美少女
サミラ
歓楽街では無い普通の街に出るにあたって、流石に下はスカート的なものを履いては居るが・・・、え、上は?流石にえっち。仲は・・・俺が1番良いのかな?最近は諦めて猥談に応じているので、自分の性癖がさらけ出されつつある、前世の知識(実施経験なし)を使って話しているので、この世界的に新しい知見な事が多いらしくよく昂って襲いかかって来る。美少女
うーん・・・前前世の俺ありがとう、色々あるけど幸せです。
「1番の目的は家具ですが、持ち帰る事も考えて最後にしましょう」
一般人であれば有り得ない選択肢ではあるが、自分達は上級冒険者。邪魔だという問題点を除けば1人でもタンス程度なら運ぶ事は出来る。ストレージに入れればという話ではあるが、流石に街中で家具を消し去るなんて事は出来ない。
家具を後回しにする、そう決め代わりに先に他の行き先をメンバーに確認する事となった。
メーティス様と俺は本と棚。ニナとリリは新しい服、ダフネとカサンドラは雑貨屋で欲しい物があると言っていた。
「まぁ勿論春姫も服を探しに行くとして、そうだな。まずは雑貨屋に行こうか」
この街に1番詳しいのはリリ、昔取った杵柄的なものでスムーズに雑貨屋へと案内してくれる。
「ここがリリのオススメの店です。値段はマチマチですが、概ね相場と考えて大丈夫ですよ」
「リリは良く来るの?」
「まぁ、最近はヴァリスにも余裕がありますから」
わいわいやりながら、自然と店の中で離れて行き、3つのグループが作られる。
俺・メーティス様・サミラ
ニナ・リリ・春姫
ダフネ・カサンドラ
俺達は特に欲しいものがあった訳では無いが、物を見てみると中々面白い物が多い。
「あ、本のコーナーもありますよ」
「見た事の無い本も多いな。なるほど、本は本屋だけにある訳では無いのか・・・全部買おう」
「ちっ、エロい奴はねぇのかよ」
「後の本屋に期待しよう」
「あっ、この置物可愛い」
「本当ですね・・・7000ヴァリス!?高過ぎます!」
「値段で見るものでは・・・」
「そんなんじゃ何も買えないよ〜」
「えっ、この人形買うの?」
「うん、ちょっと、似てるから・・・」
「似てるって、あっ、アイツ・・・まぁいいけどさ。可愛いコップもキチンと探さないと」
「ファミリアの皆、喜んでくれるといいね」
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三者三様、いや三グループ三様の買い物を済ませ店の入口に集まる。人目につかない所でサッとストレージに回収し、何食わぬ顔で次の店へと向かう。次の目的地は服屋だ。
「・・・人が増えて来たな、服屋は中心地にあるのか?」
「そうですね」
「そうか。おいレイニー、私は疲れた。おんぶしろ」
「はいー?」
拒否権を使用したのだが、通用しなかった。抵抗虚しく背中によじ登られた・・・。周りの視線が痛い、髪の色が一緒ならばまだ兄妹とでも思って貰えたかもしれないが、青と金。更に周りには同行者と思しき美少女が沢山・・・俺が周りの人でも視線に殺意が混じる事だろう。更に言うなら同行者も少し視線がキツいしな・・・
「着きましたよ」
「やっとか・・・ほら、神様降りてください」
身体を揺すって促すも、降りる気配がない。
「次の本屋まで、体力を温存する。このまま行け」
「何言ってんだ
嘘だろ・・・店は中々繁盛しているみたいだし、入口に固まっている今もチラチラこっちを伺うような気配を感じる。そんな所に行けなんて鬼畜かこの人は。
「メーティス様、レイニー様も困っています。そろそろワガママはやめた方がよろしいのでは?」
「私の身は一般人だぞ、普段運動もしていなからもう歩けないのだ」
神様の言い分は最もらしいが、流石にこれまでの道のりで歩けなくなる程か弱い訳では無い、面倒なだけだろう。少しつつかれても意志を変える気もない様子、俺は分かりましたと店の中へ足を進める。
「てここ女性服専門店かい!」
「だって別にレイニー様買わないでしょう?それなら種類の豊富な方がいいと思いまして」
レイニーは神様を中に落として外に出た。
待つこと2時間、2時間だ。入口でただ時間を待ち続ける事も出来ず、俺は買ったばかりの本を読んでいた。アルゴノゥト・・・良い奴じゃないか。あ、これベルが憧れてる英雄か。
「・・・レイニー」
「ん?終わったか?・・・ぁへぇ?」
本の内容に浸っている時、いつの間にか近くに居たらしいダフネに声をかけられる。ようやっとか、まぁ丁度本も終わったし、とダフネの方に顔を向けると
「え、と。え?な、え?ぇ、なんで?」
「・・・か、感想言いなさいよ」
「えっちです」
「っ!ばか」
ダフネが居た、声を掛けられたのだからダフネが居ることは当たり前なのだが、様子がおかしい、と言うか服がおかしい。
「おま、それ・・・アマゾネスの民族衣装、だよな?」
「・・・罰ゲームよ」
なんの!?何があったら服を買う時に罰ゲームが発生するんだ!?
女の子は恐ろしい・・・
話を聴くと、店の中でアマゾネスの衣装を見つけたサミラが提案したらしい。神様も率先してのっかり(参加はしないが)眷属の中での厳正な審査の結果、ダフネが選ばれたと。それでそのままでは面白くないから俺に感想を求めて来いと。
「悪ノリが過ぎるって、とりあえず戻ろう」
ダフネが周りに見られないように隠しながら、店内へと戻る。
店の中ではあわあわしているカサンドラと春姫、そしてニヤニヤしているその他達が居た。
「感想はどうだ?レイニー」
「えっちでした、流石にコレは・・・えっちでしたけどやり過ぎですよ」
ポコっ
ダフネの味方をしていた筈だが、後ろから1発殴られてしまった。
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「よし、本屋に着いたな。レイニー、早く降ろせ」
本屋までの道も背中の所有権を握られていたが、店にいる間は自由だ。この街で1番大きな本屋に着いた俺達は各々興味のある本を探しに別れた。
神様はとにかく持っていない本、俺と春姫は英雄譚。リリとダフネはダンジョンに関する物を、ニナ・カサンドラは普段本を読まないので、色々見て回ると言っていた。サミラ?春画でも探しているんじゃない?
「英雄譚のコーナーは一際大きいな、やっぱり人気が凄いからか」
「好きだったあの作者様の新刊が出ています、『ダンジョンに潜ったらとんでもマジックアイテムで天下無双!?〜俺はオラリオを統一する存在らしい〜』聞いた事の無いタイトルですが、きっと面白いのでしょう」
「他の見る限り、随分方向性変えたみたいだなその人・・・」
「ダフネ様は前のファミリアで18階層以降も定期的に探索されていたのですよね?本を読む限り、やはりリリ達の存在が足を引っ張ってしまいそうなのですが・・・」
「暫くはダークファンガスとガン・リベルラ以外に不意打ちをしてくる敵は居ないし、その2つも気が付かない程隠密性が高い訳でも無いから、大丈夫だと思う。Lv2にはなってもらいたいけど、春姫はまだね・・・」
「わわっ、ここ大人の本がいっぱいだよ」
「ひゃぁっ、朝の予言はこういう事だったの・・・あ、あそこに居るのはサミラさん?」
「うーん、アイツの性癖は何処にも載ってねぇな。参考にしようと思ったのによぉ」
「ふむ・・・持てん」
山と見紛う程の本を買わされ、悟られずにストレージにしまうのは大変だった物の、ようやく全ての寄り道が終わりメインである家具の店に来る事が出来た。勿論、本を選ぶのに体力を使ったらしい主神様は背中に居る。
「あーじゃあ、俺はこのまま2人で本棚探しに行くから。皆もとりあえず好きな所に行ってきてくれ。また入口に集まろう」
家具は一つ一つが相当な場所を取る、生産系でかなり大手のファミリアらしく、5階建てのフロア全てが家具で埋められているので目当ての物を探すだけで一苦労だ。神様が降りる事を拒否したので、チラチラ見られながらフロアを歩く事になる。
「あ、見つけましたよ、神様・・・神様?」
「zzz・・・」
「寝てらぁ、マジかよ」
どうやら本当に疲れていたらしい、恩恵を受けた生活をしてもう1年近く、前世の身体の事は余り覚えていないが、一般人の女性の身体と言うのは存外弱いのか。置いておく場所も無いので、仕方なく神様を背負ったまま本棚を物色した。
「・・・んん・・・もっと稼げレイニー・・・この世の全ての本を買ってこい・・・・・・だが無理は・・・」
「・・・なんじゃ
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神様を降ろすことが出来ないまま買い物が終わり、大きな家具は後日ホームに届けてもらう事になった。追加料金は掛かってしまったので、リリが少しプリプリしていたのが印象的だ。
皆目的の物は買えたみたいで、ホームに帰る道で今日買った物について楽しく話をしている様子が伺える。
「なぁサミラ、俺の記憶違いじゃ無ければ、どデカいキングサイズのベットを買っていたよな?」
「あぁ、何しに何人来ても大丈夫なようにな」
ナニを想定しているんだコイツは。全く。
「レイニーは幾つも本棚を買ってたよね?あんなに本あるの?」
「いや、神様用だよ、寝てたからな」
センスに合わなくても知らんぞ・・・一応、部屋に入りそうな物を選んだつもりだ。
「そう言えばダフネにカサンドラは、コップを買ってくれてたよな。帰ったら早速使ってみよう」
「ふん、そう言えばこのファミリアに恩を返してなかったと思っただけ」
「このファミリアに入れて良かったです、本当に・・・楽しいですから」
素直じゃないやつ、服屋ではあんなに全てをさらけ出したのに・・・殺気!?
「リリは特に何も買いませんでしたが・・・たまにはこう言うのもいいですね」
「私も、非常に楽しかったです」
リリと春姫も満足してくれたらしい、春姫は今回何着も服を購入したので、タンスも買ってある。届くまでは俺のストレージがタンス替わりだ。
「・・・私も楽しかったよ」
「起きてたんですか・・・まぁ、それは何より。俺も楽しかったですよ」
ホームの門を潜り、各々の荷物を片付けたら丁度お腹のすく時間になる、帰りに仕入れた食材をふんだんに使い豪華な食事会の開催だ。
この景色を絶対に失いたくない。明日目が覚めればまたダンジョンに潜るだろう。世界は止まらない、めまぐるしい変化を持ってその上で生きるもの達を掻き回す。俺に出来る事は大したものでは無いが、目の前の景色を守る事位はそう難しい事では無いはずだ。背中に刻まれた文字が熱を持った気がした。