RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位   作:アルテイル

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凄まじい勢いで書く力が失われて行ったので、次の更新はまた時間が経つかと思います。小説を書く力と言うよりはこの作品に掛ける力が最高に削られている感じですが。
かつて匿名で投稿してエタらせ続けている多くの作品を再開してみたい気持ちがあります。
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GGO
グリムガル
このすば

ダンまち作品に関しては3つくらいエタッた覚えが・・・。


実績解放・回復術師

バタリと、槍の男が倒れた。

 

「ーーーハッーーーハッ」

 

疲れを知らない身体が、精神の悲鳴を如実に反映する、精神力( マインド)がギリギリだ、俺の魔力では模倣した魔法はそう何度も使えない。ウチデノコズチは馬鹿げた消費魔力だし。

 

【ラウミュール】で敏捷と耐久を底上げし、【ウチデノコヅチ】のランクアップ。現状最も費用対効果のあるバフだ。余裕があればステータスの死守等も発動出来るがいちいち全て発動していては劣化した持続時間の影響もあり戦える時間が無くなってしまう。

 

身体を覆っていた燐光は既に消え掛けている、一瞬にして引き上げられた身体能力がこれまた一瞬にして元に戻り、重力が突然増加したかのような感覚に襲われるが、これが正常だ。

 

「ーーーそうだ!みんなは!」

「・・・大丈夫だ」

 

振り返ると、そこにはみんなのいつもの姿が。仲間と争うこともなく、怪我こそしているものの全員が五体満足で立っていた。

 

「レイニー!」

「うぉっ」

 

ラーニェの影から飛び出してきたウィーネ、受け止める体勢が出来ておらず地面に押し倒されてしまった、元気でよろしい。

 

「無事で良かった・・・、直ぐに怪我を治そう。エクスヒール!・・・あ、魔力が足りない。ヒールヒール」

 

ポーションを取りだしMPを回復する、幸い大怪我をしているのは最初にいたセイレーンの子だけでほかは目立った傷は無い。まだ血は流れているが、ストレージから包帯を取り出し止血していく。

 

「ごめんな、幾つかの傷が治せないみたいで」

「あり、ガトう・・・」

「気を失った様だな、命に別状はあるまい。本当に・・・ありがとう。私達も命を助けられた」

 

言葉と共に目を閉じた彼女に少し焦ったが、ラーニェが言うには問題は無いらしい。

 

「レイニーさん、ありがとうございました。貴方が居なければどうなっていたか・・・」

「助けられて良かったです、他のメンバーに連絡は?この冒険者達を置いていく訳には行かないので、連行したいんですが」

 

自らが手を下すのは流石に心がしんどいし、置いていった所で確実に死ぬとも言いきれない。そもそも情報を残させないと行けないので、、皆にも出来れば殺して欲しくない・・・襲われたゼノス達の気持ちを考えない、俺のわがままだが。

 

「先の移動中にもうしてある、その後は連絡がつかん。フェルズも直に来るだろう。ふん・・・本当なら殺してやりたいが・・・。他の同胞達の居場所を聞かねばならん」

 

了承を得た所で、気を失っている冒険者達を縛り上げていく。強化された身体で力加減を間違えていないか心配だったが、冒険者達も死亡している者は居ないようだ。

 

もちろん、ただの紐では意味が無いので商店で購入した投げ縄を使う。昔リリの武器に使った奴だな、不壊なので結びを解かれない限り絶対にちぎれる事はない。

 

武器は全て回収、持ち物も根こそぎ奪ってやった。例のダイダロスの扉を開ける為の鍵も問題無く見つかり、一段落。

 

槍の男から奪った赤く染まった槍もしまっておく。なんの素材が使われているのかは分からないが、恐らくこの槍が治らない傷の原因だ、悪趣味な野郎だな。

 

「【モードチェンジ・じゅもんをつかうな】」

 

冒険者達の魔法を封じる、槍の男以外にも短文の魔法を持つ奴が居るかもしれないからな。口を封じても、集中と口の中での詠唱を挟めば魔法は発動することがある。なので封じるのは必要な事だが、少し回復していた精神力がまたしても危険領域( レッドゾーン)に、コレだからこの身体は、魔法を使い辛いんだよなーーー

 

「おっと、どうした?疲れたのか?仕方の無いやつだ」

 

この人数なら問題無いと計算していたが、それは間違いだった。精神の疲弊から身体がふらついてしまう、近くで作業をしていたラーニェにぶつかってしまったようで、怒られる事を覚悟したが何故か頭を撫でられた。

 

「あ、ご、ごめんラーニェ。ちょっと魔法を使い過ぎて」

「魔法?魔法か、私達には縁が無いが、お前と行動するにあたってマナポーションを渡されている。飲むといい」

 

ラーニェの腰のポーチから青い瓶が取り出され、蓋を取り口元に押し付けられる。ちょ、自分で飲めるって・・・

 

「あ、あぁ、お気遣いありがとう。けど俺にはポーションの効果が無くてさ」

「・・・さっき自分で出した物は飲んでいたのに、私のは飲めないか、そうか。そうだよな、お前の事を嫌っていた者のポーションなど飲めないよな」

 

なんかラーニェのキャラクターが変わってしまっている。こんなに可愛かったかな・・・。皆には自分の過去や身体の事は話していなかったので、俺が疑っていると言うような受け止め方をしてしまったようだ。

 

「いや、本当にそうなんだよ、さっきのは特殊なポーションで、あれ以外は使えないんだ。でもありがとう、折角だから頂くよ」

 

言葉だけでは足りないだろう、ポーションを受け取り一息に飲み干す。話を聞く限りマナポーションは頭がスっとして疲労が引いていく感覚があるようだが、何も感じない。やはり効果は無いようだ。味も・・・不味い。

 

「・・・うぅ・・・」

「「!」」

 

その後は倒れた冒険者を運んだりしながら仲間が集まって来るのを待っていると呻き声がした、冒険者達が目を覚ましたようで、狼狽えた声が次々と聞こえてくる。

 

「【】!【】!な、呪詛がっ・・・!?」

 

奴等も捕まっていたい訳じゃない、槍の男を筆頭に複数の冒険者が魔法を使おうとしていた。言葉が途切れ詠唱が完成しない様子だがな。俺の魔法の効果時間は一律1時間、この人数なら効果が切れる前には精神力は回復している。

 

「起きたかクソ野郎、お前の魔法は俺が封印した」

「封印だと・・・!?・・・へっへへへ。クソッタレ、なんなんだよテメェはよォ。化物の仲間は化物だな?」

「スパーク」

 

ぎっ!

 

濃密な悪意、何があれば人間がここまで良心を捨てられるのか分からないな。

 

「っ〜、んだよ、化物よわばりは嫌か?なんで化物に加担してやが「スパーク」」

 

縛られ、身動きの取れない男が悶える。弱いとは言え身体の中を電気が走る感覚はいいものでは無いだろう。その声を聞きつけてか隣にいた大男も目を覚ます。

 

「おいディックス!お前負けやがったのか!」

「あぁ!?テメェらが雑魚過ぎるからだろうが!」

 

男の名前はディックスと言うらしい、その罵声をきっかけに次々と目を覚ました冒険者達はお互いを罵りあい醜い様を晒す。捕まっているというのに呑気なものだ。人間のこんな部分、ウィーネ達には見て欲しくないな・・・。多少離れた所で、耳のいい彼女達は聞き取ってしまうんだろうけど。

 

魔法を使おうとした冒険者に釘と共に魔法を打ち込み、黙らせる。

 

「チッ、神の言葉でいやぁ人生終了(ゲームオーバー)ってか、死のうにもこの身体はそうそう自殺も出来ねぇしなぁ」

「お前の将来に興味は無い。どうせ吐く事になるんだ、さっさとアジトの場所を教えろ。嘘をついてもいいが、その後の保証は出来ない」

「へっ!餓鬼が、殺す覚悟もねぇだろうが。目を見りゃ分かんだよ、青臭い餓鬼の「スパーク」〜ってぇな!」

 

こう言う心を見透かしてくるような人間は苦手だ、弱い自分がバレてしまう。

 

「レイニー・・・同胞が合流してからでも遅くない、無理はしなくていいぞ」

「・・・あぁ、分かった」

 

怪物趣味が。

 

そう呟かれた時男に魔法を放とうとして、やめた。この世界から見て異常なのは俺の方だ。モンスターを過剰に痛め付けるこの冒険者達の所業は常識では無いが、モンスターに対するスタンスとして間違ってはいない。実際自身も普通のモンスターを倒し、生活しているのだから。

 

落ち込んだ気分で仲間の到着を待つ、まぁいい、恐らく予知夢の危険はこれで去っただろう。油断は禁物だが。

本来はこの場所でラーニェ達が壊滅、報復でゼノス達が次々にダンジョンの冒険者を殺してしまう、そんな筋書きだろうか?俺が読んでいた頃は、もっと明るい物語だったのにな・・・。これも俺の影響か、原作通りの話なのか。もうそれは誰にも分からない。

 

「無事か!ってこりゃぁ、全部終わった後か?」

 

まずリドのグループが到着、それから程なくしてレイ、グロスの隊が集まった。フェルズは今全力で此方に向かっているらしい。

 

「話ハ聞いタ、レイニー、心からノ感謝を」

「本当ニありガトうござイマす」

「仲間を助けてくれてありがとうな」

「改めて言おう、ありがとう」

 

集まった皆から口々の感謝の言葉を掛けられる、これには気分も急上昇だ。よせやい、褒めてもお菓子しか出てこないぞ。

 

菓子を求めてバトルロワイヤルが繰り広げられている時に、丁度フェルズが到着したようだ。ワーワー騒いでいるゼノス達に怪訝な表情(雰囲気)の様子だが、1人離れていた俺に声を掛けてくる。

 

「無事で良かった。・・・この状況は、まぁいいか。捕まえた連中からアジトの場所は確認出来たのか?」

「いや、まだだ。少し荷が重くてな」

 

まだまだ俺は心が弱い様で、悪意の塊であるディックスと言葉を交わすことが難しい、技と駆け引き、それは口喧嘩でも適用されるみたいだ。冒険者達の方を見ると、ディックスは平然とした様子だが他の人間の憔悴は酷い。40ものモンスターに囲まれ、身動きは取れず、更に相手は知能を持ち自分達に明確な敵意がある事が分かっているからだ。

 

「ふむ、あの様子なら問題は無さそうだ。私が行ってくる」

 

フェルズは冒険者達に近付き、その中でも最も怯えている魔法使い風の男に話し掛けた。

 

「私が何を聴きたいかは分かっているだろう、痛い目を見る前に話すといい」

 

男はディックスの方を見た、やはりディックスがリーダーなんだろう。情報を漏らした時の報復を恐れているのか?

 

「心配しなくていい、イケロスファミリアの幹部達は今後外を出歩く事は無い。生涯牢獄か、あるいは、な」

「あぁ!?ふざけてんじゃねぇ、そんな大層な事はしてねぇよ!」

 

大男が憤慨するが、言っている事はある程度正しい。

 

現在の法律ではゼノス達の存在は認められていない、例え連中が彼等にどんな扱いをしていたとしてもそれだけなら表向きには普通の冒険者だ。そして密輸やその他犯罪行為を足したとしても、知る限り終身刑や死刑になるほどではないような気はするが・・・

 

罪は私が決める(・・・・・)納得出来たか?」

 

イケロスファミリアの連中は存在しない様なモノ、自分達が消してきた痕跡(過去)が、存在しない事を証明するのだから皮肉だな。フェルズがギルドの所属とはいえその身が綺麗な訳では無い、必要とあらば、と言う事だろう。

 

「ち、近い扉は18階層だ・・・そこから案内出来る」

「バロイ!?テメェ!」

「ひいっ!」

 

男はアジトへと繋がる扉の場所を吐いた、再び・・・冒険者達の罵声が響く。

 

首尾よく情報を得たフェルズは此方へと向かってくる。争奪戦も終わり、準備は出来たようだ。

 

「フェルズ。同胞の傷が治らないらしいのだ。何かアイテムを持っていたりしないか?」

 

セイレーンを抱えたラーニェがフェルズにそう話し掛ける。フェルズは息を飲み、初めて見る魔法で呪われた傷を全て回復させた。苦しみの表情が抜け、セイレーンの寝息が穏やかな物になる。

 

「直ぐにアジトに向かおう、このセイレーンを見る限り・・・酷い事になっているだろう」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「なんて事を・・・」

 

案内役のバロイ以外は、クノッソスの出口から直接ギルドへと連行する様で見たことの無い冒険者達が連れて行った。ギルドと関わりのある冒険者だろうか。

 

アジトに急行した俺たちを待っていたのは、数えるのも馬鹿らしい程の大量の檻、そしてその中で鎖に繋がれているゼノス達だ。

 

「治癒魔法を使う、皆は檻を開けてくれ【1度は拒みし天の光。浅ましき我が身を救う慈悲の腕】」

 

数が多過ぎる、一人一人に魔法を掛けるのでは時間がかかりすぎてしまう。一先ず、弱りきった人達を回復させる為にカサンドラの魔法を使う事にした。

 

「【届かぬ我が言の葉にの代わりに、哀れな輩を救え。陽光よ、願わくば破滅を退けよ ソールライト】あっまた・・・」

 

感情が昂って加減を間違えているのか、再び精神疲弊(マインドダウン)寸前だ、倒れる訳には行かないのに。今度は支えてくれるラーニェもいない為地面に膝を着いてしまう。

 

「どうした?マインドダウンか?ふむ、仕方が無い、秘蔵の高位魔力回復薬(ハイ・マナポーション)だ、飲むといい」

 

あ、なんかデジャブ・・・膝を着いた俺にフェルズが気が付き、ポーションを飲ませてくれた。

 

「ありがとう・・・でもごめん、俺回復薬が効かない体質で」

「何?聞いたことの無い話だな」

 

高位のものでも欠片も感じる物が無いということは、もう望みは無いだろう。

 

魔法を使う限りこの疲労感と戦わなければならない。気分を落ち着けて立ち上がり、囚われていた中でも衰弱の酷い者にヒールをかけて行く、だがここでも呪われた傷が邪魔をする。ほとんど全ての人達に治らない刺傷があり、弱っている人はその部分が腐っていたりしている、フェルズの魔法で全てを回復するのは現実的では無いため酷い傷以外は我慢してもらうことになる・・・

 

「ごめん・・・俺が解呪のアイテムを持ってたら」

「アイテムがあったとしても、かなり特殊な手順を踏まないといけないぞ。専門職があるくらいだ、体力を回復出来るだけでありがたい」

 

精神力の不足でどうにも辛い、悲観的というか、思考がネガティブになっているのを感じる。仕事を終えたフェルズが慰めの言葉を掛けてくれた、知識としてその事実は知っていても、やはり何か出来たんじゃないかと思ってしまうのは俺の中身が弱いからだろうな。多少心のLvが上がってもレア度が低いのに変わりはない。

 

「そう落ち込むな、冒険者の襲撃を防ぎ切り、こうして囚われていたゼノス達も解放した。充分だ」

 

・・・落ち込んでいても結果は変わらない。精神の疲労に目を瞑り無理にでも楽しい事を考えるとしよう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「レイニー君は上手くやったのか、了解。追って指示は出すよ、今は待機しててくれ」

 

ふぅ、とホームの一室で男神は溜息をつく。ここまで思い通りにならなかったのは神生で初めての事だった、全てはあの冒険者が原因だ。

その排除するには成り上がり過ぎた小さな光を思い浮かべ、また溜息を付いた。

 

「君じゃ足りないんだよなぁ(・・・・・・)

 

足りない、あの陰のある光では、この世界に巣食う闇に呑み込まれてしまう。その心に見合わない成長を遂げた時は面白く感じたが、見れば見る程先が無いように感じる。どうしてその強さを得られたのか検討もつかない程だ。

 

ベルの成長の機会が彼に奪われているのも痛い、ゴライアス・イシュタルファミリア・今回のゼノス達。状況的には、彼のいる位置にベル・クラネルが居てもおかしくは無いはずだった。

 

かの大神(ゼウス)が素質が無いと断言したベル・クラネル。彼に英雄の素質が無いのであればレイニーはどうだと言うのか。彼の行った所業は凄まじい、話だけを聞けば英雄の卵な事は間違いない。だが神に言わせれば足りない、惹き付けられない、昂らない。酷いようだが、それは事実だ。平凡な魂はどれ程磨き上げたとて眩い輝きを放つ事はない、ヘルメスは彼に賭ける事を躊躇っていた。

 

「世界の為だ・・・勝ち目の無い賭けは出来ない、君も試させて貰うとしよう」

 

さて、フレイヤ様は上手くやってくれるかな?


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