RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
リリルカアーデにとって魔法とは、嫌いな自分を消してくれる救いだった。いや、救いのはずだった。望みもしない競争に巻き込まれ、力のない自分を嘆き、才のない自分が救われる為に自分を変える魔法を望んだ。
しかし想いは届かず、発現した魔法は見てくれを変えるのみ。それだけの力では
何時しかあれほど渇望していた魔法は、盗みを助ける薄汚れた
「リリ様?どうされたのですか?」
「!」
レイニー様が魔導書を探しに行ったと聞いた時、リリはとても驚きました。魔導書ですよ?
このファミリアは、まぁ・・・Lv不詳のレイニー様とLv3のサミラ様がいるのでそんじょそこらのファミリアよりは位が高いですがそれでも簡単なものでは無いはず。
手に入れられるのはおそらく一冊。
「な、なんでもありません。少し考え事があったので」
一冊、だからなんだと言うのでしょう。戦力を強化するとなれば春姫様かサミラ様。二人にある問題点を重視するのであればデメリットの少ない中衛の御二方に使ってもらうのが最善策です。
あぁ、ダメだ。あの人に弱い自分を救ってもらったのに、魔法となるとまだ沈んでいた醜い自分が出てきてしまう。希望の残骸で、絶望の証人だった刻印の魔法。自分の過去の黒歴史。
「しかし、
「メーティス様が知らない事を、あたしらが知るわけないじゃん・・・」
奥の席で、魔導書を見てみたいと我儘を言うメーティス様、それをまぁまぁと団員達で宥め、ダフネ様が話を変える。
「まぁ、団長が誰に魔導書を渡すかは、来てからのお楽しみって事で。ウチでは無いよ」
「んー、Lvだけ見るならオレか?でも、別に魔力は高くねぇしな」
前衛で傷を癒しながらその拳を持って怪物に立ち向かうサミラ様、魔力は常用こそしない物の謙遜する程低くはありません、Lv3であると言うだけで、並の魔法使いを凌駕します。
欠点としては、前衛である事。並行詠唱はありふれた技術ですが、万人が扱い切れるものでは無いですからね、詠唱に集中して前衛の動きが疎かになれば戦線の崩壊に繋がる危険があります。
「あたしも魔法があればもっと強くなれるかなぁ?」
中程から臨機応変にチームの穴を埋める軽戦士、ニナさん。贔屓目なしに見てもLv2に恥じない技巧を身に付けており、飛び抜けた敏捷のステイタスは同格の敵では太刀打ちできない程の神速と言ってもいいでしょう。魔法は最近まで発現していなかったので魔力のステイタスは劣りますが、中衛であれば詠唱のリスクも少ないです。
「私は、もしもの為を思うと精神力が・・・」
カサンドラ様は、既にパーティの回復役として十分な活躍をされています。回復魔法は込めた精神力によって規模も変更が可能で、無理な魔法の追加は精神力の管理に影響を及ぼすでしょう。
「私も新たに魔法をとなると、少し不安が残ります」
春姫様は、他に類を見ない強力な魔法の持ち主、魔法を多用してきたからか、Lv1にして既に十分な魔力を持っています。そしてウチデノコヅチを覚えている前例があり、次に魔法を覚えるとすればまた有用な魔法を発現する可能性も高いでしょう。
自衛能力に劣る部分はありますが、いっそ新しい魔法を覚えて専属の魔法使いになってもらえば中程に移行して守りつつという選択肢もあるかもしれません。
そして、
私がサポーターとして後ろに居る前提の戦術を確立している為、変更するリスクとリターンが見合っていない。Lv1で魔力のステイタスが低い。前に発現した魔法が弱い。魔法スロットが空いていない。
・・・そうだ、何もレイニー様が高価な、上位の魔導書を持ってくるかは分かりません。上限を越えるような物で無いのであれば、候補はサミラ様、春姫様、ニナさんになりますね。
「リリ様?やはり、何処か上の空と言ったご様子ですが」
「っ、あ、えぇ。魔法が、魔法を皆さんが覚えるのならどのような物になるのかと思いまして」
春姫様に心配をかけてしまった。もう考えるのは、よしましょう。
「んー、あたしはレイニーの助けになる魔法かなぁ。仲間が強くなるのでもいいし、攻撃魔法が必要ならそれでもいい」
ニナさんはいつもの通り脳天気なようで何より。昔は全方位に満遍なくそののほほんさは発揮されていましたが、今は局所的にかなり鋭いです。あの方は気が付いているのでしょうか?
「オレはあんまり魔法に頼りたくはねぇな。殴れば良いし、前衛に集中出来ずに仲間を怪我させたくねぇ」
アマゾネスらしい脳筋発想で何より。拳で闘うとは何事だと、初めに戦闘を見た時は思いましたが、サミラ様の演武とでも言うのでしょうか。踊るように敵を蹴散らす姿を見てしまえば、戦士とはこういう物だと言う気持ちを感じずにはいられません。
「ウチ?ウチはそうね・・・、今必要なのは長文詠唱の高火力な魔法だけど、自分がどんな魔法が欲しいかって言われれば、仲間を守る魔法・・・かな」
・・・レイニー様が聞いたら恥ずかしがってからかうような事を言いそうな台詞ですね。良くもまぁそんな臭い台詞を・・・。
ダフネ様が前のファミリアに良い思い出が無かったことは知っています。そんな彼女から、守りたい、大切にしたいと思われているのはいい事なんでしょうが、照れますね。
「私は、そうですね。皆さんが闘っている間何も出来ないのが心苦しいので、普段使いできそうな、汎用性のある物でしょうか」
春姫様は、
正直危ないのでやめて欲しいのですが・・・、レイニー様にいただいた
シールドの魔導書が偶に活躍するくらいには、危ないです。
「私も回復する事しか出来ないから、もし新しい魔法が使えるなら、普段から役に立つ魔法が欲しいです」
確かに、カサンドラ様の回復魔法と解毒魔法は傷を負ってから輝く魔法。何も起きないならそれに越したことはないので、事前に盤面を制御できる魔法があって損はしないでしょう。カサンドラ様はお優しいので、後ろで何も出来ない状況が続くと不安そうな表情をされる事があります。
・・・皆様、
リリは?
凄い魔法が欲しい。
自分が強くなりたい。
置いていかれたくない。
未だに自分の事ばかり?
変われたと思ったのに。
「リリも、・・・皆さんの負担を軽減できる魔法が欲しいです」
1人だけ意識して、妙な嘘をついてしまった。仲間はそんな事を気にする人達ではないのに。
その後は皆さん魔法の話で持ち切りでした、魔導書なんて滅多に目にするものでも無いので、当然と言えるでしょう。途中、メーティス様が席を外しましたが、残りのメンバーであーだのこうだのと言いながら時間はたち、その時がやってきました。
「ん、帰って来たみたい。ちょっと出てくるね」
呼び出しの鈴がなり、ダフネ様が玄関へと向かいます。おそらくレイニー様でしょう、時間にして2時間程は待ったでしょうか。トップクラスのファミリアでさえおいそれと手に入れる事ない魔導書を数時間で・・・。やはりレイニー様は規格外です。
ダフネ様が食堂を離れ、レイニー様が来るまでの時間、皆さんは不思議な緊張感に包まれ無言になりました。もちろんリリもです。
リリが選ばれるとは思いませんが、少し位は希望を持っても、良いのでしょうか。
「ただいま、帰ってすぐで悪いんだけど。リリ、春姫。ちょっと来てくれないか」