RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
「あわ、あわわわ」
リリの様子がおかしい。説明をする為に部屋を移動している間、ずっとあわあわと何やら慌てているようだ。なんだこいつ、かわいいかよ。
可愛いのは良いのだが、説明中もあわってる感じがしたので声を掛ける。
「リリ?聞いてるか?」
「・・・聞いてないですよ!?なんで
めちゃくちゃ逆ギレ!いやだから・・・、と説明をしようとした所でダフネに待ったを掛けられる。何か伝えたい事でもあるのか?
「リリ、君は正直まだまだ弱いよ」
めちゃくちゃどストレート!流石にそれは正直過ぎますよ・・・。
ダフネの一言に、リリは俯いてしまった。分かってはいるけど、と言った所だろうか。それに構わずダフネは言葉を続ける。
「スキルは使い方も見つけて、役にはたってるけどまだLvは1。ステイタスも低いし、冒険者としての経験も、中層に入ってからは大したアドバンテージにはならないのは分かってるよね」
・・・まぁ、それはそうだ。リリの的確なサポート能力は上層を何度も探索して来た経験からくるものが大きい。コレから階層を変えて行くにつれ未知の経験をする事は増えるだろう。そうなるとこれまでの様には行かない。
「魔法も探索だと使いにくい。弓だって中層からは殆ど効いちゃくれない」
「だ、ダフネ様、それは・・・」
堪らず、春姫も止めに入るが言葉が出てこない様子だ、間違った事を言っているわけではないから、とはいえ。
「だから、君が魔法を覚えるんだよ」
「・・・なんで、そんなダメなリリに・・・」
「
「このままだと、君だけが着いてこられなくなる。今すぐとは言わないけど、いずれ。確実に。・・・そんなの嫌でしょ?」
・・・俺は軽い気持ちで魔導書貰って魔法覚えればいいや。って考えてただけなのになんだこの重さは。リリもなんでこんなに思い詰めた感じになっているんだろう。
キッと顔を上げたリリが俺から魔導書を奪い取り、部屋を出ていく。キチンと金の魔導書を持っていった辺り、話は聞いていたらしい。
「あ、リリ!・・・ええと、じゃあ、春姫にもこっちの方渡しておくな・・・。また、終わったら食堂に戻ってきてくれ」
「わ、分かりました・・・」
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なんでなんでなんで!
リリの筈ないのに!
こんなの、おかしいです!?
リリだって、補給に回収に、 サポートだって・・・。
ほんとは分かってます。足りないのは。皆にある特別はリリにはありません。特別が欲しい、同じLv1でも、特別必要とされている春姫様が羨ましいです。リリは今のままでは中層、下層に挑むにつれ置いていかれてしまうはずです。
このファミリアは、それだけの力は持っていますから。卑下する訳ではありませんが事実として彼等に並ぶには平凡が過ぎる自覚があります。
でも魔法があれば
かつて裏切られた魔法があれば、或いはそうはならないかもしれません。特別であれば、並び立つことも許されます。
「・・・それでも、怖いですよ・・・」
途中、逃げるように入った部屋の中で一人つぶやく。私はもう一度裏切られるのが怖い。これだけ期待の篭ったプレゼントを受け取っておきながら、応えられなかったら?魔法なんてものは望むままに出てくるものじゃない、それは自分の身をもって知っている。
コレで目も当てられない、何の役にも立たない魔法が出てしまったらどうすればいいのか、リリでは一生掛けても返せない程の価値のある物なのに。
期待された事の無い人生で、初めて期待に潰されそうになっています。
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「リリー?ドア開けてくれないか?」
追跡衝動にリリを設定し、リリが居るはずの部屋の前に来た俺は声を掛ける。どう考えても普通の状態じゃ無かったし、心配になって確認をしに来たのだ。ダフネの心無い言葉で泣いていやしないだろうか。
ガチャリ
ドアが開けられ、リリが顔を覗かせる。顔は・・・あっ、死んでは居るが泣いては居ない。ツーアウトって所か。
「大丈夫か?ごめんな、なんか余計な事しちゃったかもしれない」
「・・・レイニー様が謝る事ではありません」
「あー、えっとダフネにも後で謝るように言っておこうか・・・?」
・・・会話が途切れてしまった。ひとまず部屋に入り、独特の緊張感を覚えながらも2人で椅子に座った。
沈黙を破ったのは、リリだった。
「レイニー様は、魔法ってどんな物だと思いますか?」
めちゃくちゃ抽象的!
「ど、どんな物?」
「私は弱い自分を変えるための、魔法だと思っていました」
・・・それは、知っている。見た事がある。かつて自分の魔法を手に入れた時、その効果に落胆したんだったか。けど今は魔法が無くてもスキルの使い方も学んで、中層でも普通にやって行けるようになって、良い感じになってきてたんじゃ・・・。
「レイニー様に会ってから、色んな事が上手くいって本当に感謝しています。ファミリアだって前と比べ物にならないくらいに良いところですし」
でも、
「私はまだ弱いままだったみたいです、リリには、魔導書は使えません」
怖いんですと、震えながらリリは言った。自分が期待に応えられなかったら、弱い自分のままで置いて行かれたらと思うと魔導書を読むことが出来ないと。
言われて見れば、何千万のアイテムが自分次第でゴミになるかもって言われたらとてつもない負担になる。
リリは特に、魔法で失敗した過去もあるしトラウマになりかけていたんだな・・・。リリのこと、全然分かっていなかったらしい。
そうか・・・そうなると・・・。
「そう、だな。まぁなんと言っていいのか正直分からないんだけど・・・気にするな!」
「・・・?」
「もし出てきた魔法が大したこと無かったら、もう一冊土下座でもして貰ってくるよ」
在庫あるか分からないし、貰えても恩が凄いことになるし、ダフネにはまた怒られるけども。
「ぇ、で、でもそんな簡単に・・・」
「それに、例えリリが弱くても置いて行ったりしないよ。まぁ俺に比べたらダフネ達も弱いって言うか五十歩百歩だし(適当)」
「!?」
ダフネ聞いたら怒りそー・・・。でも弱いなんて気にするななんて、なんの意味も無い事言っても無理だろうし、どうにかこの方向性で話を進めて行きたい。
「でも、私皆さんと違って、中身まで弱くって・・・!」
中身?話を聞くと、俺を待っている間の会話で、魔法と自分の過去のコンプレックスが刺激されまくってナイーブな感じになっていたらしい。
俺にそんな内情までぶちまけて大丈夫かなとも思うが、聞いたからには応えねばなるまい。
「よわくたっていいじゃないか、にんげんだもの(相田みつO)」
人間誰しもそういう部分はある、仮に無い人間が居るとしてもそれは俺達じゃない。
「俺だって思う事はあるよ?サミラやニナの明るい性格羨ましいなぁ、とか。リリとダフネは頭良くてカッコイイなぁとか。春姫の耳もふもふしてるなぁとか。カサンドラ可愛いなぁとか」
「ん?」
「まぁそういうのはどうしてもあるもんだとして、その点で言えば、リリは全然特別じゃないし、変じゃない」
だから良いよと、リリのままで。魔法がどうであれ、何を思っていたとしても、それで俺達が失望する事は無いって。リリも分かってはいたんだろう。けどこんなの中々言いづらい事だからな。自分に言ってくれて、これ以上抱え込まずに済むかな?
「・・・分かりました、リリ、試して見ます」
「おっ、良かった良かった。じゃあ、部屋出て食堂で待ってるから」
ふぃー、一件落着と。さて食堂に戻り
「弱くて悪かったね?」
「誠に申し訳ございません」
ひぇぇぇ悪気は無いんです!口が、口が勝手に!
「・・・まぁ、ウチが1番悩んでた事は解決したみたいだし、許して上げるけど。今度、何か奢ってよね」
「・・・?よく分からんけど分かりました」