RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
凄い・・・!さっきまでも自分の力を遥かに超える感覚が会ったけど、コレは格が違う!
ニナさんの動きが遅く感じる、自分の身体が自分じゃないみたいに軽い。これはそう、春姫様の魔法を受けた時のような感覚!
「はぁぁぁぁ!」
カンっ!
冒険者としての先達、ニナさんには技量では負けますが、ステイタスは此方が有利!精神力にも余裕はありませんし、ここは攻めさせて頂きます。慣れない力に振り回されている感覚は有りつつも、その高いステイタスを活かし速攻を決めに行きます。
しかし、やはり相手は生粋の冒険者、戦法を変えられ、凌ぐような動きをされてしまうと決定打が見当たりませんでした。
「【嘘の終わりを告げる声】っ、はぁ〜・・・、さ、流石に経験が違いますか」
「あ、あっぶな・・・リリ、本気で刺しに来てなかった!?」
そりゃあ、サポーターのリリが勝とうとするなら本気にもなります。普段と違って軽い木剣で、スキルも使えない訳ですし。
それにしても、使ってみたはいいものの思っていたのと違いますね?ステイタスを奪取すると書いていたので、相手のステイタスを奪える物かと思っていましたが、それにしては能力が拮抗していました。
「リリ、とんでもない魔法を手に入れたな・・・」
そう悩んでいた所に、レイニー様が現れました。手に持っていたマナポーションを受けとり、飲みます。とんでもない魔法、ですか。いや、我ながら良くも悪くも裏技的と言うか、自分らしいとは思いますが。
「俺のステイタスを奪って交換する魔法みたいだぞ」
・・・えぇ?
メーティス様いわく、特定の相手=レイニー様のようで、改竄されたステイタスはそっくりそのままにリリとレイニー様のステイタスが入れ替わっていたようです。確かに、奪取する相手を選択するような事はありませんでしたから、そのようですが・・・。
何か恥ずかしいです。
それってリリがレイニー様をめちゃくちゃ意識してるみたいな感じになりませんか!?
ファミリアの中だけとかならともかく、特定の相手でレイニー様だけが対象って、ちょっと思う所がありますよそれは。
しかも恩人からステイタス奪い取るってあんまりな仕打ちな気が・・・。幸い、レイニー様はステータスの力もあり、何も出来なくなるという訳ではありませんがLv2のステイタスが無くなるのは、相当違います。
仲間を弱くして自分を強くする魔法って、やっぱり使い所無いじゃ無いですかぁ・・・。
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「まぁ良いんじゃない?君のステイタスが上がる分には、危険も減るし」
発現した魔法が結局思ってたんと違う、と落ち込むリリをダフネが宥める。現状Lv1の中程度のステイタスであるリリが、精神力は消費するもののLv1の最高値ないし、Lv2のステイタスになれる魔法と言うのは中々とんでもない事だ。まぁ、春姫の階位上昇とは違い、俺のステイタスが下がるんだけども・・・。
俺はステータスの方もあるし、正直少しくらい下がっても気にはならない。それより気になるのは
「ステイタスって、逆に下げたらどうなるんだ?」
「えっとそれは、【私の刻印は私のもの】・・・!負担が減りました。変える時は消費しますが、維持する精神力が減っています。そうなると、全てのステイタスを上昇させるのは負担が大きいんでしょうか」
となると、魔力だけ割り振ってしまえばLvすらも書き換えたり出来そうだな。そこにウチデノコヅチも追加して、なんて事をすれば最大で即席Lv4冒険者ができ上がるのでは?
魔力割り振り、マナポーション、ステイタス奪取、マナポーション、魔力割り振り、マナポーション、Lv書き換え、マナポーション・・・あんまり薬品に頼るのは良くないがもしもの時は選択肢に入るな。
「レイニーさんって、使い方の発想が柔軟ですよね」
「ねー。直ぐに慣れてるみたいに色んな事考えてるよね」
まぁ、それはゲームやら何やらの経験で、こんな事出来そうだな、みたいな知識があるからな。何百と異世界系の作品はやって来たんだ、慣れもする。
あ、そうだ、Lv書き換えた状態で、もう一度ステイタスを奪取して戻してもらえば・・・!
「次は、私ですね。レイニー様、お相手をお願いします」
おっと、考えるのは後にするか。春姫の魔法も気になるしな。幻覚魔法、多重発動可能、精神力吸収、か。幻覚の程は分からないけど精神力ドレインで、相手を削りつつ自分を回復する奴だとは思うが。
と言うか俺に幻覚効くんだろうか?
一抹の不安はありつつも、大人しく庭に出て魔法を喰らう事にする。泣いてお願いしない限り決定事項だろうからね。
春姫は特に貯める事も無く、直ぐに詠唱を開始した。
「【人為ならざる夢幻の火炎、不明瞭な狐の炎、絡み纏わり喰らい尽くせ、キツネビ】!」
問題無く詠唱を終え、その魔法が全貌を見せる。春姫の前方に現れた青白い炎、それは差程大きくは無かったが、キチンとその存在を示していた。なるほど、狐火っぽいな。
第1段階は問題無い、俺でも幻覚は見えるみたいだな。後は効果の方だが・・・っと。
それなりの速度で発射された狐火を、ひとまず避けてみる。すると身体を通り過ぎる寸前で減速し曲がりながら俺の方へと向かってくるではないか。絡み纏わり、とあるように追尾式らしい。
「カウンター!」
便利スキルカウンターを発動するも、不発。抵抗虚しく炎は俺の身体に吸い込まれて行った・・・。ふむ。
「即効性は無いみたいだな」
「そう、ですね。お身体に変わりはありませんか?」
今の所特に問題は無いが・・・あ、ゴリゴリ精神力が削れていってるな。体感で10分もしない内に削り切られるんじゃないか?幻覚魔法と言っても、こっちの精神力吸収の方がメインの効果らしい、Lv2である俺の精神力をコレだけ削れるのであれば、上層のモンスターなら1分もせずに精神力を枯渇させられるだろう。
「多重発動もやってみてくれるか?」
「はい、【人為ならざる夢幻の火炎、不明瞭な狐の炎、絡み纏わり喰らい尽くせ、キツネビ】」
今度は3つか。先程同様向かってくる狐火達を喰らい、その効果を確かめる。
「あ〜、すっごい削れてる」
どれ位かは分からないが間違いなく速度が上がった。感覚ではもう精神力が半分を切っている。同時発動の限界は分からないが、春姫の様子を見る限り消費精神力も少なそうだし幻覚とは言え使い勝手も良さそうな魔法だな。
「分かった。春姫、とりあえず止めてくれ」
「はい」
・・・?止まる様子がない。もう結構やばくて2割位な感覚なんだけど。精神疲弊はシンドいのでなりたくないんだけど。
「あの・・・、止め方が分からないのですが・・・」
・・・あっ、そういえば解呪式とか載ってなかったね。グッバイ俺の精神。
バタンキュー
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ギルドが管理する地下収容所。そこの管理を任されている男は今日も一日の終わりに囚人達の牢を見回る。
「17、問題無し」
「22、問題無し」
「25、問題無し」
囚人に割り振られた番号、部屋の中を確認しながら移動し、囚人の様子を確認する。ここに入っているのは闇派閥に関与していた荒くれ者達が多く、看守の彼が通ると威嚇する様に喚き散らす者たちばかりだ。まぁ、口には舌を噛めないよう器具を入れているから、マトモに話せる者はいないようだが。
「77、問題無し。アンタは何時も静かだな。俺としては有難いが。俺はLv1だから、呻き声の圧が怖いんだよ。・・・なんだよ、コッチは悩んでるんだぜ?」
最後の部屋、1番新しく収容された部屋を確認し、特別大人しい囚人に向けて軽口を叩く。話せはしないが、
「まぁ、アンタの境遇には同情するぜ」
血に呪われ、自我を保つため悪事に手を染めた男、まぁ、悪は悪だ。返事は帰って来ないし、男も期待はしていない。部屋を離れ、手元の資料を確認し漏れがない事を確認する。
そして全ての見回りを終え、仕事も終わりだと男は軽い足取りで囚人達のエリアを後にした。
最後の部屋、ディックス・ペルディクスが収容されている筈の部屋には、誰も居ない。