RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
ホームのリビングでゆっくりしている時、雑談相手のサミラが俺にとっての爆弾を投下してきた。
「そういえば、フリュネの奴はどうしてんだろうなぁ」
・・・フリュネ?あぁ、あのヒキガエルとか言われてたレベル5の人か。
「どうしたんだ?突然」
「いやぁ、最近前の仲間から、アイツがフレイヤファミリアにボコボコにされて引きこもってるって聞いたんだよな。外にも出歩けねぇらしいし、戦闘出来ないアイツ雇うとこなんて無いだろ?」
だから少しばかり気になったのだと、サミラが話すが俺にとっては少し気になったでは済まない。
・ステイタスに成長補正
・諦めない限り効果上昇
・見捨てぬ限り効果持続
このスキルを維持したければ、相手が誰であろうと認識してしまったのなら助けに行かなければならんのだ。
フリュネねぇ。嫌な思い出しかないけどもまぁ生活出来てるか位は確認するかぁ。
「居場所は知ってるのか?」
「あぁ、住んでるらしい宿屋の名前だけなら。ん?見に行くつもりなのかよ?」
スキルの問題でな、と返すと面白そうだからオレもついて行くぜ!と二人で出かけることとなった。
サミラと二人だけで出かけるのは初めての事かも知れない。しかし、普段着から外用、寝間着まで全てアマゾネスらしい衣装なサミラと並ぶと、周りの視線が痛いんだよな・・・。
「レイニーも難儀なモンだよなぁ、あんなの助けなきゃならねぇなんて」
「仮にも元仲間をあんなのて・・・よく思ってなかったのは知ってるけどさ」
派閥最強を笠に着て仲間にも横暴に振舞っていたフリュネ・ジャミール。信頼の厚いアイシャなんかと比べられ、余計に人望は無かったらしい。まぁ自業自得ではあるよな。俺も好きじゃないもん。
道中もフリュネのあれがどうだのそれがもうだの35歳のババアの癖にだの・・・35なんだ、死ぬ程要らないなその情報。
色々と愚痴を聞きながら進んでいくと、寂れた宿屋へと到着した。
「こ、こか?」
「あぁ、あのフリュネの奴の事だから、もっと豪華な所に住んでるもんだと思ってたが・・・」
そうサミラは言うが、町外れであまり人気の無さそうな宿だ、中もそう外観と変わりは無いだろう。
「ま、待っとくれよぉ!此処を追い出されたら、アタイどうやって生きていけばいいのさぁ!?」
突然、辺りに女性の嘆く声が響き渡った。その方向を確認すると、宿屋の入口に初老のお婆さんと、2.30代くらいの包帯に塗れた褐色の女性がいる。その人はおばあさんの服を掴み何かを訴え掛けているようだ。
「そうは言ってもねぇ。私らも商売だから、何日も料金払って貰えないなら出ていってもらうしか無いだろうさ」
「す、直ぐに仕事探すから!あと何日かだけでも・・・!」
「あんたそのなりじゃ働きどころも無いだろう?ダメダメ、滞納した分請求しないだけ、優しい方なんだから」
どうやらおばあさんはこのフリュネのいる宿屋の経営者らしく、女性はその宿代を支払えずに追い出される寸前になっているみたいだ。見る限り・・・かなり酷い怪我をしているらしく至る所に包帯が巻かれている。
認識してしまったのならどうにかするしかあるまい。サミラに断りを入れ先に二人の方へと向かう事にする。
「すみませーん、お困りみたいですけど、もしよか「ヒィィィィィ!男ォォォォ!!??」うっさ!?」
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「すまないね、あの子男性恐怖症?と言うやつらしくて、男が怖いみたいなんだよ」
「な、なるほど・・・」
近付いて声をかけた瞬間、女性が脱兎のごとく逃げだし宿の奥へと消えて行った。呆気に取られていると、おばあさんはため息をつきながら軽く事情を説明してくれる。男性恐怖症か、そりゃ悪い事をしたな。それに男性恐怖症なら中々仕事も難しいよなぁ。見る限り、結構重度のようだし・・・。
「此処に来た時は、見上げるほどの大女だったのに、食も細くてあんなに痩せてねぇ・・・」
「なるほど・・・ん?」
見上げるほどの大女?
「前職は娼婦だったって言うし、戻れりゃあいいんだけど、あんななりで男も怖いじゃ務まらないね」
「前職が、娼婦・・・」
「あ?なんか聞いたことあんな」
見上げるほどの大女、前職は娼婦、怪我してる、男性恐怖症・・・。え?あの人が、フリュネ?あの通称ヒキガエルの?
別人じゃん!
面影無いじゃん!髪も長いし身体も細いしスラッとしてて服もそれなりにキチンとした服で、褐色である以外にアマゾネス要素すらないじゃん!?
「あぁ!?アイツフリュネなのか!?」
「あら、フリュネのこと知っているのかい?知り合いなら丁度いいね、私も正直ほっぽり出すのは心が痛むと思ってた所なんだ。引き取って貰えんかね?」
い、いや知り合いって言うかもう知らないって言うか・・・。いや誰だよ?本当に。もう骨格から別人じゃねぇか、痩せたってレベルじゃねぇぞおい。
「ま、まぁ、暫くの宿代位なら払いますが、引き取るってのはちょっと・・・」
「面白そうじゃねぇかレイニー!あの感じじゃ恩恵も無いんだろ!」
サミラが乗り気過ぎる!面白そうってそんな簡単な話じゃ無いでしょうよ、男性恐怖症ってんなら俺が居るだけで負担になるだろうしさ。
「良いじゃんかよ、どうせ追い出されんだ、あいつ上手いこと手懐けたら面白い事になりそうだろ?」
「あら、本当に引き取ってくれるの?良かったわぁ」
良くないですよおばあさん!この人面白そうとしか言ってないですよ!本当にそんな得体の知れない奴に預けて良いんですか!?
「私らも商売だから・・・金にならんのならもう客でもなんでもないさね」
・・・悪びれもなくそう口にするおばあさん。人の闇を、垣間見た気がする。
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「く、来るなぁっ!アタイに何するつもりだいっ!おばあさん!おばあさんコイツらを外に出しとくれぇっ!?」
あれから数分、サミラに上手いように乗せられた俺は仕方無しにフリュネの居る部屋に入っていた。まぁ、何言っても結局見捨てられないんだから似た様な事はするんだろうけど、これだけ怯えている人になぁ・・・。
イシュタルファミリアが解散にまで追い込まれたあの日、フレイヤの所の奴にボコボコにされたという彼女に何があったのかは知らないが、どんな事をすればレベル5の冒険者で数々の死線を駆け抜けてきた彼女がこんな事になるんだろうか。
暗い部屋の奥の布団にくるまって、怯えたように縮こまっている彼女を見ると、なんだかこっちが悪い事をしているような気持ちになってくる。
部屋が暗いのでランタンを取り出し、火をつける。火をつけた瞬間布団が飛び跳ね、彼女が布団の隙間から此方を伺っているのが分かる。
こうしてマジマジと見ると本当に別人だな、スゴいね人体。
なんの情報も無く見るとただの黒髪美人にしか見えない、包帯が痛々しいが。名前を聞いてからは前の姿がチラつくが、なんであの姿からこうなったのかわからんし、この姿のポテンシャルある奴がどうなったらああなるのかも分からん。
「お、お前ら、サミラに・・・レイニーじゃないかぁ?」
お、俺達の顔を見て、思い出したらしい。
「丁度良かった、アンタら、アタイを助けなぁ!?」
コイツ中身なんも変わってねぇな。
「おいフリュネ、お前恩恵は?」
「おまっ・・・い、今は、無いけどねぇ。アタイの美貌にかかればスグさぁ」
サミラが前に出てそう問いかける、予想していた通り、今フリュネに恩恵を与えている神は居ないらしい。まぁ男を見るだけでブルってる様な状態でファミリアに入るなんてのは難しいだろう。
しかし、アタイの美貌?確かに俺達基準なら美人になっている気はするが、前のフリュネの美醜感覚ならブサイク側の筈なんだが?
「あんた、もしかして鏡見てないのか?」
「ヒッ、か、鏡?怪我しちまってから見てねぇよ!そんなに酷い顔になっちまってるのかよぉ!?くそっ!なんでアタイがこんな目にぃ!・・・そうだ、エリクサー!エリクサーを持ってこい!」
う、うるせぇ。フリュネが言うには、怪我した自分の顔を見るのが怖くて見ないようにしてきたと?まぁ気持ちは分からんでもないが・・・。
「あれ以来ご飯もろくに喰えなくて、こんなにガリガリになっちまってんだよぉ!クソっ!オッタルのせいでぇっ!」
ガリガリて、そりゃ前のフリュネからすると3分の1位にはなってるかもしれないけど充分肉感的な身体だろ。色々感覚が狂ってるな?コイツ。
もう狂乱している相手に色々説明するのも面倒なので、ストレージから鏡を取り出して突き付けてやった。
そしたら信じられないものを見た様な顔をして、気絶してしまった。
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「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ・・・」
「なぁアイツぶっ壊れちまったのか?」
「瀬戸際ではあるかもしれないな・・・」
早計過ぎたか?フリュネは起き上がってから此方に背を向け、ブツブツと何かを呟き続けている。布団をよく見ると怪我から流れた体液で汚れてしまっており、包帯もあまり綺麗な状態ではなさそうだ。
恩恵が無いのなら、身体はもう一般人のようになってるんだよな?あんまり怪我を放置するのも良くないか。
「エクスヒール」
「っ!」
使い慣れた回復魔法をフリュネにかける、一般人の体力であればヒールで充分かもしれないが、念の為だ。身体に走っていただろう痛みが無くなった事に気が付いたのか、恐る恐る包帯を外しているみたいだ。
「んだよ、治しちまったのか?」
「まぁ、流石に一般人の身体であの傷は堪えるだろ」
フリュネが顔を覆い隠していた包帯を外すと、やはり面影の消えまくった美人さんが現れた。サミラもその変貌に驚いているみたいだ。
「へ、へへ・・・こんなブサイクを助けるなんて、アンタも物好きだねぇ・・・。まぁいい、アタイがかつての美貌を取り戻すために、協力しなぁ!」
コイツのこのとんでもない勘違いをどうにかしない限り世間とのギャップでいつか事件が起きそうな気がするな。
褒めるみたいで気は進まないけど、現実を見てもらうか。
「いいかフリュネ、気絶しないように鏡をみろ。今のアンタは世間一般的に見て、美人だ」
「まぁ・・・、確かにな。ほら」
サミラに鏡を渡し、持って行ってもらう。フリュネの顔は引きつっているが、それでも鏡を見る事はできている様子。
「それで、アンタの美醜感覚が何処で培われた物かは知らないが、前のアンタは正直美人じゃ無かったんだよ。自分じゃ信じられないかもしれないけどとりあえずそうと納得してくれ。今のアンタが美人側なんだから別に損は無いだろ」
「コレが・・・美人・・・!?」
おいそんな世界がひっくり返ったみたいな顔するなよ、本当に謎だなこの人。え、普通に人に囲まれて育ってきてそんなことになるか?
「アイツ現実逃避の為に自分に言い聞かせてるんだと思ってたけど、今の感じガチでそう思ってたんだな。こえー」
俺も怖い、そういう人間に出会った事がないから、対処法も正直分からない。自尊心回復させたら今度こそ無敵の人になりそうで怖いや。しかし、諦めも見捨ても出来ないのだから・・・致し方ない。
「まぁとりあえず理解は出来たか?怪我も治ったし、今のアンタは美人側だ。コレでアンタが社会復帰するのに問題になるのは男性恐怖症だけだな」
それが1番の問題なんだけどな。カウンセラーでも無いし、精神の治し方なぞ知っているはずも無い、プロでも確実とは言えない心の治療は、下手に手を出す事は出来ないな。
「お、男なんて怖かねぇさ」
まだプライドは残ってたか。男殺しとまで呼ばれたアマゾネスの血が心を奮い立たせている様子。近付いたら逃げる癖に・・・てあれ?
近付いてもそこまで怯える様子を見せないな。
スっと手を伸ばしてみる、しかし一瞬ビクッとはなるが、先程までの様な狂乱を見せることは無かった。そのまま手を伸ばし、肩に触れる。
「・・・治ったのか?」
「分からん、こんなに早く治ることあるか?」
「こ、怖くねぇって言ってるだろう!?」
怖くない怖くないと煩いので、1度部屋を出て装備を変更し、見た目も【シンダー・エラ】で変えてみた。
「ヒィィィィィ!」
「駄目じゃねぇか」
んー、俺だけに耐性が出来た、という事なのか?理由は詳しくは分からないけど、もし回復してくれたからとかなら、流石にちょろすぎるぞ男殺し。
まぁ、俺だけ慣れた所で余り意味は無い、社会復帰する上で俺と関わること等ほぼ無いし、ずっと面倒を見てやるつもりも流石にないからな。
「んー、男と関わらないなんてほぼ不可能だからなぁ」
「ん?レイニーなら問題ないんだろ?オレらのファミリアに入れてやりゃ良いじゃねぇか。腐ってもレベル5だぞ?あ、もちろん下っ端からな!」
はぁ?メーティスファミリアに?いや、過去の悪行含めウチで預かるには荷が重いでしょうよ。グレーな人がファミリアに入るなら、んー・・・ヘルメスファミリアとか。
「男神じゃねぇか、ちなみにマトモな所でフリュネを受け入れる様なファミリアねぇからな。どうせコイツ戦闘しか出来ないんだし、それでいて女神の所って言ったらそれこそフレイヤファミリア位だろ」
・・・まぁ、トラウマの対象がいるファミリアには入れないだろうし、仮に入れてもあそこが強くなって嬉しいことは無い。まぁでもそうか、ウチでちょっと、と思ってたらマトモなとこは全滅か。そんで普通の仕事も出来ないと。詰んだか?
「ふ、ふんっ!アタイは天下のイシュタルファミリアで団長張ってたレベル5だよ、下っ端で入るなんて真っ平御免だねぇ!」
コイツはコイツでプライドが邪魔をして下手には出れそうにもないし、まぁフリュネ自身、前のファミリアでは明らかな悪側の人間だったし、別に正道に戻ろうとも思ってはいないんだろう。でもなぁ・・・。
どうにかならんもんかね。ほっといて悪い方に流れられても困るしな。
「どうしてもってんなら、アタイを団長にしなぁ。・・・び、美人ってんなら良いだろう!?アタイの下で働けて幸せだろうからねぇっ」
どんな理屈だ、そんなので団長の地位を得ても誰も支持しないし意味無いぞ。美人でさえあれば周りの人間は傅くと思っているのか?確かに今の姿であれば平均以上の見目はしてるけど、美の神レベルでは無いし、俺に対しては美の神でも意味は無いんだぞ。
「考え方が悪に寄りすぎてる。教育に悪いからウチのファミリアには入れたくありません」
「えっ・・・」
俺は人間全てが更生出来るとは思っていない、が、もしこんな風になる前に助ける事が出来たのなら、どうにか出来たんじゃ無いのかな、と思ってしまう人間だ。
彼等彼女等とてこれまでの経験が、環境がそういった考え方や生き方を構築してきたのであって、産まれながらの悪が居るとは考えたくない。
フリュネの場合何があったのかは知らないが美醜感覚を正常にすればまともになっていたかもしれないし、あまり一般的ではないが整形でもすれば今こういう事にはなっていなかったかもしれない。
今からの更生は・・・行けるのか?無理めな気はするが、諦めずにチャレンジしてみるか・・・。
「入れたくありませんが・・・、入れます。下っ端からです。嫌でも連れて行きます」
「おっ、覚悟決めたか?」
ニヤニヤしおってからに、決めましたよ覚悟。今までで1番見捨てそうだったけど、とりあえずはね。やってみる姿勢で進んでいこうかなと。
「ま、待ちなぁ!アタイの意思」
「今すぐギルドの地下牢にぶち込まれたくなけりゃ着いてこい」
言ってから、あれ、これいい案じゃないか?とも思ったが。成功すればレベル5の人員が仲間になるというメリットに惹かれて黙認した。