RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位 作:アルテイル
「おぉ・・・」
「まさかにゃぁ・・・」
「なんだこれ」
ドナドナられた後、暫く店員達にもみくちゃにされていたのだが、急に渡された鏡に映る顔を見て、俺は驚愕していた。
美少女が居る。こ、これが私・・・?
というレベルの大変身だ。メイクって凄いな、顔だけ見たら完全に女の子になっちゃったよ。こんなのファミリアの皆に見られたらとんでもないことになるぞ。
「あの、メイクが上手なのは分かったんですけど、俺声までは変えれないですよ?」
「まぁリューもほとんど喋らないし声無くても問題ないにゃ」
それでいいのか接客業、いやリオンさんは可愛いから良かったわ。なら俺も可愛いから良いのかも・・・知れない。まぁ裏声でどうにかするか。
ふとフリュネの事が気になり視線を移すと、うわっ。何でか潤んだ瞳でコッチを見て来てる。サミラがよくあんな感じの目になってる事あるけど、アレアマゾネスが獲物を見つけた時の目だよな?
・・・ん?もしかして男性恐怖症で女に目覚めたのか?ま、まさかな。
「レイニーさん、とても良くお似合いです」
「あ、ありがとうございますリオンさん・・・いや、複雑な気持ちですけどね」
メイクが似合うのは男として良い方向の評価なのか?褒められると反応に困るな。それも気になっている相手からの評価なら尚更だ。
「・・・そう言えば、前から言おうと思っていたのですが、私のことを呼ぶ際はリューでいい。親しい人は皆そう呼びます」
「え!良いんですか!?」
突然名前呼びの許可が下ろされ、俺は狂喜乱舞した。やった!コレだけでも全ての苦労が報われる様だ!俺は後半年は戦える・・・!
「本当に、・・・お似合いですね」
「ぅおっ、あ、ありがとうございます。えぇと、フローヴァ、さん?」
ヌルッと、リューさんと俺の間を遮るように入ってきたのはベルに情熱的なアタックを仕掛けている事で有名なシル・フローヴァさん。個人的にはあの女神を彷彿とさせる鈍色の髪と、掴みどころのない人となりが少し苦手な部類に入る人だ。
「私もシルで構いませんよ?レイニーさんは常連ですし」
「あー、そうですか?それなら、シルさんと」
まぁ、苦手意識があるだけで悪人という訳では無いし、とりあえず当たり障りのない様に話そう。俺の返事を聞いたシルさんはニコリと微笑み、続けてこう話した。
「ミア母さんは恐らく、レイニーさんにホールを任せると思います。なので、やり方を今の内に説明してしまいますね?」
着いてきてください、とシルさんが部屋のドアを開ける。やや性急にも思えるが、化粧までさせるとなれば接客に回るのは間違いないだろう。他の店員達に断りを入れ、部屋を出てしまったシルさんを追いかける。いつも荒くれ者で大賑わいとなるホール部分は、窓から差し込む光以外光源もなく、普段とは違った様子を見せていた。
「すみません、遅れました」
「いえいえ、ではオーダーの取り方から説明しますね」
料理が壊滅的なイメージから、勝手にポンコツだと思っていたのだが。存外シルさんは仕事が出来る側の人間らしくその説明は大変分かりやすかった。質問にも丁寧に答えて貰えるし、なんだあのクソ女神とは全然違うな。あのクソ女神と勝手に重ねてしまって申し訳ない気持ちだ。
「これで、一通り終わりましたね。分からないところはありますか?」
「いえ、ひとまずは大丈夫そうです。すみません、いきなり自分が来たばっかりに」
明らかに普段なら必要ないであろう業務を増やしてしまっているのは自分である。フリュネも厨房で何ができるかも分からないし、申し訳なくは思っていた。
「ふふ、
・・・俺が来て以来?なんかおかしな言い回しだな。もっと長い間働いている時の言い方の気がするけども、よくこの店に来ているからか?あまりシルさんと話した記憶はないが、嫌われていないのならいいか。
「じゃあもう服、着替えちゃいましょうか」
「・・・あっ」
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「くっ、殺せ・・・」
「ぷくく・・・似合ってるにゃよ、少年」
「すごーい、本当に女の子にしか見えないね」
抵抗虚しく、俺は豊穣の女主人の店員に支給される給仕服を着ている。スカートがスースーするのですが。女の人って、なんでこんなヒラヒラした服が着れるんだろうね。
「うわ、足もムダ毛一つないにゃ。剃ってるのにゃ?」
「いや、生えない体質で」
にゃー!?と黒髪の猫人の店員が驚きの声を上げるのも無理は無い。元々ゲームのキャラクターであったこと身体にムダ毛は存在しておらず、髪の毛とまつげ眉毛、そして下の毛を除けば処理不要の完璧な身体に仕上がっているのだ。女性からすれば面倒がなくて羨ましい身体なのだろう。抜けたり切ったりしても回復魔法掛ければ生えてくる。
「ハァッ、ハァッ!」
「・・・?貴方は何故レイニーさんを血走った目で見ているのですか?」
フリュネに犯されるっ!?何処ぞの薬を盛られた発情兎を思い出させる息遣いで、フリュネがコチラを見つめているのだが。いやいやまさか、男性恐怖症だからって女に目覚めるなんてそんな物語みてぇな事・・・。物語でしたわ。
ゴンッ!
「あいたぁっ!?」
「店ん中で盛ってんじゃないよ。もうそろそろ開ける時間なんだ、お前達も早くしな」
スっと、厨房の奥から現れたのは我らがミア母さん、助かりました。急かされた店員たちはそそくさと散っていき、店を開くまでの最後の調整に入る。俺は適当に掃除を任されたので大人しく箒を取り出した。
静かに店内の清掃を進めていく。無心でやれる作業は結構好きなんだよな、落ち着くし。
一人で掃除をしていて問題が起こるはずも無く、直ぐに掃き掃除は終わった。それぞれの店員達も準備を終えたようで次々とホールへと帰還してくる。
「今日は二人も新人が来てる、新人だからって気ぃ抜いてたらケツを蹴り飛ばすからね!」
怖すぎる、果たしてフリュネをここに連れて来たのは正しい判断だったんだろうか?俺には分からない。
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「「「ようこそ、豊穣の女主人へ!」」」
「一番卓生ビール五つにゃ〜!」
「五番のお客様、日替わりパスタ二つです」
「黄金鶏の丸焼き入りました〜!」
いっそがしい!?ただでさえ狭い店内を酔っ払い達がぐでんぐでんになりながら占拠するせいで、店の奥に辿り着くのも一苦労になる。
だがこの程度の人混み、前世の交差点で経験済みだ!
人々が移動するその速度を視認し、ここぞというタイミングで身体を間に滑り込ませる、肩が触れ合うような距離でも、当たらなければどうということはない。
「姉ちゃん新入りか?胸は無いけどいい足してるなぁ!」
時折現れる
オーダーも、オーダーですと一言だけ裏声で伝え確認する事によってどうにかバレずに仕事をこなせている。高い音域に対応している声帯に感謝だな。
「
レイと言うのは勿論俺の偽名、呼ばれて直ぐに熱々の炒飯を受けとり、三番卓へと足を進める。中々良い調子だな?接客業はしたこと無かったけど、クソ客が居なければ案外楽しいかもしれない。あと女装していなければ。
さー、お次はあそこの・・・ベル・クラネル!?
不味い、メイクをしているから同じファミリアの相手でも無ければ見破られないとは思うが、アイツはやたらと勘のいい所がある。ここは一つシルさんにでもお願いして・・・。居ないな。他の店員は奥側で忙しくしているし、客を案内出来る位置にいるのは俺しかいない。
「あのぉ・・・」
ビクッ!
く、クソ、最悪のタイミングで来店しおってからに・・・!こうなってしまっては仕方あるまい、リューさん仕込みの営業スマイルを貼り付け、裏声で席だけを案内する。余計な事はしない、常連のこいつには説明も必要は無いだろう。
「何処かで見たような・・・?」
!
やはりコイツは危険だ!訝しげな声を背にそそくさと別の卓の不要な皿を回収し厨房へと持ち込む。ついでにフリュネの様子も確認したが必死に皿洗いをしているな、真面目に働いているようで何より。
「姉ちゃん!生ビールと生おっぱぶふぉっ!」
セクハラをいなしながら、ホールを駆け回り良い感じにノってきた時、それは起きた。
「・・・レイニー?」
「えっ・・・あ、え」
「
あっはーい、メーティス・ファミリアの七名様入りまーす。