RPGのカンスト主人公はダンまち世界ではレベル4弱位   作:アルテイル

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酒場業務1.5

「ゴチュウモンハオキマリデショウカ?」

「・・・季節のサラダ、3つで頼む」

「カシコマリー」

 

最悪な事態が起こってしまった。俺はどうすればいい?女装している所をガッツリ仲間全員に見られるなんて団長として今後どうやっていけばいいんだよ。

 

いや待て、まだバレたと決まった訳じゃない、一応俺は別人クラスに変身していて、名前もレイと呼ばれている。まぁ無理筋ではあるが、このまま別人としてゴリ押せば或いは・・・!

 

「ねぇレイニー、遅いから反応追って来てみたら何してるの?」

 

あ、詰んだ、ニナが完全に俺の女装を見破っている。店にフリュネを預けてくるとだけ言っていた団長の帰りがあまりにも遅ければ、確認しに来るも当然か・・・。

 

湿度が可視化されたのかと思うほどのジトッとした視線、ソレはニナだけでなく仲間達の殆どから感じることが出来た。

 

「・・・まぁ、後で話すよ、一応仕事中だから」

「ふぅん・・・」

 

あまり無駄話をしてミアさんに睨まれるのもうまくない、とりあえずこの場は逃げの一手を取るべきだろう。まだまだピークタイムであるし、忙しいのも嘘では無い。

 

未だ呑気にソロで食事しているベルクラネルも店内に居る、メーティス・ファミリアと話をしている様子を見られたら巻き込み事故で正体もバレかねない、流石に、流石にこれ以上広がるのはっ!

 

正直言って、その後は生きた心地がしなかった。ファミリアの皆の席の方を向くと毎回誰かと目が合うし、ベルも良くこっちを見ているし、時が経つにつれ酔っ払いの絡みも増え忙しいし気になるしでバイト初心者の俺には中々辛い体験だ。

 

「ねぇ!注文したいんだけど!」

 

この声は、ダフネ!?やめろ、なんでわざわざ俺が近くに来た時にオーダーするんだ!!リューさんでいいだろ!シルさんとか!

 

・・・くそ、ここで無視すれば何されるか分からない、普段俺が意地悪をしてるからって、こんな所でやり返さなくたっていいだろ!(自業自得)

 

「・・・ハイ」

 

諦めて死んだ目でオーダーを取りに行くと、カサンドラからの救いの声。

 

「ダ、ダフネちゃん、辞めなよ・・・」

「店員さんのオススメ教えてくれない?」

 

しかし悪魔にその声は届かなかった、知り合いに女装して裏声で話してる所見られたくないんだけど・・・。ニヤニヤと頬杖をつきながらこちらを眺めるダフネに辞めるつもりは無いようだ。顔を赤らめていて、珍しく酔いが回っているようなので悪ノリもあるのだろう。

 

「ァー、オキャクサマズイブンヨワレテイルヨウナノデ、オミズトカ・・・」

「え、なに、聞こえないんだけど?」

 

くっそ俺が女装さえしていなければっ・・・!全部フリュネのせいだっ!

 

ゾクッ!

 

「新入り、どうしたんだい?」

「い、いや、なんでもない、ないです」

 

「シメノキノコリゾットトカオススメデスヨ」

「ふーん・・・じゃあ、それお願いしようかな」

「カシコマリマシタ」

 

意外にもあっさりと解放され、俺は大きく弄られることも無く厨房へと戻ることが出来た。ダフネならもっとねちっこく責めてくると思ったのだが、アイツにも僅かな良心があったと言うことか。

 

そんな事を思いながらも他の卓の皿を回収し、料理を運ぶ。まだ何時間やっただけの作業だが慣れてきたみたいだな、こっちの世界に来てから、仕事と言えばダンジョンに向かうばかりだったがこう言うのもたまには良いかもしれない、女装してなければ。

 

「レイ!キノコリゾットが出来たよ!」

「ハーイ」

 

いや〜それにしても順調だな、変な客も俺のキャラを把握してあんまり絡んでこなくなったし、ファミリアの皆も大人しいし。

リゾットを運んでいる道中、そんな事を考えていたのが良くなかったのかもしれない。

 

アイツは、油断している俺を見て笑っていた。

 

「店員さん、これに美味しくなる魔法をかけて貰えない?」

「・・・ハ?」

「だから〜、美味しくなる魔法だって、団長?(・・・)

 

こ、コイツ・・・!

 

やけにアッサリしてると思ったらとんでもない事を考えてやがった!

美味しくなる魔法って、俺が偶にホームで春姫に(・・・・・・・・・・)やって貰ってるやつかよ!?(・・・・・・・・・・・・)

 

しかも団長って言ったよな、言外に断ったらバラすみたいな含みを持たせてるよなっ!

 

仲間である内は頼りになる指揮官だと思ってたのに、敵に回すとマジでただの悪魔じゃねぇか!

 

「お、オイシクナアレ、モエ・・・、モエモエキュン・・・」

「あはははは!萌え萌えきゅんだって!」

「ダフネ様、後で何されるか分かりませんよ・・・」

 

よく分かっているね、リリ。俺はコイツを許さない。

俺がダフネにした事なんて、オラリオに中継されてる戦争遊戯の最中にちょっと辱めたりしたくらいなのにこんな仕打ちを受けるとは。

 

ん?もしかすると自業自得なのか?

 

・・・

 

ま、まぁ今回は見逃してやるさ、団員の可愛いイタズラくらい、笑って受け流してやるのが団長の役目だろう。

 

「ダフネズルい!レイ・・・店員さん!こっちにも魔法掛けてよ!」

「ククッ、私もご相伴に与るとしよう」

「オレにも頼むぜ!」

「えぇ・・・いや、でも・・・そうですね、リリもお願いします」

「私も、普段はするばかりでしたのでたまにはお願い致します♩」

「ぇ、え、そんな・・・なら、私もお願いした方がいいのかな・・・?」

 

まさかの大量注文大繁盛!?もう俺のMP(羞恥に耐える為の精神力)はからっけつだぞオイ!

 

後周りに流されないでくれカサンドラ、男に萌え萌えきゅんして貰った方が良い状況なんて存在しないんだ!

 

「あー?姉ちゃん、飯が美味くなる魔法を使えんのか?丁度いいや!俺らにも掛けてくれよ!」

「とんでもねぇ新入りが入ったな!俺らも飯が美味くなる魔法1つ!」

 

ニナが大声で話した内容が聞こえていたのか、周りの卓の客も便乗してくる始末。

 

ど、どうする、これ以上魔法の呪文を唱えたら、俺のメンタルに癒えない傷が・・・、そうだ!

 

 

「スコシオマチヲ、シェフニカケテモラッタホウガキットコウカモデマスワ!」

「シェフ?そんなのいいから、レイ・・・が、ってちょっと!」

 

ニナの静止を振り切り、俺は酔っ払いの向こう側へと駆け出す、ホールを抜け出し、厨房に駆け込んだ俺が向かった先は勿論、フリュネの元だ。

 

「うぉっ、レイ!いきなり厨房に入ってくるんじゃないよ!」

 

当然ミアさんに怒られるが、此処で精神的な死を迎えるくらいなら、後でゲンコツをもらった方が遥かにマシだ。魂の抜けた表情で皿を洗い続けるフリュネの首根っこを掴み、ホールへと連れ出す。

 

「ミアさん、すみません、一瞬フリュネ借ります!」

「グェッ!な、なんだいアンタ!アタイは食べても美味しくないよ!?」

 

何言ってだこいつ

 

多少錯乱しているようだが、それくらいで丁度いい。豊饒の女主人には荒くれ者の筋骨隆々冒険者も多いからな、正気なら恐怖症で叫び出してしまうかもしれない。

 

「リュネ、お前には今からホールに出てもらう」

 

リュネとは、勿論フリュネの偽名、冒険者の中で悪名高いフリュネの名前をそのまま使っていてはいつどこでトラブルになるか分からないからな。

 

「は、な、ちょっと、アタイは皿洗いの筈じゃ・・・!」

「・・・っ!リュネ、落ち着け、頼むから俺の言う通りにしてくれ、1万ヴァリスあげるから」

「ひゃっ、い、1万、・・・し、仕方ないね」

 

人が近付いて来たのでフリュネに小声で買収を持ちかける、一瞬くすぐったそうに身をよじったフリュネだったが同じく小声で取引に応じてくれた。かつて栄華を欲しいままにしてきた男殺しも無一文になれば1万ヴァリスで買収する事が出来る。ちょろいもんだぜ。

 

「いいか、事は簡単だ。料理が美味しくなる魔法を客のご飯に掛けるだけだ」

「魔法つったって、アタイはそんなもの使えやしないよ、ステイタスは見ただろう?それにホールに出ちまったら・・・男が・・・」

「馬鹿野郎ッ!」

 

「!?」

 

元々長期戦で考えていた男性恐怖症の克服だが、こうなってしまっては荒療治で対応するしか無い(そんなことは無い)

 

「たった1度フレイヤファミリアにボコられたからなんだ!お前の男性戦歴何勝何敗だ、言ってみろ!」

「え、えぇと、確か200勝くらい、かねぇ。負けは・・・歓楽街に飛び込んできた仮面の男と、オ、オッタル、だけだよ」

 

200人も廃人にしてきたのかコイツ、それに仮面の男って俺か?そういやそんな事も・・・ってまぁ、それは置いといて。

 

「その仮面の男が誰かは知らんが、まぁその敗北のせいでオッタル、他の幹部、ひいては男全体が怖くなってしまった訳だが。オッタル恐怖症ならともかく男性恐怖症はどうにかなったりしないか」

 

レベル4未満の相手なら、今のフリュネでも負ける事はない、そしてそんな高レベルは街にゴロゴロ居るものでもない。1度負けてから、何処に自分をボコボコに出来る強者(特にフレイヤファミリア)が潜んでいるか分からなくなって怖くなっているんだと俺は思うんだが、まぁ、

 

「今のリュネは・・・その、別人レベルに可愛いから、怖がらなくたって体臭とか以外で今までの相手にバレる要素無いと思うぞ。香水要るか?」

 

そろそろ立ち直ってくれないと、ミアさんの圧が高まり過ぎてしまう、ついでに忙しそうなシルさんからの熱い視線も気になる。

 

「(可愛いって・・・)わ、分かったよ・・・出来るだけやってみる」

 

よしっ!

 

「よく言ってくれた、魔法の呪文は《美味しくなーれ、萌え萌えきゅん♡》だ、指でハートを作り、ウインクするのを忘れるなよ」

 

「そんな恥ずかしい物だってのは聞いてないよォ!?」

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