拝啓、ご先祖様。人類はハエに侵略されました。   作:翠晶 秋

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謎の暗殺者(汗

 

火薬がはぜる音がする。

遠くには緑の液体にまみれたなにかとそれに駆け寄る女の姿。

いまだに震える腕を押さえながら、全力で家に走る。

最初のハエと合わせ、これで12匹は倒した。

順調だ。

前よりかは仮面を取り繕うのも上手くなってきた。

 

「さてと。そろそろ11時か。寝よねよ」

 

軽い言葉で平然を装い、ジョギングも兼ねて家に走る。

玄関の鍵は閉めてある。開けようとすると大きな音がするので、開けるのはよろしくない。

じゃあ、どうするのかって?

家の庭に回ると、そこにはベランダからロープが垂れている。

玉も作ってあるので比較的登りやすい。

 

「ハァッ…ハァッ…!」

 

それでも比較的登りやすいというだけで辛いには辛いんだけどね。  

なんとか部屋までたどりつき、ロープを回収。

ふいに、ポケットの中に振動を感じた。

 

「ん、着信?」

 

見れば、古部さんからだ。

明日、会合を開くらしい。

そうと決まれば、今日は寝よう。

と、その前にお風呂お風呂~♪

 

 

 

 

例のバーにて。

俺たちは自らの武装を持参していた。

 

「いいニュースと悪いニュース…っていっていいのかわからねえが、どっちがいい。良いニュースか、微妙なニュースか」

「えっと…じゃあ、いいニュースで」

 

おずおずと手を上げ、いいニュースからリクエストする。

リクエストを受けたコブさんは指をパチンとならした。

と、なにやらカウンターの奥から布の塊がやってきた。

この身長…アシアちゃんか!

 

「今回、アシアがお前らのコスチュームを作ってくれた」

「ええ!?わぁ、アシアちゃんすごーいっ!!」

「そのまえに…助けて…」

「家庭科の授業で作ったんだそうだ」

「え、助けていうてますけど。え、これ助けるべきなの?嬉しいけど」

 

よたよた、ふらふらとうごめく布の塊を持ち上げると、中からアシアちゃんがすぽんっ、と出てきた。

 

「あーっ、可愛かったのにー」

「む。ヒバリのだけ没収」

「すみませんでしたアシア様」

 

どうやら服であるらしいこれを分解、しっかり畳むとなるほど、ちゃんと全員分。

俺のは…

 

「ん。これ」

 

ほうほう、シックなコートと来ましたか。

内側にガンホルダーがついてる。

フェザーを入れるためのやつか。

 

「へぇーっ。すごい!可愛い!最高!」

「んふふ。はい、ますたー」

「…私の分まであるのですか?ありがとうございます」

「これも。じいさんの」

「ほほう。俺のこすちゅーむ、とな?」

 

にやにやしながらコスチュームを渡すアシアちゃんに癒されていると、ふいに古部さんが机をドン、と叩いた。

いきなりのことにその場に静寂が訪れる。

 

「コスチュームの鑑賞会は、後にしようや。それはいいニュースと関係ない」

「では、悪いニュースをお願いします」

「……最近、近辺で発見されるハエの数が極端に減っている」

「んぐッ」

 

オレンジジュースを吹き出しかけた。

俺じゃん。それ、俺じゃん。

そんな俺の内心を知らず、ヒバリさんはのんきに手をあげる。

 

「はいはーい。それ、いいことなんじゃないの?」

「いや、いいことにはいいことなんだが…目的がわからない。銃で殺されているようだし、ということは銃を作れる、もしくは手に入れられる環境にいる人物、ということだ。でも、俺のリストに正気を保っている軍の人間はいやしねえ。つまりは、俺たちの知らないところで、単独でハエに抵抗している人物がいるって事だ」

 

んんんんwwwww違うでござるwwwww

すべて拙者でござるよwwwww

そんなこと言えるはずもない。

必ず怒られる。

ハエ退治はリスクを伴う。

人に見られたらおしまい、かつその周囲にも被害が及ぶ。

よって、俺は仮面を被る。

 

「そんなやつが、いるんですね。できれば、ひきいれた方がいいのでは?」

「ああ、そうなんだがな…そいつは、狩場も時間も不定期なんだ。場所の特定のしようがない」

 

その日の課題を終わらせてから狩りに行くからだ。

 

「ニュース番組なんかをみると、最近ハエがよく殺されてるって話しか出てこないしよ」

「…ふむ…正体不明の暗殺者、ですか」

 

そんなビッグな存在じゃないです。

 

「でもなんか…憧れるよね。ハエに襲われそうになったところを、助けてもらう、みたいな」

「ん。ロマンチック」

 

そんな度胸ありません。

 

「ここまで殺って、尻尾を出さないところが良いのう。俺も、一目見てみたくなったわい」

 

だす尻尾がないです。

警察の庇護下で裏をかいて撃ってるだけです。

ああ、無情。

誤魔化すようにオレンジジュースを喉に流し込んでいると、急に店に電話が入る。

いつものようにヒバリさんが手に取り…

 

「みんな、出動だよ」

「応!!よし、すぐに行くぞ!」

「その前にッ!!」

 

出ようとしたコブさんをヒバリさんが声で止める。

 

 

「せっかくだから、コスチューム着ていこ?」

 

 

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