拝啓、ご先祖様。人類はハエに侵略されました。   作:翠晶 秋

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コスチューム

 

アシアちゃん製のコスチュームは素晴らしいものだった。

黒いベンチコートは通気性がよく、さらに体の動きを阻害しない素材でできている。

ガンホルダーは黒い革で出来ていて、フェザーがすっぽりとはまった。

 

「わ~すご~い!かわい~!」

「おお、刀が隠れる造りになっているな」

「…デザインはそこまで変わらないのに、すごいですね」

「ん。んふふ」

 

アシアちゃんはうれしそうである。

急激に俺の心が癒されている中、「あっ」とコブさんが声を上げた。

 

「はよ現場に向かわないとハエが増えるぞ…!」

「「「「忘れてた!!!」」」」

 

 

 

 

到着した現場に現れたハエは、異様な姿をしていた。

いやまあ、デフォルトで成人男性一人分の大きさをしているから、デフォルトでも異様なんだけどね。

今回会ったハエは、六つの足に大きな()()がついていたのだ。

そう、(かま)。サイスである。

いや、普段のハエの足も鋭かったんだけど、研がれて、太陽の光をキラリと反射するその足は、どうみても鎌にしか見えない。

 

「とりあえず撃ちますね」

「おう」

 

引き金を引くと、いつも通り鉄の塊が飛び出し、目の前のハエに風穴を開ける。

はずなのだが。

 

「ソニックブームかようわわっ!」

「ちょっ、威力、威力おかしいよ!」

 

ハエは鎌を振り、衝撃波を飛ばしてきたのだ。

それはもう、いつか見たじいさんの斬撃ばりのを。

撃たれたことにお怒りのハエさん、ソニックブームを連発してくる。

その度土やらなにやらがまっぷたつにされるもんだから、たまったもんじゃない。

うわっ、今前髪切れた。

ひっしに避けていると、車からアシアちゃんが顔を出した。

アシアちゃんは視線をハエに注ぐと、ドアの向こうで何かパネルを操作しているようだ。

こんな時にゲームですか、呑気だなぁ!?

そう考えていると、不意に車のドアが開けられた。中から出てきたのはアシアちゃんのコスチュームカラーのロボット。

キャタピラ歩行で正面に(`□´)を映すソレは、一時期流行ったアレを思い出させた。

………イヤちょっと待て。

ロボット!?ロボットですか!?ついにアシアちゃんはロボットを作れる兵器工場になっちゃったんですかぁ!?

誰だよ、技術教えたの!

 

「お、戦闘ロボット【プロトろぼ】だな。ナイスなタイミングだぜ」

「アンタか!!!」

 

大体わかってたけども!

んで例に違わずネーミングセンスが皆無!

 

『モクヒョウ、ホソク。プレイヤー1、コネクト完了。戦闘ヲ開始シマス』

 

無機質な声。

取り出されるガトリングガン二丁。

乾いた笑いを浮かべながらしゃがむ俺に目もくれず、ロボットはその両手(?)のガトリングガンを乱射し始めた。

もちろん、ハエはソニックブームを飛ばすが、鋼のボディーに空気が勝てるはずもなく、もれなく蜂の巣にされてしまった。

 

『モクヒョウノ死ヲカクニン。戦闘ヲ終了シマス』

 

ガトリングガンから白煙を吹きながら無機質に言うその姿に、俺は言葉を失ってしまった。


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