拝啓、ご先祖様。人類はハエに侵略されました。   作:翠晶 秋

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サブタイトルがネタ切れを起こす。
どうしませう。


『再び』のサブタイトル再び

 

~♪

~~♪

~♪

~~♪

 

スマホで設定した目覚ましの音だ。

そろそろ起きないと……。スマホはどこだ。

 

「………………?」

 

腕を伸ばすと、何か柔らかいものが手に触れた。

犬猫やぬいぐるみの類いではないな。

もっとこう、水風船に絹を張ったのような……。

 

「んんにゅ……」

 

女の子の声が聞こえた。

眠いな。だいぶ寝ぼけているようだ。

 

「……。───ッ!?」

 

まぶたを上げ、そこに女の子の顔があることに気づく。

出かかった「わあ」という言葉をごくりと飲み込み、ついでに深呼吸を三回ほど。

 

「……ヒバリ、さんか」

「すう、すう、すう」

「なんとなく思い出してきたな」

 

ハエの幹部に追われて、バーに駆け込んで、寝てたら金縛りにあってヒバリさんが布団に潜り込んで来て。

 

じっと寝顔を見つめてみるも、ヒバリさんは無邪気な寝顔をさらしているだけ。

ふっふっふ。

ヒバリさんは男の性欲をなめているな?

男には朝にだけ発動する生理現象があるのだよ、貴様の体に教えたろうかぁ!

 

「……むにゃむにゃ」

「……………………」

 

『むにゃむにゃ』って寝言で言う人始めてみた。

『ばぶう』って言う赤ん坊くらいにレアだぞ。

 

「すやあ」

 

あほらし。

 

ヒバリさんの長い髪が手に触れる。

さらさらしていて、冷ややかだ。

何となくにぎにぎしているとヒバリさんの目が開いた。

あっ、おはようございます。

 

「渡瓶……君……?」

「昨日は良い、夜だったね」

「──────」

 

にっこりと笑うと、ヒバリさんの視線は己の体とかかった毛布に移された。

そして一拍。

 

「ぁ……」

「あ?」

 

 

「きゃああああああああああッ!!!!!!」

「かおぐっ!」

 

 

鼓膜が、鼓膜がぁ!

至近距離で女子を怒らせると怖い!

 

「きゃああ、きゃああああああああああ!」

「ああああ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」

 

顔を真っ赤にしながら掴みかかってくるヒバリさん。

握力がすごい。

 

「なっ、ななな、ななななななぁ!」

「耳がぁ!肩がぁ!冗談です!冗談ですから!」

「うわああああああ!」

 

聞いてねえなコイツ!

 

「────────ッ!!!!!!」

 

ついに人が聴ける声の高さを突破したヒバリさん。

それはもう超音波だ!

俺に向けるんじゃなくてガラスでやってみれば一発芸になるぞ!

 

「──!────!」

「落ち着いて!魔物みたくなってるから!」

「──────…………ああ……あぅあ……」

 

俺の耳に深刻なダメージを負わせた後、ヒバリさんはなんとか落ち着いた。

ほっと安堵したのもつかの間。

 

ガタン。

 

「……え?」

「なんだ今の音?」

 

何かが倒れるような音が、ロッカーから聞こえた。

ヒバリさんの声はついに物を動かせるまでになったか。

と、思っていると、ロッカーがぎぃ……とゆっくり開いた。

 

「ッ」

「何か、いるのかな……」

 

そこまですると、さすがに警戒しかねない。

俺はフェザーを、ヒバリさんは武器がないので適当に徒手空拳の構えをした。

やがて、完全に開いたロッカーから出てきたのは。

 

もう……無理……

「「アシアちゃああああん!?」」

 

耳を押さえた青ざめた顔の、小さき天才、アシアちゃんだった。

 

 

 

 

「……で、俺が起きそうだったからとっさにロッカーに隠れたと」

「……ん。高い声が聞こえて、とってもびっくりした」

「ごめんなさい……」

「ホントだよな!」

「渡瓶君が朝ちゅんみたいなことするからだよ!?」

 

鋭きツッコミを繰り出すヒバリさん。

そんな彼女をあしらいながら、情報の整理をする。

 

アシアちゃん起きる、学校休み、バーに遊びに行こう、鍵空いてる、俺とヒバリさんが同じ布団で寝てる、『!?』、スマホ鳴る、俺が起きそう、ロッカーに隠れる、ヒバリ起きる、ヒバリ発狂する、今に至る……と。

 

「アシアちゃん、朝から濃ゆいのをごめんね」

「ネタが濃いって意味でしょ!?朝ちゅんされた後だとおかしな意味に聞こえるよ!あと、『濃ゆい』って何!?」

「うるさいにゃあ。濃ゆいってのは濃いって意味、それ以上でもそれ以下でもない」

「哲学かなぁ!?あと『にゃあ』ってなんだよ!」

 

ツッコミが絶えないヒバリさんの額に聖なるデコピンを噛ます。

「きゅう」ともう一度深き眠りに(いざな)われたヒバリさんに毛布をかけ、アシアちゃんに向き直る。

 

「なあアシアちゃん、真面目な話、ここらにハエは出なかったか?」

「で、デコピンで気絶……」

「そんなことはどうでもよろしい!」

「よ、よろしかない……!」

「それで、どうなの?俺もヒバリさんも、ハエに追われてここに泊まらせてもらったんだけど」

 

ちょこちょことヒバリさんを気にかけていたアシアちゃんは目を見開き、そして顎に手を当てた。

小学生なのになんでそんな大人びた動作が似合うのだろうか。

 

「私が来たときには……いなかった。いつもどおり、坂道を下って……」

「うーん。そっか、それなら良いんだけど」

 

幹部はどこに行ったのだろうか。

 

「……ヒバリさんがいる?これはどういうことですか?」

「ん、マスター」

「昨日は泊めてくださり、ありがとうございます」

「……いえいえ」

 

やって来たマスターがヒバリさんに驚く。

立て続けに扉が開き、巨体が入ってきた。

 

「おーっすやってる──うお、ヒバリ!?何してんだ!?」

「コブさん」

「ゴブさんがいるの!?貞操の危機!」

「うっわいきなり復活すんな寝てろ!ってか何が貞操の危機だ!」

 

コブという単語に反応したヒバリさんが起き、マスターが苦笑し、アシアちゃんはちゃっかりと座っていた俺の上に収まる。

かき乱された場に気をとられ、俺は幹部の事なんて忘れてしまっていた。

 

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