拝啓、ご先祖様。人類はハエに侵略されました。   作:翠晶 秋

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ピンチ?否、全ては物理に跪く

 

息を潜める。

物陰……マンションについてるやたら風吹き出すやつに身を隠し、奴が来るのを待つ。

そう、この辺りで待ち伏せして、能力を発動させる暇もなく撃ち抜く作戦だ。

 

しかしまあ、いざやるとなると少し不安ではあるけれど。

何故なら、今までと違って彼はかしこい。

もしかしたら、何かイレギュラーな行動をとるかも……。

 

「ちゃんと来るのかな、あいつ」

「そうだね。彼は飛んだりもするから注意しよう」

「ああ。ハエは……ッ!?」

「ハッ」

 

後ろからの声に振り向くと同時に顔面に足がめり込んだ。

完全に油断していた。

吹き飛ばされながらも右手に構えたフェザーで銃弾を放つ。

右肩が反動で持っていかれるが、その分離れる勢いがついて一石二鳥だ。

弾丸は狙った頭の横を通り、マンションの壁にめり込んだ。

 

「なかなかやるじゃないか。当たらなかったが」

「いや、壁を狙った。俺の勝ちだ」

「子供の屁理屈じゃないか。……君のような存在はなかなか厄介だ。早めに、処理させてもらうよ」

 

瞬間、ヤツの体が目の前から消えた。

何回か相手をしたからわかっている。

次に来るのは顔面を狙った拳による突き。

右か、左か。

賭けるのは……。

 

「そこッ!!」

「!?」

 

刹那、右にずらしたフェザーから弾丸が放たれる。

ヤツは顔をしかめながらも腰を高速で捻ることにより首を回転させ、弾丸を生身で避けた。

残り四発。レボルバーを回転させる。

アッパーがこちらに来る前に、膝を曲げ、進行方向を邪魔する。

 

刹那、右足に拳がめり込み体制が強制的に変わる。

横向きに倒れると首に冷ややかな感触が当てられた。

そのまま手に力が入り、ミシミシと首が締められる。

 

「ああ、その顔だ!苦しみに満ちたその顔!それがもっと見たいんだ!」

 

脳筋バトルジャンキーか……否、ただのサイコパスだ。

フェザーを持つ手は足で固定され、少しも動かせない。

意識が薄くなる中、俺は心の中で数える。

アレが来るまで、三、二、一。

俺の勝利。

 

先程撃った壁に入ったヒビがドカンと砕かれる。

二発目のドカンが間髪なく続き、俺の上に乗っかっていた重みが横に吹き飛んだ。

 

「な……なにがおごっで……」

「ごほっ、ごほ……。残念だったが、俺の勝利だな。なんせ───」

 

俺はソレの下まで歩いて行き、その()()()に手を触れた。

メタリックなブラックイエローで見事な曲線。

右手にランチャー、左手に万能機関砲を取り付けた、俺専用の機体。

 

 

『マスターヒョウト・確認。これより、戦闘を開始します』

「こいつがきたからな」

 

 

アシアちゃん特製【プロトろぼ】……もとい、【メテオライト】の初陣だ。

 

 

 

 

「プロトろぼの専用機体?」

「ん。ついに全員分完成した」

 

俺たちがくつろいでいる時、店の裏───コブさんやアシアちゃんは【ドック(本来の意味は船に使うらしい)】と呼んでいるらしい。重症である。───から、ゴーグルを頭にちょこんと着けたススだらけのアシアちゃんが出てきた。

 

この前命を助けられた【プロトろぼ】……それが完成したそうな。

ドックに来いと手招きされたので行ってみれば、明らかに地下の店裏では済まない規模の大きな基地と人1人入れそうなほどのプロトろぼが並べられていた。

個体色はそれぞれ違う。ブラックイエローだったり、スカーレットだったり。

 

「ん。戦力強化のため、これらをみんなにあげることにします」

「ふぇ!?これ、アシアちゃんが作ったの!?すっごーい!」

「んふふ……。右から順に、プロトろぼ一号、二号、三号……」

「あーあー、わかった、後で俺が名前つけるから」

「ん!」

 

アシアちゃん、現代科学を超えるの巻。

 

「1人で作るのは大変だったけど、とても楽しかった!」

「おう。免許皆伝だ」

「それ皆伝しちゃダメなやつです」

 

アシアちゃんが……。

純粋無垢なアシアちゃんか……ついにガ○ダム作れるように……。

 

「おいそこ表都ォ!もしやお前これをガン○ムだと思っちゃいねえだろうなあ!?」

「うわっ!?なんですコブさん!?」

「いいか!?○ンダムってのはクリエイターの夢と希望が詰まった遥かなる目標点なんだ!そう簡単に作れると思うなよ!」

「全国の善良なクリエイターの皆様に謝ってください!みんながみんなあんたみたいなロマン狂じゃないんですよ!!」

 

タバコを落としてもおかまいなし、激怒するコブさんにツッコミを入れていると後ろから袖がくいと引っ張られた。

振り向くと、ススだらけの顔の可愛らしいお口がへの字になってらっしゃる。

 

「ん!ガンダ○を舐めないで!人体構造を模した完璧なデザイン、引き込まれるような脚部構造!私も、アレを作りたい!このプロトろぼは……」

「ああ、プロトろぼは……」

「「まだ出発点に過ぎないッ!!!!」」

「いいから落ち着いてください!」

 

珍しく興奮して口数の多いアシアちゃんにやや引きながらも、俺はプロトろぼに感嘆する。

近くでも遠くでも、よくこれを作ったものだ。

この調子なら、本当にがん……

 

「「モビルスーツを、舐めるなッ!!!!」」

「心読まないでくださいって!」

 

もうダメだ、この人達は歯止めが効かない。

銃ならまだよかった。いや銃でもダメなんだけども。

それが、その人たちが、このロボを作ったことによって暴走している。

 

「はははっ!わかってんじゃねえか、弟子ィ!」

「師匠!プロトろぼを作っていて思いつきました!碗部の取り外しを可能にし、さまざまな機能を持った腕を用意するのはどうでしょうか!」

「カスタマイズ可能にするのか!面白え!よし、作れ!」

「ん!」

「ちっちゃい子に何させようとしてんだアンタ!」

 

アシアちゃんはしばらく引きこもると、一時間ほどで出たきた。

忘れ物かな。

 

「終わった」

 

早え。

 

「おう。んで、まだなんかあんだろ?その目は、新しい案を見つけた目だ」

「銃弾に細工をして、近くに転がったときに起動するようにしたい!ピンチのときに空に向けて銃を撃って、しばらくして機体が降下してくる!」

「面白え、やれ」

「ん!」

 

もうなんでもありかよ!

コブさんもコブさんだよ、なんでもかんでもやらせんなよ雑な現場監督か!

 

「終わった!配る!」

「もうアシアちゃんは休め!おねんねしよ!」

「お兄ちゃん……。これだけは分かって。クリエイターには、譲れないものがあるの」

 

コブさんが口を開く。

 

「そう!脳が案を出す限り!」

「インスピレーション湧く限り!」

「ロマンを、夢を、追い求める!!」

「もう好きにしろよ!」

 

 

 

 

まあ。

こんなやりとりがあって、このメテオライトは完成したのだ。

 

なお、ヒバリさんのメタリックブルーの機体はアジュライト。

 

マスターのスカーレットの機体はクロコアイト。

 

アシアちゃんのメタリックブラックの作業用機体はネプチュナイト。

 

じいさんの虹色の機体はビスマス。カメレオンみたいに色が変わって景色に溶け込むらしい。

 

コブさんのメタリックパープルの機体はバイオレット・スパイク・クリスタル・エクスプロージョン。こいつだけやたらと長いのを選んでやった。

 

で、俺のブラックイエローがメテオライト。

プロトろぼの時にはただパネル貼り付けただけだった前面には真っ黒い曲線が貼られている。サングラスみたいな色合い。

 

「なん……だと……?なんだ、それは!そんなもの、聴いていな「ドカン!」ごはあ!」

 

はははははは。

こいつ、べらぼうに強え。

もうこいつだけでハエ駆逐できるだろ。

 

「くそ……なら、それから狙わせてもらう!キャノンしか攻撃方法がないのだろう!?」

『ガトリング起動』

「あばばばばばばっ!?」

 

右手のキャノン、左手にガトリング。ランチャーと機関砲のセットは俺に足りない破壊力と射程を補ってくれる。

がしかし、機械には反射神経が無い。

機体に搭乗できたりしたらカッコいいんだけど……。

 

『キャノピー、開錠。マスターヒョウト、お乗りください』

「うん、あの2人が搭乗システムをつけないわけがないよね、わかってた」

 

パネルだと思ってた前面の黒いキャノピーが上に開かれ、操縦席が現れた。

腰掛けるとキャノピーが閉まり、機械モノでは定番の機械音が鳴る。

あっはあ、もうなんでもいいや。

 

ゲームのロボットのように左手側にわかりやすい操作説明が書いてあり、足元にアクセルとブレーキ、レバーの上のボタンでキャノンと機関砲、レバーで上下左右が動くことがわかる。

 

うん、これ負ける気しねえわ。

負ける要素ねえわ。

だって操作方法がおなじみなんだもん。

ゲームセンターにあるような操作方法なんだもん。手に馴染むよそりゃ。

 

「くそ……くそ!!いでよ、無限の連隊!」

『ハイ撃ちまーす』

 

機関砲の狙いを定めて左ボタンを長押しすれば、左手の機関砲が回転して無限の連隊を蹂躙していく。

なにこれ楽しい。

 

「まだだ、まだ!物量で押し切るんだ!」

『じゃ、キャノンで全部一網打尽に』

「やめろぉおおおおお!」

 

右ボタンをポチッと一回だけ押すと右手がドカンと。

無限の連隊の塊は吹き飛びました。

なにこれ楽しい!

 

『やっべ、これ楽しい!強さのインフレなんですけど!』

「クソ、クソ、クソ!なんで、なんでなんだ、なんで人間ごときに」

『キャノン発射!』

「ぐあああああああああああ!!」

 

湧き出る無限の連隊ごと頭を吹き飛ばす。

頭と別れた体は遠くまで転がると、やがて静止した。

無限の連隊も出てこない。

 

『戦闘終了。お疲れ様でした』

「ははは、あとでコブさんを殴っておこう」

 

こうして、ハエの幹部は残り1人になったのだった。

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