『ごほっ、ごほ……。残念だったが、俺の勝利だな。なんせ───』
『マスターヒョウト・確認。これより、戦闘を開始します』
『こいつがきたからな』
俺だ。
画面に映っておるのは、間違いなく俺だ。
後ろに映っているのはメテオライトだ。
「おう表都お帰り」
「…………」
「おいおい、無視はひでぇんじゃないか……?」
「…………」
「んでよぉ……こ れ は な ん だ ?」
終わった。
「えーなんのコトデセウー?」
「今更誤魔化し切れるかバカ野郎。てめぇ……ニュースで話題の暗殺者だろ?」
「ちょっと何言ってるのかわからないですね……ひえっ」
首の横に刀が当てられる。
後ろからの脅し!?
じいさん最近ホント容赦ねぇな!!
「そうだよな、今考えれば全て辻褄が合う……メテオライトの損傷や弾薬の減りも、そりゃこんな怪物と戦ってれば減りもするよなぁ!?」
「渡瓶君……どういうこと?なんで黙ってたの?」
「……正直、隠す理由が思い当たりません」
「おい、そろそろ語ったらどうじゃ。言い逃れはできんぞ」
アルカトゥーレにいるメンバー全員が俺に尋ねる。
硬く握った左拳が、遠慮がちに握られた。
「……ん。なんで……?」
「……アシアちゃん」
もう、言うしかないのだろう。
「そうですよ……俺が、夜な夜な一人でハエを駆逐してました」
「ようやく吐いたか。んで、理由は?」
「定期的にハエを倒していっても、増える速度の方が早い。保険の授業でやっていました。ハエは、人間の女を孕ませ、孕まされた人間の女は一度の出産に10以上のハエの幼体を産むって」
「……なるほど?コロニーってやつだな。一度ハエの出産をすると脳に快感が送られてもう一度ハエを産みたくなる。住みかとコロニーを別にすれば、女は歩くコロニーだ。自分は動かずして、蹂躙するハエの行動範囲を広げようってこった」
「はい。しかも、今ハエに洗脳されている人間はハエに憧れを持っています。……だから、ハエと人間が同時に興奮する夜に活動して、性行為中か直前、そうでなくとも恋愛や親愛の感情が一番出ているときに撃ち抜く事にしてました」
そうすればきっと、トラウマなって病んでくれるかなって。
『自分がまたハエと恋仲になれば、きっとそのハエも殺されてしまう』と、考えてくれるように。
特に、ハエの幹部は人間と体の構造が似ているため、女性からはすごく人気があった。
今回の騒動で、ショックを受けた人は大勢いるだろう。
「それで、俺らに伝えなかった理由は?」
「……俺、繭由っていう幼馴染みがいるんですけど。小さい頃にそいつと二人、親に内緒で隣町までいったんです。で、気がついたら繭由がいなくて。誘拐、されてました。それに気づかずに、そもそも繭由を連れて行ったことも忘れて、一人で帰っちゃったんです。……だから、それが怖くて」
その日は、晩御飯抜きなんて生易しいものじゃなかった。
縄で縛られ、冷たいアスファルトの上に放置された。
異論はない。繭由の気持ちのなりたかったから。
辛かった。寂しかった。心細かった。
「だから、ソロでやったんです。いち早くハエを駆逐したいってのも、繭由がハエに犯されないうちに、倒して起きたくて」
「渡瓶君、その繭由って子は、その……もしかして、好きな人?」
「あぁ……今思うとそうなのかもしれませんね」
「…………そかそか……やっぱり……」
「?どうしたんです?」
「え?なんでもないよ?なんでも」
ぱたぱたと手を振ってみせるヒバリさん。
「他に何か質問は?」と促すと、アシアちゃんが小さいおててを上げた。
「ん。その……悲しい」
「かな、しい」
「質問じゃないけど……頼って、くれなかった」
ホント、アシアちゃんは強いというか。
純粋だからこそ、胸に来るものがある。
悲しい、か。
あーあ。
「なんか……疲れちゃいました」
「はぁ……ったく、この世の命運をお前が全て背負ってなんになるんだよ。お前は主人公でもなんでもないんだぞ?」
「そう、ですかね……そうか。……そうか」
うなだれた俺に、ヒバリさんが近づく。
俺の手を取った。
「チームで、世界を救うんだよ」
「うぃっす」
「勝手に死んだりしたら、許さないからね」
「……うぃっす」
ヒバリさんに怒られた。
……申し訳ない気持ちもあるが、単独で行動するのはリスクは高いがメリットも大きい。
家の近くの範囲なら、バレず出来ないこともないけど……やめておこう。また悪目立ちするだけだ。
「ほんじゃあ、残りの幹部も倒すため、あいつの特徴についてまとめるぞ」
「……そうですね。じいさんの脚が貫かれたことについても良い情報が入りました」
コブさんとマスターが、どこからかホワイトボードを持ってくる。
改めてチームとしての作戦会議が、今始まった。