通されたのは射撃場。
いつか見たダーツ場のように的がずらりとならび、机の上には様々な種類の銃器が置かれている。
「おし、撃ってみろ」
「いきなりすぎやしませんかねぇ!?」
「何事も経験だ」
「経験って言葉の意味間違えてません!?」
古部さんはため息を一つつくと、机の上の拳銃に手を伸ばした。
それを俺に渡し、説明を始める。
「銃を買うのは本来は違法なんでな、作った」
「作った!?」
「アシアと俺がな」
「あのちっこいのが…!?」
古部さんは机の上からライフルを掴み、的に向かって構える。
古部さんが引き金を引けば、カキャンという音と共に的に穴が空いた。
「こんな感じな、やってみろ」
「こんな感じなって…。始めてなんすけど」
「何事も経験だ」
「ソレ使い回してません!?」
不安ながらも手に持った銃を構える。
どんな風にやれば良いのかはわからないので、とりあえず刑事ドラマで見た構え方。
照準を合わせ、引き金を引く。
すると、目の前の的に火花が散り、穴が空いた。
特殊な構造をしているのか、反動は無い。
「筋は良いじゃねぇか。じゃあ次はマシンガンな」
「ハイスピードっすね…」
「何事も経験だ」
「もうツッコむ気力が無いです」
素直に銃器を受け取り、俺はしばらく試射を続けたのだった。
◇
「おし、終わりだ」
「やっと、終わり、ですか」
「おいおい、そんなんでヘばってどうするんだ?これからハエと戦うんだぞ?」
…そうだ。
俺は、この世界の常識を取り戻さないといけないんだ。
「いい顔になったじゃねぇか。じゃ、結果発表に移るぜ。お前が良く撃てたのはスナイパーライフルとマグナムだ。お前のメインには、取り回しの良いマグナムだろうな」
マグナムってのは、ピストルの高威力バージョンだ、と古部さんが付け足す。
「マグナム、ですか。ありがとうございます」
「二万円だ」
「やっぱ金は取るんスね」
「当たり前だ。これでも良心価格だぜ?」
相場はわからないが、本来なら買った側が負うはずの責任を一緒に背負ってくれる。
それもそうか、と納得して財布からお札を二枚渡す。
ホルスターに仕舞われたマグナムが返って来る。
「今まで誰もマグナムは使ってなかったんでな、ソイツの名前は【マグナムβ】だったんだが、どうだ?いっそのこと、名前とかつけてみろよ」
「へ?名前?」
「そうだ。銃にだって名前はある。有名なマグナムだと【コルト・パイソン】とかな」
マグナムに名前…。
どうせなら呼びやすくて愛着のある名前がいいな…。
そんな事を考えていると、マグナムの端に羽のマークがあることにきづいた。
羽、羽か。
「決めました。【フェザー】。こいつは今からフェザーです」
「いい名前じゃねえか。よし、帰るぜ。スナイパーライフルはまた今度だ」
そういって笑う古部さんに押され、俺はバーに戻ることになった。