拝啓、ご先祖様。人類はハエに侵略されました。   作:翠晶 秋

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変わらない日常

 

もうハエの姿はないということで、帰ることになった。

そのまま解散し、家に帰って、しっかり寝た。

疲れていたんだな、震えているはずなのに横になったとたんに眠ってしまった。

朝起きて、パンを食べて、ニュースを見る。

 

『人気ゲーム【ファエナルファンタジー】の最新作が────』

 

ファエナルファンタジー。略してFF(えふえふ)である。

なんだよファエナルって。しかも最新っておかしいよね、ファイナルのファンタジーのはずなのに。

あいも変わらず、みんなハエを信仰している。

歯をみがいて、制服に袖を通す。

袖のボタンにハエのシルエット。

これも変わらない。

両親に行ってきますと挨拶を告げて、通学路から学校に向かう。

どこもかしこも『ハエ』という単語しかない。

学校に着いたって、みんなはハエの事ばかり話している。

なんだよハエのバンドのニューシングルって。ハエ語とかわかんねぇよ、消えろよ。

微妙な顔で顔で眺めていると、俺の顔に陰がさした。

 

「おはよう、表都君」

「…入裏」

 

入裏(いりうら) 繭由(まゆ)

昔っからの幼馴染みで、幼稚園から高校まで、同じところに入っていた。

もちろん繭由もハエ常識になっており、ときおりいとおしそうにスマホケースに貼ってあるハエの写真を撫でる。

呪われそうである。

 

「どした?」

「んーん。表都君、いつもより元気ないなって」

「そうかね?別にいつもどおりだと思うけど」

「ふふふ。まぁ、別に私が気にすることでもないかな」

 

ショートの髪が揺れ、俺の前から離れる。

ああもうホンット、ハエ信者じゃなければすごく可愛いのに。

そうして授業ははじまる。

いつも通りに。

なにも変わらない、()()()の日常。

放課後がくれば、みんなが散り散りになっていく。

生物のピラミッドの頂点にハエがいること以外、あの日以前と全く変わらない。

 

「じゃあね、表都君」

「…あぁ。じゃあな」

 

でも、常識は変わってしまった。否、替わってしまった。

常識が替わっているからこそ、みんなはハエの異常性に気づかない、気づけない。

学校から出て、例の場所へと向かう。

もっと。

もっとだ。

楽しかったあの日々を取り戻すためには、もっとハエを殺さないといけない。

それがどれだけ遠かろうと。

それがどれだけ(イバラ)の道であろうと。

諦めない。

 

「…この世界を、取り戻すために」

 

グッと握った拳に、決意がこもる。

今日はお金を引き出して来た。

もうひとつの俺に合った武器を買うためだ。

行動を開始するために、俺は─────

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