夜の町をひた走る。
腕の中には今日買ったばかりの【スカイライナー】がある。弾も入っている、後はセーフティを外して引き金を引くだけ。
坂道にあるマンションの私有地に侵入し、坂下を覗く。
あそこの家はクラスメイトの家族がハエのために作った家だ。
明かりがついている。クラスメイトと『昨日は お楽しみ でしたね』をしているのだろう。
そのお陰、影でハエの位置がくっきりわかる。
ベッドに寝たクラスメイトに近寄ろうとしている。
スカイライナーのセーフティを外し、肉眼でハエを狙う。
くいっと引き金を引けば…
パァン
「キャ─────ッ!!!!!!」
「どうした、茜!?」
「ハエさん、ハエさんがぁ!!」
カーテン越しに液体が飛び散り、隣の家から人影がどやどやと押し入る。
俺はセーフティをつけ直し、崖状になっている段差から飛び降り、そのまま家に走った。
◇
翌朝。
『昨晩深夜2時頃、ハエが何者かに銃で撃たれるという事件が発生しました。警察は…』
「物騒ですねえ、ハエ様が死んでしまうなんて」
「ああ。ウチにハエ様がいなくて助かったな」
「ちょっと祐一さん?失礼ですよ?」
「や、その…すまない」
あの後通報されたらしく、クラスメイトの家周りは黄色いテープやブルーシートで囲まれていた。
生徒にまで危険が及ぶ可能性があるということで、学校は休学。
俺が朝ごはんのパンをかじりながら今日の予定を考えていると、スマホが震動した。
メール───他のクラスメイトからだ。
『今日、ハエ様に告白する。遠くから見ててくれないかな』
心臓がぞくり、と嫌な音を立てて跳ねる。
仲が良かったクラスメイトだ。本来なら応援するのが定石だろう。
でも、俺は──────
『了解。ばっちり見守っててやるから、必ず成功させろよ』
◇
「よっ」
「
「当たり前だろ?」
「あはは、ありがとう。表都君が見てくれてるならなんでもできる気がするよ」
そりゃどうも、と茶化して離れる。
クラスメイトの告白する場所は公園、狙撃する場所は公園から離れたマンションの屋上。
クラスメイトと会う前に屋上にスカイライナーは置いてきた。
公園に向かうハエも確認済み。
成人男性一人と変わらない大きさだっのですぐに見つかり、わーキャー言われていた。
見立てではあと2分で公園につく。
確認してから時間もたつ、残りは1分と30秒と言ったところか。
それまでに、マンション屋上に張り付き、狙撃しなければ。
階段をかけあがり、屋上の扉を開ける。
あと1分。
布づつみをほどけば、流線型の近未来な形をしたスカイライナーが現れる。サイレンサーもつけた。
今、ハエはどこに─────
しまった、クラスメイトがハエに気付いた。
ピシュッ
つんざく悲鳴の中、スカイライナーを布でつつんで全力で階段を降りる。
「何があったっ!どうし…た…」
「ハエ様が…ハエ…様…」
クラスメイトの目の前に、脳天だけ貫かれて緑の液体を散らすハエが横たわっていた。
弾丸はあえて残す。昨日の事件の同一犯として見るだろう。
バーのみんなもそうしていた。
「しっかりしろって」
「うう…ああ…いやぁ…」
こんな場面で、中学生のときに演劇部に入ってよかったと思ってる俺は、そうとう残忍な性格なのだろう。
クラスメイトの肩に手を置くと、『一人にして』と振り払われた。
『そうか』と言い残し、その場を去る。
スカイライナーは今日の夜回収しよう。
まずは、この罪悪感に慣れなければ。