拝啓、ご先祖様。人類はハエに侵略されました。   作:翠晶 秋

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闇に忍び、影に消える

夜の町をひた走る。

腕の中には今日買ったばかりの【スカイライナー】がある。弾も入っている、後はセーフティを外して引き金を引くだけ。

坂道にあるマンションの私有地に侵入し、坂下を覗く。

あそこの家はクラスメイトの家族がハエのために作った家だ。

明かりがついている。クラスメイトと『昨日は お楽しみ でしたね』をしているのだろう。

そのお陰、影でハエの位置がくっきりわかる。

ベッドに寝たクラスメイトに近寄ろうとしている。

スカイライナーのセーフティを外し、肉眼でハエを狙う。

くいっと引き金を引けば…

 

 

 

パァン

 

 

 

「キャ─────ッ!!!!!!」

「どうした、茜!?」

「ハエさん、ハエさんがぁ!!」

 

カーテン越しに液体が飛び散り、隣の家から人影がどやどやと押し入る。

俺はセーフティをつけ直し、崖状になっている段差から飛び降り、そのまま家に走った。

 

 

 

 

翌朝。

 

『昨晩深夜2時頃、ハエが何者かに銃で撃たれるという事件が発生しました。警察は…』

「物騒ですねえ、ハエ様が死んでしまうなんて」

「ああ。ウチにハエ様がいなくて助かったな」

「ちょっと祐一さん?失礼ですよ?」

「や、その…すまない」

 

あの後通報されたらしく、クラスメイトの家周りは黄色いテープやブルーシートで囲まれていた。

生徒にまで危険が及ぶ可能性があるということで、学校は休学。

俺が朝ごはんのパンをかじりながら今日の予定を考えていると、スマホが震動した。

メール───他のクラスメイトからだ。

 

『今日、ハエ様に告白する。遠くから見ててくれないかな』

 

心臓がぞくり、と嫌な音を立てて跳ねる。

仲が良かったクラスメイトだ。本来なら応援するのが定石だろう。

でも、俺は──────

 

『了解。ばっちり見守っててやるから、必ず成功させろよ』

 

嘘をつく(殺す)事にした。

 

 

 

 

「よっ」

表都(ひょうと)君。ちゃんと来てくれたんだね」

「当たり前だろ?」

「あはは、ありがとう。表都君が見てくれてるならなんでもできる気がするよ」

 

そりゃどうも、と茶化して離れる。

クラスメイトの告白する場所は公園、狙撃する場所は公園から離れたマンションの屋上。

クラスメイトと会う前に屋上にスカイライナーは置いてきた。

公園に向かうハエも確認済み。

成人男性一人と変わらない大きさだっのですぐに見つかり、わーキャー言われていた。

見立てではあと2分で公園につく。

確認してから時間もたつ、残りは1分と30秒と言ったところか。

それまでに、マンション屋上に張り付き、狙撃しなければ。

階段をかけあがり、屋上の扉を開ける。

あと1分。

布づつみをほどけば、流線型の近未来な形をしたスカイライナーが現れる。サイレンサーもつけた。

セーフティ解除、銃口をフェンスの外へ(あと30秒)

今、ハエはどこに─────見つけた(あと20秒)

しまった、クラスメイトがハエに気付いた。

ハエに向かって手を振っている(クラスメイトに接近するまであと10秒)

照準を合わせ(あと8秒)引き金に手をかけ(あと5秒)、そして人差し指に力を───(あと2秒───)

 

 

ピシュッ

 

 

つんざく悲鳴の中、スカイライナーを布でつつんで全力で階段を降りる。

 

「何があったっ!どうし…た…」

「ハエ様が…ハエ…様…」

 

クラスメイトの目の前に、脳天だけ貫かれて緑の液体を散らすハエが横たわっていた。

弾丸はあえて残す。昨日の事件の同一犯として見るだろう。

バーのみんなもそうしていた。

 

「しっかりしろって」

「うう…ああ…いやぁ…」

 

こんな場面で、中学生のときに演劇部に入ってよかったと思ってる俺は、そうとう残忍な性格なのだろう。

クラスメイトの肩に手を置くと、『一人にして』と振り払われた。

『そうか』と言い残し、その場を去る。

スカイライナーは今日の夜回収しよう。

まずは、この罪悪感に慣れなければ。

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