「そうそう、アンタ右眼は隠しときなさいよ」
「んあ?」
ホントだ。普段より何か視界が広いなと思ったらそう言う事か。
「普段は髪で隠してるんだけどね。ほら、あの山って風が凄いじゃん」
「それもそうだけどね……アンタの右眼って昔からそうだったけど人妖問わず狂わすじゃない」
「そんな事もあった気がするねー……」
気付いた時からこの髪型だし、元から右眼だけ隠れてたからたまにそっちの眼で見ると誰かしらおかしくなってた気がする。
「全然気にした事なかったよ」
「そのなんとなくで最強に居座ってるから鬼連中から勝負挑まれんのよ……」
確かにあの人達『最強』に凄い拘ってたね。
「あの頃は誰も訊かなかったけどさ、アンタ程の奴が百鬼夜行に居たのってどういう訳があったのよ?」
「あの頃かー……気付いたら、この国に居て。で、ひょっこりやってきた大将に誘われるままにって感じかな?」
ぬらりひょんの大将も確か雪女とゴールインして戦争の頃には東北辺りに隠居してたっけ。
別れ際に何か感謝状を雪女から渡されたけど、よく分からなかったんだよね。
まだとっておいてあるはずだけど。
「あんの人たらしの優男め……」
見れば黒羽がまた1人ぶつぶつ言っているので、特に話し掛けずに辺りの景色を見渡す。
昔は東海道を通ったが、今は電車や車やらで色々と賑やかだ。
なので山道を延々と歩いている。
「あ、何か居るね」
「……ん、何が?」
私の後ろを少し遅れ気味で歩いていた黒羽が私の声に反応して小走りで追い付いてきた。
「ほら、あの木」
「あー、何か怨霊じみてるの居るわね」
遠くに見える木に通常の猿より一回り大きい猿の形をした、顔が人面の妖猿が居た。
「あれ?本体は猿だな。中に居るのが変な奴みたい」
「
何かちぐはぐな印象を受ける。
三輪車に無理矢理原付のエンジンを載っけたみたいな。
よく見れば奴が見ている視線の先には犬と戯れる女の子の姿が。
「あー、不味いな」
「私なら一瞬だけど、どうする?」
「任せていい?」
「勿論よ!」
返事をした瞬間、一瞬にして隠していた羽を出し風を起こしながら黒羽が駆けつけにいった。
「流石鴉天狗。速いなー」
私もノコノコとはしていられない。
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その怪物は獲物を遠くから観察していた。
獣一匹と人が一匹。
木を握った手が獲物の悲鳴と血飛沫を想像して猿の膂力を越えた出力でミシミシと音を立てる。
この身体もまだ器としては足り得ない。
いや、この現代に満たすほどの器があるとも思えない。
■■からやってきた俺は皮を被って何とか消されずに居る。
向こうでは食料は勝手に落ちてきたが、ここでは探さないといけないのが面倒だ。
こちらの殺気に気付いたのか、獣が吠える。
人は困惑したように辺りを見渡すが、それもあと少しの命である。
はずだった。
反動で大木が大きくしなるほどの力で木の上から飛び掛かり、そのまま二匹ごと押し潰す筈であったのに、自分の下にはぐちゃぐちゃの獲物は存在しなかった。
「間一髪。無事ですか?ワンころにお嬢さん」
人、に見えるが俺と同じ
「そいツはオれのえモノだ。邪魔をスルならおまエモ喰ウぞ」
「まぁ私的にはよそ者が何処で食事しようが構わないんですがね。今回は彼女に頼まれましたので」
「アあ?」
「ほら後ろですよ後ろー」
振り向いた瞬間、耳元が爆発した。
痛みで叫び声を上げる。しかし、その声が聴こえない。
「耳が千切れたか。久しぶりにやると上手くいかないねぇ」
「さっき右眼は隠してくださいって私言ったばかりなんですけど」
「しょうがないじゃん。距離無視攻撃できんのこれくらいだしさ」
その声の主を視界に収める。
次の瞬間、身体中を炎が覆った。
火を恐れる獣としての本能から絶叫が上がった。
慌てて地面を転がって火を消そうとするも、逆に全身を覆う炎の勢いは増すばかりである。
「あ…………が…………」
眼球は水分を失い何も見えない。
喉は焼けて何も声が出せない。
脳裏に過るのは最後に見た小柄な化物の爛々と輝く眼であった。
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「うわー容赦ない」
「畏れから食事出来ないで人襲ってる辺りが駄目駄目だね。うちの百鬼夜行なら豆腐小僧でも出来たよ」
気絶してしまった少女をどうしようかと考え、犬を説得して家まで走って家族を呼んで貰う事にした。
「昔あんなの居たっけ?」
「分かりませんね。ただこのご時世にあそこまで恨み辛みを拗らせた妖怪ってのは珍しいです」
何か起きてるのかな。