第4話です!
━━━サバイバル兼キース最強化計画が始まって半年が経過した。
『かなり時間をすっ飛ばしたわね⋯⋯』
砂浜を走り込み中の俺の腰に帯びている氷姫が呆れ口調で言う。
いやいや、よく思い出して氷姫さんや。
この半年間⋯⋯悲惨だったじゃん。
毒キノコ食べて悶えたり、獣に追われながら号泣してる男の話なんて誰得だよ。
『確かに、あまりにも情けない姿だったわ。“火を通せば毒があっても食えるんだぜ!”って自慢気に説明してきたのに』
「うっ⋯⋯」
『そう言えば、“獣ってのは火を怖がるから寄ってこないんだぜ!”って言った瞬間に襲われてた事もあったわねぇ』
「⋯⋯」
『あと━━━』
「スンマセン、俺がバカなのは十分理解できたんでもう勘弁してください」
思い出してって言ったのは俺だけどさ⋯⋯。
黒歴史を無闇矢鱈にほじくり返すもんじゃないよ?俺って結構ガラスのハートだよ?泣いちゃうよ?
『ふっ、メンタルも貧弱⋯⋯あ、嘘よ嘘!だから砂浜に置いてかないでぇぇぇ!』
イジメてくる氷姫を砂浜に突き刺して走り込みを再開しようとしたが、優しい俺は仕方なく拾ってやる。
まあ、そんなこんなで一日を生きるのにも必死だった訳だ。
暖かい飯は無いし、安眠できる場所も無い。
もし俺一人でこの状況に陥ってたら、発狂して獣に食われてたかもなぁ。
そう思えば、氷姫の存在はかなり大きかった。
『パーフェクトな私を崇めなさい!』
性格は⋯⋯⋯⋯うん、まあ、あれだけどね。
▽■▽
「ふッ、はぁッ⋯⋯!」
『はい、三百。終わり〜』
「ふへぇ、ちかれた⋯⋯」
島をぐるりと走り終えたら刀を振るう、これが今の俺の日課だ。
やはり島と島を結ぶ程の氷結は相当体力が必要らしいし、それ以前に俺貧弱らしいから。
せめてこの位はやらないとな。
━━━因みに、助けの船と
「うーん、しかし⋯⋯この調子じゃ帰れるのはいつになるかねぇ」
俺は原っぱに寝そべり、乱れた呼吸を整えながら頭を悩ませる。
刀を振ってはいるものの、一人じゃ限界があるし。かといって他に何をすればいいのやら⋯⋯。
うーむ、と腕を組んで唸っていると━━
『私がうってつけの相手を用意してあげるわ』
氷姫が突拍子もないことを言い出した。
俺はそれに対して首を傾げる。
「相手を用意するっつっても、ここには俺と氷姫と野生動物しかいねぇぞ?」
『ええ、そうね』
「⋯⋯じゃあどこにいるんだ?」
ますます分からん。
混乱する俺をクスクスと笑いながら氷姫は言う。
『私の中よ』
氷姫の中?
え、どういうこと?俺が氷姫に斬られろってこと?
『違うわよ⋯⋯!キースの意識を私の中に潜らせるってこと!たぶん、魂の繋がりが強い私達なら可能だわ』
ふむ、それでも分からない俺はやはり馬鹿なのだろうね。
イマイチ理解出来ない俺に、“物は試しよ!”とぐいぐい進める氷姫。
言われるがまま、俺は胡座をかいて手近な木に体を預ける。足の上には白銀の鞘に納まっている氷姫を乗せている。
『準備が出来たみたいね。それじゃ、始めるわよ。私に意識を集中させて⋯⋯』
指示に従い、意識を集中させる。
氷の力を使う時の延長線って感じでいいのか⋯⋯?
まあ、失敗しても氷姫に馬鹿にされるだけだし、取り敢えずやりますか!
俺は深呼吸して目を瞑り、取り掛かる。
そして、次第に意識がどこかへ吸い寄せられるような感覚に陥った。
「あ、れ⋯⋯」
いつの間にか、気が付いたときには既に俺は見知らぬ場所に立っていた。
わぁお⋯⋯ナンデスカ、コレ?
もしかして此処が氷姫の中?
キョロキョロと辺りを見渡すと、そこは真っ白い世界だった。
地面も白、空も白、何もかも白。
「こんな場所に居続けたら頭がおかしくなっちまいそうだ」
『あら、それは元々じゃないの?』
聞きなれた声が背後から聴こえる。
俺は反射的に後ろを振り返り、思わず口をあんぐりと開けてしまう。
いや、だってね⋯⋯これは仕方ないでしょ⋯⋯。
「お前⋯⋯まさか、氷姫⋯⋯か?」
『それ以外に何があるのよ』
「いやだってお前、そりゃ⋯⋯えぇ?」
もう言葉が纏まんねぇや。
簡潔に言えば、氷姫が現れました。刀じゃなくて女の姿で。しかも美女。まじ美女。美しい女と書いて美女。
『もう語彙力が絶望的よ、キース』
呆れたように笑みを溢す氷姫(美女)にドキッとしてしまった俺は本当に頭がイカれたようだ。
落ち着け、あいつは女だが刀だ。
ん?刀でも女なのか?
えーい!ややこしい!
「ここが、お前の中なのか?」
紛らわせるように俺は問い掛ける。
透き通るような白い肌を白銀の着物で包み、純白でさらさら長髪な氷姫は“ええ”と頷いた。
『時間も勿体無いし、早速始めましょうか!』
いまだに混乱中の俺を置いてけぼりする氷姫は、そう言って手を2回ほど叩いた。
すると、何処からともなく黒い靄のような発生する。
その靄は一点に集まりだし、少しずつ形を取り始めた⋯⋯まるで人の姿のように。
「⋯⋯ッ、こいつは⋯⋯」
思わず後退りした俺はカッコ悪いでしょうか。
いえいえ、目の前に黒い靄で出来た人間のような奴が現れたら仕方ないよね。
『彼はね、過去に私の使い手だった者の一人なの。⋯⋯確か海兵だったわね』
“彼”という事は、この靄人間は男なのか。
「氷姫の⋯⋯過去の」
『ええ、正義大好き男だったわ⋯⋯あと幼女も』
「へ、へぇ」
な、何だ⋯⋯氷姫が無表情で目に光を宿してない。
正義大好きで子供好き(幼女)って、結構いい奴っぽそうだけど。
うん、何となくヤバかったんだと察しよう。
「それで?俺はこいつに鍛えて貰えるのか?」
『ええ。正確には本気の殺し合いだけどね』
「えっ⋯⋯殺し━━━」
刹那、俺は奇跡的かつ反射的に体を捻った。
そして俺の耳元をヒュッと風切り音が掠める。
「⋯⋯」
はらりはらりと落ちる髪の毛。
え、⋯⋯えっ?
ちょっと待って、これ俺の髪だよね。⋯⋯斬られた?
誰に?
誰にって、そりゃ⋯⋯。
「⋯⋯」
靄で出来た刀を振り下ろした姿の靄人間、こいつしかいないだろ。
何か混乱しすぎて逆に冷静になってきたぜ。
『やっぱり実際に刀を交えないと強くなれないわよね〜。加えて私の力の使い方も習いなさいな』
「いやっ!この人間擬き絶対教える気ないよ!?」
『大丈夫よ。斬られたら痛みはあるけど死ぬことはないわ。⋯⋯あ、でも斬られすぎて痛みのあまり狂う事もあるけど━━━うん、大丈夫よ!』
この
「ち、因みに聞くけどコイツって海兵なんだよな。階級はどのくらいだった⋯⋯?」
俺の問いに、うーんと思い出す氷姫。
そして出た答えは━━━
『海軍本部中将ね』
「死ぬわ」
普通に死ねるわ!
いや、死にはしないらしいけども、そのくらい痛め付けられるんだろ!?
『がんばりましょう』
そう言い残し、氷姫は美女の姿から刀に変身した。
ああ、そうかい⋯⋯。
いいぜ、やってやんよ!
こちとら半年間のサバイバルで、獰猛な動物さんから逃げ隠れするために培った危機的回避能力があるんじゃ!
俺は覚悟を胸に、氷姫を手にとって抜刀する。
「⋯⋯」
「⋯⋯」
無言で構え、向かい合う俺と靄人間(海軍中将)。
斬り込んできたのは相手だった。
「⋯⋯オオオ⋯⋯ヨウジョォォォォォッ!」
「お前喋れたんかい!!」
そんなこんなで、氷姫主催の修行が始まった。
精神世界で、現実の肉体は鍛えられないけど経験は得られる的なよくあるアレですね。