自分こそが誰よりも尊く、それ以外の全てが自分のために用意された利用すべきモノである、と常日頃から本気で考えている。これは対象が
しかし、どれだけ愚かであったとしても、それは成長しないということを意味しない。むしろ小鬼は大抵の
生後一年の小鬼と、生後一年の只人が殺し合いをする条件で考えれば、成人して久しい小鬼が負ける道理はない……あれ、どうして
まあ、十年以上小鬼の生態を観察せざるを得なかった
甘味は好きだ。口にするだけで心が落ち着く。
小さい頃、空に浮かぶ月が突如として頭上に落ちてきて潰されて死ぬのではないかと、夜を恐れたことがある。
震えて
そうやって、まぶたの裏で繰り広げられる暗闇と死、流血と汚物で彩られた風景と共に育ち、気が
さて、思考をわたしのことから小鬼のことに戻そう。
先日ひとつの群れの長として独立した
例えばそれがノコギリであれば、
だが、小鬼が盗み、呪文使いが目をつけたのは、輝く小さな金属製の棒であった。
ピカピカに輝いているからさぞ大事にされているものだろう、と判断して盗むものを選ぶ程度の価値観は小鬼にもある。使い道がよくわからなければなおさらだ。
解らないなら調べればいいよね……と、わたしが仕事の休憩時間に書庫を漁っている間に、
恐らくは、したっぱの小鬼が職人から工具を盗めてしまうほどには鉱人の現場と小鬼の棲家が近いのだろう。
無論、その覚えたことによる優位を独り占めしようとする心の狭さも小鬼の常ではあるのだが、そこはそれ、ずる賢さに定評のある
使い方を
小鬼とて洞窟を棲家とする立場上、拾った
それが小さな金属棒の使い方の一つや二つで大きく変わるものか、と侮ってしまえばさあ大変。
小鬼の貧弱な膂力では、鶴嘴でも尖端を食い込ませる
それが何を意味するかというと、だ。
自分たちの棲家という場所が限定される防衛専用戦術だった壁掘りの奇襲が、
「──ああ、これは死んじゃうなあ」
ここしばらくは
その際に、手を痺れさせて武器を取り落とせば格下の小鬼どもに笑われてムカつくだろうと鍛え上げ、実際に笑った小鬼を片手でひねり潰した実績もある確かな
ヤバくなったら逃げようよ、と呟きかけるわたしの声に耳も貸そうとせず、それでも
けれど、渾身にて降り下ろされながら、わずかにも大地に触れることがなかった
「
地下で総指揮を執っていた呪文使いは、わたしの
彼の目にも、敵の姿とそれに蹴散らされる配下の小鬼たちの姿が映っている。だが
壁抜きの奇襲も、
欲張るのもいいけれど、命があっての物種である。
ひょっとしたら地上側でも合わせて包囲攻撃をしていたかもしれないが、この様子では増援も望み薄だろう。
ぎゃあぎゃあとひとしきり聞き苦しい怨嗟の声をがなり立てたあと、ようやく呪文使いは身を翻して逃走を開始した。無論
ほどなく、坑道は突如として濁流に沈んだ。押し流されつつなんとか泳いでそこから脱出……する直前に、足首ごと水は凍りつき、その動きをがっちりと封じた。
途端に恐慌をきたし、力矢を自らの足に発射! 己の足ごと氷を砕きながら、巣の出入口であった
ぐちゃり、と。
わたしのまぶたの裏で、先だっての
「あ、なにか踏んだ!」
「……ゴブリン。たぶん
「ボクが倒した
「あれはゴブリンではないと何度も言ったはずだが」
「……ボロボロだったところに
「ボクの体重がスッゴく重いみたいな言い方やめてよ!」
「うん? このゴブリン、なにか光るものを握っているな。どれどれ……」
呪文使いの亡骸を足元に、その命を奪ったことに一切の呵責を見せない冒険者が三人、笑顔を見せながらはしゃいでいる。屈んで手を伸ばすその首元に光るのは、窓越しにも眩く輝く金と白金の──。
「…………!」
まずい、と考える前に慌てて目を開いた。
瞳に写るのは自宅の自室。寝台の上には最近夜も暖かくなってきたので減らした毛布が一枚きり。
死んだ二つの窓の小鬼を再確認することもなく、わたしは心のなかで交換と絶叫した。
汗がどっと噴き出す。あれが
勇者とは神々の
今のわたしが世界で一番恐れるのは、そういった
× × × × × × × × ×
「最初にゴブリンに盗まれた職人さんの工具、冒険者の訓練場に届けられたそうですよ」
「そうか。
「ええと……なんでも、硬い金属や岩石を切ったり割ったりするのに使うものだと言ってましたけど」
「
「あ! それですそれ。
「
「それは……今回のような地面からの奇襲が?」
「そうだな。間違いなく増えていただろう」
「取り返してくれた方に、感謝しないといけませんね。あ、ただ」
「なんだ」
「これを拾うときに、息を呑むような声が聞こえた、と
「確かなのか?」
「なんでも金等級の凄い方だったそうなので、恐らく」
「そうか。であれば、だ」
小鬼王討伐時にちらりと存在の可能性が見えた
ただし、常に全ての小鬼を見ているわけでもないようだ、とも。
「そいつのポケットの中には、小鬼がいるということなのだろうな」