凛として、生きて 中編   作:樋口晶子

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第6話 好意

「行ってきまーーす!」

 

「ああ!待ちなさい凛、はいお弁当忘れてるわよ」

 

「ありがとう!お母さん!じゃあ行ってきまーす!」

 

「行ってらっしゃい、凛」

 

 

「おはようございますお姉様方」

 

「おはよー」

 

「おはようございます凛さん」

 

「おはようございます翔鶴先生」

 

「では、ご準備ができたら昨日の続きから始めましょう」

 

「はい!」

 

「凛さんに教えられることは少なくなりましたが、あなたは昔から残心に振れがあります そこを正しさえすれば昇級もできるでしょう」

 

「はい!よろしくお願いします」

 

「では始めてください、まずは弓構えからです」

 

 

「ご注文お伺いします、長門さん!」

 

「わ!私が…こ、このような甘味処の常連だなどということ!…他の者に漏らしていないだろうな!」

 

「ふふふ…はい!甘味処間宮の口は艦より硬いと評判なんですよ!」

 

「そ、そうか…では…いつもの頼む」

 

「はい!ラブリーチョコレートキャラメルデラックススペシャルパフェですね!」

 

「こ!声がでかい!」

 

 

「あ!今日のお弁当里芋の煮っころがしが入ってる!……美味しい〜!……ありがとうお母さん!」

 

 

「…なのでこのときは」

 

「はい!赤城先生!」

 

「どうしました?」

 

「その問題はマクローリン不等式や積分でも証明できると思います!」

 

「ふふ…そうですね、では凛ちゃんの得意な積分で証明を書いてください」

 

「はい!0から1/√3の1/1+x二乗の積分はx=tanθとおく置換積分により0からπ/6のdθ=π/6となります。ですのでy=f(x)…」

 

 

「いらっしゃいませ!足柄さん…一名様ですか?」

 

「…うう…うええええん!凛ちゃん聞いてよ!最近羽黒がよそよそしいと思ったら整備士のイケメンと!………うわああああん!」

 

「…足柄さん!今日は私がお付き合いしますよ!オレンジジュースで!」

 

「…り、凛ちゃん…今日は私だけについて!サービス料は払うから!」

 

「お母さん!足柄さんのお付き合いしてもいい?」

 

「ええ!話し相手になってあげて」

 

「はい!どうぞ焼酎ロックです」

 

「…ありがとう…凛ちゃん、鳳翔さん…」

 

「それで羽黒さんがどうしたんです?」

 

「そう!聞いてよ!凛ちゃん…」

 

 

「今日もご苦労様でした!お母さん」

 

「ええ、凛もご苦労様です…今日は後片付けしておくから先に上がって勉強の予習済ませてしまいなさい」

 

「え!いいの!ありがとうお母さん、明後日英語のテストだったんだよねー」

 

「あら!お店休みなさい!」

 

「大丈夫!お母さんの手伝いは絶対するの!」

 

「ふふ…ありがとう、凛」

 

「えへへ」

 

 

 

この頃には鎮守府に来てから6年経っていた

翔鶴さんに弓を教えてもらい、間宮さんのお店でウェイトレスをしながらお母さんのお弁当をたべて、赤城先生の数学、理科 加賀先生の国語、英語、社会派生を入れたら生物、化学、物理、漢文、古文、ドイツ語、倫理、地理…凄い量ね…を教えてもらいつつ、お店の手伝い…今までと変わらない日常。

でも月に一度必ず行く場所があった

それは、鎮守府からやや内陸コスモス畑にある

小さなお墓、そこに今も雷は眠ってる。

 

 

 

「雷ちゃん、今月も来ちゃった…この頃ね、暁ちゃん達と遊んでないんだ…雷ちゃんが眠っちゃってからなんか前みたいに楽しくおしゃべりもできなくて、そうしてるうちに間宮にも来てくれなくなっちゃった…一番の常連さんだったのに、間宮さんが困ってたの。

ごめんね…なんか愚痴みたいになっちゃって…次くるときは雷ちゃんの好きなアイス持ってくるね、もう夏だよ…美味しい時期になるね…」

 

「凛ちゃん」

 

「…!蒼龍さん…」

 

「今月もきてたんだね…」

 

「はい…蒼龍さんは飛龍さんのお参りですか?」

 

「…ええ、あれから6年も経つのに未だに信じられないの、この下に飛龍がいるなんて…でも綺麗な所よね」

 

「はい、雷ちゃんも飛龍さん利根さんも…このお花畑を見てくれてますよ」

 

……ヤダ、ヤダヤダヤダヤダ……

 

「何かおっしゃいましたか?蒼龍さん」

 

「んん、あ!そうだ凛ちゃん、鎮守府帰る前に街にお茶しにいこうよ!」

 

「はい、私でよければお付き合いします」

 

 

「でね!飛龍ったら子供の時に木に登って滑って落ちたことがあるの、太腿に傷ができて大変だったんだから!ホント手のかかる子で…」

 

「蒼龍さんは飛龍さんの事何でも知ってるんですね!」

 

「ええ!いつも2人で一緒にいたからね!…でも…みんな酷いよね…月命日に誰も来てくれないなんて…」

 

「…皆さん訓練に、戦闘に忙しいですからね…きっとみんなもお参りに来たいと思ってますよ」

 

「…でも凛ちゃんは毎月来てくれるし、飛龍のお墓も掃除してくれて本当に感謝してるのよ!」

 

「…お参りに行くとみなさんと話せる気がして…毎月来ちゃうんですよね、でもいつも雷ちゃんに愚痴をこぼしてしまって…もっとしっかりしなきゃ!ですよね弓の昇級試験も近いのに」

 

「凛ちゃんは翔鶴に弓を習っているのよね…私に言ってくれたらよかったのに!ふふふ…ねえ!愚痴があるなら私聞くよ!眠ってる雷や飛龍に聞かせるより私に話してよ!私も凛ちゃんともっと話したいなー!」

 

「ええ!そんな私の愚痴なんて本当にくだらない事なので、蒼龍さんに聞いていただくことじゃないですよ!」

 

「いいの!私が聞きたいんだから!それにそんなこと眠ってる3人に聞かせちゃダメよ!だから…ね?私なら毎日凛ちゃんの話聞くから!」

 

「…じゃあ、お願いします蒼龍さん」

 

「うん!」

 

 

 

「凛さん、口割りの高さに気をつけなさい」

 

「はい!」

 

「凛ちゃん!」

 

「蒼龍さん」

 

「翔鶴、あなたもういいわ自分の鍛錬に戻りなさい」

 

「蒼龍先輩、今は稽古中ですここは譲れません」

 

「加賀先輩みたいなこと言って…いいと言っているのよ?これからは私が凛ちゃんの指導をします」

 

「それはいくら蒼龍先輩でも納得いきません、凛さんは昇級試験も控えていてとても大事な時期なんです」

 

「ええ、だから翔鶴では不安なのよ…凛ちゃんがこれから弓の腕を上げられるように…私が」

 

「それはどうゆう意味ですか?私の指導がなっていないと、そう言いたいのですか」

 

「ちょ、ちょっと翔鶴先生も蒼龍さんもやめてください!」

 

「凛ちゃんも私が指導役の方がリラックスできるでしょ?」

 

「あ…あの、私は今まで弓を翔鶴先生に教えて頂いているので…試験も近い今は…」

 

「…………そう!わかったわ、じゃあ試験が終わったら考えておいてね!」

 

「先輩、そうゆう事では!」

 

「じゃあね!凛ちゃん」

 

「…蒼龍さん…」

 

「…変な邪魔が入りましたね、試験本番はいくらでも不測の事態が起こり得ます。そういったいい練習になったでしょう、落ち着いて足踏みから入りなさい」

 

「はい」

 

 

 

「偶因狂疾成殊類 災患相仍不可逃 今日爪牙誰敢敵 当時声跡共相高 我為異物蓬茅下 君已乗軺気勢豪 此夕溪山対明月 不成長嘯但成噑 次の授業までにこの漢詩の返り点をふり、書き下しと現代語訳を書いてきなさい、それと山月記の感想を原稿用紙20枚に各段落の要点を含めまとめて来なさい」

 

「はい、加賀先生」

 

「今日の授業はこれまで」

 

「起立、礼、ありがとうございました、着席」

 

「凛」

 

「どうなさいましたか?加賀先生」

 

「あなた、最近弓の鍛錬を蒼龍に邪魔されたみたいね」

 

「邪魔…といいますか、翔鶴先生の代わりに稽古してくださると…」

 

「…そう、気をつけることね」

 

「え、どうしてですか?」

 

「…あまり私が言う事ではないのだけど、あの子は飛龍が戦死してから変わったわ………気をつけなさい」

 

 

 

「…この前の合コンもさあ!なんで隅っこで私だけお刺身のツマをいじってなきゃいけないのよ!なんで私だけ…うええええん!」

 

「だ!大丈夫ですよ!足柄さんは全然綺麗でまだまだ若いじゃないですか!もっと自信を持って!」

 

「何よ!凛ちゃんまで私に嫌味言うの!…私なんて私なんて…」

 

「わ、私が男の人なら足柄さんを放っておくなんてできないですよ!足柄さんの魅力に気づかないなんて大した男性じゃないんですよ!きっと!だから…大丈夫です!」

 

「り、凛ちゃん………っ!鳳翔さん!」

 

「どうしたの?」

 

「今日一日凛ちゃんをレンタルで!私も娘がいる一日を味わいたいの!」

 

「足柄さんそれは…」

 

「ダメよ」

 

「…蒼龍?」

 

「凛ちゃんをあなたの娘にするなんてそんなのヤダ」

 

「鳳翔さんと凛ちゃんにならともかく、なんで蒼龍に拒否られなきゃいけないのかしら」

 

「ヤダヤダヤダヤダ、なんであなたなんかの隣に凛ちゃんがずっといるのか意味わかんない、さっさと男漁りにいきなさいよ」

 

「失礼ね!私は凛ちゃんに話聞いてもらってるときが一番楽なの!だから一人で飲みに来るときは隣に座ってもらってるの!なんで蒼龍に文句言われなきゃならないのよ!」

 

「…凛が穢れる」

 

「な!なんですって!」

 

「二人ともやめてくださーい!」

 

「蒼龍さん…足柄さんは色々悲しいことがあるので話を聞いてあげたいと思って私がしてるだけですよ?」

 

「う!…凛ちゃんトゲが…」

 

「それにこの前、翔鶴先生にも…どうしたんですか?蒼龍さん」

 

「………私だって悲しいもん、私だって悲しいもん………私も凛ちゃんにつきっきりで話きいてもらいたいなー!足柄ばっかりズルイ!」

 

「…じゃあ、三人で話しませんか?きっと楽しいですよ!」

 

「足柄がいるならヤダ」

 

「……あんた、ほんといい加減にしなさいよ!」

 

「じゃあ凛ちゃん、私今日は諦めるね…お会計お願い」

 

「…は、はい…」

 

「ちょっと!蒼龍!あんた私の話聞いてんの!」

 

「…3200円になります…はい、丁度お預かりします…レシートのお返しです」

 

「ありがとう!凛ちゃん」

 

「…キイー!私のことは無視かい!」

 

「凛ちゃん、外まで見送りしてほしいな…」

 

「は、はい…」

 

「鳳翔さん…凛ちゃん大丈夫かしら…」

 

「…そうね蒼龍、なんだか変わってしまったわね…」

 

 

「…凛ちゃん、ありがとう宿舎まで送ってくれて!」

 

「いいえ!ちょっと蒼龍さん飲みすぎてるかもですからゆっくり休んでください!ではお休みなさい!」

 

「待って、凛ちゃん」

 

「っ!………………」

 

「…………………」

 

「…………ど、どうして…」

 

「…凛ちゃん、初めてだった?ごめんね」

 

「………蒼龍さん……酷いです…」

 

「怒らないで、凛ちゃん」

 

「酷いです!」

 

「好きなの!」

 

「………え?」

 

「私、凛ちゃんのことが好きなの、大好きなの!」

 

「………な、何言ってるんですか……蒼龍さん…」

 

 

 

それは余りにも唐突に伝えられた、告白

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