凛として、生きて 中編   作:樋口晶子

2 / 5
第7話 気持ち

「私、凛ちゃんのことが好きなの、大好きなの!」

 

「………な、何言ってるんですか……蒼龍さん…」

 

「ねえ、私じゃダメかな?凛ちゃんも14歳なんだからそうゆうこと、わかるでしょ?」

 

「…い、意味がわかりません……それでは失礼します!」

 

 

 

「あ!凛ちゃんおかえりー、随分遅かったじゃない?」

 

「…どうしたの凛、顔真っ赤に息切らして」

 

「…な、何でもない…すぐに仕事に戻るから!」

 

「……凛…」

 

 

 

蒼龍さんが何を言っているのかわかってた

酔った足柄さんが話すことや、もっと深い話は愛宕さんから聞いていたし…でもまだ14歳の私には関係のない事だとも思っていた。

ましてや艦娘の今までそんなに親しくない、蒼龍さんにそう思われていたことが理解できなかった

何より、私の初めてのキス…それがこんな戸惑いと疑問に埋め尽くされた形で呆気なく過ぎていったことが悲しかった?…そう、たぶんあの時の私は悲しかったんだ

この事は無かった事にしよう、誰にもしゃべらないし見られてもいない、あとは蒼龍さんと出来るだけ関わらないようにしよう、そう思った。でも

 

 

 

「いらっしゃいませ!っ…………蒼龍…さん」

 

「あら!蒼龍さんが甘いものを食べにくるなんて珍しいわね!」

 

「こんにちは!間宮さん」

 

「…ご注文、お決まりになったらお呼びください…」

 

「はーい!」

 

「凛ちゃん、大丈夫?顔色悪そうだけど」

 

「大丈夫です、間宮さん」

 

「そう…」

 

「注文お願いしまーす!」

 

「…はい………お伺いします…」

 

「えーとね!抹茶と白玉パフェちょうだい!」

 

「…はい、かしこまりました少々お待ちください…っ!は、離してください!」

 

「…凛ちゃんはいつもこんな接客なの?」

 

「離してください!」

 

「傷ついちゃうなー!ぞんざいな扱いされたら」

 

「離してください!」

 

「そう…」

 

「失礼します」

 

「待って、白玉凄く甘くしてほしいな!今あまーい白玉が食べたいの、凛ちゃんみたいに甘い甘い白玉が…」

 

「………か、かしこまりました」

 

 

「………おまたせしました、お抹茶と白玉パフェです……離してください」

 

「いいから、ちょっと話そうよ…あのあと私だけ残されてすごく悲しかったんだよ?足柄の話は聞いてあげてるのに私の話は聞けないの?それってひどくない?」

 

「…蒼龍さんと話すことはありません!」

 

「あるわよ、だって昨日の返事まだもらっていないもの」

 

「そ、それは!」

 

「待って!こんな無粋なところで私の気持ちを返すつもり?ふふふ…もっと気の利いた場所で返事を聞かせて?」

 

「なんで!私がそんな!」

 

「私ね…あまーい白玉を引き立てるために、この抹茶の苦味を我慢するのも好きなんだ!ふふふ…凛ちゃんの態度、抹茶みたいだね…」

 

「何がそんなに可笑しいんですか!私は」

 

「だって!凄く可愛いんだもん!凄く虐めたくなっちゃうくらい好きなの」

 

「そんなこと!言わないでください!」

 

「凛ちゃーん注文おねがいしまーす!」

 

「はっ!はい!ただ今!…離してください」

 

「今夜お店が終わる頃、第2埠頭で待ってるからね!」

 

「………………行きません……おまたせしました!ご注文お伺いします」

 

「……ふふふ、来てくれるわよ……」

 

 

「凛ちゃん、こんにちは!今日はジュール熱を実感してもらうために先生気合い入れました!この牛乳パックでパンをいっぱい作りますよー!」

 

「…はい、よろしくお願いします」

 

「あれ?いつもなら鋭いツッコミが入るのに…どうしたんですか?凛ちゃん」

 

「いえ…なんでもないです」

 

「むー、訳ありみたいですね?私でよければききますよ?」

 

「い、いえ…赤城先生に聞いていただく事では」

 

「先生ではなく、一人のお姉さんとして聞きますから大丈夫です!」

 

「そ、そんな」

 

「それにそこまで上の空だと、また加賀さんに叱られますよ?」

 

「う!」

 

「大丈夫です、鳳翔さんにも話せない事なんでしょ?」

 

「…実は」

 

「ちょっと待って!」

 

「はい!?」

 

「話を聞く前にパン焼いちゃいましょう!」

 

「………」

 

 

「うーん………私、食べ物以外のことは…」

 

「…ですよね、授業に戻りましょう」

 

「ああ!待って!つまり凛ちゃんは蒼龍さんから思いを寄せられていて、それが嫌だという事ですよね?」

 

「嫌といいますか…少し怖いです」

 

「その気持ちを正直に伝えたらどうでしょう?凛ちゃんがハッキリ嫌ですと伝えれば、それ以上はしないと思いますけど」

 

「…そうでしょうか」

 

「このまま返事を返さないと益々、蒼龍さんが会いにくるかもしれませんねー」

 

「え…」

 

「私の授業中にもひょっこり顔を出しに来たりして!」

 

「そ!そんな、脅かさないでください!」

 

「私だって嫌です!そんなお二人の問題に巻き込まれたくないです!なので、今夜はきちっとお断りのお返事をしに行ったほうがいいですね!」

 

「でも…怖くて…」

 

「大丈夫です!凛ちゃんがちゃんと断ったあとまだ付きまとうようならなんとかします!加賀さんが!ね?」

 

「………赤城先生じゃないんですね…」

 

「私にはできません!後輩の恋は応援したい!でも生徒の安らぎは守りたい!どっちも大切なんです!」

 

「…は、はあ…」

 

「あら!もうこんな時間に…」

 

「赤城先生、ありがとうございました」

 

「いいえ!たまには勉強だけじゃなく、凛ちゃんの相談に乗るというのもいいじゃないですか!」

 

「赤城先生…」

 

 

「…ふう、これで明日の仕込みも大丈夫ね!」

 

「ご苦労様です!お母さん」

 

「ねえ凛、何か悩みがあるならお母さんにおしえて?」

 

「え!別にないよ!お母さんのおかげで幸せだよ!」

 

「凛…お母さんはあなたの力になりたいの、あなたは本当にいい子だけど無理していない?」

 

「…お母さん、ありがとう…でも今は大丈夫」

 

「そう…でも覚えておいて、お母さんはいつも凛の味方よ」

 

「うん…ありがとうお母さん」

 

「じゃあ、部屋に先に帰ってなさい」

 

「今日もありがとうございました」

 

 

 

「………あ!やっぱり来てくれた!」

 

「…蒼龍さん」

 

「どお?あのお花畑も綺麗な景色だけど、夜の海も一味違ういい景色でしょ?」

 

「…私にはただただ恐ろしい暗闇に見えます。なんでも飲み込んで海底に引きずり込む」

 

「…そう、凛ちゃんは変わってるんだね!でもそんな凛ちゃんも私は好きだよ!ふふふ」

 

「…蒼龍さん、私はあなたの気持ちに応えられません。これからは手を掴んだりするのはやめてください」

 

「………そう、ごめんね凛ちゃん。…わかった、もう凛ちゃんに近づかないようにするね…」

 

「…あの!」

 

「…なに?凛ちゃん」

 

「なんで…こんな私を好きだと言ったんですか」

 

「…っふふふ、結構性格悪いね!凛ちゃんは…振った相手に好きになった理由聞く?」

 

「…ご、ごめんなさい…でも!蒼龍さんも私に酷いことしました、これでおあいこです」

 

「ふふふ、そうね!じゃあ教えてあげる………似ているのよ、飛龍に」

 

「…え」

 

「凛ちゃん、飛龍の子供の時にそっくり…んん、まるで生き写しみたい」

 

「そ…そんな理由で…」

 

「ええ、私飛龍のこと愛してたの…その気持ちを伝える前にあんなことになって…」

 

「じゃあ、蒼龍さんにとっては飛龍さんに似ていれば…誰でも良かった…と」

 

「…ごめんね凛ちゃん、だって!凛ちゃん本当に飛龍なんだもの!髪の毛もこのくらいで」

 

「っ!やめてください!」

 

「ほら!このくらいで切って、ここを結えば!……っ!………飛龍……」

 

「はっ!離してください!」

 

「飛龍!飛龍!飛龍!ああ!私のもとに帰って来てくれたのね!!嬉しい!こんなに嬉しいことはないわ!」

 

「や!やめてください!」

 

「飛龍!私ずっとあなたのことが好きだったのよ!それを言うまえにあなたはどこかに行ってしまって!私、ずーっと寂しかったのよ!」

 

「い、いや!」

 

「でも!あなたが帰って来てくれたからもういいの!やっぱりあんなお墓に埋められてるなんて嘘だったのよ!だって、ここにいるんですもの!こうして飛龍に触れられる!もう離さない!飛龍は私が守ってみせるから、ずっと私の側にいて!ね!」

 

「凛から離れなさい!!」

 

「…チッ」

 

「…お、お母さん!」

 

「もう一度だけ言うわよ。凛から離れなさい蒼龍」

 

「鳳翔さん?この子を見てよ、凛ちゃんじゃない飛龍よ!飛龍が戻ってきたのよ!」

 

「……蒼龍、ごめんなさい」

 

「…っ!ぐ!」

 

「…お、お、お母さん!!」

 

「凛!!………大丈夫?怪我はない?」

 

「…うん、でも蒼龍さんが」

 

「大丈夫、急所は外してるけど神経の集まってるあたりに射ったから気絶してるだけよ…」

 

「お母さん、ごめんなさい…私、大丈夫だって言ったのに…」

 

「凛は悪くないわ、誰も悪くない…蒼龍だって飛龍が戦死しなければ、こんなこと…でも凛の気持ちを考えないで傷つけた、それはダメなこと…だからお母さん、助けにきたの」

 

「お母さん…」

 

「凛…蒼龍のこと、許してあげて…きっと今まで凄く辛かったと思うの、それこそ私と加賀さんが見つけたときの凛のように…だからと言って彼女がしたことはダメなことに変わりないけど…凛のできる範囲でいい、蒼龍を救ってあげて」

 

「…うん、蒼龍さんのしたことはまだ許せないけど、可哀想すぎるよ…このままじゃ…」

 

「凛、偉いわね!じゃあ一緒に蒼龍を部屋に帰すの手伝ってくれる?」

 

「うん!」

 

 

「でも、どうしてわかったの?私がここに居るって」

 

「赤城さんがね、教えてくれたのよ…凛ちゃんが困ったことになってるって」

 

「…うう赤城先生…」

 

「それだけじゃないわよ!加賀さんからまえにあなたが居眠りをしたことだってちゃーんときいているんですからね!」

 

「そ!そんな昔の話!」

 

「ふふふ、お母さんに隠し事は無理なのよ!」

 

「ぐ!…参りました」

 

「ふふふ…」

 

 

 

「先日は大変ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」

 

「そ、そんな!許します!だから頭あげてください!蒼龍さん」

 

「鳳翔さんにもご迷惑をかけてしまい…凛さんに、すみませんでした」

 

「凛が、あなたを許すと言いました…なので私はもう何も言うことはありません、私こそ止める為とはいえ丸腰のあなたに矢を射ってしまいました…すみません」

 

「いえ、お嬢様に私がご迷惑をかけてしまったのです…」

 

「……それで、蒼龍さん」

 

「はい」

 

「蒼龍さんが立ち直れるまで、私のことを飛龍さんだと思っていただいて構いません」

 

「…そ、そんな!でも…いいの?凛ちゃん」

 

「はい!あ、でも…その、好きとかそうゆうのは無しで、間宮にいらしたときとか、うちのお店にいらっしゃったときとかに私を飛龍さんだと思って辛いこと、悲しいこと全部話して行ってください!」

 

「…凛ちゃん!」

 

「でも!凛を悲しませるようなことをしたら出禁にしますからね!そこだけは守って頂戴」

 

「はい、鳳翔さん」

 

「えへへ!よかったです!早く蒼龍さんが元気になれるといいですね!」

 

「ふふふ、ありがとう凛ちゃん」

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。