Reversal!貞操逆転世界の男子学生   作:豆板醤山盛り

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Re:02 影に咲く向日葵

 

 

 

あっ!

 

 

 

という間に時間は過ぎる。今は放課後、夕暮れ空。

 

 

 

普段ならばエリート帰宅部である俺は自宅直帰、今夜の夕飯の買い出しへ向かうところなのだが…。

 

 

 

今日はひとり、校舎内を歩き回っていた。

 

 

 

突然、おかしな世界に来てしまったが故に、少しでもはやく慣れなくてはこの先やっていけないと思ったのだ。

 

 

 

出来るだけ、この世界側の住人の日常を観察すべく、先ずは同じ学校の男子生徒から…と思ってはみたものの。

 

 

 

 

 

「まさか男子がここまで少ないとは思わなんだ。いくらなんでも少なすぎないかい?」

 

 

 

 

 

パッと見て各クラスに3名いれば多い方、クラスの平均生徒数は35から40であるから、非常に少ないといえる。

 

 

 

うちの学校は特殊な専門学科が主体の高校ってわけでもない、ごくふつうの偏差値のごく普通な公立高校だ、それでこれである。

 

 

 

うちの学校でこの男女比率ということは、もっと広い規模で見ても世界的に男女比率はおかしなことになっているんじゃないか?

 

 

 

どうなっとんねんこの世界の染色体は、しっかりしようよY染色体の諸君。

 

 

 

 

 

「しかも男子生徒の殆どが文化部所属で、運動部にいる奴はゼロと来たもんだ。」

 

 

 

 

 

男子生徒達が集まって、お料理やらお裁縫やらでキャッキャしてる光景は、今も忘れられない。

 

 

 

乙女チックが過ぎるだろ!クッキー焼いてる場合じゃねぇぞ!

 

 

 

日本男児が乙女淑女と化してますよ!大和魂はどこにいったんだよ!それでもキ○タマ付いてんのかよ!クッキーは美味かったよちくしょう!

 

 

 

…なんだか、な、涙が、出ますよ…。

 

 

 

一方で女生徒たちは逞しい、っていうかだな…。

 

 

 

 

 

「しゃあ!次、ショートッ!行くよ!」

 

「しっ!来いおらぁっ!」

 

「キャッチ遅い!そんなんじゃ内安打にされちゃうよ!もっと身体から突っ込んで!」

 

「うおっす!もう一球ショーバンお願いしまっす!」

 

 

 

 

 

「クロス上げんのもう少しこう、タイミング合わせて欲しいな。」

 

「こう、かな?射し気味に上げた方が良い?」

 

「いやもっと引きつける感じで…。そのほうがボレーに行きやすいし…。」

 

 

 

 

 

「みんな行くよ!隊列意識して!」

 

「「「パンツァーフォー!」」」

 

 

 

 

 

「ふぇへへへやっぱりショタは最高ですなぁ。」

 

「半袖半ズボンは正義だよねぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こう、部活動ひとつ見ても凄く何と言いますか。

 

 

 

活発的である、いや、もとの世界にもそういう娘はいたけど、それにしても、である。

 

 

 

一部おかしな奴らもいたけれど、半ズボン研究会ってなんだよ。

 

 

 

なんですか、貴女がた本当に大和撫子ですか!?どうしたらそんなに光り輝く汗が似合うようになるんですか!?その爽やかな表情は何なんですか!?

 

 

 

ふつうに羨ましいレベルなんですけど、女子にモテそうなんですけど。

 

 

 

まぁみんな女子なんですけどね、しかもみんながみんな整った顔立ちをしているという。

 

 

 

美人と可愛い子しかおらんぞこの高校、前の世界じゃブスの方が多かったやんけ!ソルジャーみたいな肩幅の女子とかどこ行ったんじゃ!

 

 

 

…男子はどうなんだって?

 

 

 

聞くなよ、泣きたくなるから、俺どうしてこの世界に来ちゃったんだろう。

 

 

 

なんで生きてるんだろう、主人公なのにモブ顔でごめんなさい。

 

 

 

ほんまにこの世界はどうなっとんじゃ!モブ顔にも人権を!肖像権を下さい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「はぁ…。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あん?

 

 

 

自分の声と重なるように響いてきた溜息に、思わず目を向ければそこには空き教室の扉が。

 

 

 

 

 

「…吉沢?」

 

 

 

 

 

溜息の正体が気になった俺は、扉の隙間から教室の中を覗いた。

 

 

 

そこには知った顔の人物が頬杖をつき、物憂げな表情で夕空を見つめている。

 

 

 

あいつ確か、前の世界じゃ陸上部だったよな?陸上部は今もグラウンドで練習している。

 

 

 

なんでこんなとこにいるんだ?部活さぼったんかな?っていうか部活自体入ってないとか?

 

 

 

いや、それにしても社交的なあいつが一人でいること自体が以外だ、放課後は友達とカラオケとか喫茶店とか、そういうイメージだったからな。

 

 

 

一体なにが…。

 

 

 

 

 

ガツッ

 

 

 

 

 

「えっ!?」

 

「へあ゛っ!?」

 

 

 

 

 

つま先が扉に当たってしまい、響いた音に、吉沢の顔がこちらに向く。

 

 

 

間抜けな表情の俺を嘲笑うように扉は滑り開いてゆく、おうやめーや、口開きっぱな顔を思いっきり見られたじゃねぇかよ。

 

 

 

 

 

「新山…?な、なにさどうしたん?こんなとこに、用事?」

 

「あ、いや、なんつーか。」

 

 

 

「なに慌ててんのさ、へんなやつ。」

 

「わ、笑うなよ。…その、覗いてたのは悪かったと思ってる。すまん。」

 

 

 

「良いよ、謝んなくても。あたしがボッチなことなんて、みんな知ってることだし。」

 

 

 

 

 

ボッチ…?いや、ちょっと待て!

 

 

 

え、だってこいつは吉沢まどかだぞ!

 

 

 

男女皆から慕われる人気者で、いつも女子たちに囲まれる人格者で、バレンタインじゃ、こいつのチョコ欲しさに戦争になる位にモテてた吉沢だぞ!?

 

 

 

そんな吉沢が、ボッチ?

 

 

 

いやいやいや!ありえねぇだろ、天地が翻ってもありえねぇだろ!いや世界がちょっとおかしく翻っちゃってるけどさ!

 

 

 

 

 

「ほんとにどうしたん?今日のあんた、なんかおかしいよ?」

 

「いや、別に、何も!っていうか、一個だけ、聞いても良いか?」

 

「うん?なぁに?」

 

 

 

「吉沢って、部活とか入ってなかったっけなーと思って。」

 

「入ってるよー、陸上部。」

 

「ならどうして」

 

 

 

 

 

どうしてこんな人気のない場所で、あんな顔してたんだ?

 

 

 

 

 

「なんていうのかな、コレが色々と邪魔でさ。」

 

「これって…!ばっかおまえ!俺は真面目にだな!」

 

「真面目も大真面目だよ、大きいってのは色々と損なんだよ新山?男子にはモテないし、部活じゃ競技に向いてないから雑用ばっかり。嫌になっちゃうよね。」

 

 

 

「は、えぇ、モテないって嘘だろお前っ。」

 

「いやいや、なんでそんなびっくりしてるのさ、世の中は貧乳が正義だって、あんたも男なら知ってるっしょ。巨乳はキモイだけで何の得にもならないってさ。」

 

 

 

 

 

そんなことあってたまるか!…いや、待て。

 

 

 

この世界は、いわば何もかもがアベコベな世界だ。

 

 

 

男は女らしく、女は男らしい。

 

 

 

極端に偏った男女の比率に、やけに整い過ぎている周囲の容姿。

 

 

 

貞操観念が逆転しているという部分を見れば、男女の魅力においても【逆転現象】や【差異的な何か】が起こっていても何の不思議も無いのではないか?

 

 

 

つまり、吉沢のように多数支持派であった綺麗な形の巨乳はモテなくて、一般的に少数支持派と見られていた貧乳の女子がモテる。

 

 

 

整った容姿の人間が多いのも【それが一般的な容姿だから】で、もしかしたら向こうでの美形がブサイクで、向こうでのブサイクが美形ってことか?

 

 

 

だから、俺のような平均線上ド真ん中に立っているような男がいなかった。

 

 

 

極端な世界、極端な価値観、倫理観。

 

 

 

つまり吉沢がボッチっていうのも…。

 

 

 

 

 

「…吉沢。」

 

「なに?」

 

 

 

「俺は巨乳が大好きだ!とくに、おまえのような綺麗な形のおっぱいには!目がない!」

 

「ぶっ!いやいやいやいきなりどうしたのさ!?わけわかんないんだけど!き、き、巨乳が、好きとか…。」

 

 

 

「そう思ったんだからしょうがねぇだろ、ぶっちゃけおまえの顔も好きだ!目がパチッとしてて!鼻は高いし!唇も色っぽい!」

 

「いや、ちょ、か、からかうなって!あたしみたいなブサイクにそんなこと言っても」

 

 

 

「吉沢まどかは、誰がなんと言おうと美人で可愛いんだよ!」

 

「あう」

 

 

 

 

 

あわあわと俺の言葉を否定し続ける吉沢を、真っすぐに見つめて大きく息を吸い込む。

 

 

 

こいつがなんで、あんな表情をしなくちゃいけない?

 

 

 

こいつには笑顔が似合う、悪戯っ子みたいな人懐っこい笑顔が似合う、こいつの笑顔は周囲を明るくするんだ。

 

 

 

俺にとって吉沢まどかは、太陽の下、まっすぐに主張するヒマワリのような存在なんだ。

 

 

 

 

 

「吉沢に悲しそうな表情なんて似合わない、俺はいつでも楽しそうに笑って、気さくで愛嬌があって…、おまえを見ていると元気が湧いてくるんだ。」

 

「ちょ、新山ぁ」

 

 

 

 

 

紅潮した頬、潤んだ瞳、上目遣いで見つめるその表情は、やっぱり可愛らしくて美しい。

 

 

 

枯れさせちゃいけない、曇らせちゃいけないんだ。

 

 

 

 

 

「俺は大好きなんだっ!そんな吉沢まどかが!」

 

「―――っ!」

 

 

 

 

 

…あっれ?俺ってばナニを口走った?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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