Reversal!貞操逆転世界の男子学生   作:豆板醤山盛り

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Re:09 日の当たる場所へ

 

 

 

『俺は大好きなんだっ!そんな吉沢まどかが!』

 

 

 

 

 

あの瞬間、あたしの心臓は爆発してしまうほどに跳ね上がった。

 

 

 

嬉しかった、飛び上がりたくなる程に。

 

 

 

でも、何を言ったら、どんな返事をしたら良いのか分からずに。

 

 

 

結果として、あたしは彼の前から逃げ出してしまった。

 

 

 

きっと彼は、落ち込んでいたあたしを元気づけるため、あたしを好きだと言ってくれたのだろう。

 

 

 

舞い上がり、勘違いをしてしまった自分が恥ずかしかった。

 

 

 

何の言葉も返さずに、彼の前から逃げた自分が、いったいどのような顔で彼と接したら良いのか分からなかった。

 

 

 

 

 

『吉沢、今、ちょっと良いか?』

 

『ふみゅ!?い、いまは、あの、ぉ、おトイレ行かなくちゃいけないからぁっ!』

 

 

 

 

 

それまでなんとも無かった彼とのやり取りが怖く感じた。

 

 

 

もしも、自分の想いに彼が気づいたら?

 

 

 

そう考えれば考えるほど、あたしは臆病になり、卑屈な考えに拍車がかかっていった。

 

 

 

このまま、彼を避け続けるのが正しい対応じゃないことは分かっていた。

 

 

 

だからこそ、あたしは今になってこれまでの自分の態度を酷く後悔しているのだ。

 

 

 

 

 

「吉沢まどかさん、俺と友達になってくれませんか?」

 

 

 

 

 

彼が右手を差し出す、あたしを真っ直ぐに見つめながら。

 

 

 

彼がこんなにも歩み寄ってくれている。

 

 

 

あとは自分の心ひとつだ。

 

 

 

わかっている、この手を取れば素晴らしい日常が自分を待っていることは。

 

 

 

自分が望んでいた日々が、今まで以上に彼と笑い合える日々が目の前にある。

 

 

 

それなのに、あたしは…。

 

 

 

 

 

「吉沢…?」

 

『顔は悪くねぇんだけどな、あの胸と尻は無理だわぁ。』

 

 

 

 

 

あの日見た光景、聞こえてきた声が、彼に重なる。

 

 

 

違う、なんで今になってこんなことを考える。

 

 

 

今になって、いや、あたしはずっと恐れていた。

 

 

 

 

 

「あたし、ほら、あんまり他のみんなから、好かれてないっていうか、だからその、あたしみたいなのといたら新山に迷惑が…。」

 

 

 

 

 

柔らかい感触があたしの手を包み込む。

 

 

 

 

 

「そうじゃない、そうじゃないだろ?他のやつがとか、そんなんじゃない。おまえはどうしたい?吉沢は俺をどう思ってるのか、それを聞かせてくれないか?」

 

 

 

 

 

勇気づけるように優しく、それでも言い聞かせるようにしっかりと、彼の言葉が声が響いてくる。

 

 

 

 

 

「俺は、吉沢まどかと友達になりたい。おまえはどうなんだ?嫌なら嫌だってはっきり言ってくれて構わない。」

 

「あ、あたしは…。」

 

 

 

 

 

あたしはどうしたいか、そんなこと決まっている。

 

 

 

もらった勇気を振り絞って、彼を真っ直ぐに見つめる。

 

 

 

 

 

「あたしも、新山と、友達になりたいよ。」

 

「よし、なら俺と吉沢は今日から友達だ。…よろしくな。」

 

 

 

 

 

うん、と頷いたあたしの頭に、ポンと彼の手が乗せられた。

 

 

 

擽ったい、けど優しくて温かい気持ちになれる。

 

 

 

 

 

「他の奴らなんて気にすんなよ、もしも吉沢を悪く言うやつがいたらさ、俺が友達としておまえを守るから。」

 

「…ほんと、新山ってずるいよね…。」

 

 

 

「なんか言ったか?」

 

「なんでもないっての!」

 

 

 

 

 

すっと彼から離れ、倉庫の扉を背に彼を見つめ直す。

 

 

 

ニッと笑う新山、あたしが一番好きな彼の表情だ。

 

 

 

 

 

「ったく、そんなんだから…勘違いしちゃうんだって…。」

 

「吉沢?」

 

 

 

「ねぇ新山。」

 

「おう、なんだ?」

 

 

 

 

 

鍵が開いていることを確認し、後ろ手にゆっくりと体育倉庫の扉を開けてゆく。

 

 

 

 

 

「あたしもあんたが、そんな新山良が大好きだよっ!」

 

「んなっ!?」

 

 

 

「勘違いさせたお返しだよ!ば~か!」

 

「おまえ、ちょ、待てって!吉沢ぁっ!?」

 

 

 

 

 

そのまま彼の声を背に駆け出した。

 

 

 

彼の前から逃げ出した理由は、あの日と同じで恥ずかしかったから。

 

 

 

でも今日の恥ずかしいという気持ちは、あの日と違う、心地よい感覚だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。」

 

 

 

 

 

友人とのやり取りを終えて、スマホを机に置き、そのままベッドへ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

「いよいよ明日か。」

 

 

 

 

 

ちょうど頭の上の位置に壁がけてあるカレンダー、明日を示す日付には赤いボールペンでこう書かれていた。

 

 

 

 

 

<復学、おつとめ終了。>

 

 

 

 

 

五ヶ月という長いようで短い期間を終え、明日から再び学園へ通うことになる。

 

 

 

復学を喜ぶ友人の姿を浮かべると同時に、きっと自分を歓迎しない連中も少なからずいるだろうと思うと多少イラつく感情もある。

 

 

 

教師に対しての暴力行為で停学五ヶ月処分、傍から見ればとんでもない不良生徒だ。

 

 

 

起き上がり、身なりを整えるために部屋においてあるウォールミラーの前に立つ。

 

 

 

高い身長、腰元まで伸ばした金色の髪に、先の尖った目、その中には他の連中とは違う蒼い瞳。

 

 

 

…どっからどう見てもキッツいヤンキー女がそこに立っている。

 

 

 

この髪は地毛だし、眼だって自前の天然物。

 

 

 

どちらも尊敬する両親から授かったもので、恥じるどころか誇れるものだと思っている。

 

 

 

 

 

「…このままで良いよな、今までも地毛で通してきたし。」

 

 

 

 

 

ニッコリスマイル。

 

 

 

怖い、通報案件発生である。

 

 

 

 

 

「まぁ、ふつーにしとけば誰にも何も言われねぇさ。」

 

 

 

 

 

平和が一番、キャッキャウフフなスクールライフ、エンジョイするんだ明るい未来を!

 

 

 

明日から、あたしは生まれ変わるんだ、風見レイナは普通の女の子になります!

 

 

 

ほぉら普通に、普通に…。

 

 

 

ニッコリスマイル。

 

 

 

怖い、回覧板で晒されるまである。

 

 

 

鏡を前にしての一人百面相大会は、その後数時間、夜通し続いたのだった。

 

 

 

 

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