ふくめんにっき!   作:無完の書く芸迷人

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前回までのあらすじ。

『いやぁ~モルドモルド! 最近話題のシャンフロの話でゴザルよ。作者、硬梨菜殿が二次創作にOKを出したと聞いてつい筆が滑ry』


……ホントのこと言うと活動報告で腹パン連打したら数日間更新が止まって「しまった、ネタ系の質問とかするんじゃなかった……」と後悔してたらいつの間にか更新再開&鍵設定の方に質問の回答が届いてたのでテンション上がった勢いで裏垢作って執筆です。

なお時系列は本編開始の少し前。
賞金首狩りが実装されたあたりの模様。


第一話 常に寺にいる男

「僕の『足刀・工クス力リバーン(そくとう・こうくすりきりばーん)』が!」

 

悲痛な叫びがフィールドに響く。

声を上げたのは馬面頭の少年だった。

初心者御用達の初期防具に身を包んだその少年の名は伊戸三太(いと さんた)。

プレイヤーネームを「実家が寺だから」という由来の『常寺』で使いまわす、中学2年生にして、シャンフロデビュー3日目のニュービーである。

常寺は今、フルフェイスヘルマーというクランに所属する二人組と野良パを組み、最初の町ファスティアからセカンディルに行く途中の関門となるエリアボス……大蛇に挑戦している最中だった。

 

初期職業に「実家寺だしな!」というノリで特に説明も読まず「修行僧」を選んだ常寺はまさかの素手縛りという職業特性のトラブル(自滅)。

仕方ないので蹴り技を中心にひきつった笑みを浮かべながらレベル上げを頑張り、三日かけてレベルを13にした常寺は、レベルは低いのに何故か妙なベテラン感のある二人のヘルマーと野良パを組んでいざ次の町へ。とテンションを上げてエリアボス 大蛇に挑んでいた。

 

常寺はこの日のために最初の町、ファスティアで売っていたプレイヤーの露店で蹴りにも使える足防具、『足刀・工クス力リバー』を購入。

パチモン感タップリな名前なれど、今の自分のレベルでも装備できる上、SPDへの補正と蹴り攻撃時にクリティカル判定にボーナスが付くという使い勝手の良さ。そして蹴りのスキルエフェクトが赤く光るニチアサスピリッツを搭載したこの装備ならボス相手でも戦えると考えていた。

しかし、初心者たる常寺は初のエリアボス戦で、装備の耐久度を気にするだけの余裕を持てなかったのだろう。

その結果が冒頭の悲痛な叫び。

つまるところ、足装備『足刀・工クス力リバー』の破損だった。

 

装備の破損により補正の切れたSPD。数値にすれば僅か。だが初心者の貧弱ステータスにとっては大きなプラスアルファが切れた事により、物理演算による計算と、数秒前までとの間隔のズレが合わさって、常寺の動きを鈍らせる。

そんな常寺が蛇に襲われないようにとヘルマーの一人が果敢にもヘイトを稼ぎに行ったが……なんということだろう。そのヘルマーは一瞬のスキを突かれ、大蛇の捕食モーションの餌食となってしまった。

 

なんてこったい……!

カバーに入ってくれた味方が足から喰われる光景を見て、常寺は大いに動揺した。

幸い、異端審問会を開きそうな覆面装備のヘルマー呪術師が再カバー。捕食モーションの途中で大蛇の動きは止まっている。

だが、野良パとはいえ仲間が喰われたことに変わりはない。

しかし常寺はまだ中学二年生。メンタルはそこまで強くなく、装備を壊され、攻め気を挫かれたショックで「この隙に攻撃を畳みかける」という発想に思い至らないでいた。

このまま負けてしまうのだろうか。

そんな弱気な発想すら常寺の頭に浮かび始めた……そんな時だった。

 

 

「ハァイ、調子良い?」

 

どこからともなく、戦闘中というには不釣り合いなほど気軽な声が常寺にかけられる。

常寺は声の主は探そうとして、気づき、息をのんだ。

なんと呪術で動きを封じられた大蛇の半開きになった口から、先ほど喰われたヘルマーがこちらを覗いていたのだ。

ヘルマーの名前は「セントワイズ」。

ピエロマスクの愛用者であり、先ほど喰われた避けタンクだった。

 

よく見ると舌を掴んで飲み込まれないように踏ん張っている。

……これなら、今引き上げれば助けられる!

そう考えた常寺は口の前まで駆け寄り、セントワイズと目を合わせる。

すると今から助け出されるのを察したのだろう。セントワイズもにっこりと微笑み、そして話し出した。

 

「フルフェイスヘルマーってクラン、知ってる?」

思わぬ質問である。

常寺は『この状況で何言ってんだコイツ』と内心思いながらとりあえず首を横に振り、セントワイズを助け出そうと蛇の口へと手を伸ばす。

 

「オー……みんなフルフェイス装備の良いクランなのに……招待するよ?」

 

伸ばしかけた手は引っ込んだ。

コイツは本当に助けられようという気があるのだろうか。

『みんなフルフェイス装備だからいい』という感性もアレだが、それ以上に『招待するよ』と差し出された手が、どう見ても握手を求める形なのだ。

 

……アカン。分かるでェ。これ手ェ掴んだら入らなあかんヤツや。握手したら『契約は成立した』みたいな流れで入会手続きされてまうヤツや……。

察してしまった内容が内容である。

「そう言って、ノルマとか厳しいんやろ? 騙されんぞ」

思わず猛虎弁になった常寺は、この流れは切っておいたほうが良いと……というか普通に助けられてくれや。と微妙な気分になりながら、セントワイズの提案をはねつけた。

 

しかしセントワイズも食い下がる。

「いや、うちは『とりあえずフルフェイス装備』という暗黙の了解があるだけで、トップクランのようなキツイ義務とかは無い。むしろ初心者も歓迎の和気あいあいとしたクランさ……どうよ?」

 

常寺は微笑んだ。

「面白そう! 『天ぷら騎士団』入るわ」「待てや!」

助ける事すら放棄し、エリアボスの前から立ち去ろうとした常寺を見て、引き留めるべく食い気味に声を上げたセントワイズは、言い聞かせるように問いかけた。

「いいのかい……? ソレを、直したくないのかい……?」

そう言ったセントワイズが指さしたのは常寺の足元だ。

そして問われた常寺は、一拍遅れてその意味に気づく。

「……! 僕の工クス力リバーン(こうくすりきりばーん)……!」

「その通り! ウチのクランには優秀な鍛冶師が所属している。その防具をすぐに直したいなら……フルフェイスヘルマーに入ろう! さあ!」

「……」

常寺は苦い顔をして沈黙した。外から見れば馬面が静かに佇んでいるだけだが、それでもどんな顔をしているかはセントワイズにも予想がついた。

「オー……そんな嫌そうな顔するなよ。ウチはノリと面倒見の良い連中が多くて、つるんでいて楽しいぞ?」

 

 

 

「周りからネタクラン言われない?」

「えっ うん」

そう言ったピエロの顔は、表情の変わらないフルフェイス装備なのに何故か引きつって見えた。

 

……とはいえ、防具は直したいし……ネタ扱いと言ってもそこまでぶっ飛んではいないはずだよね?

そう考える常寺が思い出すのは、ファスティアで見た『ティーアスちゃんを着せ替え隊』の面々だ。

チャイナドレスを着た巨漢のゴリマッチョにボコられたプレイヤーが「ああっ、デザインと制作に一週間かけた……インナーの上に重ね着する見せパン付きのミニスカサンタ装備が!」と悲痛な叫びをあげながら賞金首狩りのNPCにキルされ、それに呼応した周りのクランメンバーが「畜生ぉ! そのミニスカサンタは、お前が手にすべきもんじゃねーんだよぉぉお!」と叫びながら返り討ちにあう光景を見た後だと、フルフェイス装備の集団に加わることくらい何でもないように思えた。

 

人はそれを感覚麻痺と呼ぶ。

 

しかし感性の麻痺に自覚のない常寺は、目の前に提示された『防具の修理』という餌の魅力に抗えない。

「じゃあお試しなら……」

と、クランに入ることを了承したジョージは、再び握手を求めるピエロを大蛇の口から引きずり出すべく、握手はしないように気を付けながら大蛇の口に手を突っ込んだ。

しかしジョージはその時になって気がついた。

殺意にあふれた視線。忍び寄る死の気配。

嫌な予感がした常寺の瞳が、とある事実に目を向ける。

 

……そういえば、今かかっている呪術によるモンスターの行動阻害。心なしかエフェクトが薄くなってきたような……。

 

しかし、蛇の中にいるセントワイズには外の状況など分からない。『逃がすまい』とでも言いたげにガッシリと常寺の手を掴んでおり、当然離そうという気配も無い。

元々のステータスに差があるのだろう。抵抗しようにもとても振り解けそうになかった。

そしてその手を掴んだセントワイズは嬉しそうに、そして朗らかに笑いだす。

「覆面装備はいいぞジョージ 深いぞ。君も絶対ハマるから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前もお気にのヘルムを作るんだよおぉぉぉぉ!」

「キャアアアアアアアーーーー!」

 

 

 

 

 

 

常寺は死んだ。

 

モンスを抑え込んでいた呪術の効果が切れ、戦闘復帰した大蛇に喰われて死んだのだ。口の中のピエロに手を掴まれ、逃げるに逃げれなかった事も悪かった。

 

そしてセントワイズも死んだ。

その気になれば残った味方がモンスを倒すまで耐える事もできた。

だが目の前でクッソ笑え……気の毒な死に方をした常寺に気を使って。

あと取った言質の支払い請求、もとい常寺のクラン入会を手続するため、装備を紙装甲に替えて自ら死んだのだ。

 

最後に残った異端審問会系の覆面装備も速やかに引き上げ、三人はファスティアへと出戻ると、再び広場に集結する。

1人は防具を直すため。そして他の2人はクランに入る新人を歓迎するために集まるのだ。

 

 

こうして今、常寺のヘルマー生活が……ミニスカサンタになって再度現れたマッチョの賞金首狩りに男物のトランク系インナーの上に重ね着された女ものの見せパンのパンチラと死をプレゼントされた『ティーアスちゃんを着せ替え隊』の断末魔をBGMに……始まろうとしていた。

 

……カラダニキヲツケテネ!

 

 




「オマケ・キャラ紹介」


・主人公「常寺」
お寺の息子。中二。
修行僧の素手ゴロ縛りだが蹴りメイン。
ステ構成はSTRとVIT中心。ジョブ的にしばらくは喧嘩屋スタイルになりそう。
上位の僧兵に転職したら槍を持たせる予定。

※お察しの通り元ネタは「ペニーワイズがおすすめするシリーズ」のジョージである。
色んな人から何かと「ハァイ、調子いい?」と聞かれ、ネタに巻き込まれるのが本作におけるテンプレの流れ。



・相方「セントワイズ」
中3女子。
最古参の軽く廃人入った人が一周回って変人にクラスチェンジした怪人。リアルでは女だが、シャンフロではおっさんアバターを使う。
元ネタが元ネタだしね。
レベルダウンビルド前は「呪術師」+「傭兵」だったが、進展の無いワールドクエストに業を煮やし、別スタイルでプレイしてみっか、とレベルダウンビルドを決意。
レベルダウンビルド組(現在2回目)であり、メインジョブに「隠密」を、サブに「呪術師」を設定している。

現在のスタイルはデバッファー避けタンク。

敵の攻撃を回避しながら魔法攻撃を仕掛けつつ、隠密でヘイトを外し、呪術のデバフ盛りで相手の足を引っ張っていく。

ピエロ頭はクラウンスパイダーがいる時点で普通にありそう。


※当然元ネタは「ペニーワイズがおすすめするシリーズ」の主役、ペニーワイズ。

元ネタの名前をペニーとワイズで分け、「ペニーはカナダの1セント硬貨の通称だよね」という理由でセントワイズに置き換えた。

なお作者はこの名前を作った時に、いつの間にかカナダでペニーが廃止されていたことを知って衝撃を受けた。



・異端審問会な覆面の人。
社会人。メインは呪術師。サブは色々。
異端審問会を開きそうな三角頭巾を普段使いする。
本人曰く「職場のような安心感」らしい。
メインキャラではないがちょいちょい背景として出る予定。




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