久しぶりに本気で恥ずかしい…。
あと前話のあらすじも少し変えました。
前回のあらすじ
この竜災大戦、絶対に一話で終わらせてみせる!
今回のあらすじ
一話じゃ終わらなかったよ……(´・ω・`)
竜災大戦。
それは一週間前という唐突な時期に発表された……しかし、ユニークモンスターという一部のプレイヤーしか関われなかった金脈への招待券だ。
参加者は多く、熱意も高い。
一週間の準備期間を奔走した常寺達は当日の序盤、スカル安土横、料理人プレイヤー達の集まったサポート拠点でほかのプレイヤー達と一緒に動き回っていた。
「それにしても、出遅れたのは痛いな」
リアルの予定で出遅れた常寺は不満気に足元を軽く蹴る。
既に白龍と緑龍は現れているらしい。
続々と状況が動くなか、間に合わなかったのだ。
一歩先を行かれた感を味わうのは中々に悔しい。
そんな常寺の肩を叩き、セントワイズと異端審問は料理人からバフ効果のあるシチューを受け取って口に運ぶ。
遅れはしたがいよいよユニークレイドだ。
持てる時間の限りを尽くし準備を整えたした常寺にとって、今、初めてのユニーク戦が始まろうと……。
……始まろうと……。
「…………ところでセントワイズ。さっき話しかけてきた『黒狼』のメンバーの人。『指揮下に入れ』的なこと言ってたけどどうするのさ? あそこのクラン、フルフェイスヘルマーと繋がりあるんだよね?」
「って言っても繋がりのあった面子は『黒剣』の方だからねー。まあ旧大陸組もこっち来てるとはいえ、『黒剣』じゃなく『黒狼』と組めるか? って言うとちょっとね」
「解る。あそこのリベなんちゃらってリーダー。ライオットブラッドが足りないよな」
「異端審問。カリスマと書いてライオットブラッドと読むのは止めよう?」
「……? 何を言ってるんだ常寺? ライオットブラッドと書いてライオットブラッドだろ?」
「エナジードリンクの有無で組むかどうかを決めないでくんない…!?」
思わず頭を抱えた常寺は、何とか言ってくれないかとセントワイズに目を向ける。
「リベ……、リベ……、ダメだ。頭の2字しか出てこない。思い出せないよ常寺ぃ」
「……気にもしていねえ……!」
組むかどうかを議題にしたかった常寺。しかし話題はすでに『あそこのリーダーの名前何だっけ』にすり替わっている。
組むかどうかを話し合う気配は微塵も感じられなかった。
その様子を見ていた異端審問は、我天啓を得たり、とでも言いたげに胸を張って口を開く。
「閃いたぞ……! そう! 確か…… 『リベリオン』!」
「……直訳で?」
「反乱」
「……指揮下に入ったルートのオチは見えたな! じゃあ辞めとこーか! 普段ならともかくユニークレイドだし」
「笑顔で言う事じゃないよ……!?」
このセントワイズと異端審問。ふざけている様に見えるが付き合いの長い常寺には分かる……素だ。
周りでクスクス笑ってるプレイヤー達に視線でツッコミを求めるも、笑ってる時点でお察しである。
というかよく考えたらここにいるプレイヤーは漏れなくリベリオン? の部下から『どうしてもというなら指揮下に入れてやってもいい。……いいな、絶対入れよ?』的な事を言われている。
場の流れは『サイガー100の反応は気になるけど、皆で断れば怖くない!』とでも言いたげになっていた。
「さて、じゃあ皆でお断りのメッセージを入れよーか。スズメねー」
と、セントワイズが言うや否や周囲のプレイヤーたちが一斉にメッセージ運搬用のスズメを出し始める。
「これは……!」
全員が一気に送り付ける気だ。
ヘイトの分散はゲーマーのたしなみ。スカル安土にいたプレイヤー達は一斉にスズメの群れを解き放つ。
常寺が気まずい気分を味わう中。2分、3分と時間は過ぎていった。スズメのメールが届くまで約5分。
途中で猛禽類に食べられてメールがロストすることもあるが、そのあたりを見越してスズメをダースで解き放つ猛者も現れていた。
まさかアレ、ダースで同じメッセージなのだろうか。だとしたらメールの連投より質が悪い。
そうこう考えてるうちに時計は4分を過ぎる。
……ああ、もう届くころだ。
送られたものはしょうがないとはいえ、ギスギスするのは嫌だなあ。
と、常寺は内心で少しだけ拗ねる。
そんな時だった。
「来たぞ! 今度はドゥーレッドハウルだ!」
伝令役としてきた避けタンクのプレイヤーが色竜の襲来を常寺達に告げる。
今度こそ、常寺達の竜災大戦が始まろうとしていた。
●
「……なっ!? こんな時に、なんだこの大量のスズメは!」
「……ぬわーーーーーー!!」
……『黒狼』メンバーは死んだ。
ドゥーレッドハウルの襲来。たまたま近くにいた事もあり、「よし、僕が手柄を立てるチャンス!」という戦国メンタルで出陣した矢先、大量のスズメが現れたのだ。
シャンフロ内のメッセージ送信方法としては一番安価なスズメ。
しかしその配達達成確率の低さも悪かった。
もし鷹に襲われてメッセージが届かなかったら後で因縁つけられるかも? という無意識の心理が1パーティー1メッセージに最低でもスズメ3匹(中身は一緒)。という驚異の使用率を叩き出したのだ。
その結果50を超えるスズメたちはまるで獲物に襲い掛かるように送り先へ殺到。
ドゥーレットハウルからすれば、空から大量のスズメをサモンした謎の男。
あまりに目立ちすぎた僕はここだよアピールによって速攻で目をつけられ、景気づけとばかりに腹ブレスの餌食となったのだった。
しかし、ある意味では良かったのかもしれない。
空に舞った大量のお祈りメールは送り先と一緒に焼き滅ぼされたのだ。
クラン『黒狼』メンバーのプライドとメンタルはある意味で守られた言っても過言ではない。
なおそんな事実を知る由もない『黒狼』メンバーは『なんだよ今の!?』と、スカル安土でブチギレリスポン。
そうとは知らぬ常寺達は、ドゥーレットハウルを見た異端審問の『アレ前から思ってたけど「墜ちろカトンボ!」って言いながら大技当てたら気分よさそうだよね』という感想に深く頷いていた。
●
さて、そんな感想もほどほどに 『墜ちろカトンボしたいけど、最初から空にいる相手はめんどくさいよな』 という意見で一致した常寺達は、とりあえず試しとして都合のいい相手、ブライレイニェゴの小竜と戦うべく白竜戦線へと乗り込んでいた。
子供の皮を被った白竜の愉快な仲間達。
その軍勢規模の集団に対するプレイヤー達は、即興で集団連携を取る者達と、「連携とか知ったことじゃねえ!」と言わんばかりにフリーに動く遊撃役に分けられていた。
ひとまずは連携側、壁役集団に参加していた常寺は、雪崩れ込む小竜の群れをスイッチの連続で押しとどめ、時には派手な近接スキルで押し返し魔法職の詠唱時間を稼いでいく。
割と余裕を持たせたローテーション。
それを2分ほど続けただろうか。
常寺は一度下がったタイミングで、魔法職によるスキル三弾撃ち陣営に参加していた異端審問と合流し、全体を眺めながらポーションの瓶をラッパ飲み。回復するHPゲージを横目に水分補給感で一休みを味わっていた。
「遊撃というか、フリーに好き勝手やってる人たち。協力してくれないから残念だったけど、こうしてみると地味にヘイト分散に一役買ってるね」
まとまりのないプレイヤー達が、小竜弾幕が薄いところへと突っ込んでいるが……すぐに倒されるのかと思いきや、割と3.40秒くらい粘る。
まあ最終的には物量にやられるのだが、とりあえず切れる札を全部切って華々しく散っている感があって中々に派手だ。
「流石に新大陸まで来てる連中だからな。一定レベルの実力は超えてるって事だろ」
そう言いながら小竜に魔法を打ち込む異端審問の言葉に常寺は納得の頷きを作る。
確かに、以前常寺が野良パを組んだ面々は程度の差はあれ、一定以上の実力を備えていた。
……けどまあ、いくら実力があっても、この物量は連携ナシだと無理だよなあ。
殺到されたら流石にキツイ。
それでも自分達の戦線が持っているのは、以前行った集団戦の経験、そしてセントワイズを始めとした有志の避けタンクチームが群れの中盤へと飛び込み、小竜の流れを遅らせている事が大きい。
彼らは殺到する群れの後続をヘイトをかき乱し、デバフをまき、時には転ばせ抑え込んでいる。
セントワイズの呪術デバフはもちろん、それ以外の面々も各々のカードを切りながら、回避重視の曲芸軌道を取っていた。
セントワイズがかなり「できる」部類であるというのは当然知っていたが……他の面々もかなりのものだ。
飛び込む前のセントワイズは、今のうちに小竜の群れ相手に避けタンする感覚を掴む。とか言ってたけど、アレみんなそうなのだろうか。
……負けてられないな。
新参者だからって遠慮はしない。
静かに気合を入れた常寺は異端審問達の盾となるべく、再び前線にスイッチする。
……それにしても。
今日はその中でも特に、異端審問の動きが冴えてる気がする。
つい先日まで「あのゲームは適性がいるから……」とか言われる世紀末江戸世界『幕末』で行われたデスゲームイベントに参加していたという話だったが……何か得るものがあったのだろうか。
以前よりも的確に、しかも絶妙なタイミングで魔法を撃つ異端審問は明らかに、以前にはない新たなテクニックを体現しているようだった。
●
……良い感じだ。
異端審問はノッていた。
ヘイトスキルに釣られた小竜の視界を威力の低い魔法の連射で塞ぎ、撤退や追撃を援護。
以前なら初見のモンスターが相手の場合、何発かは外すことも覚悟の上で行っていたソレは、今やほぼ百発百中の域に達している。
それはひとえに、先日ある幕末プレイヤーから聞き出した原始的な心理戦方法がキッカケだった。
●
「そもそもヘイトとは何か」
数日前。デスゲームの傍ら、レア刀の質流しと交換に教えを乞うた異端審問は、そう問われ答えに詰まっていた。
そんな異端審問にそのプレイヤーは「ヘイトとはいわば集中力だ」と答えを告げ、「そしてソレこそが狙い目なのだ」と言い聞かせる。
「いいか、『ヘイトが確定する瞬間』というのはリアルの戦国時代においても『狙い目』として知られていたんだ。……人間はどこまでいっても感情の生き物。そして怒りにせよ、悲しみにせよ、人の心が揺れ、強い感情に切り替わる時、人の心はどうしても……一度自分に集中する」
つまり感情が大きく切り替わる時、0.3秒から0.7秒(平均)の間、人は外部への反応が極端に、それはもう皆無と言って良いほど欠落する、という事らしい。
そして、やたらとAIの出来が良いシャンフロのモンスターにも、知能がある程度高ければ、という条件付きでこのテクニックは通用する。
異端審問が教えを請うた幕末プレイヤー……あいつ(くいっ)は、その時、静かに断言したのだった。
●
「ヘイトが切り替わるその一瞬、ソイツは自分のメンタルで手一杯になる……か。言われてみれば確かにね」
時々ブライレゴルニュの指示で全体のヘイトが移行するが……その時にも一瞬の隙が生まれている。
タイミングを理解してしまえばカモ撃ちだ。
錬度の高い射撃。そしてソレが援護として「ある」と知ったプレイヤー達の連携で小竜は1体、また1体と倒れていった。
まだ対人戦で十全に使う自信は無いが、シンプルな思考のAIならほぼ確実に行ける。
「あいつ(くいっ)のようにはいかないが……このくらいはできないとな」
そう自慢げに言った異端者は「それにしても……」と考える。
このテクニックは幕末のとあるイベントで聞いた、対人戦で心理の隙を突くテクニックだ。
しかし、幕末のベテランは皆最初からキレている。
ヘイトを稼ごうにもスタート時点で「あの野郎天誅してやる!」なので、メンタルが揺らぐ隙が無い。
揺れるママママインドなど存在しないのだ。
そうなるとこのテクニックが有効なのは、メンタルが染まっていない新人くらいだが……そもそも新人に即負けするベテランがいるはずもないし……そもそも新人はリスキル地獄でヘイトとか関係ないし……NPC相手なら基本的にテクニックを使うまでもないというか、強い相手はNPCですら大体幕末思考というか……結論から言うとアレだ。
「このヘイトコントロール。幕末の外でしか使えないのでは……?」
……異端者のメンタルが揺れ動く。
質屋に預けていた数少ないレア刀。ソイツを泣く泣く流してまで得た情報が幕末において無意味ってことはつまり隙あらばこのテクニックを逆利用して隙をついてやろう、ランカー食いじゃあ! というこちらの計画もご破算という事で、こちらの考えが見透かされて絶妙に使えない情報を渡されたとしたら……。
異端審問は無意識に、歯を食いしばりながら拳を握る。
「……あいつ(くいっ)め!」
思わず声を荒げた指は、まっすぐに空へと伸ばされるのだった。
●
「……キャアアアアアアアー!!!」
……常寺は死んだ。
いきなりキレて上を指差した異端審問に気を取られたのだ。
異端者が自分の感情に手一杯だったのも悪かった。
普段ならあるはずの援護が途切れ、異端者に気を取られた常寺に小竜拳がクリティカルヒットしたのだ。
空中に打ち上げられ尻尾でライナーされた常寺は少し離れた小竜の群れをストライク。
吹っ飛ばされ、ヘイトを切り替えた小竜達にここぞとばかりに狙われた常寺は、異端審問はどうして空を指さしていたんだ……と混乱したまま力尽きるのだった。
・オマケ
ハーメルンよ! 私は帰ってきた!
帰ってきた早々ヤベーミスしてたけど直したからセーフ!
……イヤほんと遅くなってスイマセン。あと龍のエンカ順間違えてごめんなさい。
休んでる間に秋津茜のイラスト(ヤベエよアレ何時間かけたんだ?)が出たり、アメリア戦盛り上がったり(チャット回はネタ溜め中)、ヒロインちゃんがヒロインだったり、まさかのツイッター始まったりと、割と激動な感じでしたがこちらは何とか元気です。