ふくめんにっき!   作:無完の書く芸迷人

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名前募集マジ?とかウキウキで考えてたら速攻で締め切られて草ァ!



前回のあらすじ

トイレ、魚臣、遅れている、シルヴィアに勝利。
事情を知らないスレ住人が、これらの符号から導く回答は……





第七話 刷り込まれた特殊効果

GGCの熱も冷めやらぬ翌週。

検証スレやクラスタの盛り上がるネットをよそに。

シャンフロにインした常寺は、先日辿り着いた旧大陸最後の街。フィフティシアを拠点にエリアボス、ユザーパードラゴンの素材を集めながら、半裸の鳥面を探していた。

場所は最後に目撃情報があったスラム街。

目を合わせなくてもチンピラが絡んでくる、ゲーム的にも治安の悪い場所だった。

 

とはいえ目撃情報があったのはそこそこ前。具体的に言えば、この間行われたGCCの前日だ。

 

相手は捜索掲示板で「通常クエスト全投げRTA」などと評される猛者である。

常寺としても、見つけられるとは思っていない。

いわばこれは暇つぶし。

セントワイズ達より先にインした常寺がいつもの2人を待つ間の、気分転換の様なものなのだ。

 

 

そのはずだったのだが……。

「……?」

なんというか、NPC達の反応がおかしい。

悪いのではなく……おかしい。

質問の内容はシンプルに「こういう見た目の開拓者を見なかったか?」というものだ。

今まで別の街で……例えばエイトルドなどでこの質問をすれば『そいつならこの前見たぜ? 酔狂な頭(物理)をしていたから覚えてるよ』などと誰かしらNPCが証言をしてくれた内容だ。

しかし、今回話しかけた……というかスラム街に入ると絡んでくる荒くれ達に、同じ質問をしたところ、ドン引きして去られてしまった。

呼び止めようとすれば、後ろを振り返らぬマジ走りで逃げられる始末。

流石に予想外過ぎる反応だ。

 

……こう、何が何でも関わりたくないって感じだよなあ。

捜索掲示板で普段からツチノコ呼ばわりされてる人だが、ここにきて突然変異でもしたのだろうか?

そんな疑惑すら考えた常寺は……逃げる荒くれを追いかけ、やっと得る事の出来た情報を……彼らが震えながら話した言葉を思い出す。

 

( 『……あの夜の気配持つ傷を見れば分かる。あんたの探し人は偉大な事を成したのだ……! 恐ろしい! ……しかし、偉大な事をな……』 )

具体性が皆無である。

「というか……よく考えると、某魔法学校の小説に似たような台詞があったような気がするんだよなあ……」

だが半裸が恐怖の対象として……とにかく目を付けられてはいけない相手として認識されているのは間違いなさそうだ。

気持ちは分かる。鳥頭(物理)の半裸だ。気持ちは分かる。

しかしシャンフロはあくまでゲーム世界。ヤベー恰好のプレイヤーはこの街でも見るので、半裸という要素だけで恐怖の象徴みたいな扱いをされるのは納得がいかない。

 

……うーん。『偉大な事を為した』という証言からして何かやらかしたのは確定だろうけど……。

「何をしたらこうなるんんだ……?」

また何かしらのユニーク絡みだろうか? 居場所どころか疑問が増えるとは、予測がつかないにもほどがある。

聞き込みの結果理解できたのは、「以前に増して見つけにくくなった」というあんまりにもあんまりな事実だった。

 

「……まあでも、暇は潰せたし、これも良いネタだよね」

ツッコミ所も含めて面白い話ではあった。セントワイズ達との会話や、捜索掲示板の話題としては十二分だろう。

「よく掲示板にいる人とか、こういう話好きだもんなあ」

捜索掲示板には、別ゲーの知り合いを名乗る人が時々いるが、彼らの中には半裸の行方よりその動きに対する周囲のリアクションを楽しんでいるふしがある。

知ってる奴の活躍を聞いて内輪で盛り上がる感じなのだ。

きっと他のゲームでもやらかした事があるのだろう。今回の話にも喰い付きそうだった。

 

 

「おっと、あの2人もインしたのか……」

クラン用のグループチャットに2人からのメッセージが届いたのを見て常寺の思考は切り替わる。

チャットの中では特に異端審問のテンションが高い。どうやらその様子にセントワイズが呆れているらしかった。

 

……まさか、またネタに走るつもりか?

 

持って生まれた天運とでも言うべきだろうか。常寺は周りがネタに走ると何故かとばっちりで死ぬことが多い。

常寺は反射的に警戒を強めた。

毎度毎度、そう妙な死に方をしてはたまらないのだ。主に中二のプライド的に。

しかしその警戒は異端審問官の上げたチャットメッセージを読んで氷解する。

異端審問官のメッセージ。

 

 

 

そこには、「美人と評判の第一王女を見に行こうぜ!」と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そもそもの話はライブラリの水走忍者が入手した、騎士団経由の情報らしい。

騎士団に所属するロールプレイヤーが守秘義務ペナルティーを気にして外部スレに漏らした話によると、今日、第三騎士団を警護に付けた王女が、友人の貴族の元を訪ねるという。

 

物見高い……もとい暇人プレイヤーは既に何人か動いているらしい。

王族だけあって暗殺依頼なども出回ったらしいが、賞金首狩りの実装された今、好き好んでカルマ値を爆上げしたい奴などいない。

むしろ「ここで活躍すれば王女ちゃんの好感度UPやんけ!」などと「暗殺者に襲われる王女を助ける自分」を妄想するプレイヤーがいるくらいだ。

その結果、きわめて安全性の高い、しかし情報統制がガバガバな、忍べていないお忍び。という妙な状況が発生しているのだから笑えて来る。

 

常寺達が飛び込むのはそんな安全なカオスの最前線だ。

 

異端審問達がINしてから十数分後。

セントワイズと異端審問を加え、いつものパーティーを組んだ常寺達は、問題の貴族邸宅の近くまでやってきていた。

 

王女の訪れる邸宅の近く、窓から貴族邸が見える部屋をわざわざ取って、事前に用意したプレイヤーメイドの望遠鏡で邸宅の様子を視察する。

似たような事を考えるプレイヤーは他にもいるのだろう。わざわざ屋上から監視してる人影がいくつかあるが……シャンフロのNPCは優秀だ。

身軽な盗賊職のある世界観であのポジション取りは「見つけて下さい! ボクはここでぇす!」と言っている様なものなのだろう。

屋根の所々では、騎士団所属の盗賊職らしき面々に追われ、慌ててスラム街へと離脱するプレイヤーの姿が見えた。

……しばらく追いかけっこでもするのだろうか。

だが流石の警護体制だと感心もさせられる。

王女の来訪自体は本当なのだろうと、常寺は頷いていた。

しかし、異端審問ヘルマーにとっては違ったらしい。

 

「思いのほか警護が薄いな」

「……え!?」

意外な言葉だ。常寺は思わず聞き返した。

「そうかな。結構防御厚いと思うけど……騎士団所属のプレイヤーも警護に入ってるみたいだし」

「いや、前に王女ちゃんのスクショを狙った時はもっと鉄壁の防御だった」

「……異端者、たまにそういうとこあるよね」

セントワイズが呆れた声を漏らす。

だが異端者の分析は止まらない。彼は今もまた、考えられる可能性を口にし、思考を回していた。

「先王の方へ護衛を割いている? だから動かせる人員に限りが……いや、それなら日程を分ければいいだけだろう。わざわざ護衛を二手に割く意味がわからん。……何か裏でイベントが起きた? 護衛を減らして何をするか……モンス討伐? いや、新王関係でイベントか? ……分からん。後でライブラリに投げるか。まあ今は王女ちゃんのスクショだよな!」

テンション高めな結論である。

 

この人、仕事何やってんだろうな。と、思わず疑問を覚えた常寺は、触らぬ変態になんとやら、と考えながら双眼鏡を覗いてその時を待つ。

「あ……あの馬車かな?」

常寺はある意味、持っていたのだろう。

王家の紋章の入った馬車は……そう待つこともなく訪れた。

 

 

 

 

「お、第三騎士団の団長ナンタラ剣を発見。騎士団のお偉いさんが護衛って事は、やっぱりアレが王女ちゃんの馬車かな」

「……ダミー馬車とかも一切無しか。やっぱ警備薄いなあ。……けどスクショにはいいぞー、これ」

常寺の見つけた馬車が貴族宅前に停車する様子に、セントワイズと異端審問がテンションを上げる。

しかし馬車を見つけた功労者である常寺は、ある種の予感。うなじのあたりにチリチリとクる第六感の様なものに気を取られていた。

 

……嫌な感じがするな。

ライオットブラッドを飲み始めてから感じるようになった、第六感とも言える感覚だ。

このゲームを始めてから幾度となく死んだ経験。その積み重ねによって作られた本能がライオットブラッドの力を借り囁くのだ。

このままではいけない、「手遅れになるぞ」と。

……だが何故?

 

エネミーやPKの出る外ならば分かる。

しかしここは街中だ。まさか、この警護化の中暗殺者が出て、ソレに巻き込まれるとでも言うのだろうか。

 

……油断はできないな。

本能は疑わない。今は兆候を探すのだ。

手に持った双眼鏡越しの光景。そこに答えがあると信じて、常寺は集中する。

 

気になるのは警護の責任者、ナンタラ剣の人……。

ヤバイな。どことなく、やる気が感じられないように見える。

そして馬車から降りた第一王女……。

……カワイイ!

「……かわいい!」

「お、やっぱり常寺もそう思うか! 初めてみたけどいいな、王女様! 泣きボクロがセクシー!」

警戒も忘れ、思わず盛り上がる常寺と異端視審問。

だがそんな盛り上がりに水を差したのは、こういう時に呆れて笑うはずのセントワイズだった。

 

 

 

「……フェアッ! フェアッ! フェアッ!」

様子が……控えめに言っておかしい。

「過呼吸?」

「いや、違うぞ常寺。VRに過呼吸は無いはず……無いよね?」

王女の事も忘れて常寺と異端者は話し合う。

そう言っている間もセントワイズの様子はおかしいままだ。

いつもにこやかなぴえろマスクは歪な微笑みのまま固まり、システムが何をどう読み取ったのか、その目は血走っているようにも見える。

何より異様なのは、喉を詰まらせるように漏らすその発言だった。

「フェア!フェア!フェア!フェアッ!」

「……壊れた玩具みたいになってる」

まさか、VRマシンの接触障害……いや、それともリアルで問題が起きたのだろうか。

 

しかし、おかしいのはセントワイズだけではない。

「イヤダー! シニタクナーイ! シニタクナーイ!!」

「ウワアアアア! パッフェ!? パッフェはイヤダーーーー!!」

「思い……出した! うっ、前世で頭がっ!」

 

ポツリポツリと聞こえ出す怨嗟と苦悶の叫び声。

まるで感染するように広がる異常事態はバイオハザードを彷彿とさせる。

そして次の瞬間、事態に困惑する心配する二人が見たのは……フル武装して窓を飛び出す、殺意に堕ちた道化の姿だった。

 

「フェアッ……! カーーーーーッッッス!」

 

 

…このゲームはいつからホラーカテゴリになったのだろう。

「というか、ええぇ? なんか形容しがたい叫び声上げて跳び出したんだけど……キャラ変わりすぎと言うか……えええ?」

「あーっと……常寺ぃ。パラレルワールドって知ってる?」

「いやそれは流石に知ってるけど……『世界線が変わった』は、流石に無理がないかなぁ……」

フル装備という事は王女に喧嘩を売りに行ったと見るべき……だろうか。

しかし先程の様子から言って、刺客と言うよりは錯乱した不審者である。

あのノリで飛び込むのは黒歴史にしかならない。

正直止めたい。しかし異端審問は純魔、常寺は壁役もできる物理アタッカーだ。避けタンクたるセントワイズに、追いつく足を持っていない。

常寺は何が起こっているのか理解できず、ただ宿の天井を仰ぐ。

「一体……何が起こっているんだ……!」

とにかく双眼鏡を覗くしかない。

後に残った二人にできるのは、ただ成り行きを見守る事だけだった。

 

 

 

 

一方、セントワイズの……そして似たような同類たちの接近を察知した騎士団の対応は速かった。

特に「王女を狙う暗殺者を返り討ちにする」というシチュエーションに憧れていた者達はNPC以上に動き出しが速い。

むしろ「カルマ値を気にせず、よくぞ来た!」とでも言いたげに襲撃者達を片付けていく。

 

だがセントワイズは狂っても廃人。レベルダウンビルドすら行った猛者である。

スキル回しと、ゲームそのものに対する経験値。それらから繰り出されるプレイヤースキルの数々は、ライオットブラッドを愛飲する様になった常寺ですら、未だ追いつけぬ領域にある。

 

「反応が遅いぞ、悪逆の徒よ!」

「いや立場逆……! あ、スマン! 抜かれた!」

「くそ、コイツ異様に速い!……廃人か!?」

「おい、スキルと魔法で壁を作れ! 進路を限定しろ!」

「けど、下手に範囲技使うと街に被害が……!」

 

街中が舞台。それもプレイヤー相手の集団戦という、シャンフロでも珍しいシチュエーションが警護の者たちの戸惑いとためらいを生む。

その隙を駆け抜け、王女へと接近するセントワイズは、細かいステップを刻み速度に幅を付けながらイベントリから目くらまし用の布を広げる。

その影でさらに数本の短剣を手に取り、魔力を消費して投擲。

短剣を投げた方とは逆に、加速系スキルで移動する。

 

この時、セントワイズが使ったテクニックは3つあった。

1つは速度の緩急。もう1つはイベントリから目くらましの障害物を取り出す対人テクニック。

そして……最後の1つは速度に特化した回避型ならではの裏技だ。

シャンフロの武装は魔力を消費することで効果を発揮するものがある。

それはプレイヤーメイドでも同様。作り手の思考やネーミングである程度任意で設定が可能だ。強力な効果を付与しようとすれば素材の厳選もいるし、金もかかるが……逆に言えば、「ショボい効果を工夫して使う」分には金も、手間もかからない。

 

 

「な、プレイヤーネームが!? 分身!?」

「いや違う! 名前に惑わされるな!」

「……囮だ!くそ、抜かれるぞ!」

 

セントクイズ、セントクイス、ゼントワイズ。

自身のプレイヤーネームであるセントワイズに似た名前。それがプレイヤーネームと同じ色、同じ大きさで、障害物に紛れて宙を舞う。

それらは「表示剣」の頭文字で統一された、武装の名前を表示するというネタ寄り効果のある短剣たちだ。

しかし、直前までの緩急と突如現れた障害物。そして「そもそもセントワイズ自体が速度特化」という3つの要素を重ねる事でプレイヤーの目を欺く一手となる。

なにせそもそもの舞台は障害物が多い街中なのだ。

護衛のプレイヤーは相手が同じプレイヤーであるからこそ、フレンドリーファイアやNPCへの誤射を避けようとする。

だから頭の上のプレイヤーネームに気を取られやすい。

この表示短剣による疑似分身はそんな心理の隙をついたテクニックだった。

無論、同じ速度特化タイプや、この小技を知る者……特にモーメントサイトのような動体視力の補正スキルを持つ相手は誤魔化せないテクニックだが、これが「騎士ロール」相手にはキッチリとハマる。

何故なら騎士の基本はタンクビルド。

速度よりも守りを重視したスキル構成が基本のため、高速で動き回る戦いに縁が無い。

おまけにセントワイズ以外にも襲撃者がいる。誰が誰を迎撃するかという責任の所在すらあやふやな状態だ。どうしたって連携は甘くなる。

咄嗟に反応できた僅かな面々も、呪術により動きにデバフをかけ、回り込むように軌道を取れば道化の通行を阻めない。

 

そして……とうとう王女の姿を捕らえたセントワイズは、身体を地面と水平に倒しヘルメスブースト。

スキルの連動で無理やり体制を起こし、王女との間にあった距離を詰める。

副団長であるNPC、ナンタラ剣のユリアンが咄嗟に反応するが……動きが鈍い。間に合わない。

そして、あるべき未来を叫ぶかのように、セントワイズは声を上げた。

「……これが報酬の3分間に辿り着けなかった私の……! そして! 皆の想いだッ!」

そして、護衛NPCの間をすり抜けるように踏み込んだセントワイズは、怒りの本能へ身を任せるように……拳を握り、加速を弾く。

 

「グッナイ、フェアカーーーーーーーース!」

そして、道化の拳が振り下ろされ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三騎士団団長。絶命剣のユリアンが殴り飛ばされた。

 

 

 

「ぐわぁーっ!」

第三騎士団の団長、絶命剣のユリアンが苦悶の悲鳴を上げる……!

理解できないと言った顔で、体制を立て直すも混乱が収まっていない。

「バカな、殺気は読めていたはず……グべペっ!」

殺気が読めるにもかかわらず、予測した場所に攻撃が行かない。動揺するユリアンの顔に追撃の拳が再度刺さる。

 

困惑するユリアン。驚く王女。

よく分からない衝撃が広がり、その混乱は双眼鏡を覗く常寺にも波及した。

「い、異端審問! どういうことなのさ! 何故セントワイズが騎士団長を……まさか本当に世界線が変わったとでも!?」

もはや大混乱である。

問いかけられた異端者は何が起こったのかを理解し、力強く…しかし震える声で慄いていた。

 

「ぬううっ、あれが世にきく『禍身呑向行化脳録(かみのむこうかのうりょく)』。……げに恐ろしき、パブロフの御業よ…………!!」

「……!? 知っているのか異端審問!?」

「うむ!」 

 

 

そう言った異端審問は「大体で悪いが……」とメッセージ欄に、考察サイトの内容を簡潔に書き込み。常寺に送る。

届いたソレの内容を、常寺は言葉を無くして目を通した。

 

 

 

 

『 禍身呑向行化脳録(かみのむこうかのうりょく) とは』   

 

フィールドに存在するだけで特定条件下のプレイヤーへ作用する、あるシャンフロNPCの持つ、常時発動型の恐るべき効果。

生半可な障害はその高い地位(こうげきりょく)によって粉砕され、生半可な魔法やトラップはプレイヤーがいる限り(犠牲と労力によって)無効化される。

その起源はとある和製ゲームに由来するという。

 

この効果で凄まじいのは特定プレイヤーの持つ、2つの技能を利用したものである。

長時間VRゲームを遊ぶ事に慣れた者が、脳の負荷を感知した強制シャットダウンを防ぐため、クエストを無意識にこなす技能。

そして、訓練されたクソゲーマーが使えない味方NPCというお荷物への怒りを敵モブへの攻撃に転化する……逆に言えば味方NPCにブチ切れてもそのNPCを攻撃しない技能。

これらの併用と繰り返しが無意識へ擦り込みを成立させ、効果をより強力にするのだ。

 

なお現在は「フェアカス! なぜフェアカスがここに!? まさか自力で脱出を!?」と驚愕した者が、鋼の強さと鉄の意思で錯乱する事例が見られており、その際は「彼女はフェアカスではない(無言の腹パン)」を行い正気に戻すことが推奨されている。

 

「 明民(´・ω・`)ショボーン 『シャンフロ考察奇譚』より抜粋 」 

 

 

「……つまり、セントワイズはこの禍身の効果によって、王女を攻撃対象に選べなかった……その結果、仕方なく騎士団長を攻撃した……そういうこと?」

「そういうことだ……。この考察を見た時は半信半疑だったが……まさかコレほどとは……」

 

そう呟き嘆く異端審問の瞳は、双眼鏡越しに『バカナ……! オオ! バカナーー!』と言語野をやられて叫ぶセントワイズが、他の騎士団員にキルされる様子を捕らえていた。

 

その光景を見ながら、これは憐れむべきなのだろうか? と首を傾げる常寺と異端審問。

自分達が特殊効果の影響下にある、と察した他の襲撃者まで「バカナ―!」と叫ぶあたり、彼らにとっては地獄絵図なのだろうが、正直絵面が普通と言うか、ノリについていける気がしない。

 

……それにしても下が騒がしいな。

どうやら宿の下でも騒ぎが起きているらしい。

大方、また王女がらみだろう。

そんな事を考えつつ、常寺はそこらにリスポンしたセントワイズを迎えに行こうと手に持った双眼鏡をしまうのだった。

「……あれ? 異端審問、部屋のドア開けた? ……!?」

 

 

「いたわ! プレイヤーネームの色が赤! 襲撃犯の一味よ!」

「オンオンオン? ボーナスポイントか? ボーナスポイントだな!?」

「観念しろ! この建物は包囲されている! 逃げ場はないぞ! ……一度言ってみたかったのよね、これ」

「ここでポイント稼いで、アルブレヒト様にお褒めの言葉をいただくのよぉ!」

 

 

 

 

「……っ! キャアアアアアアアー!!!」

……常寺は死んだ。

騎士団長をフルボッコにした開拓者と同じパーティーだった。という理由で「副団長をタコ殴りにした襲撃者の一味」と判断され、攻撃されたのだ。

どうやらイケメンと名高い王国騎士であるアルブレヒトのファンが、殴られたユリアンとその補佐に直訴。もっとも討伐に貢献した者はアルブレヒトからお褒めいただくという条件で、山狩りを提案したらしい。

結果、熱意に負けたナンタラ剣とその補佐が見事ミッションを発令したことで、襲撃者とそのパーティーメンバーは一時的にレッドネーム。

窓際でのんびり観戦していた常寺達は見事タゲられたという顛末だった。

 

 

NPCを巡る荒れ狂う感情の嵐。

……常寺は犠牲になったのだ。……人の業……その犠牲の犠牲にな。

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

常寺達は「もう王都は嫌だ!」と、セントワイズが駄々をこねたこともあり、新大陸に行こうと計画を始めていた。

応募しなかったため次の調査船には乗れないが……密航という手がある以上、不可能ということはないはずだ。

もっとも、移動に船を使うとは限らない。

何故なら今の常寺には、船以上に便利な移動のアテがあったのだ。

 

キッカケは、常時が捜索掲示板に投稿した『例のあの人』ネタ。

投稿するや否や楽しそうに反応し、気分を良くしたとあるスレ住人が、スズメでメッセージを送ってきたのだ。

「……へえ、良いネタを投稿してくれたお礼? 『抽選落ちした君に、とっておきの先走りトラベルをオススメするよぉ? 格安でイかせてあげるから、一足先に大人になっちゃおうねぇ?』 だって? ……おもしろそう!」

 

こうして、常時の冒険は続いていく。

彼らの戦いは……これからなのだ……!

 




というわけでまさかのフェアカス編。

元々この二次創作を書こうと決めたキッカケが、ヤツは何故生きているのだ、という疑問だったため、原点に帰れたというか。
やりたかった事が出来た。とでもいうべきネタでした。

これにて常寺の冒険は一区切り。






次回から新大陸編です。


オマケ

冒頭のNPCセリフはおじぎ様の某解説ページより抜粋。
というか刻章の半裸、サンラクさんについて考察なんですが……。
存在証明のヤバさと威圧感はもちろん、王家御用達の大陸ナンバーワン商会と懇意→超お得意様パトロン、って裏社会的にヤバない?
どこから商会に情報漏れるか分からんし……報復文化のあるスラム街よりは、まだ治安のいい表社会の方が情報出そうだよね。

まあこの後のサンラクさんって、黒狼戦→仇討ち人→むさたんとなって、蠍に首ったけやし。ブリュバス関連は商会が全力で秘匿するやろうしなあ。
せいぜいラビッツ行くくらいの時点で、裏表関係なく街から情報は出ないな(断言)

やはり、最後の希望は勇者トットリか……。



オマケ2
お気に入り3桁記念
https://27985.mitemin.net/i360008/
https://27985.mitemin.net/i357027/

鳥頭を描きなれていないせいか画風が安定しない……(´・ω・`)
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