ふくめんにっき!   作:無完の書く芸迷人

9 / 12
祝! 原作小説500話突破!
いつも面白い話をありがとう! この二次はこれからも原作小説『シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜』を応援するぜ!





前回のあらすじ

やめて! フェアカスの特殊能力で、セントワイズの正気を焼き払われたら、パーティーで繋がってる常寺のライフまで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないで常寺ぃ! あんたが今ここで倒れたら、異端者と約束した王女のスクショはどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、いつものパターンに打ち勝てるんだから!

前回、「常寺死す」。 デュエルサレンダー!


第八話 新たなる力(装備)

新大陸。

旧大陸とは根本的にモンスターの挙動AIが違う、野生に溢れた密林の地。

恐竜型のモンスターが跋扈するジャングル地帯。

 

フェアカスショックから数日後。新大陸にファストトラベルした常寺は、新しい未開の地にワクワクしながら踏み込み……そして平均レベルの高い敵モンスターに四苦八苦しながら素材集めなどの探索を続けてた。

今日は異端審問が仕事で、セントワイズは私用でいない。そのため常寺は野良パ……いつもと違うメンバーでの、慣れない連携を求められる探索をしていた。

だが、新大陸に来れるプレイヤーは一定のレベル、一定のプレイヤースキルの持ち主が多い。

かなり早い段階で連携パターンを煮詰め、連戦を重ねた野良パの面々は順調に密林の中を歩き進んでいく。

 

とはいえ、連携が良くなっても苦戦は多い。

密林に潜むモンスターはどれも野性味あふれた獰猛な恐竜タイプだ。

慣れない地形、初めての敵。それらすべての要素がプレイヤーを苦しめ、しかし初見ならではの冒険の楽しさを体感させる。

常寺は、頭突きでその辺の木々をなぎ倒したヤベー奴、ドラクルス・ディノパキケフルを相手に、改めて冒険のロマンを感じていた。

だが常寺もロマンを感じただけで終わる気は無い。新大陸へ入るに当たり、新しく新装備を用意。いつもの面子がいない間に使い慣れておこうと、その装備をイベントリに入れていた。

相手にとって不足なし。新装備を使うなら今だろう。

 

こちらへと突っ込むドラクルス・ディノパキケフルを躱し、初速を稼いだ常時は、装備ウインドウを素早く操作し、その新装備を選択する。

その装備は旧大陸最後の街、フィフティシアの前に立ちはだかる最後のエリアボス……その素材を使い作られた武器。

その名も……!

「『簒奪者の手甲(ユザパナックル)!!』

選ばれたのは竜の鱗を加工した迷彩色の手甲。ファンタジー感を残しながらもミリタリー要素をあしらった。プレイヤーメイドの手甲だった。

 

 

 

 

「……で、最終的に砕かれたのは頭防具でした、ってオチか」

「オチ言わないで……。でもほら、ディノパキは倒したし、ドロップしたアイテムで今新しい防具作ってもらってるからさ」

「ああ、なるほど。それで急場しのぎにその装備を買ったのね」

新装備、ユザパナックルのお披露目をした翌日。

ドラクルス・ディノパキケフルとの戦いでフルフェイス装備を壊した常寺は、セントワイズと話しながら安物ヘルムごしに頭をかいていた。

なおこのヘルム。現在作っている本命と違い、前線拠点の露店で買った今だけの繋ぎ装備だが……使っている素材のせいか、どことなくアロマな香りがする……気がする。

装備の外見はどこからどう見ても西洋騎士の使うフルフェイス。

もっとも本来あるべき重厚感は素材と質感で台無しだ。

 

常寺の装備、その名も『リーフナイトヘルム1号』。

新大陸で採れる植物アイテムを元に作られた葉っぱの……VIT1製品だった。

 

「またえらい攻めたなぁ。……値段は?」

「5マーニー」

常寺の言葉に異端審問が笑う。

「最前線で聞くとは思えない値段だな……! ちなみに鎧はないの? 葉っぱの」

「あったけど……草食系モンスがいたら食われそうな気がしてね……」

「かしこい」

「褒めてくれてどーもー」

異端審問の言葉に肩をすくめながら、常寺は静かに新ヘルムへ思いをはせる。

既に前線拠点の鍛冶プレイヤーには昨日の激戦の末にドロップした『ドラクルス・ディノパキケフルの剛性頭蓋』に加え、いくつかの新大陸産素材を渡してある。

事前に約束した受け渡し時間も近いので、すぐに手に入るだろう。

鍛冶師のプレイヤーは旧大陸で助けてくれたゴンブトリオンの知り合いという話だし、信じてもいいはずだ。

「オマケもくれるとか言ってたし……楽しみだなあ」

兜の下で笑みを作った常寺は、期待に胸を膨らませて鍛冶師の元へ向かうのだった。

 

 

 

 

「……それで、出てきたのがその防具? ……クレーム入れたら?」

「まあそう言ってやるなよ、セントワイズ。世紀末の呪縛から逃れられないのさ」

「あー、分かる気がするよ異端審問。確かに葉っぱヘルムもある意味世紀末というか、文明一周した感あるよね」

そう言って感心するセントワイズと異端審問の2人を常時は苦々し気に睨み付けて呻く。

「くそう……2人とも好き勝手に言いやがる……! くそう、何もかも日頃の行いのせいだ……!!」

 

悔しがる常寺の頭には、どう見ても世紀末でショットガン持ってそうなヤツからインスパイアされたヘルムが装備されている。

後頭部には赤文字で27と書かれていたり、所々に普通のヘルムっぽさを残しているが……元ネタは明らかだった。

 

「……おまけにこのオマケ……!」

そう嘆く常寺が手に持っているのは頭部装着型のアクセサリーパーツ。

恐竜型モンスターの素材で作った、毒々しい色を放つモヒカンだ。

装備しやすいよう気を使ったのだろう。ヘルムの方にはこのモヒカンを付けるためのアタッチメントが用意されていた。

 

 

……ゴンブトリオンから何を聞いたんだ畜生!

どうやら旧大陸でなじみだった鍛冶師は、完全に常寺の事を「モヒカンヘルムを装備してくれた同好の士」として認識したらしい。

同じく世紀末ファンの鍛冶師から凄く嬉しそうな顔でモヒカンを送られた常寺は、引きつった笑顔で礼を言う事しかできなかった。

 

「……アクセの値段は?」

「……タダ」

「なんだ、なら良かったじゃんか」

「いやまあ、そうなんだけどさあ」

異端審問が元気出せよと笑う。だが前線拠点にいるプレイヤーは基本的に見た目のカッコイイ、プレイヤーメイドのワンオフ装備ばかりだ。そんな中、一人だけ世紀末スタイル。

ゲーム開始当初はオシャレ路線で行くはずだったのに、なぜこうなったのかと首をかしげざるを得ない。

 

「ちなみに効果は?」

「回数制限付きのヘイト稼ぎアイテムみたい。MP消費で5秒間、5メートル圏内のモンスターとNPCのヘイトをモヒカンに集めるって」

「……割と強いじゃん。ヘイトコントロールできる時点でタンク向きだし、ちゃんと常寺のために作られてる」

「いやまあ、そうなんだけどさあ」

セントワイズも元気出せよと笑うが、横を通っていく昨日野良パを組んだ面々に「お、新ヘルムか! 順当にランクアップしてるな!」とか「ショットガンの登場が待ちどおしいな! 発掘品は出てるし、ワンチャンあるぜ!」 などと励まされるのはどうなのだろう。

 

割とヤケになるというか……良く分からなくなってきたというか……アレだ。

「これはもう種もみを襲えという天の啓示では……?」

「はいはい、そこはモンスターを襲おうねー。異端審問、マッピングアイテム持ったー?」

「もちろん。今日は行けるとこまで探索したいね」

そう言うと、2人は常寺を連れて密林へと入っていく。

メンバーは道化と異端審問と世紀末……。

全員の外見がイロモノという、ある意味統一感のあるパーティーだった。

 

 

「……それで、出てきたのがアレかよ!」

 

数時間後、常寺達は密林を全力で走っていた。

遠くからは全身の羽根が鱗になっている、恐竜の様な梟、ドラクルス・ディノウルの叫ぶ……断末魔の悲鳴、そして悲鳴を上げさせた絶対強者の上げる勝者の吠え声だ。

声の主は「傷だらけ(スカー)」と呼ばれるこの密林のヤベー奴。

おそらくはレイドを組まなければ倒せないであろう怪物だ。

 

常寺達はそのヤベー奴のいる現場から離れ、前線拠点を目指していた。

「とにかく距離を取ろう。先行しながら出て来たモンスに呪術をかける。異端審問は行動阻害を重ねて! 常寺はカバーよろしく」

「オッケ、魔法待機ね」

「カバー了解!」

セントワイズの言葉に頷いた2人は走りながらモンスターの気配に神経をとがらせる。

傷だらけが追って来る様子は無い。きわどい所を潜り抜けたと常寺は密かに息を吐いた。

なにせいい感じに攻略できていた所へ突然現れた恐竜梟との戦闘、そして傷だらけの乱入である。

常寺達だけでなく恐竜梟まで『え、マジ?』と戸惑う事態。エンカ当初はデスぺナを避けられないと諦めかけたほどだ。

 

 

ついさっきを振り返り、常寺は結論を口にする。

「……モヒカンが無ければ即死だった」

そう呟いた常寺の頭に、先ほど手に入れたモヒカンは無い。

スカーが乱入した直後、驚き固まった恐竜梟の隙を見て、鱗でできた翼の隙間にねじ込んだのだ。

どうやら装備している最中に効果を発動すれば、アタッチメントから取り外してもヘイト集中効果は持続するらしい。

咄嗟の判断で打った博打だったが常寺は見事にスカーのヘイトを押し付けることに成功。おかげでなんとか生き残れた。という流れである。

 

「おい、上から二頭を持つプテラノドンみたいなのがコッチ来てるぞ!?」

「この林を抜ければ前線拠点が見えてくる。無視して前線拠点に入っちゃおう、あそこまで行けば一般モンスは襲ってこない! 常時、最悪壁になって時間を稼げる」

移動中、上空の動きを察知した異端審問の報告に黙したセントワイズは、一拍置いてモンスターの無視を選択した。

もう一戦くらいはできるし、倒して得られる経験値とドロップは惜しい。だがさっきの乱入で浮足立った感覚が残ってる今、不用意に戦うべきではない。というセントワイズの判断だ。

 

その戦闘回避の指示を聞いた常寺は、ようやく一息つけるかと安堵した。

……あと少しで、待ちに待った安全地帯だ……!

スカー相手に生き残れたこともあり、常寺は晴れやかな気分で拠点が見える位置へとたどり着く。

 

 

 

……そして立ち止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「前線拠点の存在が……消えた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャアアアアアアアー!!!」

……常寺は死んだ。

安全地帯だと思っていた前線拠点が廃村状態になっていたのだ。

ノワルリンドが暴れている事を知らず、密林で過ごしたニアミスの悲劇。

距離があったからこそ、壊滅した全体像が見えたのも悪かった。

その事に衝撃を受け、足が止まったのだ。

 

獲物の動きが止まった隙を、上空にいたドラクルス・ディノコアトルが狙い撃ち。

瞬く間に空へと連れ去られた常寺は、拘束を解こうと暴れたが、自由になった時、その身体はかなりの上空にあったのだ。

最終的に地上から聞こえる「異端審問! 空からヒャッハーが!」「バルス!」というやり取りをBGMに常寺は死んだのだった。

 

 

なお常寺達は、大棟梁の圧力に負け、この日から数日間、新拠点の素材集めに奔走することとなる。

スカー相手に時間稼ぎがワンチャン。という事で、今日も明日も、常寺はモヒカンを頭に密林へ繰り出すのだ。

 

こうしてスカルアヅチを囲むプレイヤーの輪は、思わぬところで広がりをみせるのだった。

 

 

 

 




後書き

以前、感想欄を読み返した時に「かげぶんしん」を覚えたいというネタを見ましたが……ポケ〇ンのかげぶんしんはNARUT〇と違い、ドラゴンボー〇の残像拳的なサムシング。
……覚えても手数は増えないので、作業効率は上がらないのでは? とボブはいぶかしんだ。


オマケ
前回描写しきれなかったフェアカスSAN値チェックについて。

まず前提条件として「聖女ちゃんという前例」と「前もって流れた王女ちゃん美人情報」をクリアし、期待値を上げます。
その上で「騎士団NPCとプレイヤーによる警戒網の突破」という関門を設け、手間と労力をかけて突破したPOW(精神力)の戦士たちを集めます。
最後に「ゆっくりとした馬車の登場シーン」で「苦労してここまで来たぞ! いやあ、楽しみだなあ!」と、皆のメンタルを盛り上げましょう。

……ヒャア! もう我慢できねえ! フェアカス投入だ!
つまり「上げてから、下げる!」。この流れで皆のメンタルをケツから蹴り上げるのさ!
さあ! ここからはSAN値チェックで特に逝かれたメンバーを紹介するぜ!

1、セントワイズ
「常寺と異端審問、ちょっと盛り上がりすぎじゃない? ……けど王族で美人かー。メタ的に見れば間違いなくこのゲームの大物だよねー。見ておいて損はないかあ! お、馬車が来た……さあ、来い! 大物キャラよ!」
     ↓
「お前は! このゲームの! 大物じゃ! ねーだろーがよおぉぉおお!!」→SANチェック失敗


2、「思い……出した!」の人。
「ふふふ、ポジション取り完璧! なにせ事前にじっくり下見をしたからね! 気合と根性、そして半日という時間をかけてベストアングルを決めたんだ! さあ来い王女ちゃん! スクショ待機は万全さ!」
     ↓
「……はぁぁぁああん! 僕の気合と根性と半日ぃぃぃぃいい!」→SANチェック失敗


3、「パッフェ!? 」の人
「聖女ちゃんカワイイ! きっと王女ちゃんもカワイイ! 親衛隊はジョゼットが怖いから、ボクは王女ちゃん派閥になるぞ! 『王女ちゃん頑張れ!』の応援団幕も作ったんだ! 僕がファンクラブの会長さ!」
     ↓
「バカな……ヤツの派閥だと……? ファンクラブ……? 会長? 誰が……? ……俺が!?」 →SANチェック失敗


4、「イヤダー! シニタクナーイ!」の人
「ここで王族に媚を売れば……ユニークの可能性……大! そのために用意した……! 王女への……献上品! 費やした金……所持金の9割! だがコレは必要経費! 勝つために必要な……代償!!」
     ↓
「バカな! オレはヤツの高感度を上げにここへ!? あの時と同じように!? ソンナ……まるで成長していない! あの時と何も!! 俺のミームは! ミームは!? うぅ、うわあああぁぁぁああああ!!  …………代償が高すぎるッピ!」→SANチェック失敗



……以上だ(震え声)!
とりあえず次回以降の新大陸編は「他ゲー」やって「竜災」やって「アメリア戦のチャット回」に入る予定です。
……新大陸ほとんど関係ないぞ~コレ。

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