一狩り行くのも一苦労   作:焦げパン

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早いのは今だけでやんす


やっと一狩り

あれから三ヶ月が過ぎた。

免許獲得試験当日

前日まで練習していたため寝坊しそうになったが、無事到着。

訓練所の教官の声で試験が始まった。…といっても自分含め五人しかいなかったが。

 

 

まず型の試験

双剣はいかに連続的に斬りつけるかが重要で、それを実現できる型で剣を振れるかを見るのがこの試験。

俺はモミジにこればかりは自分で感覚つかめと言われて不安だったが、一週間程度でざっくりとは身に付けることができた。

それから毎日一回はやっていたので、対して苦戦しなかった。

まあ一次試験で苦戦してたら話にならないが。

 

「リュウ、失格」

 

…いたよ話にならないの。

 

 

つぎに木切りの試験。

立てられた木の棒を切るだけで簡単に見えるが、これが意外と難しい。なにせ木の棒が倒れたらダメなんだ。木は固定されてないから、ちゃんと切らないと棒が倒れる。これを習得するのにまる一ヶ月かかったね。あ、もちろん両手でできるようになったよ。

 

「全員合格」

 

…嘘だろ。なんでこっちで誰も落ちないんだ。

あんな簡単そうに切りやがって。俺なんて終始ヒヤヒヤしてたのに。

 

 

三つ目。鬼人化の試験。

鬼人化してから一回型に沿った素振りをすればいい。

これ、死ぬほどきつかった。これ習得するのに残りの2ヶ月使った。

最初のうちなんて、初めて剣が赤く光ってやった!て思った瞬間、

急に倒れてモミジにえらく心配かけた。剣にエネルギーごっそり持ってかれる感じだった。1ヶ月経ってようやく倒れなくなったが、それでも持って数秒。それが終わったらその日のうちはもう鬼人化できないという酷い有様だった。

 

「次、カヅキ」

 

順番回ってきちゃったよ。

やるしかねぇ。

 

「ハッ!」

 

よし、鬼人化。こっから繋げる!…

 

 

 

 

 

 

「うへー、終わったー」

 

「お疲れ!」

 

とりあえず三つはクリア。実戦試験は明日だそうだ。

にしても他の奴ら、鬼人化しても息切れすらしてなかったんだけど。

お前ら人間じゃねえ!

 

「おい、カヅキ。話がある」

 

突然教官からお呼びがかかった。

 

「試験は合格だが、鬼人化でこの体力消費…明日の試験は正直厳しいと思うんだが…」

 

それを言わないでくれ。俺だって、この5ヶ月を無駄にしたくない。

 

「待ってください教官」

 

「ん?モミジか。何か意見があるのか?」

 

モミジがえらく真剣な目をしている。何かあったのか?

 

「最近では狩猟スタイルの中に新たに、レンキン、ブレイブというものができたと聞いています。」

 

狩猟スタイル

ゲームの中ではそれぞれ、ギルド、ストライカー、エリアル、ブシドー、ブレイブ、レンキンの6つがあり、スタイルごとに同じ武器でも動きが違ってくる。その中でもブレイブスタイルは、攻め続けることに重点を置いたスタイルだ。

 

「ブレイブスタイルでは、鬼人化を使わない戦い方もあるというのもご存知ですよね」

 

モミジが言った通り、ブレイブ双剣の最大の特徴は鬼人化を使わないことにある。その代わりに攻撃を重ね、ブレイブゲージを溜めることで鬼人化に近い鬼人強化状態になることができ、スタミナを使わずとも戦うことができた。

 

「ムゥ…」

 

教官唸る。

 

「どうかカヅキに…試験を受けさせてやってください」

 

頭まで下げたモミジに、教官は何かを感じたようで

 

「モミジがそこまでいうとは…。わかった。試験は受けられるようにしておこう。頑張れよ、カヅキ」

 

そう言って教官は訓練所に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえモミジ」

 

「何?」

 

俺は分からなかった。

なぜモミジが自分のためにここまでしてくれるのか。

 

「…私ね、カヅキが毎日夜遅くまで練習してるの見てたんだ」

 

バレてら

 

「君って今までのこと思い出せないんだよね。それでも努力を続けることってとても難しいと思う」

 

ん、自分は強くなってるって実感できて嬉しかっただけなんだが。

 

「…そういうこと言わなくていいから」

 

あ、はい

 

「応援したくなったの。それだけ!」

 

…なんか嬉しいな、こうやって応援してもらうの。

 

「だから明日の試験、頑張って!」

 

…shining Smile

でもこう言われると期待に応えたくなるね。

 

「うん。すぐ合格して、モミジと狩りに行きたいしね」

 

「…!うん!」

 

頑張ってくると言って俺は明日への準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…いやアイテム支給するっていっとけよ。

昨日の俺の時間なんだったんだよ。

それはともかく、アイテム、武器、防具共々支給だった。

俺はユクモノ一式にユクモノ双剣という格好だ。

試験内容は、渓流でアオアシラ一頭の討伐。

ざっくりいうと青い熊だが、前足のに甲殻があり、引っ掻きを食らったら頭持ってかれると言われた。

ゲームじゃなんてことなかったのに。

 

「それじゃ、渓流に行くぞー」

 

教官がガーグァ荷車を出してくれた。何気に乗るの初めてだな。

 

「よろしくガーグァ」

 

「グワァ」

 

よしよし。

 

 

 

 

なんだかんだで渓流到着。ベースキャンプで準備をする。

景色は、もう圧巻の一言だった。奥にそびえる山々、キャンプの下に見える雲。ゲームと同じものだったが、迫力が雲泥の差だ。

てか雲が下にあるって、ベースキャンプだいぶ高いとこにあるんだね。

 

「砥石持ったか?」

 

教官に言われて確認する。もちろん研ぎ方も習得済みだ。

決して描写がなかったからって後付けしたわけではない。決して。

 

「危なくなったら助けに入るが、基本は一人だ。頑張れよ」

 

「はい!」

 

教官も厳しいがいい人だ。

…指導受けたことないが。

というわけでクエスト開始。

アオアシラの初期位置はエリア5だ。

ゲームならエリア間の移動にロードを挟んでいたが、こっちでは徒歩で移動しなきゃいかんかった。

俺は廃屋の野ざらしになった廃屋のあるエリア4を通ってエリア5へ行った。

 

 

 

 

 

 

 

いたよアオアシラ。はちみつ食べるのに夢中みたいだ。隙だらけだ。

俺は全力で尻に斬りかかった。

 

ザシュッ

 

確かに手ごたえはあった。

だがアオアシラは何事もなかったかのように、ゆっくりこちらを向いてきた。

嘘だろ…怯みもしないなんて。

アオアシラが吠えた。

めちゃくちゃ怖い。威圧だけで殺されそうだ。

一瞬体が動かなくなったが、なんとか意識を戻す。

休んでる暇なんてない。

アオアシラが前足で引っ掻いてきた。

後ろに下がって避けるが、バランスを崩す。その隙を突かれて、前足で横に吹っ飛ばされた。

 

…無茶苦茶いてえ!!

 

俺はポーチから回復薬を出して飲み干した。

急に痛みが引いていく

ほんとなにでできてるんだろうこれ。

 

とはいえ何度も食らってたら堪らん。

またアオアシラが引っ掻きを繰り出す。

今度は前転でギリギリ回避。

 

…まてよ?いま当たる距離じゃなかったか?

 

もう一度引っかき攻撃に向かって前転で回避する。

当たらない。

そうか。前転すると回避行動をとったことになって、無敵時間が発生するのか。

仕組みはわからんが。

だけどこんなこと繰り返してたらすぐダメになる。

ただでさえもう息切れしてるのに。

アオアシラが飛びかかってきた。

走って横に避けて斬りかかる。効いた様子はない。

「焦るな、落ち着け俺」

自身に言いかける。

すると見えないものが見えてくる。

 

「あれ?」

 

アオアシラの動き。

引っ掻き、飛びかかり、どれもゲームで見てきた動きだ。

アオアシラが体をひねっている。次に来るのは…

 

「引っ掻き!」

 

かがんで前転せずに避ける。その隙に練習した型で斬りつける。

まだ効いてない。

アオアシラが前足を後ろに持ってくる。次は…

 

「両手引っ掻き!」

 

抱きつくように引っ掻きを繰り出すアオアシラの前足に向かって前転回避。

後ろに回って車輪斬りを喰らわせる。まだ怯まない。

やはり鬼人化できないと厳しいか。

でも使うと疲労がとんでもなくたまる代償付き。

どうするか悩んでいたが、ここでモミジの言葉を思い出した。

 

「ブレイブスタイル…」

 

鬼人化の使えない自分にとってベストな選択だ。

正直練習はしていない。だが攻撃をつなげるための型や、刃筋を乱さないようにする訓練など、やれることはやった。

ぶっつけ本番なんてどんとこいだ。

そしてブレイブスタイルに必要なのは…

 

「攻撃し続けること、だよな?」

 

 

 

 

 

 

 

攻撃を重ねるごとに、俺の動きも良くなっていった。

 

「グゥ…」

 

ここでアオアシラが初めて怯んだ。

俺はこの隙を逃さない。

右 左 右

体に叩き込んだ型で素早く三回斬りつける。

すぐに引っ掻きで反撃してきたが、かがんで避けつつ斬りつける。

だんだんと周りの音が消えていく。

いますべきことは一つ。

こいつを倒すことだ。

 

 

斬りつける速さが上がっていく。

アオアシラが徐々に押されていく。

反撃を交わして腹を斬る。

アオアシラが怯む。

少しずつだが剣が青いオーラを纏い始めた。

だが気にしていては攻撃が止まる。

そう思って斬り続けた。

そしてついにアオアシラが転倒した。

 

「ここ!」

 

剣は完全に青いオーラを纏っている。鬼人強化状態になったのだ。

俺はここぞとばかりに高速で12連撃を喰らわせる。

これには流石のアオアシラでも効いたようだ。

苦し紛れの反撃を隙の少ない鬼人回避で交わしつつ斬りつける。

もうこっちのペースだ。

 

そこでアオアシラが足を引きずり逃げ始めた。

 

逃すもんかとブレイブ双剣特有の抜刀ダッシュで前に回り込む。

 

「これで…終わり!」

 

俺は最後まで残しておいたスタミナを使って、鬼人化をする。

持つのは数秒。

だがここで気付く。アオアシラの怯えるような目に。

一瞬力が抜ける。だが…

俺はアオアシラの顔に向かって、鬼人化専用の型 “乱舞”を叩き込んだ。

 

 

 

ズンッ

 

 

 

巨体が崩れる

 

 

 

その目にはもう何も宿っていない

 

 

 

俺は命を奪ったんだ。

らしくないが、そんなことを思った。

 

「あもう限界…」

 

だが疲労が勝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

 

気がつくとベースキャンプのベットで寝ていた。

力尽きたのか?いやいやアオアシラ倒したし、そんなはずは…

 

「目、さめた?」

 

 

この声…モミジ?なんでここにいんの?

元気よく俺のこと送り出してたじゃん。

 

「いや実はこっそりついてたの」

 

なんでも荷車の中に隠れてたらしい。

そんなスペースどこにあった?

あ、向こうで教官が頭に手当て溜め息ついてる。

お疲れさまです。

 

「それはそうと、なんだあの動きは。まるで相手の動きがわかっているような」

 

やべなんて言おう

 

「いーじゃないですかそんなこと」

 

ナイスモミジさん。

 

「無事達成したし、打ち上げいこ!」

 

打ち上げ!?やったぜ。

 

あ、また教官が溜め息ついとる。

幸せ逃げるぞー。

 

「それじゃ帰るぞお前ら」

 

でもなんだかんだ村まで送ってくれる教官は、めちゃいい人だと思う。

クッタクタだったので、荷車では爆睡だったが。

 

 

 

 

 

「帰ってきたぜユクモ村!」

 

こうしてみると夜のユクモ村も悪くない。

あかりがいい味出してる。

 

「今日は私のオススメの店に連れてってあげる!」

 

お、まじでっか。

宿で着替えた後、連れていってもらったのは居酒屋だった。

 

飯なう。

 

「うんめー!」

 

「でしょでしょ」

 

俺は今ガーグァのモモ肉炒めを食べている。

今まで食った鶏肉の中でもトップに入る。

 

「じゃ、聞かせてもらうからね?」

 

「何を?」

 

「何をって、君の狩りについてだよ」

 

…さっきどーでもいいとかいってたじゃん。

 

「あれは教官がいたから!」

 

「…」

 

正直言うか悩んだ。

怖かったんだ。

故に俺のとった選択は…

 

「すいませーん、お冷ください」

 

「あ、逃げた!」

 

 

 

 

 

 

その後俺たちは温泉に来ていた。

ここはゲーム通り混浴だった。

いや決して変なことは考えない。

タオル巻くし。

 

それにしてもいい湯だなぁ

体にしみるわ〜

ババンババンバンバン♩アービバノンノン

 

「何言ってるの?カヅキ」

 

タオル巻いただけのモミジが来た。

ほほう、こいつは上玉だ…じゃなくて。

 

「隣いい?」

 

許可なくても隣来るような人が何を言う。

あー近い、近いよ。

 

「?どうしたの?」

 

絶対からかってるだろ。

こっちは多分顔赤いのに。

 

「ねね、そんなことより、初めての狩りの感想は?」

 

そんなことって…

だがモミジは、顔は笑っているが目は真剣そのものだ。

俺は頭を切り替えた。

 

 

狩りね…

 

俺はアオアシラが倒れた瞬間を思い出した。

生気に満ち溢れていた目にはなにも感じられず、

倒れた体は何かが抜け落ちたように空っぽだった。

考えるほど怖くなる。

ゲームではなんともなかった。

だがこの世界は違う。

全部生きてるんだ。

 

「命の重さを考えさせられたよ」

 

そして最後に遠慮なく彼の命を奪った…

 

「自分がこあい」

 

 

…噛んだ

 

 




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