え、ちょ。可奈美ちゃん13歳って、マ?   作:なみのじ

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中編ものになりそうです。


6.結芽ちゃん12歳って、マ?(その1)

 新築後のヒノキの香り漂う廊下を進む。

 敷き詰めた木のタイルを俺の踵が打ち鳴らし、心地いい音を響かせる。

 

 歩を進め、たどり着いた先。俺は再び局長室のドアの前に立っていた。

 

 なんだかんだ言って、ここに来るのも慣れたものだ。

 刀剣類管理局の局長室ともなれば、一般企業でいえば社長室のようなものである。

 

 そのため最初こそ偉い緊張して体を強張らせつつドアをくぐったものだが、今は違う。

 実はあれから何故か知らんが、度々局長室に呼び出されるようになったので、ここに来るのもすっかり普通になってしまった。

 

 全く、慣れとは偉大である。

 しかしだからといって礼を失念していいわけではないので、俺は丁寧に3回ノックしてから中に入った。

 

「よく来たな」

 

 中にいたのは、予想通り本日も折神紫さまだった。

 というかここの所、この部屋で紫さましか見てない気がする。

 

 おかしいな。

 

 本来、朱音さまの部屋のはずなんだが……またお見合いかな。

 連敗記録更新中だったりすると反応に困るので、今回もスルーしよう。

 

「なんだ定家。お前も紫さまに呼ばれたのか」

 

 予想通りではなかったのは、そこに先客ーー姫和の姿もあったことだ。

 その言から察するに、どうやら姫和も紫さまに招集を掛けられたらしい。

 

「ああ、姫和。先を越されてしまったようだな。さすが、速さに定評のある刀使」

「この場合の早さは、あまり関係ない気がするが……」

 

 首を傾げつつも、姫和は若干嬉しそうだった。

 

 それもそのはず。こんな場所で会えるなんて、思ってもみない邂逅だ。

 良好な間柄の恋人同士であれば、不意の出会いが嬉しくないわけがない。

 

 もちろん俺にとっても喜ばしいサプライズだったので、調子に乗ってウインクなんかしてみた。

 

「ば、バカ……」

 

 消え入りそうな声と共に、俯いて顔を赤くする姫和。

 うむ、可愛い。

 

「ご、ごほん」

 

 ちょうど視線の先にいた紫さまが咳払いをした。

 なぜか紫さまも顔が赤いような気もするが……あ、ひょっとしてお怒りですか?

 

 紫さまには応援されている立場なのでつい気にせずやってしまったが、確かに業務時間中にウインクというのは、いかにもまずかったかもしれない。

 

「失礼いたしました。つい出会えたのが嬉しくて」

「うむ。そう言ってもらえるのは何よりだが、時と場合を考えるように」

 

 よかった。どうやらお怒りではないようである。それどころかちょっと満足げですらある。

 

 ミスしたらすぐに謝罪。この姿勢が評価されたのだろう。ポイント+1だな。

 ふふ、徳川定家。我ながら、相変わらずピンチをチャンスに変える男である。

 

「Hey! 失礼しますデース!!」

「入るぞ~」

 

 どうやら呼び出されたのは、俺と姫和だけではなかったようである。

 

 入口が再び開き、新たなる来客が姿を現した。

 長い金髪をたなびかせた古波蔵エレンと……げっ、現代を生きる猛き怪獣、益子薫ちゃんだった。

 

「徳川定家……お前もいたのか」

 

 俺が薫ちゃんの顔を見て引きつったような笑みを浮かべたのに気がついたのか、薫ちゃんは怪獣にふさわしい獰猛なジト目で睨みつけてきた。

 視線で殺せるなら間違いなく確殺必至の死ね死ねビームを放っている。恐ろしい子。

 

「Oh。薫ったら、ていとくをそんなに見つめちゃって……相変わらずオネツデスネー?」

「はぁ? おいエレン、馬鹿いうなっ! こいつのせいでオレが今どんな目にあってるか知ってるか!?

 行く先々で振られた可哀想な子扱いなんだぞ? そのせいでオレは……オレはぁ……っ!」

 

 薫ちゃんが涙目で震えている。生まれたての子鹿のように……いや猛獣がそんな優しい存在なわけないわ。

 彼女のことだ。この震えは、どちらかというと炸裂寸前の爆弾かもしれない。

 

 でも正直すまんかった。

 我ながらさすがにアレはないわ。

 

 とはいえ、まさかここで真実を暴露するわけにもいかない。

 無力な俺にできるのは、貝のように口を噤むことだけ……

 

 いや、せめて一言は謝っておくべきか。

 

「ゴメンネ」

 

「っ!?!? コロス!!!!!!!」

「Wao!? ちょ、ちょっと薫!? 落ち着いてクーダサーイ!!!!」

 

 こ、こえぇ……! 

 謝ったのに、何がいけなかったんだ……謝ったのに!

 激高するあまりねねきり丸に手をかける薫を、エレンが必死に止めてくれた。

 

「おい益子薫。その辺にしておけ。御刀とはそう軽々に振り回すものではない」

 

 局長室での抜刀未遂に見かねたのか、紫さまも助け舟を出してくれる。

 その言葉で紫さまの存在に思い至ったのか、一瞬、はっとした表情を浮かべると、薫ちゃんはちょうどいいとばかりに紫さまに訴え出した。

 

「そうだ。おい、知っているか? 折神紫! こいつは歳の離れた女の子に手を出す危険な男なんだ。変態野郎なんだ! 

 いいのか? こんな奴が野放しになっていて! 刀使たちが危険だと思わないのか!?」

 

 まさかの直訴だ。直談判である。

 

 この場には当事者勢揃い。

 俺はもちろん姫和だっているのに、頭に血が上ってしまったのか、なりふり構わず詰め寄っている。

 

 確かにここで紫さまが俺たちの関係にNOを突きつければ、それだけで話は終了である。

 刀剣類管理局、影の実力者ーー紫さまにはそれだけの権威と影響力があるからね。

 

 だが残念だったな。紫さまはーー俺たちの味方だ!!

 

「……もちろん知っている。だが私としては特に問題はないと考えている」

「なっ、バカな!?」

 

 信じられない驚愕を顔に貼り付けて、薫ちゃんはしりぞき慄いた。

 見たことあるぞ。これは信じていた者に裏切られた表情だ。

 

 気持ちはわかる。俺も紫さまの支持には、最初耳を疑ったからな。

 まさか「中学生と付き合ってるんすよ」って告白して、「いいじゃん。ガンガンやれ」って返してくれる上司がいるとは夢にも思うまい。

 

 でもいるんだよ、そこに。

 

 しかも紫さまはあの時の約束通り、ビシッと援護射撃までかかさない。

 

「それより私は逆にお前に聞きたいのだが、なぜ年の差恋愛を否定する?」

「それは……」

 

 少しだけ理性が戻ったのか、薫ちゃんは姫和の存在を思い出し、ちらりと見やって言葉を濁した。

 本人を前にして、舌鋒鋭く悪態を吐くのがためらわれたようだ。若干、逡巡した後ーー

 

「……不健全だからだ」

 

 結局、歯切れの悪い回答しか返せなかった。

 

「ふむ。あまり理由になっていないように思えるな。聞けばお前は定家に告白したが受け入れられなかったらしいな。

 それが認められなくて頑なに否定しているのではないか?」

「なっ! だからそれは、ちがっ!?」

 

 慌てて全力否定に走る。

 

 薫ちゃんにとってみれば、事実無根のデタラメにもほどがあることだからだ。

 だが悲しいかなーー世界でもそれを知るのは、根のないところに大樹を植えた俺だけである。

 

 先ほど言い淀んだこともあって、周りからはまるで図星を衝かれて焦っているように見えてしまう。

 エレンなんて、「Wao! 薫ってば大胆デースネ。やっぱりつんでれでしタカ」なんて完全に信じてしまった。

 姫和も寝耳に水といった様子で目を丸くしている。

 

 絶望のオーラをまとう薫ちゃんが、振り返ってコロスビームを放つ。

 俺は必死で目を逸らした。

 

 そんな各々の心境をよそに、紫さまは話を続ける。

 

「まぁ、聞け。私はなにも、考えなしに無問題としたわけではない。もちろん理由はある」

「理由がある……だと」

 

 どんな理由があれば未成年に手を出す社会人が問題ないとされるのか。

 疑問すぎて仕方ないといった様子の薫ちゃんに、紫さまは説き伏せるかのように説明を始めた。

 

「お前たちも知っての通り、特別刀剣類管理局の職員はかつて刀使だった者が多数だ。

 それは曲がりなりにも管理局が戦闘装置である以上、実戦経験を積んだ者の採用を優先するのは当然のことだからだ」

 

 ふむ。当然だね。

 

 例外的に逃亡の手助けをしてくれた棒メガネのあの人みたいに、一般企業に就職する人もいるが大抵は卒業後、管理局かかわりの仕事に就くのが多数だ。

 

「しかし多感な時期に戦闘を強いられた彼女たちは、満足に恋愛もできず大人になってしまった者も多い。

 恋愛経験や女子力が不足している中、女ばかりの職場で働きづめになる。結果的に、言い方は悪いが行き遅れてしまった者も多いのだ」

 

 まさに汚部屋で暮らすあの人の姿が目に浮かぶ。

 ああ……確かにあの人は恋愛経験少なそう。

 

「私は常々、この問題をどうにかしようと考えていた。その答えの一つが、年の差恋愛を推奨するということなのだ」

 

 ……なるほど。

 この問題の解決方法ーーそれはずばり、多感な少女時代にもっと恋をしろ、愛を育めということなのだろう。

 

 確かに棒メガネのあの人も、学生時代にもっと恋愛してれば「仕事が恋人28歳」みたいにならなかったかもしれない。

 

 もちろん健全な恋愛関係を考えれば、その役割は同年代の男子がふさわしいが、悲しいかな。伍箇伝はほとんど女子校なので、同年代の男子と触れ合うのは難しい。

 まさか荒魂討伐に無力な男子学生を引っ張り出すわけにもいくまい。

 

 すると刀使の一番身近にいる男は、刀剣類管理局や警察、自衛官といったサポート役の男性ということになり、自然、年上が多くなるというわけだ。

 紫さまはそこで生まれる恋愛関係を否定しないといっているのだ。

 

 うーむ。

 

 将来の婚姻率を上げるための施策とはいえ、なんかちょっと危うい気もするが、現在進行形で姫和と付き合っている俺は、とやかく言える立場でもない。

 それに紫さまのことだ。そこはうまくやるのだろう。

 

「もちろん、恋愛というのは個人の自由であるから無理強いするわけではない。

 だが知名度のある定家が年齢を気にせず恋愛するというのは、一つのモデルケースとして有用だと考える。

 管理局員にもそれに続く者が現れるようになるだろう」

 

「しょ、正気か……っ、折神紫!!?? こんな奴に続く奴がいてたまるか!

 刀剣類管理局は刀使をどうするつもりなんだ!?」

 

 どうするんでしょうねぇ……

 見方を変えると、ずばり管理局による未成年者不純異性交遊斡旋である。

 

 薫ちゃんにしてみれば、刀剣類管理局が荒魂に乗っ取られていた以上の衝撃を受けているのかもしれない。

 思わずそんな発言が出てしまうのも、やむを得まい。

 

 でも正気か……って上司の正気を疑う発言を、面と向かって言うのはどうなの?

 そう思ったのは俺だけではないようで、見かねたエレンも制止に入った。

 

「薫、紫さまに向かって失礼デスヨ」

「そ、そうだ。エレン! お前なら分かってくれるよな?」

 

 すがりつくようにしてエレンに助けを求める薫ちゃんだったが、あっさりと裏切られてしまう。

 

「Umm。いまいちワタシには話の全容がわからないデスが、薫の問いだけに答えるならワタシは年の差恋愛は問題ない立場デース。

 大事なのはお互いの心や立場、フィーリングなんじゃないデスカネ……Ah、もちろん人生経験モネ」

 

 Wao!!

 

 これには俺もビックリである。まさかエレンからも賛成意見が飛び出てくるとは。

 体が欧米レベルなだけに、考え方もリベラルなのか。いや、未成年とのなんたらについては欧米の方が厳しいはずだが……まぁいい。

 

 ……しかし人生経験か。精神年齢のことだろうな。

 人生経験とかいいだしたら、前世と今世を合わせた数奇で混沌とした俺の人生に合う奴など、誰一人いなくなってしまうからね。あはは。

 

「う、ウソだろ……エレン。まさかお前まで……」

 

 ビックリ程度ではすまなかったのが薫ちゃんだ。

 一番信頼しているエレンからの、梯子を外すかのようなこの発言である。

 

 前後不覚ーー動揺のあまり手にした祢々切丸を、力なくこぼした。

 

 キョロキョロと挙動不審に仲間を求めて周囲を必死に見回すが、あと残るのは俺と姫和くらいだ。

 

 俺は論外として、姫和が薫ちゃんにつくことはないーーというか姫和が薫ちゃんについたら、そもそもこんな話は成立しないので、味方なし。

 完全に薫ちゃんは四面楚歌である。

 

「おかしい……お前たちは、おかしいぞ」

 

 客観的に見れば正しいのはこれ以上ないほど薫ちゃんなのに、なぜかこの場では孤立無援のアウェーになっている。

 

 俺、姫和、エレン、紫さま。四方を囲まれた薫ちゃんは完全に詰んでいる。

オセロであったなら、薫ちゃんもひっくり返って支持派に回ってもおかしくない状態だ。

 

「うーん」

 

 そんなことを思っていたら、本当にひっくり返って気を失ってしまった!

 紫さまとエレンによる裏切りが相当衝撃的だったらしい。

 

「ふむ。失恋のショックが大きかったか。しかしこれも戦。恋の戦いに年の差は関係ないのだ。悪く思うな益子薫」

「おかしいデスネ。年の差の関係には薫も含まれてるのに、なんでショックを受けたのでショウカ」

「何が何だかわからない。今のは私と定家の関係を言っていたのか? まるで全員が別の壁に向かって話していたみたいだ」

 

 医療班に担架で運ばれる薫ちゃんを、三者三様につぶやきつつ見送った。

 

 俺に言えることは何もないよ。

 すまんな、薫ちゃん。安らかに眠れ。

 

「さて、本題に入ろう。益子薫はいなくなってしまったが問題はあるまい。代わりにエレン、お前が聞いておけ」

「わかりましたデース」

 

 薫ちゃんを抜きしても話は始まるらしい。

 気を取り直して紫さまが切り出した。

 

「本日、お前たちを招集した理由だが、目的は荒魂討伐だ。正確にはお前たちに加えてもう一人参加して、事に当たって貰いたい」

 

 大方予想はついていたのか、特に動揺する者はいない。

 ここにいる刀使は……いない薫ちゃんを含めて荒魂退治のプロフェッショナルである。むしろ別の任務が提示された方が驚くだろう。

 

 ただし、集められた面子には疑問がつきまとう。十条姫和、古波蔵エレン、益子薫、おまけの俺。このラインナップ。

 俺だけではなく、姫和たちも不思議に思ったようだ。

 

「荒魂討伐ですか。それにしては随分と人を集めましたね」

「確かに。こんなに揃って討伐に行くなんて久しぶりデース」

 

 つまり過剰戦力である。刀使全員が強さランキングベスト10に入るようなメンバーだ。

 一般的な荒魂程度だったら、たとえ大型個体であろうと鼻歌交じりに瞬殺できる者達ばかりである。それを3人。

 

 さらにはこのメンバーに加えて、追加で参加する者もいるという。

 

 さすがに力を入れすぎているのではないだろうか。牛刀割鶏。鶏を割くのに祢々切丸を用いるようなものだ。

 薫ちゃんは俺を裂こうと祢々切丸を使うのを、いい加減やめるべきだね。うん。

 

「まぁそう早るな。これから説明する」

 

 紫さまは続ける。

 

「つい先日。市民から、群馬県南東部の山中で荒魂らしきものを見たとの報が届いた。

 知らせを受けた管理局は、広域スペクトラムファインダーにより精査し、結果、荒魂が存在する蓋然性が高いと判断し刀使を派遣した」

 

 ごく一般的な荒魂討伐の契機である。

 ここまでは規定通りの流れ。

 

「問題はここからだ。討伐のために派遣された刀使は5名。お前達ほどではないが、いずれも経験を積んだ刀使だ。

 目撃証言を元に付近の山中を捜索中、複数の荒魂と交戦ーー撃退するに至ったのだが、逃げる荒魂にメンバーのうちの1人が特殊個体を目撃したのだ」

「特殊個体ですか?」

 

「ああーー人型の荒魂だ。私たちによく似た、な」

 

 荒魂はこの世界における怪物であり、ノロと呼ばれる汚染物質が集まることで形を成し生まれる。その形は千差万別であり、決まった形状を持たない。

 とはいえ不定形のスライムめいたものではなく、四足の獣型やムカデのような蟲型など、その姿にはある程度の方向性はある。

 

 しかし人型とは珍しい。それも等身大のサイズともなれば、嫌でも思い出されるのは1つ。

 ーー例の大荒魂。

 

「……タギツヒメ」

 

 同じ想像に思い至ったのか、姫和がそうこぼした。紫さまが頷く。

 その名前は数々の事件の元凶ともなった、大荒魂のものである。先の事件のラスボスみたいなもんだ。

 

「でも待ってくだサーイ。人型というだけではタギツヒメとは限らないデスネ。ただの見間違えではアリマセンカ?」

「目撃した隊員は、先の事件で直接タギツヒメと対峙し生き残った1人だ。彼女はアレは確かにタギツヒメだったと言っている。

 証言する身体的特徴も合致しているな」

 

 エレンの問いにも間髪入れず答えがくる。

 目撃者はタギツヒメと戦った実戦経験者ということだ。割と確度の高い情報というわけである。

 

「だがそれはありえない」

 

 割って入るように断言するのは姫和だ。その目には確たる自信が浮かんでいる。

 

「タギツヒメが現世にいるはずはないんだ。タギツヒメは迅移の果てにたどり着いたあの場所でーー確かに私たちが隠世の向こう側へと送っている。

 そうだな、定家」

「ああ、そのとおりだ」

 

 実際は送ったというか、俺たちが元の世界に帰るのを見送られたんだが……それはどっちでもいいか。

 ともかくタギツヒメは隠世だか最果てだか、よく分からん場所に置いてきたので、少なくとも現世にはいない。これは確かである。

 

「もちろんその件は重々承知している。管理局としてもタギツヒメ本人である可能性は、非常に低いとみている。

 ーーしかしタギツヒメに類する荒魂の存在を否定することはできない」

 

 タギツヒメに類する存在か。

 

 タギツヒメは大荒魂であるが、荒魂の一種である。オンリーワンであるとは限らないということだ。

 例えば、タギツヒメは大荒魂四天王の一人であり所詮最弱だったとか、そういうことだろうか。

 

 事件が解決したと人類が油断している隙をつき、残る3大荒魂が暗躍しているのだ。

 すなわち新たなる激戦の幕開けである。

 

 その場合、ピンチになったらタギツヒメが助けに来てくれるパターンだな。

 

 うーん。ありえそう。

 タギツヒメちゃん、最後は改心してたし。仲間になりそうな美少女顏だったし。

 

「そのため討伐を一時中断し、派遣部隊を再編成することとしたのだ」

「Oh。話が見えマシタ。それでワタシたちにお鉢が回ってきたというわけデスネ」

 

「うむ。とにかくまずは事実関係をはっきりさせておきたい」

 

 俺の勝手な妄想をよそに、話は進んでいた。

 実際、タギツヒメレベルが出てくると、中堅レベルの刀使では偵察だけだとしても、荷が重いだろう。強行して全滅という憂き目もありえる。

 そのためのここに集められた人選というわけだな。

 

 戦力的に考えると、最強領域に足を踏み込んでいる姫和を筆頭に、大物狩りに定評のある薫ちゃんと耐久力に秀でたエレンが補助に回れば不足はないだろう。

 これに加えてもう一人参加するとなれば、十分すぎると言える。

 

「なるほど。そしてエレンたちを俺はサポートすればいいわけですね」

「そうだ。派遣部隊の隊長として先頭にたってもらいたい」

 

「そうそう。先頭に立ってサポート……って、ええっ!? あの、隊長というのは戦闘部隊の、ですか? 俺が?」

 

 嫌な予感をひしひしと感じさせるような顔で、紫さまが頷く。

 

「あの……サポート部隊の隊長ではないのですか? その、バックアップ的な」

「いや、電光丸があるだろう。お前にも戦ってもらいたい」

 

 戦う! しかも隊長って!?

 

 俺は確かに刀剣類管理局職員だが一般職のはずだ。戦いからはおさらばした、非戦闘員である。

 なのになんだってそんなことに!!

 

「お前は今でも事件解決の立役者として十分な功績があるが、お前の望む未来を考えるなら、今のうちにより多くの実績を積んでおいたほうが良い。そのために手配させてもらった。

 いろいろとうるさい周囲を黙らせるためには、何よりも実績が一番だ。非難というものは実績の前には沈黙するものだからな」

「実績……ですか」

 

 俺の望む未来……姫和との関係が露見した時のことを言っているのだろう。

 

 確かに刀剣類管理局がバッグについたとしても、露見した暁には世間からの風当たりが相当強いことも想像に難くない。

 その対策として、今のうちに実績を積んでおけということか。

 

 それは確かにそうなんだけど、うーむ。

 

「てーとく、ひどいデスネ。女の子だけに戦わせるつもりデスカ? エレンショックデス!!」

 

 わざとらしいほどのエレンズオーバーリアクション。

 なにやら俺が悪者みたいないいっぷりだが、刀使を全否定するような発言だ、そりゃ。

 

「安心しろ。定家は私が守るっ! 危険な目には合わせない」

 

 意気込んでくれるのは大変嬉しいんだけど、姫和ちゃん。

 そもそも俺がいかなきゃ危険はないよね?

 

 はぁ。

 

 仕方ない。上司に行けと言われれば嫌々でも行くのが、組織の構成員である。

 そしてどうせ行くなら嫌々より喜んで任務に就いたほうが、上司からの評価も高いというものである。

 

 ……そうだ。これには紫さまのいうように、ある意味俺と姫和の将来がかかっているのだ。

 気合をいれよう。

 

「かしこまりました。徳川定家、喜んで拝命いたします。……俺たちの将来のために!」

「うむ、期待している。将来のために、な」

 

 紫さまは、今日も満足そうに俺を送り出してくれた。

 がんばるぞい。

 




誤字報告ありがとうございます。

なかなかまとまった時間が取れず、感想返しが遅くなってすみません。
本編共々長い目で見てくれると助かります。
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