アズールレーン二次創作 ~ 今日もあの娘は元気です ~   作:ながやん

3 / 9
 イギリス海軍のケント級重巡洋艦ネームシップとして、1926年3月16日に進水。激動の欧州戦線で多数の海域を駆け回り、赫奕たる戦果をあげている。その従軍任務は、地中海からソ連へ向かう船団までと、多岐にわたった。何度か損傷を受けるものの、第二次世界大戦を最後まで戦い抜き、終戦後は予備役へ。

 1948年1月18日、トルーンへの最後の航海を終えて、スクラップとして解体された。


PRACTICE ATTACK

 アズールレーンで艦隊を預かる指揮官の仕事は、多岐にわたる。

 最大で六つの艦隊、そして二つの潜水艦隊を統率し、運営する。燃料と資金を管理し、適切に使って戦線を維持しなければいけない。勿論、家族も同然のKAN-SEN達との付き合いも大事だ。お茶会に呼ばれたり、散歩に誘われたりと忙しい。

 そんな中でも、特に頭の痛い仕事がある。

 執務室で端末に向き合う彼は、今日も悩みの種を前に四苦八苦していた。

 窓の外から声がしたのは、そんな時だった。

 

「Hey! 指揮官、ケントだよ! ……なんか、忙しい? 邪魔、しちゃった?」

 

 振り返ると、カーテンの揺れる窓辺に笑顔が浮かんでいた。

 重巡洋艦のケントが、大きな瞳を輝かせている。

 大丈夫だと告げると、彼女は嬉しそうに窓からよじ登ってきた。スカートが短いので、下着が見えそうになってしまう。思わず指揮官は目を背けたが、ケントは自分の危うい開脚っぷりに気付いていないようだ。

 ケントはいつも陽気で前向き、ポジティブの固まりのような少女である。

 時に能天気とも言える程に楽天家なのだ。

 

「どれどれー? 指揮官のお仕事は、っと」

 

 気安く身を寄せ、机の上の画面を覗き込んでくる。

 すぐ間近で、頬と頬とが触れそうな距離だった。

 鼻孔をくすぐる甘やかな香りが、外から吹き込む風に乗って執務室に満ちる。

 

「Errr、演習かあ……他の指揮官とはどう? そういえば、聞いたよ! この間、少将になったって。Excellent!」

 

 今、指揮官が難儀しているのは、他の艦隊指揮官との演習である。それぞれ、自分達の率いるKAN-SENをデータ化し、電脳空間での演習を行うのだ。勝敗や戦闘内容は、即座にデータ元であるKAN-SENに反映される。燃料も使わず、大破や沈没を気にせず練度を上げることができるのだ。

 そして、大切なKAN-SENを鍛えるのと同時に、指揮官の手腕も問われる。

 他の管区の者達との交流の場でもあり、真剣勝負……勝敗は階級にも影響を及ぼすのだった。

 

「ふむふむ、もう演習の時期かあ……あっ、指揮官! No! これは駄目、駄目だよっ!」

 

 ケントは端末の画面を見ながら、勝手にキーボードに触った。

 一応、指揮官は数値化された互いの戦力を基準に演習相手を選んでいる。だが、セッティングしたマッチングを即座にケントは初期化しようとした。

 慌てて止めるが、彼女はフフンと鼻を鳴らして少し得意げに話し出した。

 

「よろしい、ケント選手が教えてあげるよ? んとね、これは……この艦隊は、鮫だね!」

 

 鮫、つまりシャーク? 言ってる意味がわからない。

 だが、ケントが指差す演習相手は、何故か前衛艦がベルファストだけである。ベルファストはロイヤルの艦で、最優秀軽巡の誉れも高きKAN-SENだ。貞淑で従順なメイド姿は、戦場ではお茶やお菓子の代わりに砲弾と魚雷を運ぶ。掃除するのは家の汚れではなく、海にはびこる全ての悪だ。

 後衛の主力艦隊も、駆逐艦好きで有名なアークロイヤルのみ。

 二隻編成のため、大きく数値が下がっった状態で表示されている。

 だが、ケントは立てた人差し指を振りながら唇を尖らせた。

 

「ベルの練度を見て、指揮官。もう100を超えてる。アークロイヤルも。こういうのは、実際に戦ってみるとしぶとくて、最終的には負けちゃうの。でも、見た目の戦力数値だけは低いから、つい対戦しちゃう。私達は鮫って呼んでるんだ。送り狼みたいに恐ろしいやり口だよ!」

 

 鮫なのか狼なのか、少しはっきりしてほしいところだ。

 そして、他の演習スケジュールにもケントは目を通し、色々とアドバイスをくれる。

 

「ジュノーはこれ、軽巡のジュノーだね。Easyな相手じゃないよ、あの娘は戦闘不能になると仲間を回復させるからね。あ、そっちも駄目! 長門に赤城、加賀ってのは本当にやばいんだってば!」

 

 まるで自分のことのように、ケントは熱心に教えてくれた。

 指揮官とて、一時期は少将まで上り詰めた自負と自信はある。だが、日々演習での戦術トレンドは進化しており、大勢の艦隊指揮官の中でも自分がまだまだ駆け出しだという自覚はあった。

 数値に表れぬことにこそ目を配る……それが演習での出世のコツらしい。

 だが、指揮官が本音を漏らすと、ケントは目を丸くした。

 

「Oh……指揮官、出世には興味がないの? 私達の経験、鍛錬の方が大事? そっかあ……指揮官、欲のない人なんだね! でも、覚えておいて」

 

 ケントは珍しく真面目な顔をして、それからいつも通りの笑顔を咲かせた。

 満面の笑みで胸を張り、エヘンと彼女は言ってくれる。

 

「ケント達の命は全て、指揮官のもの……迷わず信じて海へ出るよ。それは演習でも実戦でも変わらない。だから、階級より私達のことを考えてくれるの、嬉しい! 覚えておいて……みんな全員、期待に答えたくて頑張ってるから! 勿論ケントも!」

 

 嬉しい一言に、思わず指揮官も頬が緩む。

 とりあえず、演習に詳しいケントには率先して出てもらうことにして、こちらの演習艦隊を再編成する。こうして今日も、同じ平和を目指す無数の指揮官達と同様、彼も演習結果に一喜一憂することになるのだった。




 うーん、このエセ外国人風の陽気なキャラ!好き!

 でも、ゲームだとどうしても妹のサフォークと比べられてしまうんですよね。サフォークの主砲威力、加えて改造による改型へのランクアップがどうしても壁になってしまう。あえてケントを使い続ける意味は「好きだから」以外にないかもしれません。自分は初期からサフォークを使ってるんですが、ケントを今も使ってる方々、格好いいですよね。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。