アズールレーン二次創作 ~ 今日もあの娘は元気です ~   作:ながやん

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 元は軽巡洋艦の計画だったが、ロンドン軍縮会議の条約締結により、重巡洋艦へと変更。排水量一万トンを超えるポートランド級重巡洋艦の二番艦として、1931年11月7日に進水した。数々の海戦に参加し、その中でもテニアン島への極秘輸送任務で歴史に名を残す。広島と長崎に透過された、人類初の原子爆弾の部品を届けたのだ。

 無事に極秘任務を達成したインディアナポリスだったが、1945年7月30日に日本海軍の潜水艦による魚雷攻撃を受け、沈没。彼女がアメリカ海軍の、第二次世界大戦での最後の撃沈された艦となった。


SISTAR SUPPORT

 彼はいつも、昼食を寮舎の食堂で取ることにしている。

 艦隊を預かる指揮官の中には、秘書艦と二人きりの昼食を取る者も多い。運転手を召し抱えて、車で母港に出る者もいる。

 だが、彼は部下にして家族のKAN-SEN達で賑わう、この食堂が好きだ。

 特型駆逐艦達は、今日も元気で騒がしい。

 ジャンパールとマサチューセッツも、なんのかんので仲がいいようだ。

 そうして周囲の光景に目を細めていると……彼の座るテーブルの前に人影が立った。

 

「あの、指揮官……少し、いい?」

 

 褐色の肌も顕な、健康的に過ぎる肉体美の少女。

 名は、インディアナポリス。

 彼は断る理由がなくて、向かいの椅子を進めた。

 だが、インディアナポリスはトレーを持ったまま、その場で立って話し始めた。

 

「お姉ちゃんの、こと、なんだ、けど」

 

 日頃から寡黙で控えめ、いつでも黙って仲間の盾になる娘だ。インディアナポリスは、普段は姉のポートランドの影に隠れがちである。

 というか、ポートランドの個性が突出して強烈なため、自然と印象が薄いのだ。

 だが、ある種奇行とも言えるポートランドの日常は、妹の彼女と深い関係がある。

 

「お姉ちゃん、ね……その、男性経験、ないから……彼氏とか、いたことなくて」

 

 少しもじもじしながら、インディアナポリスは伏目がちに話す。

 

「でも、あの……指揮官のこと、好き。だと、思う、の……だから、あんなに」

 

 そう、ポートランドは彼を見かけるたびに駆け寄ってくる。まるでじゃれつく子犬のように、右に左とつきまとってくるのだ。迷惑だと思ったことはないが、やはり異様なのは確かである。ポートランドは誰とでも仲がいいが、そんな仲間達でさえドン引きしている。

 ポートランドは、重度のシスコン……病的なまでのシスターコンプレックスなのだ。

 その興味と愛情は全て、妹のインディアナポリスに注がれている。

 そして、指揮官に自分の妹愛をゴリゴリと語ってくるのだ。

 そのことを謝罪しつつ、インディアナポリスが弁明の言葉を紡ぐ。

 

「お姉ちゃん、男の人に、免疫、なくて……なに話していいか、わからないんだと思う」

 

 そうだったのかと、彼は驚いた。

 そして、ようやく謎が解けた。

 インディちゃんインディちゃん、インディちゃんが! と迫ってくるポートランドの、あれは不器用なコミュニケーションだったのだ。

 

「私のことしか、話せないから、ああいう形になるんだと思う。お姉ちゃんには、戦いと私以外、なにもなかったから。……今までは、そうだったから」

 

 だが、今は指揮官がいる。

 インディアナポリスははっきりとそう告げた。

 

「だから、指揮官。お姉ちゃんのこと、お願い……私は、我慢、するから……指揮官のこと、我慢するから」

 

 前後の文脈に繋がらない言葉が混じったが、彼は去ろうとするインディアナポリスを引き止めた。そっと手で、座るように促す。

 一緒に昼食を共にして、もっと話したいと告げたのだ。

 すぐにインディアナポリスは、頬を朱に染め瞳を潤ませた。

 

「そんな……お姉ちゃんに、悪いし。……でも」

 

 インディアナポリスは、とてもいい娘だと彼は思った。

 だが、そんな穏やかで優しい空気を、身悶えるような甘い声が引き裂いた。

 

「あっ、インディちゃーん! インディちゃん、ここにいたのね! って、はうっ! し、指揮官も! ……あー、指揮官! やっとインディちゃんの魅力に気付いたんですね!」

 

 ポートランドだ。

 彼女は、トレーの上にこれでもかと料理を乗せてこっちにやってくる。

 目がキラキラと輝いていて、なるほど恋する乙女のそれを感じ取ることができるかもしれない。だが、彼女は普段と変わらず指揮官にぐぐいと詰め寄り、その隣に座ってしまった。

 

「ほらっ、インディちゃん! お姉ちゃんが取ってきたあげたから。サラダでしょ、フルーツでしょ、お肉にお魚、あ! 指揮官も食べますー? インディちゃんはー、好き嫌いしないいい子なんですよぉ?」

「は、恥ずかしい、お姉ちゃん。ごめん、なさい、指揮官」

 

 だが、事情は先程インディアナポリスから聞いた。

 ポートランドは、今日も妹トークで果敢に迫ってくる。彼女の世界は妹が全てで、世界とは即ち妹なのだ。そこに今、指揮官という生まれて初めての異性、妹以外の興味の対象が現れたのである。

 話したい、語りたい、もっと言葉を。

 そう願うポートランドには、インディアナポリスの話題しかないのだった。

 改めて指揮官はインディアナポリスを向かいに座らせ、三人で昼食を再開させる。ポートランドは健啖家な食いっぷりを見せながらも、五秒に一回はインディちゃんと発しながら、一生懸命語りかけてくれる。

 それを見詰めるインディアナポリスは、優しくて少し切なそうな眼差しを細めているのだった。




 姉がウザかわいい、妹はクールかわいい!

 いや、インディちゃんのメンタルって凄くないですか? よくもまあ、あんなキワモノな姉に溺愛されてて、毎日普通に暮らしてるものだなと。ポートランドはR艦ですが、インディちゃんはSR艦……我が艦隊ではずっと、ポートランドだけの運用が続いていました。ずっと「インディちゃんって誰だろう……?」って思ってたんですが、妹なんですね。

 褐色の肌にオッドアイ、そして物静かなクール女子。前衛艦隊の盾となって、文字通り獅子奮迅の活躍を見せてくれます。どうしても難易度の高い海域では沈没してしまうため、真珠の涙とかを装備させてしまいますね。我が第一艦隊で姉と一緒に仲良くやってます。

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