アズールレーン二次創作 ~ 今日もあの娘は元気です ~   作:ながやん

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 ハンターはH級駆逐艦(ヒーロー級とも呼ばれた)として、1936年2月25日に進水。地中海での哨戒任務中、機雷に接触して沈没寸前の危機を迎える。無事に曳航され修理を終えた後は、第一次ナルヴィク海戦に参加。赫奕たる戦果を上げるが、離脱時にドイツ海軍の追撃にあい、味方艦との接触事故を経て1940年4月10日に沈没した。尚、2008年3月8日にオフォトフィヨルドの海底で沈没した船体が発見された。

 ミネアポリスはニューオリンズ級重巡洋艦として、1933年9月6日に進水。初期のアメリカ海軍を支えた、レキシントンとサラトガ、二大空母の直掩艦として活躍する。珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦、ルンガ沖夜戦、スリガオ海峡夜戦と、激戦を獅子奮迅の活躍で戦い続けた。幾度も損傷したが、その都度修理され前線へ復帰している。戦後は予備役となり、1947年2月10日に退役している。


HUNTING NIGHT

 アズールレーンの指揮官として着任する際、ある程度のサバイバル教練は受けている。

 だが、マッチもライターも使わず火を起こすのは久しぶりだ。

 少年は悪戦苦闘の末に、木くずの中から白煙を立ち上らせた。

 乾いた臭いと共に、満天の星空へと火が昇る。

 アズールレーンの全艦隊が共有する母港は、地図にはない秘密の島にある。まだまだ内地には自然が豊富で、こうした闇深い森も存在していた。文明から切り離された大自然は、少年の心を凍えさせる。

 その時、背後でガサガサと気配が動いた。

 

「こら、ゲールマン。指揮官が驚いてる」

 

 振り向いた瞬間には、大きなジャーマンシェパードに押し倒されていた。

 そして、その向こうから一人の少女が近付いてくる。

 H級駆逐艦、ハンターだ。

 その名の通り、今日は彼女たちの狩りにご一緒させてもらっている。

 これは、指揮官がいないと危ないと上層部が判断したからでもあった。そして、指揮官が望んで二人との時間を持ちたいと願い出たのである。

 

「ごめん、指揮官。ゲールマンは、どうやら指揮官が気に入ったようだ」

 

 ハンターが声をかけると、狩猟犬のゲールマンがおとなしく彼女の足元に戻ってゆく。

 指揮官が立ち上がると、目の前にドサリと今日の獲物が並べられた。

 まるまると太った兎が三匹。

 勿論、今夜の夕食である。

 

「兎は初めて? 大丈夫、くせがなくて食べやすいし、毛皮はとても暖かいんだ」

 

 ハンターは腰に下げたナイフを取り出し、兎を解体し始めた。

 言われるままに、指揮官は水を桶に組んでくる。

 可憐な少女の細い手と指とが、命を切り取り、糧へと変えてゆく。じっと見守る指揮官は、彼女が雷撃と砲火で戦う軍艦、KAN-SENであることさえ忘れてゆく。

 海で戦っている時より、どこか厳かな雰囲気さえあった。

 だが、その静寂が破られる。

 もう一人の狩人が、意気揚々と戻ってきた。

 

「Hey ya! デュラハンクルーザー様のお帰りだっ! 見ろよ、指揮官!」

 

 大きな鹿を抱えた、ミネアポリスだ。

 彼女は暗がりの中でもはっきりわかるほど、褐色の肌を高揚させていた。上気した笑顔は溌剌として、瞳が輝いている。

 思わず指揮官は感嘆の声をあげ、拍手してしまった。

 えっへん! とミネアポリスは胸を張ったが、溜息が静かに響く。

 

「……わたしたち三人では、そんなに沢山の糧はいらない。ミネアポリス、無駄な狩りはしないことだ」

「なっ……ハンター! 私の狩りにケチをつける気かっ!」

「そのつもりはないけど、教えておく。真の狩人は、銃を持つ手を塞ぐような狩りはしない」

「ハッ! ジョンブルお得意のお説教かよ。……ダメ、だったか?」

「そうは言ってない」

 

 手早くハンターは、焚き火に兎の肉を並べた。

 毛皮を剥がされ血抜きされた肉が、串に刺されて地面に突き立つ。

 そのまま彼女は、鹿を降ろしたミネアポリスに寄り添い、ポンと背を叩く。

 

「弓か? 銃?」

「いや、ナイフで」

「……どうやって?」

「こう、こうして……こうやってさ!」

「まるで原始人だな」

「おいおい、褒めるなって。まー、私くらいになれば得物はなんでもいいんだ」

「……訂正する、猿人レベルかもしれない」

「照れるなあ、はは」

 

 仲が良いのか悪いのか。

 だが、二人は協力して鹿を解体してゆく。

 きっと、学園の食堂でもジビエは喜ばれるだろう。

 それに、狩果を前にとても嬉しそうだ。

 顔にこそ出さないが、ミネアポリスを見詰めるハンターの瞳は優しい。ミネアポリスも、普段は孤高の不思議な艦で通っているが……ハンターの前では少女らしい笑顔さえ見せるのだ。

 指揮官はキャンプでベンチ代わりにしているマルタに腰掛け、二人を見守った。

 やがて、香ばしい匂いとともにパチパチと兎の肉が歌い出す。

 

「よしっ、まあこんなもんだろ。下処理しとけば、明日の朝イチで厨房行きだぜ」

「重桜では鹿は紅葉というらしいな。食べる文化があるから、料理を手伝ってくれるだろう」

「それよか、飯ぜ! 飯っ!」

「ゲールマンにも食事をあげないとな」

 

 彼女達が山野にのびのびと生きる、そういう日は来るのだろうか?

 終わりの見えぬ戦争は、日々激化している。

 絶えず大怪我をするKAN-SENが曳航されてきて、その何割かは帰らぬ人となる。セイレーンと呼ばれる謎の勢力は、その目的も規模も、全てが謎のままだった。

 加えて、重桜と鉄血の一部がレッドアクシズと称する軍事同盟を結成した。

 レッドアクシズには、ユニオンやロイヤルからの離反艦も多く参集しているらしい。

 

「おーい、指揮官! なんだぁ? ボーッとすんなよ」

「肉だ、指揮官。軽く塩を振ったが、気になるならカレー粉や黒胡椒を使うと良い」

「さあ、食おうぜ。大地の恵みに感謝を」

「海からの風に感謝を……いただきます」

 

 丸太に三人で並んで、兎の肉を頬張る。

 指揮官を挟んで座る二人も、食事の時は笑顔を綻ばせた。

 わずか半時間前まで、生きていた肉……その触感は、ジューシーなのに驚くほど軽い。舌に広がる旨味は、自然と脳裏に疾駆する兎の躍動を浮かび上がらせた。

 指揮官が軽く感動している横で、ミネアポリスはあっという間に兎を平らげる。

 

「美味ぇ! やっぱこうして大地の恵みを食わなきゃな。学園の飯も美味いが、魂が乾いちまう。で、心が乾けば命の水が必要ってね」

 

 ミネアポリスはポケットから、銀色のスキットルを取り出した。中身はブランデーのようである。それを直接口に付けて、彼女はグビリと飲んだ。

 すっと通りの良い首筋が、焚き火の照り返しに色っぽい。

 すぐにミネアポリスは「ほらよ」とスキットルをハンターに投げた。

 まるでそれが当然のように、ハンターも琥珀色を口に含む。

 

「……意外だな。かなりいい酒だ」

「だろ? 大鳳の部屋からちょろまかしてきた」

「怒られるぞ」

「二人で謝りゃいいって、ダイジョーブ!」

「フッ、とんだ共犯者様だな。指揮官もやるか?」

 

 スキットルを差し出されて、指揮官は兎を頬張るのをやめる。

 未成年だから、お酒はあまり飲んだことがない。

 どうしてもレセプションや式典の席で、形式的にグラスを持つ程度だった。舐めてみたこともあるが、どうにも積極的に摂取する意義を見いだせない液体である。

 だが、どういう訳が今日は、素直にハンターから酒を受け取る。

 今は二人と星空しか、見ていない。

 軍規も法律も、この大自然では身を暖めてはくれないのだ。

 しかし、思い切って飲んでみた瞬間、喉を焼くようなアルコールにむせて咳き込んだ。

 

「おいおい、指揮官。零すなよー、高かったんだぞ? この酒」

「自分で買ってきたような顔をするな、ミネアポリス。まあ、大鳳の部屋に忍び込んだ勇気には敬意を表するが。指揮官も指揮官だ、飲んだことがないなら無理はするな」

 

 ハンターが背をさすってくれた。

 だが、その時ミネアポリスが驚くべき行動に出た。

 グイと身を寄せてきて、指揮官の左の頬を舐めたのだ。

 

「酒がもったいないだろー、なあ」

「ふむ、そうだな」

 

 ハンターまで、逆の右頬を舐めてくる。

 ひんやりとした舌の感触は、その柔らかさが擦過したあとで風が冷たい。

 それなのに、指揮官は顔が火照って、ただただ俯くしかなかった。

 そんな彼を左右から覗き込んで、二人のKAN-SENは楽しそうに笑うのだった。




 タッタラッター♪タタタ、タータラララー、タララーラララララー♪(モンハンの有名なあのOP)いやあ、一狩り行こうぜ!なんか、同じ狩人キャラなのにあんまし被ってない印象ですね。ミネアポリスなんか、ずっと一人称は「俺」だと思ってました。「私」なんですね…調べてびっくり。因みにハンターは「わたし」ですね。

 実は今、ちょうどイベント海域でハンターを連れ回してます。Z2とのボス戦で、ときどき撃沈されるんですけどね…うう、へっぽこ指揮官でごめんよ。ミネアポリスは調べてみたら、レキシントンやサラトガと縁の深い艦なんですね…レキシントンを守りきれず沈没させてしまった、サラトガが沈みかけた時も曳航して帰投した。個人的にお気に入りの娘ですね!

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