青年放浪記   作:mZu

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第100話

照り返しなどは無くとも太陽の光が直接当たるような瞬間だった。

 

丁度雲の切れ目に当たったと思っていたが別に気にするほどでもなかった。天気というのはよく移り変わるのでその点は仕方がない事だと割り切って青年と魔理沙は更に奥へと進んだ。

 

「誰も居ないよな。早めに出てこいってもんだぜ。」

魔理沙は流石に飽き飽きとしているのか、もうこれでは釣れないのだろうと思ったのか箒にまたがり始めた。

 

青年は横目にその様子を見ながらすぐに魔理沙の左肩を押した。バランスを崩して倒れそうになる魔理沙は文句を言いたかったが状況は一変した。魔理沙の後方では焼かれた向日葵が倒れそうになっていた。

 

「な、何だぜ?」

 

「さあ、な。ようやく現れたのかもしれない。」

慌てる魔理沙とは逆で青年はやけに慣れている様子でその場に佇んでいた。

 

その姿からはもう既に来ると予想していた、と思わせるだけの風格があり青年の視線はその方向を向いていた。

 

いつも通りでも何処か尖ったところのある青年に魔理沙は呆気にとられていた。

 

「どちらにせよ、向日葵のようにならなくて良かったな。」

何処か皮肉に聞こえるその言葉も魔理沙には言い返せない。それにはそう思わせるだけの説得力があるというのが青年の言い方で言いくるめられていた。

 

後ろではバサッ、と焼き爛れた向日葵が倒れていた。そうならなくて良かったと思う魔理沙を裏目にその本人はこの向日葵の間を抜けて現れた。

 

「誰かしら?私の領域に侵入したのは。」

その落ち着いた静かな声とは裏腹に狂気に満ちたその表情が青年と魔理沙には如何しても不快としか言えなかった。

 

その姿はまさしく悪魔であり恐怖を植え付けるには十分だった。その姿は緑色の短髪であるが少しゴワついている。

 

白いシャツに赤を基調とした黒のチェックの入ったベストを羽織っている。スカートも同じだがボタンが付いているので巻くタイプであるようだ。そしてピンク色の傘を差しながら二人の目の前に現れた。

 

「貴方達のようね。」

その人は全くたじろいだりするような事はなく至って冷静にこの状況を見ていた。

 

単純に楽しんでいるような気もしないわけでもないがどうも抜け切らない不信感が青年を煽っていた。

 

「最近、異変が起きていてな。それで調査に来ているだけだ。どうか見逃してほしい。」

下手に出た青年ははっきりと目の前に立っている人の力量を知っているようだった。魔理沙はそんな青年の様子を見て何しているんだ、と言った呆れた表情を浮かべている。

 

「何だ、邪魔するなら強行するまでだぜ。」

魔理沙はポケットから持ち前の八卦色を取り出して大きな声でマスタースパークと叫んだ。その声に反応するように虹色の光が野太いレーザーとなってその人の元へと放たれるが特に気にしていないようだった。

 

青年は何かを察して向日葵の所に身を潜めていた。

 

「如何してだぜ。」

目の前には持っていた傘を使って魔理沙の得意技を軽々と弾いて何事もなかったかのようにその場にいたので魔理沙はもう何をして良いのか分からなくなってしまった。

 

青年はだろうな、と思ったのでコソコソと移動して次の攻撃に備えていた。それだけの強力な力を有している人物である事には変わりないらしいので然るべき時までは動くつもりはないらしい。

 

「チンケな攻撃よね。」

クスクスと狂気じみた笑みをこぼす。そして傘を日除けのために使い始めるので魔理沙は何が効くのかを自分が出来る限りの力で考えていた。

 

「どうするんだぜ、」

横を振り向いた魔理沙だったがその場には当然青年は居なかった。

 

またしても笑みをこぼすその人には魔理沙も対処法が見つからない。既に勝負は決まっているかのようだった。

 

「私も少し本気を見せてみるわ。」

傘を閉じたその人はその先を魔理沙に向ける。その先では光の小さな球が現れていたが魔理沙はそれがどのようなものであるかは予見しなかった。

 

魔理沙も魔法を防ぐ方法は準備してあるので来るなら来いと言わんばかりの佇まいである。その人はその姿を嘲笑するように笑みをこぼすだけで何も言わなかった。

 

先にある球が割れた、その瞬間に魔理沙のマスタースパークなど比にならないほどのレーザーが襲いかかる。魔理沙は避ける場所を見失った。

 

道を埋め尽くすようなレーザーに絶望さえ覚えたがその気はすぐに逸らされた。

 

「あら、逃げた訳ではないのね。」

軽く話すあたり傘の方向を変えた力は別にこの人には関係ないらしいがその行動には賞賛に値するらしい。

 

簡単な話、ここまでしてきたものがいないと言うのか久しぶりのご馳走に興奮していると言うのか。

 

「この時の為に備えていた。」

青年はその人の傘を確実に魔理沙の方向に行かせないようにしていた。その表情は流石に歪んでいるがその人を喜ばせるには十分であるらしい。

 

一旦レーザーを放つのをやめたので青年も力を抜いて傘の間合いに入らないように後ろに下がった。

 

「ところで貴方は人間なの、それとも妖怪かしら。」

 

「人間だ、多分な。」

その人は不思議そうにしながら狂気的に笑みをこぼすだけで不気味としか感じ取れないほどのインパクトを青年与えた。

 

「私は風見 幽香。花を見るのが好きなだけの妖怪よ。」

この時ばかりは屈託のない笑顔を浮かべているが常に笑っているように見えるので青年は気を抜けない状況が続いていた。

 

「俺には名前がないが好きに呼んでくれ構わない。」

 

「なら、青年とでも今は呼んでおくわ。」

幽香には青年はその身なりでしか判別しないらしい。ある意味全ての人を等しく見ているようで逆に清々しいと思える。

 

青年は花が好きなだけの妖怪とは自称しているがそれでもその力は強大なものであるのが拭えなかった。

 

「そうか、貴方には今はとても良い時期かもしれないが此方としては正確に季節が巡らないので困るのだ。どうか調査に協力してほしい。」

 

「あら、何か起きているのね。でも私には関係ないことよ。私は花を眺めているだけだもの。」

 

「それはもう知っている。危害も加えるようなつもりもないのは信じて欲しい。先ほどは失礼した。」

 

「別に調査は構わないけど1つだけ約束して欲しいことがあるのよ。」

 

「それは何だ?」

青年はそのことぐらいは聞くべきであると感じた。故に幽香の話はちゃんと聞くつもりだが既に向日葵は何本も命を絶たれている状況である。

 

その事は知らない訳でもないので青年は何となく予想はついていた。

 

「花を傷つけて欲しくないのよ。それだけ守ってちょうだい。」

「もう遅いような気はするが承知した。」

青年は素早く返答すると後ろを向いて魔理沙を呼んだ。それが何を意味するのかはよく分かるだろうが早めに行こうと言う事だった。

 

魔理沙はそれを感じ取って七日素早く青年の元へと向かうと早足でこの場から離れようとした。青年は少し歩いた後に綺麗な花々が咲いている、とだけ伝えてからまりさのもとへとゆっくりと歩いて行った。

 

幽香はそんな青年を憎めないようで何処かに姿を消してしまった。

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