青年放浪記   作:mZu

106 / 257
第106話

青年は不死であるのは知っている。そして妹紅もその条件は知っているのだろうが青年と決定的に違うのは何年にその能力を見ていたのかである。青年は精々一回あれば良いが、妹紅には何万回とこのような場面は見てきたのだろう。

 

「そうらしいな。」

妹紅としてもあまり気にしていないのか指を追って何かを数えていた。これが何勝目になるのかを数えていると思うが青年には関係のない事だった。青年は輝夜の横で地べたに座る。

 

「して、その怪我は大丈夫なのか。」

 

「ええ。そのうち起き上がるから待ってなさい。」

輝夜としては別に気にするような怪我ではないのだろうが見ている青年としては気色の悪いのは言うまでもない。

 

皮膚がただれていて所々皮膚が赤く染まっている。しかし輝夜がそう言うのでもう気にしない事にした。

 

「今日のところは帰ってくれ。気分が悪い。」

妹紅はのそのそと自分の住んでいる古い小屋の中に入る。此処で青年と輝夜の二人だけとなり青年は如何しようか悩んだ。】

 

焼け焦げた竹林からはそれなりに遠くなったのか一面か緑で覆われるようになってきた。そろそろ輝夜も歩けるぐらいには回復したのだろうが特にその兆しは示さないので何もしない事に決めた。

 

青年はそんな輝夜を背負いながらテクテクと歩いていた。

 

「此処からどのように行けば良い。」

青年はそこまで此処の土地に慣れてはいないので何と無くではあるが聞いてみる事にした。迷いの竹林という事だけあって何の目印もないのが気になるが輝夜は何となく分かっているらしい。

 

「じゃあ、右に曲がって。微調整すれば簡単に着けるはずよ。」

青年は言われた通りに指先を向けるとその方向に歩いていく。輝夜は現状を深く考えていないのか気楽に考えていた。

 

青年にはちょっとした疑念があるがその事はあまり気にしている感じはないのでまぁ、そう言う事なのだろうと割り切って考えてみる事にした。

 

「もうそろそろ歩けるだろう。」

青年は輝夜の重さにうんざりしてきたのか一言だけ言葉を述べる事にした。青年も少しは迷いが生じたがそこまで青年も考えてはいなかった。

 

「そうね。でもこの方が楽だもの。」

 

「元気そうで良かった。」

そう言えばこのような人であったな、など軽く考えておく事にした。

 

いちいち気にしているとキリがない。幻想郷の住人は基本的にそんな気がする。

 

「蓬莱人をなめて貰っては困るわ。」

輝夜はほんの少しだけ声音を上げて話していた。どこか嬉しそうにしているかまた別の感情があるのかは知らないが今は輝夜の吐息か体の動き方しか分からないために青年はラチが明かないため詮索するのをやめた。無難な選択であろうと思う。

 

「そうだな。」

青年は軽く頷くようにして輝夜の発言に肯定しておく事にした。別に否定する気もないため嘘と言うわけでもない。真実ということでもないらしいが。

 

「そう言えば永琳が最近製薬に力を入れているらしいわよ。」

薬を製造しているのか。前にしたような約束を頭の片隅に思い出そうとしながら何があったか考えていた。

 

永琳は多才であり青年が対等に、いや目通し出来るのを珍しいほど差はあるはずだが何かと距離は近いように感じる。丁度輝夜との距離ぐらいにはなるのだろう。

 

「前に言ったことを実行しているらしいな。」

青年は独り言かのように呟いた。その声には何を混ぜているのかは知らないが別に悪いものではないと思われる。

 

輝夜はそんな事を考えながらゆっくりと息を吐いた。青年は耳元に伝わる寒気を感じながら倒れ込まないように注意した。それだけ心地が良いのだ、息がかかると言うのは。

 

輝夜はクスクスと笑っているので故意であるのは承知したが別に降ろそうと言う気にもならなかった。その辺りは青年も大人と言えるのか何と言うのか。

 

「それが目的か?」

 

「いえ。何となくやってみただけよ。」

何となくか、なんて青年は口から息と一緒に吐き出していた。そんな気分になるのは分かるがあまりにも露骨なので流石に輝夜も気分を悪くしたと思える。

 

「ところで永琳とは何を約束したのよ。」

輝夜は気にしていないどころか話を戻してくる。姫としては部下と何を約束したのかは気になるらしい。

 

自由というのか何と言えば良いか言葉を失ったところで一旦青年は自分を落ち着けた。それがどのように作用するのかは知らないがいつも通りに戻ったと思われる。

 

「いや、特に大きな事ではない。永琳の才能を発揮してもらいたいと考えたまでだ。」

青年は自分のことのように嬉しそうに答えていた。基本的に無表情な青年なのでそこまで表情に変化があるわけでもましてや見えるわけでもないので輝夜にはその辺りは伝わっていない。

 

「それで製薬を鈴仙とやっているのね。それで納得したわ。」

何か楽しそうに話している輝夜は何処か青年の変化を読み取ったのか自分も調子を上げたようである。別に悪い気はしていないと言う事であるが自分の仲間がそのように評価されて喜ばない者はいないだろう。

 

「そうか。鈴仙もやりたい事を実行したのか。」

青年は少し感心したように話していた。もうそろそろ建物の中へと入る。この竹林にある立派な建物は永遠亭しかない。

 

青年は何も気にする事なくズカズカと中へと入った。輝夜もその事には何も言わない。まるで我が家のようにしているがその辺りは気にしないらしい。

 

「静かだな。」

青年は無駄に広いと言うわけでもない庭を見ながら話した。前と変わらない景色だが随分と日も暮れてきたせいなのかだいぶ暗く感じる。

 

一室には明かりが灯っているのできっとそこに居るのだろうと青年は思ったので輝夜を背負ったままその場所まで向かう事にした。その場所とは永琳の部屋であり前に青年が薬を見せて貰ったことのある場所である。

 

「お邪魔する。」

青年は襖を開けようとするが意思であるかのようにビクとも動かなかった。

 

一回離してからもう一度開けようと試みるがやはり開くような気配はなかった。

 

「結界ね、私が開けるわ。」

輝夜は青年の背負われたまま手を振る。前にも見たことのある仕草で多分開けたのだろうが耳元である事を頼んできた。その事に青年は乗ると青年は豪快に開けてみた。

 

「わぁ!?あ、竹林さんですか。」

どうやら鈴仙の方が近かったらしく大きな声で叫んでいた。青年は気にする事なく首を横に振った。

 

「永琳、この襖固くないか?」

鈴仙の後ろにいた匙を持っている永琳は少しだけ臆しているのか少々声が小さいように感じる。

 

青年は輝夜の言うことが合っていると思ったのでそう言うことか、など自分の中で解決させた。

 

「固いなんて次元ではないはずよ。」

永琳のこの一言で青年は確信した。鈴仙は膝を折り曲げて後ろに倒れこんだ。何を今更と思いながら青年は立たせてあげると永琳の近くまで向かった。

 

「何かあったのか?」

知らないふりで近づいてみる。輝夜がしたいことはそのような事なのだろう。

 

全く変な事をあの時間で思い出すものだなと青年は思った。

 

「誰も入れないように結界を張っていたのよ。それなのに貴方は固いなんて言って平然と入ってきたのよ。まさかそんな力を持ち合わせているなんて驚いたわ。」

永琳は丁寧に匙を作業台に置いてゆっくりとしたいのか落ち着かないのか椅子に座った。

 

その姿はまさに女医であるが青年はその辺りには興味は示さない。青年は匙を置いた机を見て調合中だと思った。どのような薬を作りたいのかは青年にはよく分からないが何となく聞いてみようと思える。

 

「ところで今は何をしていた。」

青年は目の前にある果実を取る事にした。少し口には合わなかったらしい。

 

「さらっ、と流すのね。今は体調を良くするための薬を作っている途中なのよ。少し前に薬草が大量に集まったからそれなら何か作ってみようかと思ったけど今までとは違う薬だから骨が折れるわ。」

 

「確かにそのようだな。永琳ならもう一つや二つは完成させていそうなものなのだが。そこまでは才はなかったのか。」

「乗らないわよ。それに貴方は何も知らないでしょう。どれだけの実験が必要なのか。」

 

「いや、魔法を習っているから何となく知っている。」

本当にさらっ、と答えた。永琳の調子を崩すくらいにはあっさりとした返しだったと思われる。青年は独特の魔法の使い方故に師匠がいなかった。

 

なのでどれだけの多くの回数を試行していたのかは何となく覚えている。その度に失敗したと思われる原因を考え出しては紙に書いていく。

 

偶に紙を無駄にするがそれも良い経験なので青年はその点は気にしていない。

 

「そうなのね。とりあえず今日は終わるわ。夕飯の準備をしましょうか。」

どれぐらいの時間を製薬に使ったのかは青年は知らないがそれは永琳の疲れ具合を見れば何となく察せるものである。青年は少し考えながらその場で片付けの邪魔にならないようにしていた。

 

手伝い気持ちは山々だが何処にあるかは知らないので足手まといになる可能性があるのと薬草の取り扱いを知らないので触るだけ駄目なこともあるかもしれない。無知は触るべきではない領域であるのは青年はよく知っていた。

 

「実験が必要なんだよな。永琳。」

この発言で青年は急に関係ない事を呟いたように浮いている事を感じた。その頃には大体の片付けが終わっていた。

 

鈴仙は急に耳をシワつかせていた。永琳はなぜか冷たい視線をしているが理由は聞くこともないし聞きたいとは思わない、何となく察する。

 

「ええ、そうね。」

永琳は今度はどんな発言をするのか内心ではハラハラとしていた。青年の考えは偶に常人には考え付かない時がある。永琳でさえ頭を傾げるようなこともないわけでもない。

 

「なら人里の人々に検体になってもらうのはどうだ。鈴仙が説明して配れば良いだろう。」

 

「別に私は構わないわよ。断っても勝手に配りに行くでしょう。」

永琳は半ば諦めたような、そうでもないような何とも判別付きにくい表情をしていた。何があるのかと心配になる程だがその点は青年としては別に構わないらしい。鈴仙は二人の会話を聞いて一言申し上げにくそうに言った。

 

「私に拒否権は?」

 

「無いわよ。明日から配ってみなさい。この部屋が荒らされては困るわ。」

青年は永遠亭の師弟同士の会話を聞いて厳しい教育なんだと思った。

 

魔法を教えてくれるが基本的に放置のスタンスであるパチュリーとは違い気に掛けてくれるのが分かりやすいなと青年は見比べながらそう感じた。何があるのかと言われると何も無かったりするが。

 

「何事も経験だ。何だったら俺も付いていく。」

青年は多少からかうように話した。永琳も賛同して多少なり脅すような様子である。一通りからかった後で鈴仙の元へと向かった。

 

「さて、俺も手伝う事にするか。」

青年は鈴仙の背中を押すと一気に部屋の外で出す。鈴仙は躓いたようにその場でよろけると今度は別の方向に倒れた。

 

「姫様!?いつの間にそこにいらっしゃったんですか。」

其処には輝夜がいる事を知っていた青年はわざと鈴仙を押し飛ばしたわけだ。その結果、鈴仙は腰を抜かしてその場で座り込んだ。

 

「成功ね。」

輝夜は嬉しそうにしていた。青年は何か言うこともなくその場から立ち去った。永琳はやれやれ、とばかりに頭を抱えていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。