青年放浪記   作:mZu

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第109話

その頃青年は一人で紅魔館の地下にあるとされる図書館へと向かった。この図書館には一階のところに黒色で人が通るには大きめな扉があるが其処からは帰る事はできないが外に出れたりする。

 

そんな訳で外で試してみる事にする。ちょうど今は昼前辺りであるらしくこれからうるさくなるような時間となっていた。

 

日が経つにつれて徐々に出てくる時間が早くなっているように感じるがその分早く仕事を終わらせることが出来ると思われる。

 

青年は眠っている門番に一礼して返してもらってから湖のほとりまで向かった。門番はまた何かし始めるのだろうと軽い気持ちで見過ごす事にした。青年は日中にも関わらず自身に月が浮かんでいると暗示をかける。

 

青年の今の世界は薄暗く月の光に頼ることしかできない。その世界で希望を与えるにはどうするべきか、ふと考えていた。

 

絶対的な力を持つ者であるなら自ずと後光によって人民を救うことが出来るのだろう。ふと青年が目を開けて現状を確認する。

 

日中なので内の世界とは真逆であった。その事からきっと何か示している事があるのだろうと青年は考えていた。日と月、それを織り交ぜた物は少し前にそれなりに完成していた。

 

青年は一旦肩の力を抜いてその場で脱力して気持ちを落ち着かせていた。湖の水面には珍しく水紋が広がっているが向こうから来ているわけではなくてこの辺りから発生したものと思われる。

 

青年はどうしてなのだろうか、と思って紙にペンで現状について書き記した。月を念じていたところ湖に水紋が広がっている。

 

その事から月には元素を引きつけるような力があると思われる。これを応用すれば何か攻撃や防御として扱うことが出来ると思われる。青年は一通り読み返してパチュリーの元へと向かおうとしたがもう少し試してみようと思った。それは必ずしも成功するというものではなく青年の勝手な思い込みなのかもしれない。

 

ほとりに座り込んで釣り糸を投げるように剣を湖の中に入れてみた青年はもう一度先ほどと同じようなことをしてみる。青年の予想が当たればそれはとても強いものであるが外れるともう一度やり直しとなる。すると其処には見たこともない光景が広がる、剣の周りの水がまるで飲み込まれているかのように右回りに渦を巻き始めた。青年はその場で剣を持ち上げてみるとまだまだ小さい物なのだが確かに月の元素によって引きつけられているように感じる。そのまま剣を自分の体に引き寄せてから一気に投げるように押し出してみた。それは一本の線となって真っ直ぐに飛んだ。

 

そして湖の水を引き込んだのか少々大きくなっているように感じる。青年も流石にこればかりは疑いの目をせざるを得なかった。初めて大きな魔法が成功した瞬間であり青年にとって大きな進歩である。喜ばないわけがない。

 

「何やら凄い威力ですね。」

駆け寄ってきたのか美鈴はおっとりとした表情で青年に話しかけた。目の前の事は何が起きているのかは理解出来ないが素晴らしい事として捉えているようである。

 

「あともう少しで次のところまで進めそうだな。」

青年は美鈴の言葉が耳に入らなかったのかブツブツと呟きながら紙に文字を書いていた。美鈴は青年が書いたその文字を細い目で見ていた。

 

何が書いてあるのかは分からずどの辺りが文字として認識しているのかは本人にしか分からず美鈴はその場から仕方なく離れた。

 

青年としてはどうにか大きく出来る方法はないかと模索する中で閃いたものを紙に書いてみてはそれを試して結果を書き記していた。その轟音と威力には圧倒される点があるがそれでも青年は満足するような様子はなく常に上を向いていた。

 

そんな姿を夕暮れまで見ていた美鈴としては寝ている隙もなかった。途中で呼び寄せるために来た咲夜でもその打ち込み具合には関心を通り抜けた呆れというものが現れていた。波立つ水面を静かに見ていた青年は何となく元素に不安定な点があるように思えた。

 

それだけ扱いにくいとされている少数元素であるがこれをピタリと止めて安定して扱えるようにするには、と青年は考えていた。

 

恐らく今日中にその答えが出るようなことはないだろう。兎に角青年は踵を返して走り出して紅魔館の中へと入る。今日の成果をパチュリーに見せに行こうと螺旋階段を降りる。その先にはいつも通り魔道書を読むパチュリーと側近である小悪魔が居たが青年は音もなくパチュリーの前に紙を置いた。

 

「それは今日の成果だ。少しだけ見てみて欲しい。」

青年は疲れ切った表情を見せているが魔法研究に対するエネルギーは見る事もなく感じ取れた。きっと集中し続けていたのだろう。ソファーに座ってから横になっていた。

 

「書き直し。読めないわよ。」

パチュリーは小悪魔を呼びつけたが動けずに口元に人差し指を立てるだけであった。

 

パチュリーは一度ため息をついただけで何かそれ以上言うことはなかった。小悪魔が青年の頭に触る、それでも一切起きるような気配のない青年はされるがままでこれまでの仕返しとばかりに触り続けていた。

 

居づらい雰囲気があるが其処は主として堂々としているらしい。青年は結局のところ幸せそうな表情をしているだけで子供それ以外の何物でもなかった。】

 

寂れた雰囲気のある博麗神社、境内はあまり手入れがされておらず少々の汚れが付いているがここに住んでいる巫女は一切そのようなことは気にしなかった。

 

そして宴会を開く度にこれまで会っていた妖怪が集まる博麗神社には里から来る人間は一人も居ない。きっと行くまでの道が一番の原因だと思われるが巫女としてその辺りの整備は全く行わない。

 

木々の生い茂った妖怪のいる森をわざわざ歩いて来る人里の人々は居ないと言うわけである。博麗神社に祀られているはずの神も巫女からは名前を忘れられて宴会で来る妖怪からは信仰心を得ることはなく、人里から参拝に来る人を救いにするも何もされない。

 

そんな神にも遂に転機が訪れたのである。それは妖怪の山と言われるこの博麗神社を出てから西に向かった小高い山がある。

 

その場所の頂上にどうやら神社が建立したらしい。そんな風の噂だったが今の博麗神社に祀られている神には藁にもすがる気持ちなのである。

 

これを機に巫女が神社の整備をして信仰を集めようとするならば神もこれ以上望むようなことはない。

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