「あら、帰ってきたのね。」
此処は人が寄り付かぬ森の奥に作られた博麗神社。故に賽銭が集まらず困窮していた。場所というのもあるが、人望も薄いように思える。
「いきなり何だよ。霊夢。」
ここで巫女をしている霊夢はに賽銭を入れるように恐喝に近い事をして、ぶん取り少しずつ生活を営んでいる。妖怪が入る事を許さず、文字通り門前払いにする。
「賽銭を入れない人間は来ないでちょうだい。」
霊夢にとってこのような時間は多分憂鬱なのだろう。それに元々居候しているおかげで、食料の減りが早くなったためか、段々量が少なくなっている。
「流石にもう迷惑はかけられないのか。」
青年はそんな霊夢の様子を見てぼそりと呟いた。そして深く考えんでいる様子である。魔理沙はチラッ、と青年を見る。霊夢は厄介払いでもしたかのように精々としていた。食料が尽き始めた霊夢にとっては自分のものでさえ惜しいと言うものである。
「なら、アリスのところ行こうぜ。」
魔理沙はこの空気を破るような言葉を出す。青年はその発言に顔を向けて首肯する。
「帰りたくなったら来なさい。」
霊夢は最後の情けとばかりによくわからない事を言うが、二人には届かなかった。そんな距離には既におらず遥か彼方へと飛んでいった。
「いやー、危なかったぜ。」
魔理沙は急いで青年を乗せるとトップスピードで逃げるように箒を操縦した。そして後ろを向いてから一言呟いた。
「やはり怒っていたのか。」
青年は魔理沙の言葉に余計に不安を募らせた。魔理沙自身は不機嫌な理由はよく分かっておらず、箒ではちぐはぐの状態である。それはそれで興味深かったりする。
「いや、単純に腹が減っていただけだろう。あまり気にするな。」
魔理沙は背後にいる男を慰めるように言葉を伝えた。当の本人は少し考えていたのか、返事はしなかった。魔理沙は不審に思い、後ろを向いた。
「済まない、煙草を咥えようとしていた。」
青年はSTARと書かれている箱から一本の白い紙に包まれた筒を取り出すと唇に乗せていた。正直その行為が意味のあるのかは魔理沙は気にしていなかった。
「なら、良いぜ。」
安堵したのか、短く嬉しそうに話したので、青年としては可愛げのある少女であると感じた。口だけは動かして声を出そうとしていないあたり、言いたくないのか言えないかのどちらかだった。
「アリスにも伝えてみたいものだな。」
青年は咥え煙草のまま話を進める。魔理沙にとっては別に気にするようなことではなかった。もう見慣れている。
「絶対にした方がいいぜ。喜ぶから。」
魔理沙は嬉しそうに話している。青年はあまりそのように考えてはおらず、迷惑するのではないかと考えていた。あまり表情を表に出そうとしないからだろう。
「そうだと良いな。」
二人の空の旅行はもう終わりそうだった。下には黒い屋根に書斎と思われる塔らしき建物が見える。
魔理沙は案の定堂々と扉を開けた。あれから旋回してゆっくりと降りると箒を担いでそそくさと一人で向かっていた。
青年にとっては置いてけぼりを食らう羽目となった。青年自体は別に何か思っているわけではなさそうだ。それに外の方が好都合である。色々と迷惑をかける事はない。家の中で八卦炉から出た炎のような事をすれば、出禁で済めばいいと思う。
青年はゆっくりと心の中で熱く燃え滾る炎を思い浮かべた。木によって囲まれた中で濛々と燃えている炎。爆発ではない継続的な炎の形を念じた。鍔から何らかの熱気を感じ取った時、青年は目を開いた。
刀身が煌びやかに光っており、吸い込まれそうだった。青年は片手で持って横に振る。剣から放たれる光が軌跡を描いていた。青年は確かな実感を得るともう一本の剣も抜く。青年が柄を握りしめると同じく光り始めた。
その光をちょうど見ていた二人は何も言い出すことはできなかった。青年の手に持っている剣から炎が吹き出していた。その熱気からか、全身が光っている。輝いてさえ見えるので神々しさのようなものを感じたかもしれない。
「なぁ、香霖は簡単に出せる物を用意してくれたのか。」
魔理沙は青年のその様子を見ていた。アリスに不安そうに話しかける。
「そのようね。まだ未知数のようね。」
アリスは目を細めて青年の様子を眺めていた。そして少し考えてからゆっくりと話し始めた。
「もう少し教え込んだらどこまで成長するのかしら。」
最早、興味というのか挑戦といったものが目に見えた魔理沙は今日はアリスに任せようとしていた。
「よし、今日はアリスが魔法を教えてあげたらどうだ?」
魔理沙はアリスにそんな事を提案する。アリスは少し迷っていた。自分の監視下に置けば上手く出来るかもしれない、と。それは今の未知数の実力を潰すのも引き出すのも使い方もアリスにやり方によるのである。しかし、かなり荷が重たいと言うのは否めないところである。
「そうね、今日くらいは良いかしら。あの人がどのようになるか見てみたいわ。」
アリスはゆっくりと口を開いてそれだけ伝えた。
「それじゃ、今日は帰るとするぜ。」
魔理沙はそそくさと退散した。
青年はまた新たに念じ始めた。
今度は小さめな風である。香霖のところで起こしたくらいの威力なら申し分ないだろう。青年はそう思うと、その事をじっくりと考えてから刀に反映されているかみてみた。
どうかと言われると物凄く簡単な事だった。
両手からは光が無くなり、代わりに風が巻き起こり始めた。青年はそのことに感心した。これをそれぞれの刀から出せるようにはどうしたら良いか、思案した。いや、これは二人に聞いてみることにしよう。
「魔理沙は居ないのか?」
青年は一人だけ足りないのを疑問に思い、アリスに聞いてみた。
「帰ったわ。」
アリスの返答はかなりあっさりとしていた。多分見飽きたのだろう。先程から炎か風しか出していない。しかも何時ぐらいから出しているのかはよく覚えていない。一秒か、一分か、一時間か、それさえ分かってはいなかった。
「なんか残念だな。」
青年は居ないのは仕方がないとばかりに、何とも思っていなさそうだった。何かに気づいたようにアリスに近付いた。
「同時に炎と風を出す方法はあるだろうか。」
青年は無理そうだな、と感じながらアリスに聞いてみることにした。
「二つの事を同時に念じればいいの。」
魔法とは念じれば何でも出来てしまうのだろうか。青年は何となくそう感じてしまった。操作も創造も念じれば出来るのだろうか。そうなると最大で二十体を操るアリスは同時にそのようにしているのだろうか。青年は考えるだけ無駄だと感じた。分からない事は知っている人に聞くのかが手っ取り早い。
「その方法は練習あるのか。」
青年はマイペースに話を進める。少し間が開いているのだ。
「そうね、その事について書いてある魔道書があるわ。早速読みましょう。」
アリスは中に入るように勧めた。青年は操られているかのように中へと入った。