青年放浪記   作:mZu

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第111話

一方その頃青年はパチュリーの実験の手伝いをしていた。その実験というのは青年が最初から持っていると信じていた5つの元素のうちの陰についての実験であるらしい。

 

パチュリーは基本的に火、水、木、金、土の5つに日、月を扱えるが概ねの元素は操れたりする。但し少数元素と呼ばれるものは扱いが難しいためパチュリーでさえもそれ以上は会得していないらしい。

 

そこで日夜新たな少数元素の扱い方について実験と検証を繰り返しているわけだが今回はそう上手くはいかないらしい。青年は魔法の凝り固まった視点を崩すのは得意だが今回はその概念や前例と言うものはなく闇の中で精密な操作をしているような気分になる。

 

「ところで貴方はどのような使い方をしているのかしら。」

魔法といえど人によって使い方はまちまちである。元素との相性というのが一番の起因だが火を起こすのがやっとと言う人も居ればその紅魔館を消し炭に出来てしまうほどの高火力を扱えたり、はたまたその逆としてそれを相殺する程の水の元素の使い手もいたりする。

 

青年は陰の元素を何か別の元素を閉じ込めるために使ったりある程度の狙いを付けるための絞りとして使っていたりする。あまり運用の仕方は魔道書にも載っている事はなく、ある魔法使いが使えたら嬉しい程度で5つの中に入れていたりする。

 

「俺は基本的に何かを閉じ込めたりするのに使っている。例えば前に作ったゴーレムを丸っこいものではなく壁のようなものに造形を整えるような使い方をしている。がまだ扱いきれている気はしないので回数を重ねるうちに見つけれたらそれで良い。」

青年は柄に触って念じながら答えていた。そこで実際に扱っているのだろうが知らない人から見れば何をしたいのかは全くと言って理解できないものなのであろう。

 

青年もパチュリーの知識に追いついていると言うのもあるが使う言葉全てを記憶しているわけではなく関連している言葉を脳内で一冊の本にまとめていたりする。

 

部屋でやっているためか陰の努力を知るものは少なく咲夜も部屋に入れさせないので汚いままである。まだまだ未熟な点もパチュリーからすれば見当たるが概ね満足というものである。

 

「動きを制限するというよりかは整えると言うことね。もしかして高火力で放つ攻撃が多いのはそのせいなのかしら。」

青年は確かに魔力の容量にしては高い威力の魔法を撃つ事を前々からパチュリーは不審に思っていた。パチュリーには青年の魔力の大きさが変わっているようなところもないのでその疑問というのは余計に考えてしまう所である。青年も彼なりに努力して研究して実験して何らかの形でうまく魔力を運用している。

 

「そうなのかもしれない。パチュリーには到底理解できない領域になるとは思う。」

 

「それは買っても良いのかしら。」

ギロッ、とした眼を見せるパチュリーに青年は軽々しく受け流してから話をすり替える。

 

「魔法剣がないと出来ないからな。」

青年は柄を触っていた剣を引き抜いて直刀型をしたものの刃の輝きを見ていた。あれから初心者なりに布巾で汚れを拭いたり香霖に直してもらったりして長い事輝きを落としてはいなかった。パチュリーはそれはそうね、と言って半ば諦めたようにしているがそこである一つの疑問が浮かび上がる。

 

「それなら一つ聞きたいことがあるの。前に魔法を扱った事があると思うのだけど私の気のせいかしら?」

 

「いやそのような覚えはないが確実に否定する事も出来ない。自分の名前を忘れているほどだ。もしかしたら何かの衝撃で記憶を吹き飛ばされたか魔法によって消されたのかは今の所誰にもわからないだろう。外の人間であるらしいしな。」

 

「今は深く聞くのは辞めておきましょう。」

パチュリーはそれから珍しく陰の元素について書かれた魔道書を見ながら青年と一緒に魔法を研究していた。青年はパチュリーから頼まれた事を忠実に聞いて全ての事をこなしていた。

 

その中で青年が気付いたことや逆にパチュリーの気付いた事は紙に各々が書き記してから合わせていた。その中で合致している点やそうしている点を見つけ出して更に追求する。

 

それを繰り返す作業のような日々を過ごす中で何やら新たな神社が妖怪の山に出来た事を咲夜の口から聞いた。青年は最初は何も気にしていなかったが何やら霊夢と魔理沙が向かうらしいとの情報を得て何となく行く気になった。

 

青年も風の噂程度には聞いていたが参拝客がかなり大差が付いているらしいのも聞いている。咲夜に呼び出された青年は一時的に魔法の実験を辞めて詳しい話を聞くために主人の元へと向かった。

 

「失礼する。」

ノックもなく素早く用事を済ませたいらしい青年は主人の返事もなしに椅子に座った。主人の前には咲夜が淹れていたのであろう紅茶の入ったティーカップと同じく咲夜がこの時のために要した茶菓子のマカロンが置かれていた。青年は甘味物はあまり好みではないらしく食べようとはしなかった。

 

「笑いを取りたくてやっているなら辞めてちょうだい。」

この紅魔館の主人であるレミリア・スカーレットはほんの少しだけ眉間にしわを寄せていた。逆にそうなる方が自然であるのは確かだがレミリアと青年の仲は別に悪いという事ではない。

 

其処は妹に気に入られているので姉として何か口出しができないという所なのだろう。段々と形が狭くなっているので少々気にしているところもあるかもしれない。

 

「真面目に入って来ただけだ。」

青年はそんなレミリアにけろっ、とした軽い調子で返す。流石に個々の空気が凍り付いたように寒くなると思ったがレミリアはもうそのような事は気にしていないらしい。何処か子供らしさのあった主人も段々と大人の階段を登ってきたというのが目を見える。青年はそのような事は全くにしないわけではあるが。

 

「それなら尚更たちが悪いわよ。」

レミリアは吐き捨てるような言い草をしているが二人はいつもこんな会話をしている。ある意味仲の良い間柄ではあるが緊迫した雰囲気になるので辞めてほしいとは咲夜は思っている。その事を察してか呼ばれない限りはレミリアとは会っていなかったりする。

 

「その事は置いておいて何があったんだ。」

青年は大体の話は咲夜から聞いている。しかしどうして咲夜と青年の二人で妖怪の山にある神社に行かせようとしているのかは意味が分からなかった。青年も其処までは頭の回らない状態でもない。しっかりと休息はとっているのでそれなりには頭が回る。

 

「それは主人として従者に休暇を与えてみたいのよ。咲夜は妖精メイドの管理をしているわけだし、青年は何をしているのかは知らないけど、まぁ、あれよ。偶には休暇を取って何処かに遊びに行きなさいということよ。」

レミリアは自信満々に答えるが青年は冷たい視線を送るだけでレミリアをたじろがせる事しかしなかった。青年は品種の分からない紅茶にもお手製のマカロンにも手をつけようとはしなかった。其処で咲夜から説明が入る。

 

「お嬢様は休暇を与えるから私と二人で新しくできた神社に向かうのはどうだと聞いています。私は別に目的もなく一日を過ごすよりかは有意義だと感じて了承しましたが貴方はどうなされますか?」

 

「行く。」

青年は素早く答えた。まるで咲夜の言葉をかぶせるような勢いだったがその点はしっかりと話は聞いていた。単純に青年の返事に勢いがあっただけなのである。

 

「それじゃ決まりね。休暇は明日だから準備は今日中に済ませておきなさい。」

レミリアは紅茶を一口口の中に入れてからふふっ、と不敵に笑った。

 

何か企んでいる事があるのだろうがその時はどうなるのかは覚悟できるのだろうと思って青年は敢えて無視する事にした。

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