ウエーブのかかった外ハネのしている短めの青い髪を赤い玉のついた紐で結んでいたツインテールでキャスケットを被った白いブラウスに青色の上着を着ている。
肩にはポケットが付いているが何が入っているのかは知らない。そんな少女はこの川沿いに赤いジャージを着た青年と白いワンピースに青い上着を着た麦割帽子を被る女性の目に止まった。
「どうしたら良い。」
青年は珍しく困ったような表情を浮かべている。その表情は咲夜にとって初めて見るようなものであるので少しばかりか戸惑っているようにも見える。
「それは、何か落ちんでいるみたいだし話を聞いてみるのが良さそうね。」
咲夜は現状について青年はその目に入った話しかけても良いだろうか迷う人物に話を聞いてみようとしているわけだが行動を起こそうとしないと考えた。
それならとばかりに足元にある石を踏みつけてわざと大きな音を立てた。それも気付かせる為なのである。
「うわぁ、また襲うの。」
その人物はその音に過敏に反応して二人の方を見ていた。それまでは一切見る事のなかったわけであるが急に現れた人物には流石に驚きを隠せないようである。
「また、とは何かあったのか?」
青年は素直に不思議に感じたのだろう。聞いてみてもいいのか分からないような事を更に掘り下げようとするのは禁句であると自分が証明したはずではあるが、など咲夜は先ほどの出来事をふと思い出しながら考えていた。その点ではある意味無謀とも言える。
「話す気は無いよ。だって同じ人間なんでしょう。」
「別に危害を加えようとしているわけでは無いんだ。道に迷ってしまったそれだけなのだがその途中で貴方に見かけたから話を聞いてみる事にしただけなんだ。」
何処か温もりのある声で話す青年の後ろ姿を見ていた咲夜。そして一向に距離を詰めようとはしない青年は兎に角その人の話を聞く事にした。
「お兄さん達、道に迷ったの。此処は普通なら入って来れるような場所ではないけど何か仕出かそうとはしないよね。」
「山で何をすると言うのだ。川の水でも掬えば良いのか。」
「いや、別に。少し前に通っていった人間の二人が私を襲って頂上へ向かったんだ。」
「その人間の特徴を教えてくれないか。」
青年はまさか自分の他にこの様な常識には囚われない道を行こうとする人がいる事にまず驚いた。
それからその人がどの様な人物が知る必要があった。取り敢えず少女の落ち着かせてから話を聞く事にする。
「まず赤い服を着ておる人で何かの紙が付いた棒を振り回して私を叩き回ったんだ。それを止める黒い服の人が居たけど結局助けては貰えなかったよ。」
青年は瞬時に誰が犯人であるのかは概ね察した。その人物とは博麗の巫女である博麗 霊夢とその友達である魔法使いの霧雨 魔理沙だろう。
その二人が妖怪を退治しているとなるとその話はどうにもずがとおない様に感じる。そもそも襲う理由があるわ気もない。
「貴方は何かその人に向かって妨害をしたか?」
単純に邪魔だから退治すると言う霊夢の性格通りになったのかを確かめるべくその様な質問をする。
「私はこの道は危ないから引き返したほうがいいよ、って教えてあげたかったんだけど何も聞く耳を持たなくて。私、自信が持てないよ。」
霊夢に対してその様な発言は禁句であると青年は考えた。その言葉は巫女として有能に育ってきた霊夢は努力する事を知らない。
いや、厳密には努力する必要もなく大体のことは手に入ってしまう。その内そんな生活にも飽きてきた巫女はついにはするのをやめた。真っ当と言えばその通りであるが努力が報われない人がいる様にその逆がいる事も良くある物だ。
「貴方は善行をしたのだろう。なら胸を張って堂々として言えばいい。それで引き返さないなら無駄なお世話だと自分の中で諦める事が重要だ。」
青年は何かを諭す様に話しているがそれがあまり意味を成さないのには気付いていないらしい。その人はゆっくりと青年の方を向いていた。
その表情は悲しみに満ちているのはよく分かるがそれ以外は何か違う様な気がする。青年は何か話したい事があるのだろうと思ったのでしばらく時間をあげてみる事にした。
「君たちはいい人間なんだね。私は河城 にとり、河童の妖怪だよ。」
にとりは今まで悲しそうな表情を浮かべていたがそれから一転させて嬉しそうな顔をしているのを青年はある意味感心した。能天気とはまた違うと思うが元気そうで何よりだと保護者の様な感想を思ったところだった。
「俺が山川という者だ。こちらの女性が十六夜 咲夜と言う。」
青年は流石に同じ様にはいかないがそこそこ元気そうに答えている。
「山川さん、こんな所に来ているけど何かしようとしているの。」
にとりは快活とした性格が本来の姿である様で悲しいなんて言うものは似合わない様な人物であると感じた。その考えはきっと間違ってはいないが安直すぎるかと思った。
「神社に参拝でもしようかと思ったが此処がどこだかさっぱり分からない。」
青年は意外にも素直に答えた。それはにとりの性格に押されたものなのかどうかは知らないがそのまま嘘を伝えるのも悪い気がした。
この道を通っている以上はそれも嘘になる様な気はする。それがどうしても青年には許せないと思われる。
「道中で誰とも会わなかったんだね。それは良かったね。哨戒天狗に会うと厄介だからね。」
にとりはとても楽しそうにしていた。それだけで済むのならそれでも良いのだが山のどの辺りにいるかもよく分からない青年たちはここは大人しく話を聞くしかなかった。にとりは今は関係ない事に気付いたらしい。
「ちょっと剣を見せてくれない。」
にとりは青年の持っていた双剣に興味が向いたらしい。青年は少しだけ渡すか渡さないかを迷ってから柄に手を触れた。
一瞬だけ抜くと思ったのだろう。にとりは瞬時に身構えたがそれは無用だった。青年は鍔を触ってから鞘を持って帯から抜くとそのままにとりに渡した。にとりは恐る恐る青年から受け取ってから鍔に手を触れた。
「特殊な物質で出来ているようだね。でも何で出来ているのかはよく分からないんだよね。」
鍔の部分は確かに特殊な物質であるが青年はそのことは知らないので香霖かパチュリーに聞くのが一番手っ取り早いが今は出来るような事はない。咲夜には時間止めの能力があるので連れて来るのなら可能なのだろうがそれが出来るのかは知らない。
「その辺りの話は全く聞いていないが確かに特殊なものであるらしい。」
青年はにとりの疑問には答える事はできなかった。無知故の失言である。
「抜いてみるね。」
にとりは一言伝えて許可を得てから剣を抜いてみる事にした。その中からは銀色の鉄の色が見えた。青年は偶に布巾で汚れを落としていたりするが基本的な掃除の仕方は知らないので綺麗になるようにしているだけである。青年が知識がないのもあるが専用の打ち粉や油と言った手入れ用の道具が流れていないと言うのも確か。妖夢や咲夜はどのように手入れしているかは知らないが幻想郷だからと言う事で青年はまとめて解決としておいた。
「とても綺麗だけど汚れが沢山付いているよ。もしかして乱暴な使い方をしてないかな。」
心当たりは青年にはあった。魔法の実験のために水につけてみたり葉を乗せて燃やしてみたり小さな水素爆発起こしている。乱暴な扱い方と言われてもそれは仕方がないし言い返せない。
「実は鍔の部分に魔法陣が組み込まれている。実験や研究のために酷使していた節はあるから否定はしない。」
青年は頭を抱えながら申し訳なさそうに答えた。
「じゃあ、私が磨いてあげるよ。その事なら任せて。」
にとりは自信満々に答えたが青年には香霖と言うその剣を作った製作者がいるのでそれで事足りると思っていた。が、ここでガッカリさせるわけにもいかないのでどう言うべきか青年は迷った。
「済まないが後でじっくりと見せにくる。その時まで待っていてくれ。」
青年は何処か悔しそうな表情をしているがそれを理解できるのは隣にいる咲夜だけである。にとりは口を尖らせて少しだけ怒ってようにも見えた。
職人として腕を買われていない気持ちであろうといえば納得はいくと思う。青年は裏切ってしまったのかと不安になった。
「私が作った訳でもないんだ。その所は任せるよ。」
にとりは仕方がなさそうに言っていた。青年は一言謝罪してからまた来る、と言って歩き始めた。歩いている先を見ると川は左へと曲がりそれに付いていくように右側には山道があるのでそちらから向かう事にした。