青年放浪記   作:mZu

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第117話

妖怪の山の沢山あると思われるうちの一つある川の山道を髪を後ろで結んだ青年と銀髪でサイドを三つ編みにした少女は歩いていた。

 

木を一本左のほうへと歩けば川のあるこの道には流石に参拝客らしき人物は見る事はできなかった。此処はその為に作られたわけではなくて妖怪の山に住む住人が通る言わば獣道を突き進むので人が居ないのは当たり前ではある。

 

「先は河童に出会ったから次は誰に会えるのだろうか。」

何処か楽しそうにしている青年はほんの少しだけいつもよりも歩く速度が速くなっていると思われる。

 

咲夜はその横をサンダルで歩いていくが流石に紐に当たる場所が痛くなってきたらしい。

 

「少し休憩しましょう。」

咲夜は青年の期待を裏切るような形で一言だけ述べた。青年は首を動かして振り返ると近場の休憩できそうなところを探していると思われる。

 

首を縦に振って首肯してから青年は近くに気軽に座れそうなところを探した。何処か岩なり倒木があれば良かったのだがあまりそのような場所は見当たらない。

 

「咲夜、木にもたれ掛かるのでは駄目だろうか。」

申し訳なさそうにしているのが何となく伝わったのか咲夜はいいのよ、と軽く言っておく。

 

青年は目が少しだけ閉じたのを前に向く横顔で確認していた咲夜からしては何処か罪悪感を感じた。それがどの様なものであるのかは理解出来ないが確実に蝕んできそうなところはあった。

 

「しかし完璧だと思っていたメイドが甘いところを見せるとは思わなかった。」

青年は咲夜のもたれ掛かっている木の近くで立って辺りを見渡していた。青年はしっかりと香霖堂で買っていた登山用の靴を履いている。足が痛む様な事は疲労以外ではあり得なかった。

 

「相手が悪かったのよ。」

そうか、と青年は軽く返した。一切会話が成り立っている様な気はしないのだが二人の間では理解出来るらしい。

 

初めて紅魔館で妖精を使って完璧な仕事をしていた青年は咲夜からすれば妬ましかった。

 

その理由は簡単な話だ。自分は倒された上に館のメイドを指揮する様な確かな才能がある。紅魔館のメイド長としてそれは許せない事態だった。だが実際見てみるとどうだろうか。

 

紅魔館の執事としては余りにも自堕落な生活を送っている。魔法を学んでいたり、門番と組手をしていたり、はたまた舟を作り出して釣りをしているのを聞いた時には流石に何をしているのだろうと思った。

咲夜は前に仕事をしている時に言われたことがある。完璧になったのは良いが余りにも自分を殺している、人形メイド。咲夜は最初は怒ってしまった。青年は軽く受け流してから更に言葉を続けた。

 

貴方の仕事はどれも敵わないものであるが一人でやっている、妖精もやる事がなくて遊ぶ気持ちも分からなくもない。

 

確かに妖精は勤務中によく遊んでいた。しかし今はやる事を終えてから遊びに行く様に青年は仕向けている。そうなってからの仕事のスピードは格段に上がり給仕だけをすれば咲夜は仕事を終わらせることが出来る。ある意味で言えば人が多過ぎるので削減するがお嬢様はしなかったりする。そうなってからは青年に尊敬の意思が芽生え始めた。

 

「くるくる回っている。誰だろうか。」

咲夜は一思いにふけっていたのか少しだけ反応が遅れた。時間を止めて反応速度を早めたが青年にはその様なトリックは知られている為気づかれる様である。

 

「そうね。」

 

「こちらまで来たら話しかけてみるか。」

青年は少しだけ楽しそうにしていた。それは咲夜だけにしか分からない微妙な変化だが見慣れると簡単なものだ。

 

「俺は旅人の者だが道を聞いても良いか?」

青年はくるくると回っている女性に話しかけた。緑色の長めの髪で胸元で赤いリボンで結んでいる。ゴスロリ風の服装である。スカート裾には白のレースが付いていて赤いグラデーションがあり丸の様な模様が入っているが現状では何も読み取る事はできなかった。

 

「はい。」

頭部には帽子ではなくて赤い髪を結んでいるものと同じリボンを付けていた。服装としてはワンピースの様なものである。黒色のしっかりとしたブーツを履いているので此処の住人である様だ、そこで判断するのはおかしいが。

 

「この山の頂上にある神社に行きたいのだが何か道を間違えている様だ。そこで貴女に会ったので話を聞いてみようと思ったまでだ。」

青年は悪びれもせずに何回も同じ話しかけ方をしていた。その方が警戒が解かれやすいだろうと安易的に青年が考えているだけなので確証は何もない。

 

「そうなんですか。私に話しかけようなんて思いましたね。」

自虐的な発言する女性だが大人しく自我を余り持ち合わせてはいなさそうなので仕方がないところもあるとも思われる。青年からすれば少し面倒なタイプではある。

 

「通りかかったので話しかけてみただけだ。」

 

「そうですか。私は鍵山 雛と言います。信仰を必要としない厄神様です。」

雛は本当に生きていていいのかと思えるほど自信のなさそうな言い方をするのがどうにも青年には合わないらしい。

 

「疫病神ではないんだな。幻想郷には色んな人がいるんだな。」

しかし青年には厄などと言う言葉も気になるが神様が目に見えると言う事実が驚きを隠せないらしい。

 

「私は他の人を不幸にさせるんです。だから早くここから離れて欲しいんです。」

 

「それは周りが不幸になるからか。それとも俺とは話したくないからか。」

 

「話したくない訳ではないです。」

 

「ならもう少し話を聞かせてはくれないだろうか。」

青年はどのような人物なのか気になるらしくグイグイと雛に話を聞こうとしている。咲夜はそんな姿を見て青年の肩を触ってそれを制すると青年は後ろを向いた。

 

「貴方はグイグイ行くけど相手も大丈夫とは限らないのよ。」

 

「とても変わった人なので少しびっくりしているだけですよ。話す事はとても大好きなのでこちらの方が楽しめそうです。」

無表情だった雛は青年と会ってから初めて笑顔を見せたと思う。青年は何かを悟ったらしくその場に座り込むと手で招いて雛も座らせる。

 

「なら良かった。神と話せる機会なんてないからとても有り難い。」

青年はとても嬉しそうに話していたが雛は厄神様であり周りを不幸にさせることを忘れてはいけない。

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